第2回 水産物の安全確保に係る水産政策のあり方検討会(PDF - 水産庁

第2回水産物の安全確保に係る水産政策のあり方検討会議事概要
<質疑応答・意見交換>
○ 第1回検討会の補足資料について
(事務局から第1回検討会の補足資料について説明)
(委 員)麻痺性貝毒の毒量は1/2致死時間から求めるのではないか。
(事務局)1/2致死時間ではなく中央致死時間を求め、換算表に合わせて毒量を求めている。
○ 漁網防汚剤の審査体制について
(説明者)漁網防汚剤は、かつては有機スズ系を使用しており、効力が強く作業効率も良かったが、環境へ
の残留性、生物毒性が問題視されたため、昭和62年に漁業関係者による緊急対策会議を開催、
自主的に有機スズ化合物の全面使用禁止を決定した。使用禁止にあたり、有効で安全な代替防
汚剤の開発が急務となり、製造メーカーの協力のもと非有機スズ系防汚剤を開発、使用にあたっ
ては学識経験者による漁網防汚剤安全評価委員会による審査を実施している。
安全評価委員会は、防汚剤を使用した場合の魚への残留状況、水質汚染や低質への蓄積、生
態毒性等から評価を行っている。具体的な安全性評価試験の項目は、効果試験の前に基本項目
として①物理化学性状②分析方法③魚類急性毒性④魚類蓄積性⑤微生物分解性⑥海水中安定
性⑦変異原性⑧反復投与毒性の既存データをそろえる。防汚効果試験を実施するとともに、①魚
体への蓄積性(定置網用除く)②製剤処理した漁網からの有効成分溶出速度③有効成分の環境
毒性、についての結果も評価することとしている。
効果試験は、定置網用は基本的にはテストピースによる試験、養殖用はテストピースによる試
験と実網を用いた試験を選択可能なようにしている。これは、魚体への蓄積試験も合わせて実施
可能としているためである。製品開発から安全評価委員会に諮るまで、通常は1~2年の期間を
要する。
登録防汚剤については全漁連、全かん水が発行する登録シールを添付して販売する体制をとっ
ており、メーカーには防汚剤別供給量の報告も求めている。なお、登録の有効期間は3年間であ
り、必要に応じて再登録を行い、また、供給実績のないものは登録を抹消している。
全漁連認定の防汚剤は、平成14年10月現在、養殖用防汚剤が16社40品目、定置網用が9
社11品目である。認定結果は、全かん水、日本定置漁業協会、都道府県等漁連、製造メーカー、
水産庁などに通知して公表している。
(委 員)製品の効果試験は何故2通りあり、メーカーに選択制を持たせているのか。
(説明者)2通りあるのは、テストピースで試験した場合、その後、実網試験が必要であり、それでは約2年と
長期間を要する。製品に対する自信がメーカーに有れば、最初から実網試験を行えるように選択
の幅を持たせている。
(委 員)養殖用と定置網用は別のものがあるということか。
(説明者)養殖と定置網用は別の製品である。
(説明者)評価試験を我々のような民間団体が行うのが適当かという問題はあるが、昭和63年頃有機スズ
系化合物が魚の背曲がりの原因として問題視され、全漁連は業界として使用を禁止した。しかし、
代替剤は必要であり製品開発を行ったわけだが、その際に安全性を評価する機関がなかったの
で専門家による検討委員会を設けて試験項目の設定等、基準作成を行った。また、当初は試験
は全てテストピースで実施し、その後、実網での試験を行っていたが、これでは安全性の確認と登
録に非常に長期間を要し、開発経費も無駄になることから、2通りの試験方法としたもの。
このような評価は本来は国が行うべきと考えている。
○ 酸処理剤について
(説明者)全漁連と全海苔漁連では、酸処理剤の使用にあたり学識経験者等による酸処理剤検討委員会を
設け、年度毎に製品の適格性審査を実施するとともに、地域の実情に応じた適正な使用方法の徹底を図る
ため、各県の水産試験場等の協力を得ながら、生産者に対する指導及び監視を実施している。
なお、平成14年に適格品と認定した酸処理剤は13社53品目である。
(説明者)酸処理はノリ生産者が発案したもので、水産庁次長通達並びに酸処理剤検討委員会の答申に基
づき自主的基準を定め使用している。本来はアオノリの混入による製品価格の低下を防ぐため、
アオノリ除去を目的にクエン酸等の有機酸で処理していたもの。その後、赤腐れ病にも有効であ
ることが確認され、また、施肥的な成分もプラスして製品として流通している。
審査基準は、①食品に含まれる有機酸で構成する、②雑藻除去目的以外に栄養成分を加える
ときは食品添加物として認可されたものに限る、③栄養成分としてのアミノ酸は中和して使用す
る、④原液のT‐P値は4%以下とする、⑤施用濃度は1%以内(100倍以上に希釈)とし、同濃度
でPH2.1(±0.1)以上とする、⑥分析法の確立していないものは使用を認めない、としている。
また、安全性については公的機関またはそれに準じた機関により評価を行っており、評価項目
は①半数致死濃度、②水銀、カドミウム、鉛、砒素の含有禁止、③その他金属成分の濃度、であ
る。
有効性についても、公的機関等で試験を行っているが、本来は適格性審査にはなじまない部分
である。
その他としては、製品への使用方法書の添付により処理回数を必要最小限にとどめること、処
理後5日間は摘み取りを行わないこと、残液は適正に処理することなどを明記するように指導して
いる。
審査手続きについては、製造メーカーから申請があったときは、全漁連・全海苔連は適格性につ
いて審査を行うとしており、メーカーに対して審査資料にサンプルを添えて提出させて、基準に合
致しないものは排除している。合格品としての認定期間は1年間であるが、成分等に変更がない
場合の次年度の申請の簡略化なども規定している。ただし、成分に変更があった場合は再申請
するとしている。また、審査結果は傘下の養殖業者に通知している。
漁期前、漁期中に抜き取り検査による内容成分の確認を随時実施しており、申請時と同じ内容
成分かチェックして、成分が異なるときは追試験を課している。
違反に対する措置として、申請内容と大幅に異なる成分組成の製品や無機酸ベースの商品の
販売等を行い、水産庁や系統団体の指導の趣旨を著しく損ねた場合は、適格品の指定取り消し
や審査対象メーカーからの除外等の措置を講じている。
(委 員)雑藻除去以外の目的もあると聞くが、どの程度のウエイトか。付け足し程度なのか。
(説明者)判断が難しいところ。ただ、酸処理を行わないと作業量が著しく増加し、現在の経営は成り立たな
い。また、本来は雑海藻処理だが栄養成分をプラスしたいといった考え方も根強く、加えて、赤腐
れ病の予防や珪藻の除去にも効果があるため、使用をやめることは困難。通達に基づいた適正
な使用を指導していきたい。
○貝毒の監視体制について
(説明者)貝毒は、二枚貝が摂取した植物プランクトンにより毒化したもので、我が国では麻痺性貝毒と下痢
性貝毒が知られている。主に「ウロ」と呼ばれる中腸腺に多く蓄積、麻痺性毒の毒力は非常に強
い。
北海道では食品衛生法に基づく出荷体制を確保するため、北海道周辺の海域を16地区に区分
して海域毎の貝毒検査を定期的に実施、必要に応じて出荷規制等を行っている。実際の検査は
行政検査として、海域毎に調査定点1地点を設け月に2回の頻度で実施しているほか、生産地の
漁協毎に、自主検査として操業開始の1週間前及び操業期間中週1回の検査を行っている。ま
た、貝毒発生時には検体採取の定点や頻度を増やして、毒値の推移等について積極的な監視を
実施している。
ただし、1つの海域が広範で海域内でも毒化の進行等に差が生じるため、16区分の更なる細分
化など、今の海域分けに異論があるのも事実。
また、国内出荷にあたっては、行政指導として、国の通達に基づき麻痺性貝毒については可食
部で4MU/g、下痢性貝毒については同0.05MU/gを超えた場合は、海域毎に出荷規制を講
じているが、道漁連は一層の安全性確保を図るため自主規制として、麻痺性貝毒については可
食部で3MU/g又中腸腺で20MU/gを超えるもの、下痢性貝毒については可食部で0.025M
U/gを超えた場合は、出荷を自粛している。
貝毒検査の結果は、行政検査及び自主検査ともに行政の関係機関と生産者、加工業者に連絡
され、検査値が自主規制値を超えた場合には、道漁連、水産林務部、保険福祉部、経済部、環境
生活部の5者が集まり、出荷規制の決定や場合により市場流通品の回収等が措置されるととも
に、直ちに生産者や加工場者、道内外の市場関係者に連絡している。また、検査結果が自粛規
制値を超え自主規制値以内である場合は、道漁連、水産林務部、保険福祉部の3者協議により
規制措置の検討等を行っている。また、規制を解除する場合も同様に協議を行い決定している。
貝毒検査結果が出荷規制基準値を超えた場合は原則として水揚げや加工は行わないが、貝毒
は中腸腺に偏在しているため、貝毒値によっては、中腸腺(ウロ)を除去したボイル製品や貝柱製
品等を製造、製品の安全性検査を実施後に出荷している。この場合、麻痺性貝毒については道
による認定工場で、下痢性貝毒については道漁連が承認した指定工場でのみ処理加工を認めて
いる。
なお、貝毒に関する安全性を確保するため、ホタテガイを出荷する際には採捕時期の如何に関
わらず産地海域名、生産漁協名、原料貝採捕年月日、製品製造年月日等を記した安全証紙の貼
付が国の通達により定められている。
また、貝毒は原因となるプランクトンが把握されているので、主要海域においてプランクトン調査
を行い貝毒発生を予測する体制も整備している。
このような規制を行っていることもあり、北海道では昭和53年以降貝毒による大きな事故は発
生していない。
(委 員)麻痺性と下痢性貝毒を外見で判別することは可能か。また、1検体当たりの検査費用は。
(説明者)麻痺性は「しびれ」や「麻痺」を発症するので症状からは判別可能だが、貝の外見からでは判別で
きない。麻痺性貝毒は寒流系のプランクトンが原因なので、日本海側は主として下痢性、太平洋、
オホーツクは麻痺性などの地域的な傾向はある。検査料は1検体当たり1万~1万5千円位であ
る。
(委 員)隣接する海域へ運んで水揚げ、販売されるなど、貝が他海域に移動される恐れはないか。
(説明者)そのようなことは禁止されている。加工場も海域毎に原料の入荷等が規制されている。
(委 員)海域単位で規制する場合はこのような問題は必ず発生する。
(説明者)貝毒の発生は、単に地理的に隣接している問題よりも海況が影響している。オホーツク海では、海
流の上流側で発生すると下流側で必ず発生する事が傾向として知られている。
(委 員)北海道ではムラサキイガイの問題はないか。
(説明者)イガイ類は北海道にも5~6種ある。他の貝類についても検査態勢は異なるが規制を行っている。
北海道以外と記憶しているが、過去にイガイを食べて死に至った例がある。
(委 員)毒性試験にはマウスを使用しているが、精度管理が難しいと思われる。WHOの専門家会議では精
度管理はどうなっているのか。
(事務局)貝毒の分析方法におけるマウスの精度管理については詳しく承知していないので、次回までに調
べて報告する。
(説明者)分析実施機関では、毒化が進行して頻繁に検査を行う場合、マウスの確保が大変と聞いている。
マンパワーの問題ではあるが検体が多いと大変な作業である。ガス又は液体クロマトグラフィーな
どの使用も考えられるが、これまでのデータとの比較を考えた場合、現状ではマウスで行うのが
一番現実的である。
(委 員)毒性があるものは物質を捉えるだけではなく、活性を捉える必要があるので難しい問題である。生
物活性を調べるマウス法でも精度管理が出来るとすれば非常に有益な方法でる。
○全体討議
(委 員)漁網防汚剤と酸処理剤の審査料、環境生物毒性試験の具体的な方法、法的規制を行うことに対す
る考え方は。
(説明者)漁網防汚剤の認定費用は新規登録は1製品当たり20万円、再更新は10万円である。
(説明者)生物毒性試験の方法は、OECDの基準に準じた、魚類、貝類(アワビ)、甲殻類(クルマエビ)を用
いた半数致死濃度のデータによる毒性評価である。ただし、有効成分毎に原体を用いた試験とし
て実施している。法制度化については、防汚剤は元々は船底塗料として開発されたもので、そち
らのシェアが大きい。その中から有効なものを防汚剤として使用している。このような物質を防汚
剤として水産庁だけで規制することは困難ではないか。
(説明者)酸処理剤は新規申請料が25万円、既存製品12万5千円。
(説明者)安全性審査は、原料組成一覧表、食品添加物証明書、重金属等分析証明書による成分等の確
認、野外及び室内でのノリとアオノリ等を用いた有効性試験、海産魚類の仔稚魚(マダイ等)、海
産甲殻類(クルマエビ等)、貝類(アワビ)を用いた工場排水規制法に準じた毒性評価試験を実
施、その他、分解速度などの資料を提出させて審査している。
(説明者)公的機関による規制について、各県漁連の意見を聴取したが結論に至っていない。酸処理はノリ
養殖に欠かせない技術であり、食品に直接使用するわけではない。全国組織で審査は行ってい
るが、その結果を基に各県単位で試験研究機関の協力を得ながら独自の使用基準等を定めてお
り、実態は各海域によって相当異なる。画一的に規制されると影響が大きい。近年、この分野は
非常に技術的に進歩しており、単に有機酸といっても各種有効成分が調合されている。現在のノ
リ養殖はこのような技術の上に成り立っている。
(委 員)審査費用が生産者にとって負担になっているのではないか。防汚剤を開発するメーカーが責任を持
って安全性等のデータを収集するのは当然だが、申請料で漁業者による審査システムの運営が
成り立つのか。
(説明者)申請料だけでは審査システムは成り立たない。漁網防汚剤では審査制度の運営のために漁協系
統で年間800万円程負担している。
(事務局)法制度化については、第1回の検討会でも説明したとおり今後の課題の一つとして、この検討会の
中で必要性を検討したい。
船底塗料は漁船以外にも広く一般船舶に使用されており、水産庁だけで規制することは困難で
あるが、先般、IMO(国際海事機関)により、有機スズ化合物等有害物質を含む船底塗料を規制
するための条約、「2001年の船舶に関する有害な防汚方法の規制に関する国際条約(仮称)」
が採択され、今後、各国が批准するなどして発効する見込み。日本では国土交通省を中心に批
准に向けた検討作業が進められている。漁網防汚剤については、このような動きも合わせて検討
する必要がある。
(委 員)現在、スズ系の船底塗料は使用できなくなっているのか。
(事務局)IMOの条約では、2003年から有機スズ系船底塗料の塗布禁止、2008年からは当該塗料の除
去又は被膜による溶出防止などが義務付けられる。
(委 員)化学物質審査・製造規制法で有機スズ系は特定化学物質になっている。日本国内での販売は禁止
ということか。
(説明者)第1種特定化学物質販売については販売が禁止されている。
(説明者)漁業関係者は有機スズ系の防汚剤を使用する考えはない。販売自体が禁止されているのなら、新
たに法的に規制する必要はないのでは。
(説明者)現在、ノニルフェノールが環境ホルモンとして問題となっているが、かつて、防汚剤として使用した
事がある。問題性が明らかになった時点で使用を禁止するよう全漁連が要請し、社会問題となら
なかった。今後とも情報を収集して問題がありそうな物質は早急に使用規制を行う体制整備が重
要。
―
以上 ―