132 132 斑模様 Pennyface,3. 黄鼻模様 Yellowneb の 3 ける瓢湖,鳥屋野潟の合算値とχ 2 検定をもち タイプに分け(図 2) , それぞれの数をかぞえた. いて比較した.更に,本調査における本埜地区 すなわち,嘴正面部に,黒色が額から先端まで における 3 タイプの割合と,河邉(1999)が 連続しているものが黒筋模様 ,嘴正面部の黒 示した,同地における割合を比較した.なお, 色が額から嘴先端まで連続しているが,さまざ 河邉(1999)では, 本調査および Scott(1981) まな黄色部分が見られるものが丸斑模様,嘴正 で黄鼻模様 としたものを,額部分の黒色の有 面部の黒色が連続しておらず左右の黄色部分が 無からさらに 2 つのタイプに分けている.本調 連続しているものが黄鼻模様 である.これら 査の結果と比較するにあたっては,この 2 タイ の例を図 3 に示した.幼鳥は嘴模様が確定しな プの合算値を黄鼻模様として扱い,比較した. い(林 1982)ため,対象から除外した.また, 2010 年から 2011 年にかけての,各調査地 Evans & Sladen(1980) ,Scott(1981)では, におけるコハクチョウの嘴模様 3 タイプの割 黒筋模様の英語表記は Darky であるが,本稿で 合を,図 3 に示した.各調査地とも,黄鼻模様 はより新しい Rees(2006)に従い,Blackneb が最も多く 60% を超え,次いで黒筋模様が多 とした.これらの調査は,2010 年 11 月から かった.各渡来地における各タイプの割合に, 2011 年 2 月にかけて行なった.得られた 3 タ 有意差は認められなかった(χ 2= 13.72,df = イプの割合を,各調査地間でχ 2 検定をもちい 12,P = 0.32) . て比較した.続いて,本調査における越後平野 続いて,Scott(1981)による新潟の各タイプ 一帯の 3 タイプの割合と,Scott(1981)にお の割合と,本調査における各タイプの割合を比 㻜㻑 㻱㼏㼔㼕㼓㼛㻌㻼㼘㼍㼕㼚 越後平野 㼚㻩㻡㻜㻤 菅生沼 㻿㼡㼓㼍㼛㻌㻹㼍㼞㼟㼔 㼚㻩㻠㻝 本埜 㻹㼛㼠㼛㼚㼛㻌㼍㼞㼑㼍 㼚㻩㻣㻝 夏目の堰 㻺㼍㼠㼟㼡㼙㼑㻌㻼㼛㼚㼐 㼚㻩㻥 猪苗代湖 㻸㼍㼗㼑㻌㻵㼚㼍㼣㼍㼟㼔㼕㼞㼛 㼚㻩㻞㻠㻞 荒川 㻭㼞㼍㻌㼞㼕㼢㼑㼞 㼚㻩㻟㻥 多々良沼 㼀㼍㼠㼍㼞㼍㻌㻹㼍㼞㼟㼔 㼚㻩㻡㻟 㻡㻜㻑 67 86 355 30 7 4 18 10 1 43 χ 㻞㼠㼑㼟㼠 N・S 8 52 37 6 7 㻝㻜㻜㻑 6 153 27 42 4 黒筋模様 㻮㼘㼍㼏㼗㼚㼑㼎 丸斑模様 㻼㼑㼚㼚㼥㼒㼍㼏㼑 黄鼻模様 㼅㼑㼘㼘㼛㼑㼚㼑㼎 図 4.各調査地で記録されたコハクチョウの嘴模様各タイプの割合 Fig.4. Proportions of three pattern types of Bewick’s Swan bills in the study sites. 133 㻜㻑 㻡㻜㻑 㼍 㻿㼏㼛㼠㼠㻌㻝㻥㻤㻝 㼚㻩㻝㻝㻝 㻴㼥㼛㼗㼛㻌㻒㻌㼀㼛㼥㼍㼚㼛㼓㼍㼠㼍 㻝㻜㻜㻑 10 38 62 χ 㻞㼠㼑㼟㼠 㻖㻖 本調査 㼀㼔㼕㼟㻌㼃㼛㼞㼗 㼚㻩㻡㻜㻤 㼎 河邊 1999 㻷㼍㼣㼍㼎㼑㻌㻝㻥㻥㻥 㼚㻩㻠㻠 86 67 355 6 10 28 χ 㻞㼠㼑㼟㼠 N・S 本調査 㼀㼔㼕㼟㻌㼃㼛㼞㼗 㼚㻩㻣㻝 18 43 10 黒筋模様 㻮㼘㼍㼏㼗㼚㼑㼎 丸斑模様 㻼㼑㼚㼚㼥㼒㼍㼏㼑 黄鼻模様 㼅㼑㼘㼘㼛㼑㼚㼑㼎 図 5. 越後平野 (a) 及び本埜地区 (b) における本調査と過去の調査の比較 Fig.5. Comparisons between the results of this and previous studies in the Echigo Plain (a) and at Motono area (b). 較すると(図 4a),有意差が認められた(χ 2= 17.06,df = 2,P < 0.001) .Scott(1981)では, かったのかもしれない. Scott(1981)で,やはり黒筋模様が多いと 30% 以上の出現率であった黒筋模様が,本調査 された,宮城県仙北平野の伊豆沼や,西日本な においては 20% に満たず,黄鼻模様は 70% 近 どにおける現状の把握が必要と考える.更に, い出現率となった. 国内に渡来越冬するコハクチョウ個体群に関し 続いて,河邊(1999)による千葉県での調 ては,嘴模様の頻度観察を通じて,個体群動態 査と,本調査で得られた同じ調査地での各タイ をモニタリングするとともに,標識個体などか プの割合を比較すると(図 4b) ,有意差は認め らその頻度が変化する詳しいメカニズムを明ら られなかった(χ =0.12,df =2,P =0.94) . かにする必要があるだろう. 2 本調査により,越後平野においては,少なく とも 1980 年当時と 2010 年では,黒筋模様の 本稿作成にあたり有益な助言をいただいた 2 名の 占める割合が減少し,黄鼻模様の占める割合が 匿名査読者,および Strix 編集担当に厚く御礼申し 増加したものと考えられた.越後平野一帯で越 上げる. 冬するコハクチョウの個体群の遺伝的な構造 に,何らかの変化があったのかもしれない.長 野県諏訪湖で,嘴模様から本種の個体識別を行 った林(1982)は,本調査のようなタイプ分 けをしていないが,示された図から判断すると, 黒筋模様が 7 羽で,5 羽の黄鼻模様より多いこ とがわかる.1980 年当時は,日本国内の広い 範囲で,現在よりも黒筋模様の占める割合が高 引用文献 Albertsen, J. O. & Kanazawa Y. 2002. Numbers and Ecology of Swans Wintering in Japan. Waterbirds25 ( Special Publication1 ): 74–85 Bateson, P. P. G. 1977. Testing an observer's ability to identify individual animals. Anim. Behav. 25: 247–248.
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