住宅侵入盗発生傾向と被害宅未施錠傾向に関する研究 - 都市計画

平成 25 年度 社会工学類 都市計画主専攻
卒業研究最終発表
2014 年 1 月 28 日
住宅侵入盗発生傾向と被害宅未施錠傾向に関する研究―茨城県下の市街地を対象として―
社会工学類都市計画主専攻 4 年 200811375 都市防災研究室 土方孝将
指導教員 糸井川栄一
1.研究背景
茨城県下での住宅侵入盗発生率は,全国でも高い傾向に
あり(表 1),さらに平成 21 年から 24 年に発生した住宅侵
入盗の中で,51%が被害当時未施錠(以下「被害宅未施錠」)
であったという(図 1).また,茨城県警によると,平成 25
年 5 月末の県民世論調査において県民の犯罪不安は 74.5%
と非常に高い.犯罪不安が高いにもかかわらず被害宅未施
錠の事案が多数発生していることがいえる.
表1:全国都道府県住宅侵入盗発生率ワースト順位 1)
ワースト
H21
H22
H23
H24
1位
群馬県
愛知県
茨城県
愛知県
2位
茨城県
茨城県
愛知県
茨城県
3位
福岡県
千葉県
岐阜県
千葉県
その他
錠こじ開け 2.3%
7.5%
未施錠口
ガラス破り
侵入方法
51%
39.2%
図 1.平成 21 年から平成 24 年までの
茨城県下住宅侵入盗犯侵入方法の割合 2)
警察庁によると,
平成 24 年の被害宅未施錠率はおよそ 45%
であり,当該箇所が侵入手口として最も多くなっている 3).
経験的に危険と考えられる未施錠であったために被害に
遭ってしてしまった可能性のある事案が多数存在し,住宅
侵入盗被害を抑制させるためには,まず被害宅未施錠率を
減少させる必要がある.
2.既往研究調査
都市と犯罪に関する既往調査・研究の中で,「住宅侵入
盗」と「地域特性」との関係を対象としているものは徐ら
4)
,樋野ら 5),岩倉 6) がある.東京都区部を主に対象とし,
防犯環境設計(CPTED)理論,SaferPlaces 等をもとに地域
の地理的・社会的空間構成指標を作成し分析している.島
田ら 7)は千葉県市川市を対象とし地域住民へのアンケート
等をもとに,地域コミュニティ内の姿を抽出し集合的効力
感をもとに分析している.住宅侵入盗と地域特性との関係
を定量的に明らかにしている.
しかし,多くの既往研究で地域間比較を課題としている
ものが少なくないが,これらの研究は大都市を対象として
おり,中小都市での研究も必要であると考えられる.また,
施錠をはじめとした具体的な防犯対策との関係を明らか
にしておらず,住宅侵入盗に効果のある防犯対策を示す必
要があると考えられる.
「住宅侵入盗」と「施錠」との関係を対象としているも
のには清永ら 8),9)は元犯罪者への調査をもとに,犯罪者が
狙いやすい住宅を明らかにしており,犯罪者が犯行に及ぶ
住宅を決定するまでのプロセスを明らかにしている.これ
らによると,一部を除き住宅侵入盗犯は何度も周辺を下見
し,最終的に犯行に及ぶ.その中で最も犯行に入りやすい
のは「未施錠」であるといい,未施錠とわかった場合には
即実行に及ぶケースが少なくないという.高田ら 10)は,侵
入手口の割合を調査,今後の防犯対策への提言を主として
研究を行っている.
これらの研究は,未施錠の特性について定量的に示した
ものではなく,実際にどの程度危険なのか明らかにされて
はいない.さらに高田らの研究に関して,当時手口として
最も多かったのはガラス破りであり,現在の状況とは異な
るため,現状に即した分析,提言を行う必要がある.
3.研究目的・仮説
3-1.問題意識
多くの研究は社会・経済的規模が非常に大きい都市を対
象としており,これらの研究において地域間での比較を課
題としてあげているものも少なくないが,中小都市での研
究がなされていないのが現状である.また,施錠していれ
ば被害に遭わなかった可能性のある事案が多く存在する
にもかかわらず,未施錠など具体的な防犯対策と住宅侵入
盗発生傾向の関係について明らかにされていない.
3-2.研究目的
茨城県下の住宅侵入盗発生率が高いことから,茨城県下
を対象とし,より実態に即した,また既往研究とは異なっ
た地域特性や市街化特性を持つと考えられることから,他
の多くの中小都市においても対応できる研究を行うこと
を目的とする.また,未施錠被害宅の減少により住宅侵入
盗被害の減少につながると考えられることから,被害宅未
施錠の傾向を明らかにすることで,今後の住宅侵入盗被害
抑制のための対策の一助となることを目的とする.
3-3.研究仮説
住宅侵入盗に対する問題意識および研究目的から,本研
究 3 つの仮説をたてる.
1. 既往研究とは異なった住宅侵入盗発生傾向が
みられる.
2. 対象市を複数選定することで,同じ茨城県下でも
対象市間の要因に異なった傾向がみられる.
3. 未施錠被害宅の傾向には居住者の属性がみられる.
4.研究の流れ
本研究は,ヒアリング調査を通して茨城県下の住宅侵入
盗発生の現状を把握し,ArcGIS を用いて住宅侵入盗発生率
及び被害宅未施錠率の空間分布を把握する.その後,地理
的・社会的地域特性指標を防犯環境設計理論に基づいて選
定し,被害宅未施錠の傾向,住宅侵入盗の発生傾向を定量
的に示し,住宅侵入盗被害抑制への提言へとつなげる.(図
2)
5.ヒアリング調査
茨城県下の現状を理解するために,茨城県警へのヒアリ
ング調査を行った(表 2).県警として,住宅侵入盗を意識
しており,常磐線・常磐道に沿って発生している傾向があ
るように感じている.また,施錠に関しても問題意識を持
っており,積極的な呼びかけを行っているにもかかわらず,
被害が多いとのことであった.
宅侵入盗発生率の推移が似ており,同様の推移ながらも,
県平均に対して高いもしくは低い状態であることがわか
った.隣接市間の発生傾向には特徴があると推測できる.
背景・目的
ヒアリング調査
対象地の選定
データの入手
住宅侵入盗発生傾向の空間分布を把握
図 3.住宅侵入盗発生率推移
指標選定
被害宅未施錠傾向の分析
住宅侵入盗発生傾向の分析
7.住宅侵入盗発生率の空間分布
7-1.住宅侵入盗データの入手
本研究では,茨城県警のご協力のもと,以下表 4 のデー
タを入手した.このデータを用いて本研究の分析を行う.
表 4.住宅侵入盗発生認知データ概要
住宅侵入盗被害抑制への提言
図 2.研究フロー
表 2.茨城県警ヒアリング調査結果 11)
ヒアリング概要
日時
場所
対象者
設問
回答
設問
回答
平成 25 年 6 月 20 日(木) 10:00~11:45
茨城県警察本部
茨城県警察本部生安全部生活安全総務課
飯野様 松田様 柴田様
ヒアリング結果
現在,茨城県内の犯罪発生傾向に関して,他の都道府
県と比較して特徴はなにか.
自動車盗と空き巣が非常に多い.空き巣は感覚として,
常磐道・常磐線沿線に沿って発生しているように感じ
る.
県民に対し,防犯対策として特に呼びかけを行ってい
ることはなにか.
家の施錠,防犯カメラの設置を呼びかけている.家の施
錠は費用がかからないにもかかわらず,被害に遭った
家が未施錠の状態だった事件が多い状況にある.
対象地
対象罪種
対象期間
データ範囲
データ数
(認知件数)
データ内容
水戸市・土浦市・ひたちなか市・
つくば市・日立市
住宅侵入窃盗
平成 19 年から平成 24 年まで 6 年間
各市 町丁目・大字 772 件(6 年間累計時
水戸市 171 件,土浦市 138 件,ひたちなか市 80
件,つくば市 190 件,日立市 193 件)
6076 件(水戸市:2134 件,土浦市:1084 件,ひた
ちなか市 684 件,つくば市 1071 件,日立市 1103
件)
住宅侵入盗認知件数データ,当時施錠の有無
7-2.分析の定義
住宅侵入盗に限らず,犯罪と人口(世帯)との相関が高
いため,認知件数ではなく犯罪率を用いる.住宅侵入盗認
知件数を世帯数で除し,住宅侵入盗発生率とする.
さらに,住宅侵入盗被害宅のうち被害当時未施錠であっ
た被害宅率を,被害宅未施錠率とし,被害当時未施錠件数
を住宅侵入盗認知件数で除したものと定義する.
7-3.住宅侵入盗発生分布の把握
本レジュメではつくば市における空間分布を示す.
6.対象罪種・対象地の選定
6-1.対象罪種
研究対象罪種は住宅対象侵入窃盗を対象とする.
6-2.対象地選定
対象地選定は,平成 24 年住宅侵入盗発生件数,発生率を
もとに,茨城県警へのヒアリング調査および既往研究を考
慮した上で,以下を考慮し決定した.
① 常磐道・常磐線沿線であるか
② 分析に妥当なサンプル数(住宅侵入盗認知件数)が
あるか(100 件を基準とした)
③ 茨城県住宅侵入盗発生率の平均と対象市間の関係
②から発生件数の最も多く県平均に比べ発生率の高い水
戸市,発生率の低いつくば市を選定.水戸市と同様に県央
に位置し,発生率県平均以下であるひたちなか市,つくば
市と同様に県南に位置し発生率県平均以上の土浦市を選
定した.また,県北に位置し,発生率の推移が県平均と同
様の傾向をみせる日立市を選定した.図 3 は選定した 5 市
における住宅侵入盗発生率の推移である.隣接関係での住
図 4.住宅侵入盗発生件数分布
図 5.住宅侵入盗発生率分布
現在茨城県警では市町村犯罪マップを公開している.し
かしこれは「認知件数」の分布を示しており,住宅侵入盗
発生率ではない.図 4 は市町村犯罪マップの仕様をもとに
作成したものである.図 5 は 6 年間累計の住宅侵入盗発生
率の空間分布である.図 4,図 5 からわかるように,認知
件数の空間分布と住宅侵入盗発生率つまり被害確率の空
間分布に大きな違いがみられる.ゆえに,住宅侵入盗被害
リスク認知に対するミスリーディングが起こりかねない
と考えられる.
図 6 は被害宅未施錠率の分布である.
図 5 と比較すると,
住宅侵入盗発生傾向と被
害宅未施錠傾向には空間的に
異なる傾向が見られることが
わかった.住宅侵入盗発生率
は市西部または常磐道沿いに
高い傾向がみられ,被害宅未
施錠率は市北部および南部の
中心市街地から大きく離れた
地域に高い傾向がみられる.
国道沿いにも高い傾向が見ら
れ,中心市街地でない既成市
街地に高い傾向がみられる.
図 6.被害宅未施錠率発生分布
表 5 地域特性指標
地域特性指標
地区への流入
地区内での行動
住宅への接近
最寄り駅からの距
離,
最寄り駅の存在
IC までの距離
警察署・交番の存
在
世帯あたり人口
一人暮らし世帯割合
学校の存在
幹線道路までの距
離,
幹線道路の存在
警察署交番までの
距離
商業施設までの距
離,
商業施設の存在
公園の存在,公園
数,公園面積
男性人口割合,
世帯あたり男性割合
農林業関係世帯
8.分析
8-1.分析の流れ
図 7 に分析の流れを示す.本研究ではまず住宅侵入盗の
発生プロセスを仮定する.仮定したプロセスにもとづいて
本研究における視点を構築し,防犯環境設計理論を用いて
地域特性指標を選定する.選定した地域特性指標をもとに,
住宅侵入盗発生率および被害宅未施錠率との重回帰分析
によって,住宅侵入盗発生傾向および被害宅未施錠傾向を
分析する.
住宅侵入盗発生プロセスの仮定
世帯密度
低層住宅割合
通勤・通学時徒歩
移動割合
持ち家世帯割合
1ha あたり道路結
節点数
居住期間 5 年未満割
合
戸建割合
・住宅侵入盗発生傾向モデル
= (
Y 住宅侵入盗発生件数,
・・・
)
世帯数,
各説明変数,
各説明変数の係数,
定数
地区への流入
地区内での行動
住宅への接近
地域特性指標の選定
住宅侵入盗の発生
住宅侵入盗発生率および被害宅未施錠率と
地域特性との重回帰分析
図 7.分析フロー
8-2.住宅侵入盗発生プロセスの仮定
本研究では,既往研究をもとに次のプロセスを仮定する.
住宅侵入盗犯はまず地区への侵入を行う.その後地区内に
おいて対象とする住宅を選定し,実行に及ぶ.そこで,
「地
区への流入」
,
「地区内での行動」,
「住宅への接近」の 3 つ
のプロセスを仮定する.
8-3.防犯環境設計理論
防犯まちづくりにおける理論として基本指針として用
いられているのが防犯環境設計理論である.防犯環境設計
理論には 4 つの原則があり,①接近の制御,②被害対象の
強化,③監視性の確保,④領域性の強化である.「地区へ
の流入」は接近の制御,「地区内での行動」は監視性の確
保,「住宅への接近」は領域性の強化がこれにあたる.被
害対象の強化は住宅に対するは物理的な防犯対策にあた
ると考え,本研究における「未施錠」にあたる.
8-4.地域特性指標の選定
前節をもとに,表 5 の地域特性指標を選定した.
8-5.住宅侵入盗および被害宅未施錠発生モデルの導出
本研究では,住宅侵入盗発生モデルおよび被害宅未施錠
モデルを以下のように設定した.また,本研究では,モデ
ル精度を高めるために住宅侵入盗発生件数年間平均 1 件未
満を除外した.また重回帰分析の流れは図 7,8 の通り.
図 8.住宅侵入盗発生傾向モデル重回帰分析の流れ
・被害宅未施錠発生モデル
= (
被害宅未施錠件数,
各説明変数,
住民の居住空間
・・・
n n
)
住宅侵入盗発生件数,
各説明変数の係数,
定数
住民の属性
被害宅未施錠の発生
図 9.被害宅未施錠発生傾向モデル重回帰分析の流れ
8-2 で仮定した 3 つのプロセスと住宅侵入盗の発生要因
についてそれぞれ分析をしたのち,プロセスの順序でモデ
ルを作成する.被害宅未施錠の発生モデルにおいては,ど
のような住民に傾向が現れるかということを考え,図 9 の
ように決定した.
8-6.分析結果
本レジュメではつくば市における住宅侵入盗発生傾向
および被害宅未施錠発生傾向モデルを表 6,7 に示す.
公園の存在が発生リスクを下げる傾向にあるが,警察署
や交番の存在は発生リスクを下げるということはいえな
い傾向がわかった.つくば市には,東西南北に幹線道路が
通っており,自動車社会であることが強く考えられる.地
区内へ流入に影響のあった指標も,住宅への接近を通すこ
とによって有意でなくなるという結果になった.それ以上
に,低層住宅割合が強い影響を及ぼしていることがわかっ
た.駅周辺の住宅市街地は,中層以上の共同住宅が多いこ
とから,中心市街地でない既成市街地である地域というこ
とが傾向として見られる.中心市街地以上に,中心市街地
ではない既成市街地におけるパトロールや住民の活動が
抑止効果を生むのではないかと考えられる.また,公園の
存在がリスクを下げる傾向から,公園利用による地区内の
監視性向上という可能性も示唆される.ゆえに,公園利用
の促進により,監視性だけでなく地域住民の顔を知ること
や,地域住民間の交流によって,抑止効果が生まれるので
はないかと考えた.未施錠被害宅傾向についてもどうよう
に IC から遠く,一人暮らしが多い高齢者の傾向があり,
中心市街地で無い既成市街地の少子高齢化という現状を
考えるとそれらの傾向を推測できる.
【住宅侵入盗発生傾向モデル】
偏相関係数
4.685
標準化係数
有意確率
.003
.000
.331
.001
.001
-5.542
.607
-.304
.000
.005
6.300
.238
.005
.000
.293
.001
決定係数 R2=.796,調整済み R2=.774 サンプル数 50
【被害宅未施錠発生傾向モデル】
表 7 つくば市被害宅未施錠発生モデル
変数
(定数)
IC ま で の 距
離(m)
一人暮らし世
帯割合(%)
偏相関係数
-1.194
標準化係数
有意確率
.049
.000
.238
.002
.00
.006
.741
0
高齢者人口割
合(%)
.008
.313



10.今後の展望
表 6 つくば市住宅侵入盗発生モデル
変数
(定数)
警察署・交番
までの距離
(m)
公園数
公園の存在
警察署・交番
の存在
低層住宅率
(%)
市それぞれにおいても傾向に違いが見られるため,よ
り実態に即した対策が必要となる.
被害宅未施錠という施錠の問題に関して,一概に同じ
個人属性があるとは言えず,対象市によって異なる傾
向が見られた.重点的な施錠促進運動が必要である.
駅からの距離が遠い地域に発生リスクが高いことな
どから,中心市街地における発生リスクよりも,中心
市街地から少し離れた地域での発生リスクに目を向
ける必要があることがわかった.中心市街地だけでな
く,中心市街地から距離のある既成市街地へのパトロ
ール推進を行うべきである.
商業施設を本研究では大型小売店舗とし分析を行っ
た.大型小売店舗が出店する地域は,あまり建て詰ま
った地域でない可能性が高い.また,住宅開発などで
新規住民と既存住民が混在する地域という可能性も
ある.商業施設と地域住民が一体となった防犯対策の
促進が重要である.
.000
本研究の課題としては,6 年間を累計で分析したが時
系列での分析が必要である.また対象市における土地利
用,空間利用の変遷や,人口の推移,都市化の状況など
をより理解することで,より実態に即した提言ができる
と考えられる.また,今回のモデルでは特に土浦市,日
立市で当てはまりの良い結果が現れなかった.モデルを
侵入盗発生率にするなど,地域によって分析モデルを変
更し,判断することも必要であると考えた.
本研究では,施錠と住宅侵入盗という問題に対して,
未施錠被害リスクの推定をすることができなかった.被
害宅未施錠の傾向から施錠をすべき可能性のある住民の
属性は明らかになったが,これは未施錠被害リスクの基
礎的な研究である.今後,アンケート調査から平常時施
錠率を把握し,未施錠被害リスクを推計することが課題
となる.また日常的な防犯対策,防犯行動,犯罪に対す
るリスクの程度などを調査することで,リスク認知の属
性やリスク認知と犯罪発生,防犯対策などの防犯意識と
犯罪発生などを分析することでより犯罪の抑制へと繋げ
ていく.
参考文献・ご協力
1)
2)
決定係数 R2=.888,調整済み R2=.881 サンプル数 50
各市の状況をみると,5 市とひたちなか市,土浦では商
業施設の存在が地区への流入で採択され,日立市ではつく
ば市とは逆に警察署・交番までの距離は住宅侵入盗発生傾
向にマイナスの影響を示している.未施錠被害宅について,
一人暮らし世帯が採択されたのはつくば市のみである.5
市では農林業関係世帯数,土浦市では居住期間 5 年未満が
強い影響を及ぼすなど,各市それぞれにおいてモデルの傾
向が異なることがわかった.
3)
4)
5)
6)
7)
9.本研究のまとめと提言
本研究は,茨城県下の住宅侵入盗発生率が高いこと県下
の住宅侵入盗発生率抑制を達成するために CPTED 理論を
用いて,接近の制御,監視性の確保,域性の強化という観
点から住宅侵入盗発生率を,被害対象の強化という点から
被害宅未施錠率を分析し,どのような地域特性があるのか
を明らかにした.本研究の成果は以下の通り.

住宅侵入盗発生率が茨城県平均とさほど差がない地
域で分析したにもかかわらず,5 市の分析と各市にお
ける分析では結果が異なる傾向が見られた.また,5
8)
9)
10)
11)
SECOM:ニュース記事バックナンバー,2010-02-04 付,2011-02-23 付,
2012-02-22 付,2013-02-13 付より
茨城県警察本部 HP:安心安全なくらし>窃盗犯罪>侵入窃盗
http://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a01_safety/street/lock.html(最
終閲覧日 2013.11.14)
警察庁:平成 24 年の犯罪情勢,2013-06
徐鳳教・鈴木勉・樋野公宏:東京区部における主要な窃盗犯罪の地
理的分布とその環境的要因,地域安全学会論文集,19,79-82,2006-11,
地域安全学会
樋野公宏・小島隆矢:住宅侵入盗発生率と地域特性との関係 ―東京
都下 29 区市の町丁を対象に―,日本建築学会計画系論文集,616,
107-112,2007-06,日本建築学会
岩倉希:都市部の侵入窃盗犯罪の実態と発生要因 法政大学大学院
紀要,(64),23-30,2010-3-31,法政大学大学院
島田貴仁・雨宮護・岩倉希・高木大資:コミュニティ意識と犯罪被
害・犯罪不安との関連―パネルデータによる因果検討―,日本行動
計量学大会発表論文抄録集,38,160-161,2010-09-22,日本行動計
量学会
清永賢二・篠原惇理・吉田幾多郎:防犯点検 防犯の専門家と下泥棒
が指摘する侵入犯に狙われやすい場所,日経アーキテクチュア,
(764),74-81,2004-02-23,日経 BP 社
清永賢二・清永奈穂:犯罪者はどこに目をつけているか 3 刷,新
潮新書,2013-02-15,新潮社
高田寿・伊東享・藤田修士・川戸敏雄:防犯設備における錠前に関
するリスクの特定とマネジメント,日本建築学会四国支部研究報告
集,34,67-68,2010-04,日本建築学会
茨城県警察本部生活安全部生活安全総務課
飯野和広様 松田剛様 柴田壮平様