特別講演、シンポジウム、ワークショップ、ランチョンセミナー

特 別 講 演
SL
Interventional Bronchology for Emphysema and Air Leaks
Chief Medical Officer, Sheikh Khalifa Medical City, Abu"
Dhabi、
Vice"
Chairman of Pulmonary, Allergy and Critical Care Medicine, Cleveland Clinic, OH
Atul C. Mehta
特
別
講
This lecture will review the procedures in development for the treatment of emphysema and air leaks
of the lung, including my personal experience. Emphysema has heterogeneous and homogeneous varieties. The approaches to heterogeneous emphysema include bronchial blockers and valves. Bronchial
valve re-search is most extensive and three mechanisms of action have been shown : lung volume reduction, reduced dynamic hyperinflation, and ventilation!
perfusion shift to less diseased tissue. Lobar atelectasis as a result of bronchoscopic lung volume reduction is associated with pneumothorax. The approach
to homogeneous emphysema has been to reduce hyperinflation with airway bypass by creating stented
transbronchial pathways between cartilaginous airways and emphysematous parenchyma. Both bronchial valve and airway bypass clinical research has progressed from pilot studies to randomized trials.
Air leaks from lung parenchyma remain a clinical problem and devices that block airflow to lung tissue
should help. In contrast to previous bronchoscopic approaches, there are encouraging reports of treatment success with bronchial valves for air leaks.
35
演
シ ン ポ ジ ウ ム
S-1
気胸治療標準化の難しさ
日産厚生会玉川病院 気胸研究センター
○栗原 正利、片岡 季之、石川 亜紀
気胸の治療方針は依然として医師により様々な扱いをされているのが現状である。原因は治療後の follow
up が不十分で治療効果についてのデータがない。気腫性病変をどこまで治療するかの規定がない。発症年
齢が様々な疾患である。気胸は病名ではなく病態である。などがあげられる。
Guideline の代表として 1:Management of spontaneous pneumothorax(ACCP)2:Guidelines for the
management of spontaneous pneumothorax(BTS)3:自然気胸治療ガイドライン(当学会)がある。1
は Delphi 法により集団バイアスを出来る限りおさえ限られたエビデンスと専門家の意見と推論を集約さ
せる手法であるため合意形成のみが行われ専門性の低い回答者の影響を受けやすい。2 は初期治療に関す
る内容であり、専門医へ紹介するまでに行うべき診断と治療法について言及している。エビデンスよりも
実践に基づいている。手術に関する内容が乏しい。3 は具体的治療のガイドラインは示していない。診断や
治療手段の種類を示したのみである。いずれも気胸が明確なエビデンスに基づく内容で表現することが難
しく、統一見解を記載することに苦心している。
標準治療を確立するためには治療後 follow up の厳密化と各種治療法に対する正確なデータの蓄積が必要
である。そのためには再発気胸に対しては前医への通知と長期の追跡調査が重要である。また疾患別に確
立化を図ることが重要である。
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S-2
初期診療の標準化への課題―自験例とメタ解析による検討―
関西医科大学附属枚方病院 呼吸器外科
○金田浩由紀、笠原 憲子、齊藤 朋人、南 健一郎、齊藤 幸人
【目的】気胸治療の中で特に初期診療では,治療すべき病態とそれに応じた治療方法のコンセンサスが得ら
れていない.今回われわれは当院での初期診療ついて検討を行った.
【方法】
2007 年 1 月から 2008 年 12 月までに当院呼吸器外科で診療を行った気胸について,後向きに診療録
や画像からデータを収集し,解析を行った.
【結果】2 年間で診療を行った 133 例の内,当科が初期診療に関わったのは 117 例であった.この内,80
例が当科のみが初期診療を行い,25 例では他院から,11 例が当院救命センターから,1 例が当院呼吸器内
科からの紹介であった.経過観察 45 例,穿刺脱気 1 例,胸腔ドレナージ 71 例であった.それぞれの治療
方法のみでの成功(肺の拡張かつ気瘻の停止)率は,経過観察 77.8%,穿刺脱気 100%,胸腔ドレナージ
60.6% であった.
【考察】経過観察を行い軽快した症例が比較的多かった.検討は後ろ向きであるため治療方法間で患者背景
にバイアスが認められる.どの方法が優れているかの検討には,再発率の考慮も必要である.さらに初期
診療における穿刺脱気と胸腔ドレナージの役割の比較を文献によるメタ解析を合わせて考察する.
39
S-3
当院における自然気胸に対する治療方針の検討
東京都立府中病院 胸部外科1、東京女子医科大学 第一外科2
○宮野
裕1、小原 徹也1、吉川 拓磨2、神崎 正人2、大貫 恭正2
【目的】
自然気胸は年齢、受診経路、発症形態により、治療方針が様々であるのが現状と考えられる。今回、
当院における自然気胸に対する治療について検討した。
【方法】2006.1 月∼2008.12 月までに当院の ER、呼
吸器内科外来、胸部外科外来で気胸と診断された 420 例を対象とした。安静観察期間、ドレナージ期間、
入院期間、手術成績、再発の有無等を検討した。
【結論】自然気胸に対する保存的治療では、気漏の持続す
る高齢・肺気腫症例において速やかに胸腔造影を行い適宜癒着療法・手術療法を選択する。また一部細径
ドレーンの使用で入院期間の短縮や外来通院治療を行うことが可能であった。外科的治療では PGA シー
トや酸化セルロースなどの人工材料で被覆を行い再発予防を図っているが若年者症例の再発率が依然高く
今後の課題である。
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S-4
当院における原発性自然気胸手術例の検討―手術法の時代的変遷と壁
側胸膜切除術の意義―
聖マリアンナ医科大学 呼吸器外科1、湘南中央病院 外科2、川崎市立多摩病院 呼吸器外科3
○望月
篤1、長田 博昭2、中西
聡1、多賀谷理恵1、新明 卓夫1、安藤 幸二1、栗本 典昭1、
3
1
横手薫美夫 、中村 治彦
気胸治療の標準化に向けた議論に向け,当院における原発性自然気胸手術例を点検し,手術法の時代的変
遷,特に再発防止の観点から併施してきた壁側胸膜切除術の意義について検討した.対象は 1974 年 2 月か
ら 2009 年 6 月までに当院で手術療法を行った原発性自然気胸症例 731 例 866 側とした.
肺側処置に加え壁
側胸膜部分切除の併施を標準術式とするようになった 1978 年 12 月以降の 684 例の内,壁側胸膜部分切除
を併施したのは 598 例で,その手術時年齢は 11 歳から 80 歳(中央値 25.0 歳)であった.当科では原発性
自然気胸の手術適応として,同側または反対側の再発,膨張不全,気漏多量,血胸合併,両側同時気胸,
巨大肺嚢胞の共存とし,初回発症例でも患者の希望がある場合には手術の方針としている.又,将来生じ
るかもしれない他疾患に対する手術時の困難を危惧するよりも気胸再発防止を優先すべきとの考えから,
肺側処置に加え壁側胸膜部分切除の併施を標準術式としてきた.しかし,2003 年 4 月に DPC による包括的
診療報酬制度が導入され,胸膜切除の適応を再検討した結果,2006 年以降は術後再発例や肺気腫をベース
とする多発嚢胞例等,再発を繰り返す事が懸念される症例に対して施行する方針に転じた.1990 年に自験
例での術後再発率 0.8% を報告したが,胸膜切除併施例の減少
(2006 年 33%,2007 年 4.9%,2008 年 3.7%)
に伴う再発率の変化の有無について動向を注視している.
40
S-5
当院における原発性自然気胸の治療方針
岡山赤十字病院 呼吸器外科1、同 呼吸器内科2
○森山 重治1、奥谷 大介1、渡辺 洋一2、松尾 圭祐2、細川
忍2
当院における原発性自然気胸の初期治療と,現時点で妥当と思われる標準手術を提言する。当院では I 度気
胸に対しては自宅安静,II 度気胸で症状が軽度で入院を希望しない症例は穿刺脱気を行い外来で経過観察
としている。II・III 度気胸は入院の上持続脱気療法を行う。当科における手術症例の経験では,2005 年 12
月までの再発予防の処置を何も行わなかった 154 例(141 側)の再発率は 25 歳未満 28.2%,25 歳以上 2.8%
で,p<0.001 の有意差があり,25 歳未満の若年者は高危険群であった。また,初回手術症例 262 例で再発
防止処置を行わなかった 154 例と,staple line 周囲,S4a,S6a を電気メス焼灼した 75 例,超音波凝固した
33 例の術後再発率を比較したところ,それぞれ 11.8,13.3,9.1% で,統計学的有意差を認めず
(p=0.77)
,
焼灼だけでは再発防止効果はなかった。以上の結果を踏まえて,当科では現在標準手術として 3 ポート胸
腔鏡下に自動縫合器を用いてブラ切除した後, 25 歳以上は超音波凝固装置によりブラ好発部位を焼灼し,
25 歳未満に対しては,超音波凝固焼灼に加えて肺尖の staple line 周囲に PGA シートを貼付している。
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S-6
原発性自然気胸の保存的治療および胸腔鏡手術の治療成績
横浜労災病院 呼吸器外科1、同 呼吸器内科2
○前原 孝光1、安藤 耕平1、青山
徹1、五反田紘志2、赤川 玄樹2、石田 安代2、橋爪 敏彦2、
森川 哲行2
【目的】最近の原発性自然気胸に対する治療成績を検討した
【対象】2002 年から 2008 年までの原発性自然気胸 535 例が対象.初発気胸 361 例,再発気胸 174 例.初発
気胸は男性 308 例,女性 53 例.年齢は 12 歳∼81 歳【結果】初発気胸で,社会的適応により最初から手術
施行したのは 33 例.残りの 328 例に対しては虚脱度で保存的治療を先行.軽度虚脱は運動を禁じ,安静を
原則.中等度虚脱は携帯型ドレナージキット(Thoracic Vent:TV)を装着し,週 2 回の外来通院,高度虚
脱は入院にて持続吸引ドレナージとした.安静症例は 70 例で,5 例悪化,14 例再発(再発率 21.5%)
.TV
装着は 215 例.エアリーク持続し手術を施行は 72 例
(33.5%)
.一時軽快した症例のうち再発した症例は 36
例(再発率 25.2%)
.持続吸引ドレナージ症例は 43 例でリーク持続での手術は 17 例(39.5%)
,軽快退院し
た 26 例中の再発は 9 例(再発率 36%)であった.再発気胸 174 例のうち,胸腔鏡手術施行は 149 例で,25
例は本人希望で経過をみたがその後 12 例が再再発した(48%)
.初発及び再発気胸での胸腔鏡手術は 265
例で術後再発は 9 例(3.4%)
.
【結論】初発気胸はまず保存的治療施行し,再発時に胸腔鏡手術を施行する現在の方針は成績からみて妥当
と考える.
41
S-7
標準的気胸治療の確立に向けて―胸腔鏡の導入後の標準化―
福岡大学 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科
○濱武 大輔、今給黎尚幸、栁澤
純、大渕 俊朗、上野 孝男、白石 武史、岩﨑 昭憲
気胸は様々な病態が背景にあり年齢層も若年から高齢まで広い。ガイドラインがいくつか報告されている
が
(Thorax 2003,BMJ 2004,日内鏡外科 2008)
、治療法は手術や非手術療法まで苦慮することもある。最
近では胸腔鏡手術が主なアプローチ法であるが、再発率を下げる工夫が必要であることも報告されている。
今回、教室の 1000 例の手術例から患者背景に合わせた治療法を検討し報告を行う。
[対象]2001 年 4 月以
降の当科関連施設で手術が行われた 1021 例を対象とした。
[結果]胸腔鏡使用は 990 例(97.8%)で、胸腔
内癒着などの理由で 62 例は開胸へ移行。男女比は約 9:1、特発性気胸群 94%、続発性気胸群 6% の割合
で、続発性気胸群(平均 62 歳)は年齢が有意に高かった。再発(2 回以上)は 7.8% であった。再発率減少
に補強材を付加した場合は再発率減少に貢献した。開胸移行は癒着が主な因子であった。このような結果
から当施設では、初回 CT 撮影で明らかな bulla が確認できた場合は積極的手術を行う。若年女性には、よ
り美容的配慮から 5mm スコープ、鉗子を使用する。繰り返す症例には癒着療法を加えドレーン留置を数日
長くする。続発性気胸には被覆用補強材の付加を行う。
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S-8
単純ブラ切除術は原発性自然気胸の外科標準治療といえるか
国立病院機構埼玉病院 呼吸器外科
○中西 浩三
胸腔鏡下に単純ブラ切除が行われた原発性自然気胸症例の再発率を点発症率ではなく累積再発率として
我々の成績を評価すると 2 年 16%、5 年 30% の極めて高い再発率となっていることは既に本会で報告し
た。ブラ切除が破綻したブラからの空気漏れを止める最も確実な方法であることは間違いないが、気胸再
発予防という点から見る限り、単純なブラ切除の治療効果は従来言われているものよりかなり低いと言わ
ざるを得ない。我々は胸腔鏡下ブラ切除の再発原因の検討の中でブラ切除後もブラが新生するという新た
な知見を得たが、術後再発を術者の技術的問題に結論付けてきたわが国においてブラ切除の治療意義を考
える上で大きな転換点となったと考える。原発性自然気胸発生の母集団であるブラ罹患者においては青年
期以降のある一定期間はブラ発生の危険因子を抱えていてブラはその間、発生を続ける可能性があると考
えるのが自然であり、原発性自然気胸はいわば進行性のブラ発生疾患の一病態を見ているだけと捕らえる
べきものなのであろう。ブラ切除は一時的にその途上でブラ数の減少を図れるものの長期的には気胸再発
の予防効果に限界がある姑息的治療にすぎない。外科治療=単純ブラ切除=気胸根治と考えてきたわが国
の原発性自然気胸治療の考え方は大きく改められるべきであり少なくとも単純ブラ切除のみの術式は外科
標準治療とはなりがたいものと考える。
42
特-1
【特別発言】標準的気胸治療の確立に向けて―胸腔ドレナージに関する
提言―
結核予防会神奈川県支部・中央健康相談所
長谷川英之
胸腔ドレナージは、虚脱肺を再膨張させる初期治療の基本である。肺虚脱度が「軽度」では経過観察でよ
いが、低肺機能患者で呼吸困難があれば胸腔ドレナージが必要となる。
「中等度」
以上では原則胸腔ドレナー
ジの適応であるが、
「高度」では再膨張性肺水腫を発生する危険性があり慎重に行う必要がある。胸腔内に
挿入したチューブにどのような排気装置をつけて排気すべきかについては、本学会のガイドラインには記
載がない。虚脱肺の急速な再膨張はリークの誘発や肺水腫発生の危険性を高めるため、始めから吸引をか
けることは避けるべきである。虚脱肺をゆるやかに再膨張させるには、水封またはフラッターバルブで開
始し、数日間経過しても再膨張が得られない時に吸引を加える。また虚脱度が「高度」でも特に完全虚脱
(airless lung)
の場合、再膨張性肺水腫発生の危険性が高いので、このような症例では胸腔内の過陰圧を制
御する機能を持たせた「再膨張性肺水腫発生防止のための胸腔ドレナージ法」で、約 24 時間ドレナージを
した後、水封またはフラッターバルブに交換することを提言したい。
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W-1
当院で経験した Birt!
Hogg!
Dubé 症候群
聖路加国際病院 胸部外科1、同 放射線科2、同 皮膚科3、同 病理診断科4、
順天堂大学医学部 呼吸器内科5
○尾辻 瑞人1、大多和正樹1、負門 克典2、松迫 正樹2、齋田 幸久2、原田 晴美3、鈴木 髙祐4、
瀬山 邦明5
【はじめに】Birt"
Hogg"
Dub (以下、BHD)症候群は 1977 年に報告された常染色体優生遺伝の皮膚症候群
で、腎腫瘍および肺嚢胞!
自然気胸を高率に合併し、家族性気胸の原因疾患として重要である。責任遺伝子
は 2002 年に特定され、報告例が集積しつつある。
【対象及び方法】当院で気胸を契機に受診し、胸部 CT 所見を中心に BHD 症候群を疑った 6 例(31∼71
歳)
。6 例中に親子が 2 組含まれていた。胸部 CT 所見(CT で認識可能な肺嚢胞の数、形態、分布)
、皮膚
や腎の合併病変の有無について検討した。
【結果】6 例中、他地域出身のため追跡不可の 1 例を除き、5 例に再発気胸、家族発症例は 2 組あった。こ
の 5 例のうち 2 例は、遺伝子検査で BHD と診断された。一方 1 例は皮膚病変を認めたが、遺伝子変化は検
出できなかった。残りの 2 例は検査中である。
CT 所見:肺嚢胞をひとりあたり 25∼300 個弱あり、その形態は類円形、楕円形、分葉状があり、分葉状の
ものは大きな傾向があった。親子例では親の方が嚢胞の数・サイズともに増加傾向があった。気管分岐レ
ベルで分けた場合、上肺野!
下肺野=2!
5 となった。気管支・血管周囲のものは約 45% に認めた。皮膚病変
は 2 例にあり、腎病変は多発嚢胞と診断された 1 例のみであった。
【まとめ】2000 年以前の気胸歴を持った者に同症候群が含まれ、家族性!
再発性気胸患者の症例では本疾患
を鑑別診断として考慮する必要がある。
W-2
LAM および BHD の病態を考慮に入れた気胸に対する胸腔鏡手術
日産厚生会玉川病院 気胸研究センター
○栗原 正利、片岡 秀之、石川 亜紀
最近遺伝子解析の研究が進み LAM,BHD などの原因が明らかになってきた。
いずれも気胸を繰り返す疾患である。その病態を考慮に入れて気胸治療を行っている。
LAM は進行性のびまん性肺嚢胞を形成し、呼吸不全例に対しては肺移植の適応となる。通常は癒着療法が
行われているが、癒着療法は成績も悪く肺機能も低下させる。さらに癒着療法は肺移植に対して不利益な
病態となる。すなわちレシピエント肺の剥離時に大量出血を伴い長時間の手術となる。人工心肺時におけ
る抗凝固剤使用がさらに出血を悪化させる。LAM 患者 31 例に癒着をさせずに全胸膜を補強する胸腔鏡下
total pleural covering(TPC)術を行った。メッシュは癒着をせず臓側胸膜の肥厚作用がある再生酸化セル
ロースを用いた。2 例の再発を認めた。両側の TPC を行った 5 例では術後肺機能の低下はなかった。
一方 BHD はびまん性肺嚢胞を形成するが呼吸不全にいたることはない。ブラの分布は下葉、縦郭側領域に
多いのが特徴である。ブラの切除による胸腔鏡手術は肺機能を低下させるのみで根治的治療とはならず、
また全てのブラを切除することも不可能である。癒着療法は成績も悪く肺機能を低下させる。これに対し
て BHD 確診 22 例、BHD 疑診 10 例に下葉中心の胸膜カバーリング術(halfTPC)を行った。術後気胸再発
は 2 例であった。
TPC および halfTPC は LAM および BHD に有効な胸腔鏡手術と考えられる。
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W-3
新たな嚢胞性肺疾患の病因解明を目指して
順天堂大学医学部 呼吸器内科1、同 生体分子研究部門2、日産厚生会玉川病院 気胸センター3、
日本赤十字社医療センター 病理部4
○久能木真喜子1、瀬山 邦明1、吉川 美加2、小林 悦子1、飛野 和則1、栗原 正利3、熊坂 利夫4、
高橋 和久1
目的)臨床的・病理学的に診断未確定な多発性肺嚢胞疾患の特徴を明らかにする。
対象と方法)2005 年以降当科を受診もしくは当科に紹介された原因不明の多発性肺嚢胞をもつ患者 11 例
(男!
女 8!
3、50.5 歳±14.2SD)
を対象とし、臨床情報、CT 画像所見を比較検討する。BHD 遺伝子検査は全
例で異常を認めていない。肺病理検査施行例では明らかな基礎疾患は同定されていない。
結論)対象 11 例を CT 画像所見上、
(A)びまん性に辺縁平滑の嚢胞が多発して見られる LAM 様型、
(B)
辺縁不整な嚢胞を呈する BHD 様型、
(C)その他、の 3 種類に分類した。
(A)LAM 様型は 7 例(63.7%)
、
(B)BHD 様型は 1 例(9.1%)
、
(C)その他 3 例(27.3%)であった。さらに(A)LAM 様型の 7 例におい
て検討したところ、4 例(57.1%)に喫煙歴を認めた。気胸歴、気胸家族歴は全例に認めなかった。呼吸機
能検査が行われていた 4 例
(57.1%)
での FEV1.0、%FEV1.0、FEV1.0%、VC、%VC は正常範囲内であっ
た。皮膚腫瘍は 2 例にのみ認めた。腎腫瘍は認められず、4 例(57.1%)に癌(脳腫瘍、甲状腺癌、大腸癌、
肺癌)の既往を認めた。
結論)診断未確定であった多発性嚢胞性肺疾患を、画像的に非常に似た特徴をもつ 3 つの群に分類可能で
あった。臨床的な共通点も含め、この結果は非常に興味深いと考える。これらが原因不明の嚢胞性肺疾患
の病因解明への糸口となることが期待される。
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W-4
Birt!
Hogg!
Dub 症候群における嚢胞性変化と呼吸機能の検討
順天堂大学医学部 呼吸器内科1、大阪大学医学部 放射線医学統合講座2、
日産厚生会玉川病院 気胸センター3、京都大学医学部 呼吸器内科4
○飛野 和則1,2、瀬山 邦明1、栗原 正利3、平井 豊博4、久能木真喜子1、星加 義人1、高橋 和久1
【目的】Birt"
Hogg"
Dub (BHD)症候群は約 90% の症例で多発肺嚢胞を呈するが、肺嚢胞が呼吸機能に及
ぼす影響については未だ検討されていない。今回我々は BHD 症候群の肺嚢胞と呼吸機能検査値の関係に
ついて検討した。
【対象と方法】2002 年 1 月∼2009 年 5 月の間に当科を受診し、かつ呼吸機能検査を施行されていた BHD
症候群 24 例(45±12.5 歳,mean±SD)について、retrospective に呼吸機能検査値の特徴を検討した。ま
た、胸部 CT を撮影されていた 17 例について、コンピュータソフトを用いて肺野の低吸収領域の割合
(LAA%)を定量解析し、呼吸機能検査値との相関を検討した。
【結果】24 例の呼吸機能検査値は、概ね 正 常 範 囲 内 で あ っ た(%VC:88±11.6%,FEV1!
FVC:81±
7.4%,%RV!
TLC:109±13.1%,%DLco!
VA:78±12.9%)
。胸部 CT の定量解析を行った 17 例の LAA%
は 7.5±6.32%(range,0.7 to 21.2%)であり、LAA%と各呼吸機能検査値の間に有意な相関は認められな
かった。
【結語】
BHD 症候群では、肺嚢胞の多寡に関わらず呼吸機能はほぼ正常範囲であった。この特徴は他の嚢胞
性肺疾患との鑑別に有用であると考えられる。
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W-5
多数の気胸を認めたマルファン症候群の 1 家族
東京慈恵会医科大学 呼吸器外科
○鈴木 俊亮、秋葉 直志、丸島 秀樹、森川 利昭
家族内発生マルファン症候群合併気胸の報告は稀であり、文献学的考察を加えて報告する。症例は以前よ
りマルファン症候群と診断されていた 21 歳男性。主訴が胸痛の左自然気胸に対して、胸腔ドレーンで気漏
の改善が認められず、胸腔鏡下肺部分切除術を施行した。家族は、祖父、父、兄、弟の 4 人がマルファン
症候群に罹患しており、17 歳の弟は 1 年前に同様に胸痛を主訴にて当院受診し、胸腔ドレーンでの改善な
く、胸腔鏡下肺部分切除術を受けた。当院では術後経過良好なこの 2 例の気胸を経験したが、父、兄に関
しては、かつて繰り返す胸痛を自覚していたが放置していたという経過があり、気胸の既往の可能性が示
唆されていた。文献報告によると、マルファン症候群合併気胸の頻度としては 4∼11%、両側性・再発性の
頻度が高く、気胸の原因としては、タイプ I コラーゲンの減少・異常、特徴的体格による物理的応力、肺感
染の影響、遺伝子異常が示唆されている。近年の様々な報告では、家族性気胸、Birt!
Hogg!
Dube(BHD)
症候群に関しては、気胸と遺伝子との関連性が明らかになってきているが、本症例のようにマルファン症
候群の 1 家族内で複数の気胸が認められるのは稀であり、更なる研究が必要である。
W-6
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マルファン症候群に合併した気胸症例の検討
東京女子医科大学 第 1 外科1、同 第 2 病理2
○松本 卓子1、神崎 正人1、坂本
圭1、井坂 珠子1、清水 俊榮1、小山 邦広1、小田 秀明2、
大貫 恭正1
【背景】
マルファン症候群は先天性結合織疾患であり、近年第 15 染色体上に存在する FBN!
1 遺伝子異常に
起因することが明らかにされた。臨床的には約 4!
11% に自然気胸を合併するとされる。
【目的】自然気胸
発症マルファン症候群の臨床像についてまとめ、気胸切除標本の病理組織学的検討を行い、同症候群と自
然気胸発生との関連を検討する。
【対象】
1991 年 1 月から現在までに経験したマルファン症候群の自然気胸
手術症例 8 例(男 6、女 2)
。
【結果】手術時平均年齢 22.3 歳(14!
31 歳)
。気胸初回発症時平均年齢 19.3
歳 異時両側発症 4 例 気胸手術既往例は 4 例 胸郭変形に対する手術既往 2 例 心血管系手術既往 2 例
全例心血管系疾患を合併していた。病理所見としては 1)ブラ壁の硝子化、石灰化が認められる。2)ブラ
壁内あるいはブラに近接して比較的太い動脈が目立ち、この動脈に嚢胞性中膜変性が認められる。3)中皮
細胞やマクロファージの反応が強いことが共通して認められた。
【結語】マルファン症候群に合併する自然
気胸は特徴的な病理所見を有し、孤発の同症候群の発見にもつながり得る。病理所見から気胸を分類でき
る可能性が示唆された。
49
W-7
ドクターヘリ現場出動における外傷性気胸に対する胸腔ドレナージ実
施の有用性と問題点
和歌山県立医科大学附属病院 救命救急センター
○岩崎 安博、中
敏夫、篠崎 正博、平松真燈佳、川副
島
幸宏、上田健太郎
友、米満 尚史、篠崎 真紀、
和歌山県では 2003 年にドクターヘリが導入され、100km の広範囲で活動し、本年 3 月には総診療人数は
2060 名となった。ドクターヘリの最大の目的は現場に医師・看護師を投入し、早期に救命処置を開始する
ことにある。出動の内訳は外傷に対する現場(消防からの直接要請)出動(917 例)が最多で、そのうち外
傷性緊張性気胸、両側気胸等の重症気胸例は 28 例(CPAOA を除く)であった。24 例に対し胸腔ドレナー
ジを実施し 20 例を救命しえた。8 例の死亡例のうち緊張性気胸による死亡は 1 例のみであった。現場での
ドレナージ実施の適応は 1 緊張性気胸、2 低酸素状態を伴う気胸、
3 ショックをきたしうる大量血胸である。
また緊張性気胸でなくとも搬送時間や、航空搬送に伴う気圧変化による気胸の悪化を考慮し実施している。
気胸の診断は外傷初期診療ガイドライン(JATEC)にのっとりバイタルサインと理学的所見のみで行い、
処置実施に関してはオールインワンキット等の使用で手技の簡略化を心がけている。しかし処置の多くは
狭い救急車内で、不十分な物・人(看護師 1 名)等の悪条件下で実施せねばならず、清潔の確保や処置時
間の短縮等において若干の問題があり、今後更なる実施方法・手技の改善が必要である。
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W-8
当院における外傷性気胸を合併した鈍的胸部外傷患者に対する呼吸管
理法
神戸大学大学院医学研究科 災害救急医学分野
○中山 祐介、川嶋 隆久、石井
昇、大村 和也、加藤 隆之、藤田百合子、西村与志郞、
板垣 有亮、小野 大輔、渡辺友紀子、吉田
剛、高橋
晃、遠山 一成、中尾 博之
【目的】当院における外傷性気胸を合併した鈍的胸部外傷患者に対する呼吸管理法について報告する.
【方
法】過去 5 年間に加療した来院時心肺停止を除く胸部鈍的外傷患者 135 例のうち,外傷性気胸を合併した
54 例(男 44,女 10)を対象に,酸素投与単独(O)群,酸素投与+胸腔ドレナージ(OT)群,NPPV+胸
腔ドレナージ(NT)群,気管創管下人工呼吸管理+胸腔ドレナージ(TT)群に分類し,呼吸管理法につ
いて検討した.
【結果】O 群 5 例,OT 群 30 例,NT 群 6 例,TT 群 13 例で,49 例に胸腔ドレナージ術を
要した.O 群・OT 群は意識状態・呼吸状態ともに良好,NT 群は意識状態が良好で,多発肋骨骨折に対す
る内固定と喀痰排出可能な肺挫傷例の呼吸補助を目的とした.TT 群では意識障害や出血性ショック遷延
例が多かった.ISS は TT 群が O 群,OT 群に比べて有意に高かったが,他群間に差はなかった.NT 群か
ら TT 群への移行例,気胸の悪化例はなかった.O 群・OT 群・NT 群では全例が軽快退院したが,TT
群では 3 例(出血性ショック・脳死・多臓器不全各 1)が死亡した.
【結論】意識・全身状態が比較的安定
した気胸を合併した呼吸障害例に対し,胸腔ドレナージ下での NPPV 管理は有用となりうる.
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W-9
外傷性血胸の治療
東海大学医学部 専門診療学系救命救急医学1、同 外科学系呼吸器外科学2
○西海
昇1、大岩 加奈2、増田 良太2、岩﨑 正之2、猪口 貞樹1
【はじめに】鈍的胸部外傷に伴う血胸は、他臓器損傷と比較し迅速な病態診断と治療が求められる。
【対象】
1998 年から 2008 年までに、胸部 AIS4 と 5 の鈍的胸部外傷 1048 例を経験し、その中来院 24 時間に胸腔ド
レーンからの排液が 400ml 以上の血胸を呈した 116 例を対象に診断と治療法を検討した。
【結果】
外傷性血
胸は、気胸を伴う場合と伴わない場合の 2 つに分類できた。気胸を伴う場合(血気胸)で縦隔の健側偏位
を伴う場合は、深在性肺裂傷(肺破裂)と診断し、ユニベントによる受傷側気管支閉塞後、速やかな肺葉
切除を行った。気胸を伴わない血胸は、肺動静脈損傷(左房移行部損傷を含む)と胸壁損傷の二つであっ
た。肺動静脈損傷は、来院時より大量の血胸を呈し、迅速に開胸止血を行った。一方、胸壁損傷は、肋間
動静脈損傷と胸椎損傷に区分でき、壁側胸膜損傷が無ければ、胸膜外血腫を呈していた。胸腔ドレーンか
らの出血は少しずつ増加し、胸腔ドレーンの排液が持続する時は胸腔鏡下止血術や経皮的血管塞栓術
(TAE)を行った。
【結論】外傷性血胸は、病態診断に応じた治療を選択する。
W-10
当センターにおける外傷性血気胸症例の検討
大阪府三島救命救急センター
○柚木 知之、西本 昌義、加藤 雅也、橘高 弘忠、喜多村泰博、秋元
寛
【目的】胸部外傷における血気胸に対しては胸腔ドレナージが標準的な治療だが、閉塞性ショックや出血性
ショックを伴う場合は開胸術を含めた適切な処置を行わなければ致命的な状態となり得る。今回われわれ
は外傷性血気胸の自験例を分析し、retrospective に検討を行った。
【方法】
1998 年 1 月∼2007 年 12 月に当
センターに来院した外傷性血気胸症例 227 例(来院時心肺停止例は除く)を対象に、受傷機転、胸部にお
ける損傷臓器、 合併する他部位の外傷、 ISS
(Injury Severity Score)
、治療法、予後等について調査した。
【結果】平均年齢は 40.6±18.9 歳、166 例(73.1%)が男性であった。受傷機転は、交通外傷 136 例、墜落!
転落 53 例、刺創 21 例、その他 21 例であった。20 例(8.8%)が緊張性、6 例(2.6%)が開放性、34 例
(15.0%)が両側であった。ISS=26.4±12.4(9"
75)で、128 例(56.4%)が多発外傷であった。胸部臓器の
損傷は肺 116 例のほか、胸椎 16 例、胸部大動脈 7 例、心臓 6 例(うち心タンポナーデ 3 例)
、奇静脈 2 例
などであった(重複あり)
。血気胸に対する治療法は 176 例(77.5%)に胸腔ドレナージを行い、手術治療
は 36 例(15.9%)で、うち 4 例は救急外来で行った。内訳は開胸止血術 9 例、肺手術 15 例、大動脈手術 5
例、心臓手術 3 例、脊椎手術 3 例、その他 2 例であった(重複あり)
。また重度の肺挫傷により、人工肺に
よる呼吸補助(ECLA)を必要とした症例が 2 例あった。院内死亡は 33 例(14.5%)であった。今回はこ
れらの治療経験を踏まえたうえで、外傷性血気胸の治療について文献的考察を加えて報告する。
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W-11
胸部外傷における遅発性血胸と気道出血
東邦大学医療センター大森病院 呼吸器センター外科1、同 救命センター2、同 循環器センター外科3
○秦
美暢1、田巻 一義1,2、笹本 修一1、高橋 祥司1、佐藤 史朋1、後藤 英典1、寺本 慎男3、
益原 大志3、濱田
聡3、渡邊 善則3、吉原 克則2,3、高木 啓吾1
(目的)胸部外傷では稀に遅発性血胸や気道出血を伴い,重篤化することがあるので注意が必要である.今
回我々は,遅発性血胸と気道出血について検討した.
(対象)平成 16 年 10 月から平成 21 年 4 月までの CPA を除く鈍的胸部外傷 134 例.
(結果)外傷性血気胸は 45 例(34%)で遅発性血胸は 3 例(2%)
,肺挫傷は 84 例(63%)で処置を要する
気道出血は 3 例(2%)であった.遅発性血胸のうち 2 例は肋骨骨折片が下行大動脈に近接した CT 所見を
呈し,受傷後 2 日目と 4 日目に再出血した.1 例は下行大動脈壁損傷部を縫合閉鎖し,1 例はドレーンクラ
ンプと輸血で保存的に救命した.他の 1 例は退院後に自宅で転倒して再出血したものであり,保存的に加
療した.気道出血のうち 2 例が両側性であり 20∼30cmH2O の高 PEEP で救命した.他の 1 例は右上葉か
らの出血を EWS と高 PEEP で管理した。
(結語)遅発性血胸のうち大動脈損傷は救命困難であり,骨折片が大動脈に近接した CT 所見に対しては,
厳重経過観察あるいは骨折片の外科的除去や整復を検討する必要がある.気道出血に対しては片肺挿管や
ブロッカーで対応するが,両側出血等ではやむを得ず高 PEEP を選択することがあり,空気塞栓症に対す
る注意や IC が必要である.
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W-12
外傷性血気胸に見る研修医教育の現状
公立陶生病院 救急集中治療部
○武藤 義和、市原 利彦
(目的)外傷性血気胸は軽症から死に至るほどの重症例までその病態は多彩であり、一手の遅れが生死を分
ける事もあるため迅速な判断と治療が要求される。そのためにも JATEC にみるような対応や処置は須く
基本事項として身につけておくべきである。今回、2 次病院の研修医の立場からその経験と現状を報告した
い。
(対象)平成 16 年 4 月 1 日から平成 21 年 3 月 31 日までの 5 年間で当院で経験した救急外来における
外傷性の血気胸に対してその転機と傾向に関して調査をした。
(結果)期間中の症例 113 例(平均年齢 54
歳、ER 死亡 10 例)に対して研修医にはドレナージ経験はなかった。アンケートでは研修医はそのような
症例に触れる機会こそ少ないながらも経験の必要性があると感じ、意識の高さを再認識した。
(考察)当院
のような 2 次救急病院においても外傷性の血気胸は時を選ばずして搬送されうる。しかしまだまだ preventable death は多く、対応はいまだ充実しているとは言いがたい。(結語)研修医が第一線で対応に当た
るような地方の病院にこそ ER での緊急性を要求される外傷性気胸のような病態への対応教育は必要であ
り JATEC の意義、概念を早期に身につけることが望まれる。
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ラ ン チ ョ ン セ ミ ナ ー
LS-1
肺嚢胞について考える
埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器外科
金子
公一
本学会の大きなテーマである肺嚢胞は従来から多くの研究者によって分類が試みられているが、未だ明確
な分類は確立されていない。
肺嚢胞は所謂ブラ、ブレブと言われる気腫性肺嚢胞が代表的であるが、ブラとブレブの差異もさることな
がら、大畑の分類にあるように様々な形態がみられ、その成因も単一ではないことが推測される。先天的
な素因に後天的な要因が加わって形成されると考えることが一般的であるが、気胸の発症との関連も詳細
不明であり肺嚢胞の切除が気胸治療となるのかについても検討が必要である。また一側胸腔の 1!
3 以上を
しめる巨大肺嚢胞ではブラ、ブレブとは構造や進行形式が異なる場合が多く、肺気腫症や新生児期の肺嚢
胞との関連もふくめて疾患概念の整理が必要である。
一方、気管支原性嚢胞は肺・気管支の胎生期の発芽や分岐の異常により発生する先天性疾患と考えられて
いて縦隔や肺内に存在する機序は説明可能である。しかし肺分画症などの他の先天性疾患との差異につい
ては多くの意見があり、まとまってはいない。
そのほか寄生虫感染などに起因する肺嚢胞やリンパ脈管筋腫症(LAM)にみられる肺嚢胞や気胸の病態、
嚢胞形成性に発育する肺癌や血管肉腫肺転移のような薄壁空洞を形成する肺転移巣など、肺嚢胞の成因は
多種多様でまことに興味深いところである。
現在本学会の嚢胞分類委員会では肺嚢胞の分類が精力的に検討されており、2006 年の分類(案)が呈示さ
れている。臨床面から、病理組織学的検討から、成因から、など肺嚢胞は成因や病態において多様性に富
むものである。従来から様々な検討、議論がなされているが未だに確立された分類がないことからも困難
さが充分に伝わるが、多くの支持が得られる肺嚢胞分類が俟たれるところである。
LS-2
Treatment of Spontaneous Pneumothorax
Spiration
Steven C. Springmeyer
Draft Outline
1.Primary and secondary spontaneous pneumothorax : implications for management
2.Guidelines for pneumothorax
a.Why or when guidelines are needed
b.Approaches to guidelines
c.Limitations of guidelines
3.The U. S. guidelines for pneumothorax
a.Limitations and approach
b.Why are they followed, or not
c.Practice variations
4.Specific controversial topics
a.Large vs. small tubes
b.Aspiration of air
c.Pleurodesis
d.Thoracoscopy
e.Pleurectomy
5.Research needed and future approaches
ラ
ン
チ
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ミ
ナ
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There is not extensive clinical research to guide management decisions with spontaneous pneumothorax so there are many opinions and practice variation. To address this void, guidelines have been developed in several countries. This lecture will review guideline development, limitations, and how they are
used. Specific management areas that are controversial will be discussed including pneumothorax aspiration, small bore tube use, thoracoscopy, pleurodesis, pleurectomy, along with the management of prolonged and recurrent air leaks. The areas for future research and new approaches will be discussed.
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