国際経済の基礎 比較優位と生産可能性曲線 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年11月26日 1 比較優位の復習 何を輸入して何を輸出するかを説明 ある財の費用は他の財に比べてどのくらいか かるか → 相対費用 日本と中国における今川焼きと杏仁豆腐の 貿易 2 比較優位の復習/2 ある財が他国と比べ相対的な費用が低い場 合にその国はその財に比較優位があると言 います 日本は今川焼き,中国は杏仁豆腐のみを作 る→ 特化 半分ずつ作るよりも世界全体の生産増 3 比較優位をもう一度 テキスト(プリント) p.97 アメリカと日本 小麦とコンピュータのみを作っている アメリカ コンピュータ 100 小麦 5 日本 120 8 4 比較優位をもう一度/2 小麦もコンピュータもアメリカの方が安く生産 できます つまりアメリカは絶対優位にあります 効率的なコンピュータ産業を持っているアメリ カは日本からコンピュータを輸入しています. 一方,日本はアメリカから小麦を輸入してい る 5 比較優位をもう一度/3 この貿易を説明するのが比較優位です 日本の小麦の費用に対するコンピュータの 相対的な費用 =120/8=15 アメリカの小麦の費用に対するコンピュータ の相対的な費用 =100/5=20 6 比較優位をもう一度/4 日本での小麦1トン当たりの生産費と比較し た,コンピュータの1台当たりの相対的な生産 費は,アメリカでのコンピュータ1台当たりの 生産費よりも低くなっている. このとき日本はコンピュータの生産に比較優 位を持っていると言います. 7 生産可能性曲線 比較優位を説明するために生産可能性曲線 を説明しましょう テキスト p.62 企業,個人,社会は様々な制約に直面 生産可能曲線とは生産要素を効率的に使っ たときの生産物の組み合わせを図に表したも のです. 8 生産可能性曲線/2 9 生産可能性曲線/3 日本がすべての資源をお米に費やせば1500 万トンのお米 反対にすべての資源をクルマに費やせば 2000万台のクルマが生産できます そうした可能性の中で日本はお米を900万ト ン,自動車を1000万台生産しています 内側の点は非効率な生産です 10 生産可能性曲線/4 生産可能性曲線はどうやって作ることができ るのか,なぜ2財しか考えないのかの疑問が 浮かぶかもしれません. その作り方は経済学を深く学ぶと出て来る ここでは比較優位のアイディアを印象的に伝 えるために2財のような簡単化を行ったので す. 11 生産可能性曲線/5 ここでは比較優位のアイディアを印象的に伝 えるために2財のような簡単化を行ったので す. 現実は複雑ですが,それを簡単化して経済 のエッセンスだけを取り出したモデルを考え ています. 12 生産可能性曲線の特徴 生産可能性曲線にはいくつかの特徴がありま す. 1. 右下がりである 2. 外側に向かって凸である 1はトレードオフを表します 2は収益逓減を意味する 13 収益逓減 収益逓減は「ミクロ経済学の基礎」でやりま した. 収益逓減-ある投入物の量を一単位増加 させる結果として生産量は増加するが,そ の増加分は次第に小さくなっていくことを表 す. 14 収益逓減/2 つまりお米を生産するほど自動車の生産を 減らさなければなりません お米が増えれば増えるほど減らさなければ ならない自動車の台数は増えていきます 15 生産可能性曲線を用いた比較優 位の説明 テキストp.98 アメリカと中国が航空機と織物を生産してい るとします もちろん,中国は織物に比較優位を持ってい ます 二カ国の生産可能曲線を同じ図に描いてみ ましょう 16 比較優位の説明/2 17 比較優位の説明/3 まずE点から始めましょう 中国は航空機を100機減らすことにより織物 を1万着分増加させることができます それとは逆にアメリカが航空機を100機増産し た場合に減らさなければならない織物は1千 着分です 18 比較優位の説明/4 つまり,両国で航空機を減らすことなく 100-100=0 織物を9千着増加させることができました 9000=10000-1000 つまり両国の生産のトレードオフが異なる限 り中国が織物にアメリカが航空機に特化する とこによって得をすることが分かります 19 比較優位の説明/5 特化とはある国が特定の財に集中して生産 を行うことです. ここで難しい用語を導入しますが,生産可能 曲線のトレードオフを限界変形率といいます ここでは航空機と織物の限界代替率 (marginal rate of transformation)です 20 比較優位の説明/6 限界変形率(MRT)は航空機を1機増やすに はどれだけ織物を減らさなければならないこ とを示します 限界変形率は生産可能性曲線の傾きに等し いことが分かります 21 比較優位と特化 テキスト p.102 なぜ特化は生産性を向上させるのか 移動の時間の節約 同じ事を繰り返すことによる熟練 発明の基盤 分業 Division of labor 22 分業 習熟から発明へ 特化の限界 規格化された財 大量生産 繰り返しによる退屈 生産性の低下 23 何が比較優位を決めるのか 天然資源 取得した資源 優れた知識 特化 24
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