水系の2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(ABN) の分析法 長野県環境保全研究所 笹井春雄 渡辺哲子 薩摩林 光 土屋としみ 2006年9月 ABNの構造 CH3 H3C C CN CH3 N N C CN CH3 ABNの物性 物質 分子量 ABN 164.21 物質 ABN *) SRC 融点*) (℃) 101.5 水溶解度*) (mg/100mL) 35 PhysProp Database 沸点*) (℃) 融点以上分解 蒸気圧*) (mmHg) 0.0067(25℃) LogPow*) 1.1 用途 重合開始剤、発泡剤 ABNの調査目的(環境省エコ調査) 1)ABNはポリマー産業で重合開始剤とし て閉鎖系で多く使用されている。 2)PRTR法の第一種指定化学物質である が排出量が少なく、指定を検討する。 3)生態リスクの評価に必要(生態毒性が認 められ、生産量多い → 環境データない) ABNの注入口での分解 TMSM TMSM ABN ABN 注入口温度 150℃ TMSN:Tetramethylsuccinonitrile TMSM R-N=N-R → 2R・+N2 TMSM 注入口温度 240℃ 注入口温度とABNの分解 1.20 TMSN ABN 1.00 強度比 0.80 0.60 0.40 0.20 0.00 270 240 200 150 注入口温度(℃) 120 110 100 ABN:110℃に対する比 TMSN:240℃に対する比 ABNとTMSNのマススペクトル ABN TMSN 注意点 1.GC注入口 110℃ 2.GCカラム 恒温槽が100℃以下でABN が溶出するカラム(5%フェニルメ チルシリコン系) (WAX等ではGCカラム中で分解しブロードなピーク) 3.固相抽出後、脱水を充分にする GC/MS条件 カラム: DB-5MS 30mX0.32mmX0.25μm 温度 : 60℃(1分)-5℃/分-100(0分)-20℃/分 -280℃(5分) 注入口温度:110℃ キャリアー: He 35kPa m/Z: ABN 68(定量用)69,121(確認) 内標準 4-ニトロトルエン-d7 144 分析フロー 水質 水試料 300mL → 固 相 抽 出 → 脱 水 → PS-2 Air purge 45min. 溶 出 → Dryカートリッジ エタノール5mL 内標準添加 → GC/MS 4-ニトロトルエン-d7 検出下限等 検出下限と定量下限 水質(μg/L) 検出下限 定量下限 0.042 0.11 装置検出下限(IDL) IDL (μg/mL) 0.0032 濃縮率 300 試料濃縮換算値 (μg/L) 0.011 添加回収実験 試料 精製水 河川水 海 水 試料量(mL) 添加量(μg) 測定回数 回収率(%) C.V.(%) 300 0.1 7 100 2.7 300 0.1 7 99 3.3 300 0.1 3 96 4.2 検量線の一例 ABNの検量線 y = 0.5644x 2 R = 0.9993 1.2 面積比 0.9 0.6 0.3 0 0 0.5 1 濃度比 1.5 2 2.5 (ABN:0.01~1μg/mL,内標:0.5μg/mL) 標準物質のSIMクロマト ISIS ABN ABN ↑ 分析例(河川水) 河川水無添加 ↑ 河川水添加 ↑ 分析例 (海水) 海水無添加 ↑ 海水添加 ↑ 保存性 ABNの冷蔵庫中での保存性 0.1 濃度(μg/L) 0.08 0.06 0.04 0.02 0 0 10 20 30 40 50 60 経過日数(日) 河川水にABNを添加し(0.1μg/L)冷蔵庫中で保存 ま と め 水試料のABNの分析法を検討した。 (1)本法により水中にppbレベルで存在する ABNの分析が可能である。 (2)調査した河川水、海水からABNは検出さ れなかった。
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