IC/MS/MS法を用いた環境水及び 水道水中のハロゲン酸分析法と 過塩素酸の検出 2006年9月5日 水環境学会シンポジウム 国立保健医療科学院水道工学部 ○浅見真理、小坂浩司、 松岡雪子、鴨志田公洋 ■水道水の基準項目にハロゲン酸追加 • 臭素酸(BrO3-, 水道水の水質基準項目、H16~) • 塩素酸(ClO3-)、亜塩素酸(ClO2-)(管理目標設定項目、H16~) 塩素酸については、検出例が多いため、基準化の見込み • ハロ酢酸(MCAA,DCAA,TCAAが基準項目 その他は要検討項目、H16~) ■現在、無機イオンはイオンクロマトグラフ及びイオンクロマトグラ フ-ポストカラム法が公定法であるが、選択性、同定、操作の 簡便性に課題 ■ジクロロ酢酸等ハロ酢酸の公定法は、有害性の高いジアゾメタ ンを用いること、水質管理目標設定項目でもあるMTBEを用い ていること等から、(できるだけ9種全てについて)簡便で有害試 薬を用いない分析法の開発が求められている 水道水中のハロゲン化オキソ酸及びハロ酢酸の 一斉分析法の確立を目的に検討を行った 過塩素酸(ClO4-) ■過塩素酸はロケット燃料や爆薬、酸化剤由来の汚 染物質として知られ、近年、米国各地から検出され ている。米国の飲料水や地下水・土壌などに検出さ れ、全米科学アカデミーNASはその健康影響に関 する報告書を2005年1月に発表。 ■ヨウ素取り込み阻害作用が強いため、米国環境保 護庁は飲料水等価濃度として24.5 μg/Lを示してい る。(飲料水の寄与率を100%とした値。なお、最大 許容濃度は未設定。) ■米国EPAの測定法にIC/MS/MS法 ■IC条件 装置 ICS-2000 (Dionex製) AS50 (Dionex製) カラム IonPac AG20(φ2mm) + AS20(φ2mm) 溶離液 KOH 10 - 80mM (0 - 22minGradient) 溶離液流量 0.25mL/min カラム温度 35℃ サプレッサー ASRS ULTRAII(2mm) 電流 55mA 注入量 100μL ポストカラム 0.2mL/min注入( 90%アセトニトリル:10%水) ■MS/MS条件 装置 イオン化法 スキャンモード ABI 3200Q TRAP ESI (Negative mode) MRM 測定対象物質の分子量とQ1,Q3 溶出順 A nalyte 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 14 14 C lO 2 M CAA B rO 3 M BAA DCAA BCAA C lO 3 DBAA Br TC A A DCBAA DBCAA TB A A C lO 4 C lO 4 C lO 4 Mw Q1 67.5 67 M 51 94.5 93 M -H 35 127.9 129 M 113 138.9 139 M -H 81 129.0 127 M -H 83 173.4 173 M -H 129 83.5 83 M 67 217.8 217 M -H 173 79.9 79 M 79 163.5 161 M -H 117 207.9 161 M -C O O H 79 252.3 209 M -C O O H 81 296.7 251 M -C O O H 79 99.5 99 M 83 99.5 101 M 85 107.5 107 M 89 備考:C lは35.5 B rは79.9で計算した値 Q3 M -O Cl M -O Br M -C O O H M -C O O H M -O M -C O O H M M -C O O H Br Br Br M -O M -O M -O ハロ酢酸、ハロゲン化オキソ酸の マスクロマトグラム (1μg/l) 30000 ClO2 4000 TCAA DBCAA MCAA DCBAA BrO3 25000 TBAA MBAA 3000 DCAA BCAA 20000 DBAA 15000 強度 強度 ClO3 Br 2000 10000 1000 5000 0 0 6 7 8 9 保持時間(min) 10 11 11 12 13 14 保持時間(min) 15 16 塩素酸・臭素酸・亜塩素酸・臭化物イオンの検量線 2.5E+06 塩素酸 2.0E+06 エリア 1.5E+06 臭素酸 1.0E+06 亜塩素酸 5.0E+05 臭化物イオン 0.0E+00 0 2 4 6 濃度 (mg/L) 8 10 内部標準法による 過塩素酸のマスクロマトグラムと検量線 12 7.0E+04 107/89 (内部標準) 6.0E+04 強度 5.0E+04 4.0E+04 過塩素酸と内部標準とのエリア比 8.0E+04 10 8 6 4 2 0 3.0E+04 99/83 (定量用) 0 2 4 6 濃度 (mg/L) 2.0E+04 101/85 (確認用) 1.0E+04 0.0E+00 19 20 21 保持時間 (min) 22 8 10 IC/MS/MSと従来法の定量下限値 成分名 IC/MS/MS* IC/MS (Asami, 2002) GC/ECD, GC/MS MCAA DCAA < 0.1μg/l < 0.1μg/l 1.0μg/l 1.3μg/l 1.0~10μg/l 0.5~2.1μg/l TCAA MBAA < 0.3μg/l < 0.1μg/l 3.3μg/l 1.4μg/l 0.5~1.3μg/l 1.0~5.0μg/l DBAA TBAA BCAA 0.2-0.5μg/l < 0.2μg/l < 0.2μg/l 1.1μg/l 6.0μg/l 0.9μg/l 0.3~1.0μg/l 5.0~50μg/l 0.5~3.0μg/l DCBAA DBCAA < 0.1μg/l < 0.1μg/l 4.1μg/l 2.6μg/l 0.5~10μg/l 1.0~30μg./l *10σ/slope (σ:添加濃度における標準偏差, n=5) による IC/MS/MSとIC/MSの定量下限値 成分名 IC/MS IC/MS/MS* (Asami, 2002) ClO2 < 0.5μg/l 3.4μg/l ClO3 < 0.05μg/l 0.5μg/l ClO4 0.05μg/l** BrO3 < 0.05μg/l 0.7μg/l Br < 0.2μg/l 約20μg/l(IC) *10σ/slope (σ:添加濃度における標準偏差, n=5) による **ブランク制御を考慮 ハロゲン酸のマスクロマトグラム(1μg/l) 25000 20000 DBAA 強度 ClO2- 10000 5000 Br- DCAA MCAA 15000 ClO4- CBAA MBAA ClO3DCBAA DBCAA TCAA TBAA BrO3- 0 5 7 9 11 13 15 保持時間(min) 17 19 21 ハロゲン酸のマスクロマトグラム(1μg/l) 25000 20000 DBAA 強度 ClO2- 10000 ClO4- Br- DCAA MCAA 15000 5000 SO42- Cl- CBAA MBAA ClO3DCBAA DBCAA TCAA TBAA BrO3- 0 5 7 9 11 13 15 保持時間(min) 17 19 21 水道水中のハロ酢酸分析における回収率 カート ート リッ ッ ジなし カ リ ジなし カート ート リッ ッ ジあり カ リ ジあり 120 120 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 AA A A B TB A DB DB DC A A C CA A A A B BA T DC AA AA D A A C TC B A A B DB AA AA D A A C BC M A A C DC A A B BA M M CA A A A C A 0 M 回 回 収 収 率 率 % T *Dionex Onguard II Ba/Ag/Hカートリッジ 残留塩素消去剤・カートリッジと回収率 アスコルビン酸 アスコ ルビン酸 塩化アンモニウム+ 塩化アンモニウム+ カート リ ッ ジ* カ ートリ ッ ジ 120 100 80 60 60 40 20 AA BAA TTB A AAA BCC DD B A AAA C BB DC A AA TC AA BAA DB AA C AA BC A AAA DC BA AA M MM CC A AA 00 *Dionex Onguard II Ba/Ag/Hカートリッジ IC/MS/MS法によるハロゲン酸の測定 IC/MS/MS法は、ハロ酢酸類とハロゲン化オキ ソ酸の高感度、選択的分析に有効。 ハロ酢酸類に関しては、本法は作業性や安全性 に優れているが、共存物質によるイオン化阻害 等の影響を考慮し、残塩消去剤に塩化アンモニ ウム、Ba/Ag/Hカートリッジを用いる必要がある。 ハロゲン化オキソ酸には、IC/MS/MSは、感度、 選択性において極めて有効。ただし、ダイナミッ クレンジが狭いため、物質により希釈が必要。安 定同位体による定量が望ましい。 過塩素酸濃度の測定 全国12浄水場の原水・浄水中の過塩素 酸濃度を測定。 測定は内部標準法によって行い、定量 下限値は0.05 μg/Lとした。 水道原水・浄水における過塩素酸の検出 μg/l 20 原水 浄水 15 10 関西地方 その他 5 0 水 系 水 M 系 水 M 系 水 M 系 N* 水 系 M 水 系 O 水 系 水 P 系 水 P 系 Q 水 系 水 P 系 水 R 系 S 過 塩 素 酸 濃 度 関東地方 M水系 *:水系N 浄水は水系Mのものを混合 過塩素酸の検出 ■関東地方の浄水場の原水及び浄水か ら、それぞれ0.19~17及び0.16~18 μg/Lの過塩素酸を検出。 ■原水より浄水中の方が若干高い値を 示したが、概して原水と浄水中の過 塩素酸濃度は同等。 ■過塩素酸は水溶性で、水中では移動 性が高く、通常の浄水処理では除去 困難。 ま と め IC/MS/MS法は、ハロ酢酸類とハロゲン化オ キソ酸の高感度、選択的分析に有効。 ハロ酢酸類分析には前処理が必要。 ハロゲン化オキソ酸分析には、 IC/MS/MS 法が、感度、選択性において極めて有効。 関東地方の同一水系の浄水場の原水及び 浄水から、それぞれ最高17及び最高18 μg/Lの過塩素酸を検出。
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