マクロ経済学(Ⅰ) ゴ イツリョウ 担当: 呉 逸良 マクロ経済学Ⅰ 1 教科書等 吉川洋『マクロ経済学・現代経済学入門』第2版 岩波書店 2001 \2800+税 参考書: 中 谷 巌 『 入 門 マ ク ロ 経 済 学 』 第 4 版 日 本 評 論 社 2004 \3000+税 大竹文雄 『スタディガイド 入門マクロ経済学』第3版 日本評 論社 2004 \1900+税 伊藤元重 『マクロ経済学』第1版 日本評論社 2004年 ジョセフ・E. スティグリッツ 『スティグリッツ マクロ経済学』 東 洋経済新報社 N.グレゴリー マンキュー 『マンキュー マクロ経済学 入門篇 』 東洋経済新報社 マクロ経済学Ⅰ 2 講義範囲 教科書: 吉川洋『マクロ経済学・現代経済学入門』第2版 岩波書店 2001 \2800+税 第1章 国民所得統計 マクロ経済の鳥瞰図 第2章 GDPの決定 第3章 資産市場 第4章 IS/LMモデル マクロ経済学Ⅰ 3 1: 国民所得統計 マクロ経済鳥瞰図 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 諸外国の主要マクロ経済指標(2000年) 名目GDP(億米ドル) 1人当たり名目GDP(米ドル) 実質GDP成長率(%) 100,000 10 80,000 8 60,000 6 37,408 34,472 24,552 22,731 40,000 22,064 20,000 4 22,755 2 9,853 460 846 989 720 2,012 3,920 0 0 日 本 マクロ経済学Ⅰ ア メ リ カ イ ギ リ ス ド イ ツ フ ラ ン ス 韓 国 シ ン ガ ポ ー ル イ ン ド 中 国 フ ィ リ ピ ン イ ン ド ネ シ ア タ イ マ レ ー シ ア 4 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 日米経済のパフォーマンス比較 (1) 逆転した経済成長率 実質 GDP 成長率(暦年) % 9 アメリカ 日本 6 3.94 3.67 3 2.70 1.03 0 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 1989 1988 1987 1986 1985 1984 1983 1982 マクロ経済学Ⅰ 1981 1980 -3 5 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 日米経済のパフォーマンス比較 (2) バブルによって激変した株価 円 40000 日経平均225とNYダウンの推移 日経平均株価 ドル 12000 10000 30000 8000 20000 6000 4000 0 マクロ経済学Ⅰ NYダウン 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 10000 2000 0 6 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 日米経済のパフォーマンス比較 (3) 失業さえも「逆転」した? Growth rate of Real GDP % 14 12 実質経済成長率 10 9.3% 8 6 4 10.9% 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 バ ブ ル 崩 1.3% 壊 後 1964 第 第 二 一 い バ 次 次 ざ ブ 石 Year 石 な ル 油 油 ぎ Ratio of unemploye force (Both sexes) 経 シd in labourシ 景 済 ョ ョ 気 ッ ッ ク ク 1964 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1956 マクロ経済学Ⅰ 1962 岩 戸 景 気 % 完全失業率 1962 1956 -4 5.3% 1960 -2 神 武 景 気 1958 0 1958 1960 2 1978 (実質GDP成長率) Year 7 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 日米経済のパフォーマンス比較 (3) 失業さえも「逆転」した? 日本とアメリカの失業率の推移 % 10 アメリカ 8 6 4 日本 2 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 1978 1976 1974 マクロ経済学Ⅰ 1972 1970 0 8 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 日本のマクロ経済の動き(インフレーション) Growth rate of Real GDP % 14 12 実質経済成長率 10 9.3% 8 6 4 10.9% マクロ経済学Ⅰ 1990 1992 1994 1996 1998 2000 1992 1994 1996 1998 2000 1986 1986 1990 1984 1984 バ ブ ル 崩 1.3% 壊 後 1988 1982 1982 Year バ ブ ル 経 済 1988 1980 1980 1972 1972 1978 1970 1970 5.3% 1978 1968 1968 1976 1966 1966 1976 1964 1964 第 第 二 一 次 次 石 石 Year 油 油 GDP Deflators シ シ ョ ョ ッ ッ ク ク 1974 1962 1958 1956 GDPデフレーター 岩 戸 景 気 % 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 い ざ な ぎ 景 気 1962 1956 -4 1960 -2 神 武 景 気 1960 0 1958 2 1974 (実質GDP成長率) 9 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 日本のマクロ経済の動き(為替レートと国際収支) 円/ドル 350 円の対ドル相場の推移 1973年2月変動相場制 (フロート制)へ移行 300 1985年9月「プラザ合意」 先進5カ国(米国、イギリス、西ドイツ、 フランス、日本)は、協調して為替レート をドル安に進めることに合意しました。 250 1995 年 4 月 19 日 東京市場で円が史上最 高値79円75銭を記録した。 200 150 100 2005 2003 1999 2001 1997 1993 1995 1991 1987 1989 1985 1981 1983 1979 1977 マクロ経済学Ⅰ 1973 1975 50 10 世界や日本の経済はどう動いてきたのか 日本のマクロ経済の動き(為替レートと国際収支) 億円 200,000 日本の国際収支 貿易・サービス収支 経常収支 150,000 100,000 50,000 マクロ経済学Ⅰ 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 0 11 マクロ経済学とミクロ経済学 ミクロ経済学microeconomics: 経済を構成する主体である企業 や家計の行動と個々の市場の動きを詳細に分析し,価格メカニズ ムのもつ「効率性」や「最適性」の意味について研究する学問であ る。別言すると,もっぱら稀少な資源の「配分問題」を研究してき たのである。 マクロ経済学macroeconomics: 経済全体の行動に注目し,総 生産,失業,インフレーション,経済成長,貿易収支など,経済主 体の行動の結果をいくつかの代表的な変数に集計して,それら集 計的な経済変数,いわゆるマクロの変数の動き方を分析する。 ミクロ経済学とマクロ経済学 経済を分析する方法は違いが,分析対象は同じ,経済そのもの である。両者は密接な関係にある。近年「マクロ経済学のミクロ的 基礎づけ」に関する研究が重視されている。 マクロ経済学Ⅰ 12 マクロ経済学とミクロ経済学 マクロ経済の問題: 失業,インフレーション,経済成長,政府財政赤字,為替レート など,経済全体に関わる問題である。それらの問題は私たちの 生活に大きな影響を及ぼしている。 マクロ経済の研究領域: 経済を全体として順調に運営させる力がどのようなものである かを理解するためには,個々の産業に影響を及ぼしている個別 の要因を超えた要因を発見しなければならない。これはマクロ経 済学が対象とする領域である。 マクロ経済学の焦点: マクロ経済学では経済全体の産出水準,総雇用,物価全般の 安定など,経済全体に関わる問題の性質に焦点が当てられる。 マクロ経済学Ⅰ 13 マクロ経済学とミクロ経済学 マクロ経済理論: ミクロの経済主体の行動結果をいくつかの代表的な 変数に「集計」して,それらの変数を分析し,それらの変 数間の相互関係および決定要因を説明する。例えば, 雇用水準,産出水準やインフレ率,経済成長率などの 「集計」変数が何によって決定されるかを説明する。 マクロ経済政策と目的: 政策:雇用水準を高め,インフレーションを抑制し,経 済成長率を高めるためには政府が何ができるか。 目的:完全雇用,低いインフレーション,高い経済成 長を実現する。 マクロ経済学Ⅰ 14 マクロ経済学とミクロ経済学 マクロ経済モデル: 雇用水準,産出水準,総所得,インフレ率,利子率, 経済成長率,為替レートなどのマクロ経済の基本的な指 標を変数として,それらの変数間の相互依存関係を単純 化して描写する模型はマクロ経済モデルである。 実証分析の場合,それらのモデルは数学の式で表さ れ,現実的に観察された変数データを利用して,マクロ 経済理論を検証したり,現実経済の状態を確認したりす ることに利用される。また政府や中央銀行のマクロ政策 の運営や,マクロ経済の動向予測などにも利用される。 マクロ経済学Ⅰ 15 マクロ経済学とミクロ経済学 3つの「集計された市場」 マクロ経済学では,集計された変数あるいは指標で あるGDPや消費,金利や失業率などについて分析する ために,3つの「集計された市場」を想定している。 財市場 労働市場 資産市場 財やサービスな どの取引市場 労働サービスの 取引市場 貨幣や債券など金 貨幣市場 融資産の取引市場 証券市場 マクロ経済学Ⅰ 16 ストックとフロー フロー(flow) ある一定の期間に行われた経済活動の成果を示した指標である。 ストック(stock) 過去からのフローの蓄積をある一時点で測った指標である。 2つの時点間のフローの蓄積 =F-F'=S2-S1 フローの量 F 第2時点目のストックの量 S2 第1時点目のストックの量 S1 フローの量 F' マクロ経済学Ⅰ 17 ストックとフロー 経済全体を見るための基本的指標 GDP(国内総生産) 物価指数・物価上昇率 GDP成長率 消 費 民間設備投資 政府支出 輸 出 輸 入 貿易収支・経常収支 利子率(金利) マネーサプライ(通貨量) 為替レート 政府財政収支 マクロ経済学Ⅰ 経済の生産規模や所得規模を示す指標 物価の水準やその上昇率示す指標 経済の規模の拡大の程度を示す指標 家計による消費のための総支出額 企業部門による投資支出額 政府の支出規模(政府消費と公共投資を含まれる) 自国から海外への財の総輸出額 海外から自国への財の総輸入額 海外との財・サービスのやり取りの収支 金融資産の収益や貸し借りの金利を表す指標 金融市場の状況を示す重要な指標 自国通貨と外国通貨の交換比率 政府の収入と支出の関係を表す指標 18 ストックとフロー フロー(flow) ある一定の期間に行われた経済活動の成果を示した指標である。 ストック(stock) 過去からのフローの蓄積をある一時点で測った指標である。 フロー指標 マクロ経済学Ⅰ ストック指標 GDP 消費支出 マネーサプライ(貨幣供給量) 投資 政府債務額 政府支出,政府財政赤字 対外資産残高 経常収支 資本総量 資本収支 資産総額 総支出 19 ストックとフロー フロー(flow) ある一定の期間に行われた経済活動の成果を示した指標である。 ストック(stock) 過去からのフローの蓄積をある一時点で測った指標である。 マクロ経済の状態を完全に描写するには,ストックと フロー両面を記述する必要がある。「国民経済計算 (System of National Accounts,略SNA)」では,いわゆ る国民所得会計ないしGDP統計がフローを,国民貸借 対照表National balance sheetがストックを記述してい る。 マクロ経済学Ⅰ 20
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