農業部門の改革 世界の7%の耕地で、世界の22%の人口を養う(可耕地 面積は国土の10%) 改革開放以前 「食糧を要とする」 食糧生産 53年(1億6683万㌧)→77年(2億8273万㌧) (年平均増加率は1.9%) 人口 53年 5億8796万人→77年9億4974万人 一人当たり食糧生産高 66年 287kg/人 76年 297kg/人 毛沢東「消費する口は1つだが生産に携わる手は2つ」 (人口資本説)、 「新人口論」を提出した馬寅初を批判 請負制の導入 (建前として)土地は共同所有 人民公社が一括して管理→請負制の導入 労働力あるいは家族数に応じて農地を分割 政府への農業税(全国平均で正常生産量の 15.5%)と義務供出量を農地ごとに割り付け、 請け負わす 82年には人民公社の解体正式決定(第5期 全人代第5回会議) 請負期間 当初は2~3年(収奪農業に)→ 15年→30年に 買い上げ価格の引き上げ • 義務供出分については20%引き上げ • 超過分についてはさらに50%上乗せ (1.8倍に) 以前の価格20% 超過分 義務供出分 50% 買い上げ価格の引き上げ • 農産物買い上げ価格の引き上げ⇒豊作、 販売価格は小幅な上げ→財政赤字 84年から義務供出の廃止→契約買付 (契約以外は自由市場で販売) (食糧問題からの脱却) • 供給が増加し、自由市場での価格が 下がる→食糧生産が少なく(徘徊) 食糧価格上昇⇒食糧生産が増加 図1 中国の食糧生産、都市農村間格差および三農政策の推移 方 針 食糧等農産物の低価格買付、農村公共サービスへの財政投入の抑制、農民の都市移動への制限 = 農業搾取・農村軽視・農民差別 <農業不安・農村荒廃・農民貧困 = 三農問題> 政 策 人民公社体制から 家族営農体制へ移 行、市場復活など 5.5 郷鎮企業の成長促進、統分結合 の二重経営体制構築、食糧等農 産物流通・価格の自由化など 華国鋒→胡躍邦・趙紫陽・李鵬 「以工促農、以城帯郷」 「多与、少取、放活」 地域間人口移動の規制緩和、郷鎮 企業の民営化・私有化、農業の構造 調整、農業税・諸費制度の改革など 新農村建設、現代農業発 展、都市農村の一体化、農 民の権利保障(中央1号文件) 江沢民・李鵬政権→江沢民・朱镕基政権 胡錦濤・温家宝政権 5.05 4.5 5.29 5.0 4.0 食糧生産量 (億トン、左目盛) 4.46 4.5 3.5 4.31 4.07 3.32 3.23 4.0 3.0 都市民の相対所得 (農民=1、右目盛) 2.86 3.5 2.5 2.47 3.0 結 果 農業増産、農民増 収、農村繁栄。農 業改革は成功 2.12 農業徘徊 2.20 分税制、「三提五統」で農民負担増 豊作だが価格の下落で 農業収入減→生産縮 減。三農問題の深刻化 農業税廃止、義務教育の 無償化、農家への直接支 払(補助金)、新型合作医 療・社会保障で増産増収 2.5 2.0 1.5 1980 1985 1990 出所)『中国統計年鑑』等より筆者作成。 1995 2000 2005 2010 三農政策の移り変わり 農業、農村、農民 改革開放前 農業から工業への資本移転の制度化、土地の 資源制約、働くインセンティブの欠如 →農業の停滞、農村の疲弊、農民の貧困化 改革開放後 農家自身の判断で農業経営 郷鎮企業 労働移動 農業増産、農村繁栄、農家増収 85年以降 戸別経営と市場化の矛盾 (82~86年 1号文件農業、農村問題、 その後17年間扱われず、政府の失策) 胡錦濤・温家宝政権後 「工業をもって農業を促進し、都市をもって農村 を牽引する」 「大いに与え、少なめにとり、規制を緩和せよ」 農業税の廃止、農村義務教育の無償化、新型農村合作医療制 度・低所得者生活保障制度・新型農村社会養老保険制度・ 食糧農家への直接支払い制度の導入・普及、道路・文化施 設等への財投拡大 国民経済における三農の位置づけ 計画経済期 進んだ工業と遅れた都市化 改革開放期 78年→13年 第一次産業のGDPおよび就業者割合 28.2%→10.0%、70.5%→31.4% 総人口に占める農村人口(13年) 82.1→46.3%、 農業戸籍人口(08年) 84.2→67.4% 農業と農村の役割 ①農産物の供給、投資拡大の原資の調達 ②90年代前半まで農産物貿易は黒字 ③農村からの安価な労働力の供給 ④工業製品の消費市場 ⑤農村から都市への資金移動 食糧の増産・工業製品の市場 82~08年生産者価格年平均6.2%の伸び (96年以降10年間は上がらず) 78~13年総人口41.4%増、食糧生産97.5%増 (85~13年人口28.6%増、食糧生産58.8%増) 消費財の普及 生産財の普及は遅れていたが、僅かづつだが 普及に転じる 2 経済成長の礎石としての農業と農村 (2)賃金財である食糧の増産 (万トン) 図2 主要農産物生産量の推移 21000 コメ 18000 トウモロコシ 15000 サトウキビ 12000 小麦 9000 6000 3000 油糧 大豆 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 0 出所:中国統計年鑑より作成。 綿花 食糧~8年連続5億㌧超 2014年は6億710万㌧ 図3a 伝統的耐久消費財の普及率(100世帯当たり) (%) 200 160 腕時計 153 自転車 137 120 置時計 81 ミシン 67 80 40 0 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2 経済成長 の礎石とし ての農業と 農村 扇風機 116 (%) 100 図3b 新型耐久消費財の普及率(100世帯当たり) 携帯電話 96.1 75 白黒TV65.1 ラジオ61.1 固定電話 67.0 バイク 52.5 50 洗濯機 49.1 ラジオカセット 25 冷蔵庫 30.2 カメラ 4.3 0 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 (3)工業製品の 市場としての農 村 カラーTV 99.2 出所:中国統計年鑑より作成。 農業の成長要因 アジア的農業(フロンティアの消滅) 非農業用地への転用が規制(しかし問題も) 収量の増加 *83~06年で作付面積1割超減少したが、食 糧の総生産量は3割近く増加 *ときには行政指導も たとえば食糧生産の省長責任制 『中国統計年鑑2013』p.449 農家所得・消費 所得 ①現金収入が増加 ②郷鎮企業の増加~兼業の割合が増加 ③出稼ぎ送金の増加 消費 ①エンゲル係数の低下 ②肉類・嗜好品の増加 4 家計調査にみる農家経済の姿 (1)農家所得の構造変化 図4 農家純収入の構造変化 (%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 現金 85.2 74.7 64.1 自営 53.0 35.9 賃金 38.6 実物 14.8 17.4 出所:中国統計年鑑より作成。 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 1978 資産 8.5 4 家計調査にみる農家経済の姿 (2)消費構造の高度化 図5a 農家人口の消費 300 図5b 農家人口の消費 18 130 豚羊牛肉 食糧 16 250 115 14 精糧 200 12 100 酒 ( ( 精糧割合 (右軸) 85 ㎏ 10 / 人 ・ 年 8 ) ) ㎏ / 人 150 ・ 年 食用油 100 野菜 70 6 卵・調製品 4 水産物 55 粗糧 40 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 0 出所:中国統計年鑑より作成。 家禽 2 0 乳・乳製品 砂糖等 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 50 中国農村・農業の行方 ①食糧の自給率95%以上を保持できるか ②都市農村間の所得格差を是正できるか (社会保障も含めて) 農村から都市への人口移動の自由化 一方で農村の高齢化と低学歴化がすすむ ③農民の政治的権利をどこまで保障するか
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