BPM BPM ビジネスプロセスの基礎研究 成蹊大学経済学部 情報分析演習3の復習 専修大学 ネットワーク情報学部 小林 隆 [email protected] http://www.ne.senshu-u.ac.jp/~thn0674/ All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 1 目次 BPM 1 ビジネスプロセス 2 ビジネスプロセスモデリング 3 代表的なモデリング技法 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 2 目次 BPM 1 ビジネスプロセス All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 3 ビジネス環境の変化 1. BPM 製品ライフサイクルの短縮 コンカレントエンジニアリング、アライアンスによ るコンセプト・トゥー・キャッシュの短縮 2. 製品のバリエーション増大→顧客 個別仕様の提供 見込み生産(プッシュ)→注文生産(プル) 3. 物理的製品→サービス製品 ビジネス環境 の変化 ハードウェアは新たな情報とサービスを提供す る手段 4. 交通や通信技術の発展→企業間の 競争と協調 海外拠点、アライアンス、仮想企業、M&A All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 4 ビジネスプロセス構築の課題 BPM 急激な環境変化に適応してビジネスを成功させるには 「構造」の変更ではなく、「プロセス」の変更で対処 最適化 柔軟性 顧客ニーズにマッチした サービスを提供するように、 プロセスの活動系列を最適 に設計する ビジネス環境の変化に追 従するように、プロセスの 活動系列を適宜変更する All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 5 ビジネスプロセスの定義 技術 資金 [入力] 要求 依頼者 成果物 [出力] BPM [資源] ビジネスプロセス •組織独自の仕事のやり方 •日常繰り返し行われる •納期、価格、品質を決める 人材 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 原料 設備 6 ビジネスプロセスの解釈と定義 BPM <ワークフロー的解釈:“仕事の手順”であるとする見方> •1つ以上の入力をもち顧客に対する価値となる出力を生成する活動の集まり。 (Michael Hammer, 1993) •ある特定の顧客や市場に特定の出力を生成するために設計された(中略) ある順序をもった活動であり、時間と空間を越え、開始と終了をもち、明確に 特定された入力と出力をもつもの。(Thomas H. Davenport, 1993) <コーディネーション的解釈:“知識の統合”であるとする見方> •物や情報の流れではなく、活動に関係する人々の行動を統合するもの。 (Terry Winograd and Fernando Flores, 1986) •ビジネスチャンスに即応するために、企業全体の技術や生産能力をコアコン ピタンスとして統合したもの。(C. K. Prahalad and Gary Hamel, 1990) All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 7 ポータの価値連鎖 BPM 全般管理(企画、財務、経理) 人事労務管理 支援活動 技術開発 調達 購買物流 製造 出荷物流 販売 マーケティング サービス 主活動 M. E. ポータ, 競争優位の戦略, ダイヤモンド社 (1985)より一部抜粋 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 8 ビジネスプロセス・ムーブメント 1990 BPR 1995 ERP WF BPM 2000 EAI BPM プロセス指向の提案 バックオフィスの統合 ホワイトカラーの効率化 全社システムの統合 柔軟性の追求 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 9 目次 BPM 2 ビジネスプロセスモデリング All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 10 モデリングアプローチの変遷 1980 1990 2000 TQC BPR BPM BPM 活動系列モデリング アクティビティ図、IDEF、デー タフロー 相互作用モデリング ユースケース、CNモデ ル 目標指向モデリング 拡張UML、BSCの戦略 マップ モノや情報の流れ 仕事の流れ All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 11 ビジネスプロセスのモデリング要素 BPM モデリングアプローチ 活動系列 相互作用 目標指向 モデリング要素 活動系列 Activity sequence ○ ○ ○ 入出力 Input/output ○ ○ ○ 役割 Role ○ ○ 業務イベント Business event ○ ○ 目標 Goal ○ All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 12 活動系列の順序関係モデル # 1 2 3 4 5 名称 逐次 sequential transition 分岐 conditional transition マージ merge フォーク fork ジョイン join 関係モデル(ペトリネット) 活動1 活動2 活動3 真 活動2 活動1 偽 活動3 活動2 活動1 活動3 活動 活動1 BPM 意味 活動1、活動2、活動3を順に 実行する。 活動1の終了後、条件の評価 結果が真ならば活動2、偽な らば活動3を実行する。 活動1あるいは活動2のいず れか1つが終了したら、活動3 を実行する。 活動1の終了後、活動2と活 動3を並行して実行する。 活動3 活動2 活動1 活動1と活動2の両方が終了 したら、活動3を実行する。 活動3 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 13 ビジネスプロセスの入出力 BPM 設計情報 会計情報 [取引情報] ビジネスプロセス 処理要求(入力) 処理結果(出力) 処理要求(入力) [管理情報] 処理 処理 処理 処理結果(出力) 依頼者 : 処理 処理 実行者 工程情報 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 部品情報 14 依頼者と実行者の階層関係 BPM 顧客と企業との取引 営業と工場との取引 工場とサプライヤとの取引 依頼 顧客 依頼 営業 依頼 購買 サプライヤ 工場 企業 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 15 業務イベントと状態遷移 要求 ①準備 依頼者が実行者に 業務を提示する 依頼者 代案提示 BPM ②交渉 依頼者と実行者が 実行条件に同意する 満足 同意 受入拒否 ④合意 依頼者が業務の成果を 受入れ評価する : 状態 完了報告 実行者 ③実行 実行者が業務を実行し 完了を通知する : 業務イベント All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 16 目標の因果関係構造と展開方法 BPM 経営目標 因果関係構造(上位目標は下位目標により達成される) 順方向展開 「その目標を どうやって 達成するのか」 (具体化) 逆方向展開 サブ目標 サブ目標 サブ目標 サブ目標 サブ目標 サブ目標 「その目標は 何を 達成するのか」 (抽象化) サブ目標 目標を達成する活動へのマッピング 活動1 活動2 活動4 活動3 活動5 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 17 目次 BPM 3 代表的なモデリング技法 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 18 アクティビティ図 BPM • UML(Unified Modeling Language)の基本的なダイアグラム の1つ。 構造 ①クラス図 ②オブジェクト図 ③パッケージ図 ④ユースケース図 ⑤ステートチャート図 ⑥アクティビティ図 ⑦シーケンス図 ⑧コラボレーション図 ⑨コンポーネント図 ⑩配置図 振舞 実装 • 業務の処理手順を示す。 – 複数の処理ステップを順序だてて配置する。 – フローチャート、ペトリネット、状態遷移図に由来。 • 処理を実行する人や組織を表現できる。 – スイムレーン • その他に次の用途に使われる。 – ユースケース内部のシナリオを記述する。 – オブジェクト内のメソッドの処理フローを記述する。 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 19 アクティビティ図のモデリング方法(制御フロー)BPM スイムレーン 組織1 組織2 アクティビティ アクティビティ フォーク 分岐 アクティビティ 組織3 アクティビティ アクティビティ アクティビティ ジョイン マージ アクティビティ All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 20 BPM アクティビティ図のモデリング方法(オブジェクトフロー) スイムレーン 組織1 組織2 アクティビティ アクティビティ アクティビティ オブジェクト オブジェクト アクティビティ アクティビティ オブジェクト オブジェクト :オブジェクトフロー 組織3 アクティビティ :制御フロー All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 21 注文処理のアクティビティ図 販売 会計 BPM 物流 商品の展示 決定? Yes No 決済 注文 出荷 出荷通知 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 配送 22 ユースケース BPM • オブジェクト指向の要求分析のためのモデル。 • スウェーデンのイヴァー・ヤコブソンが1990年代前半に開発。 – 現在、UMLの標準モデルの1つになっている。 • システムの要件を外部環境との相互作用に着目して明確化。 – ユースケースとは、システムを外部から利用(use)する事例パターン (case)という意味。 – ユースケースは、システムが外部環境と相互作用した結果生じる一連 のアクティビティを示す。 – 相互作用とは、外部で発生したイベントに対して、システムがレスポン スすること。 イベント 顧客 イベント レスポンス システム 取引先 レスポンス イベント 他システム レスポンス All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 23 ユースケース図のモデリング方法 交信X ユースケース1 交信Y ユースケース2 BPM アクターA ユースケース3 交信Z ビジネスシステム All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi アクターB 24 ユースケースのシナリオ BPM ■基本パス 単純な正しいパス(ハッピーパス)、すなわち、間違いや失 敗がなく、最も一般的な流れを示す。 ■拡張パス どちらかというと一般的でないパス(選択肢)、または、間違 いがあったときに発生するパス(エラー処理)。 ■事前条件 ユースケースを開始するために準備すべきこと。 ■事後条件 ユースケースが正常終了した後に満足されている条件。 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 25 注文処理システムのユースケース図 顧客 注文の受付 BPM 在庫管理システム 注文状況の調査 注文のキャンセル 会計システム 商品の返品 苦情の登録 顧客窓口 運送会社 商品の発送 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 26 「注文の受付」ユースケースのシナリオ BPM ■ユースケース名:顧客からの注文を受け付ける ■要約:顧客から注文を受け、商品を調達して、顧客の元に配送する。 ■基本パス: 1. 顧客から注文を受ける。 2. 商品の在庫を調べ予約する。 3. 顧客に商品の納期と価格を回答する。 4. 配送業者に商品の発送を依頼する。 ■拡張パス: 2a. 商品の在庫がない: 2a1. メーカに商品を発注し、納期を確認する。 3a. 顧客が注文をキャンセルする: 3a1. 注文のキャンセルを記録し、商品の予約を解除する。 ■トリガー:顧客が注文を提示する。 ■事前条件:商品の注文受付準備ができている。 ■事後条件:注文された商品を配送業者に依頼済み。 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 27 CNモデル BPM • 1990年代前半にフェルナンド・フローレスとテリー・ウィノグ ラードによって提案された認知科学的なビジネスプロセスモデ リング技法。 • ビジネスプロセスで実施する一連の行為を、顧客とサービス 実行者の間の会話とみなしてモデル化(コミットメントの基本プ ロトコル)。 – ビジネスはカスタマとパフォーマの間の会話である。 – 会話は4つの状態の遷移により進行する。 – 6つのイベントが状態遷移のトリガーとなる。 • カスタマやパフォーマが独力でアクティビティを実行できない 場合、そのアクティビティをより単純なものに分割して第三者 に委託する(CN:コミットメントネットワーク)。 – 委託されたアクティビティも基本プロトコルに従って実行される。 – CNが顧客満足を実現すべく形成されているか否かが焦点。 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 28 コミットメントの基本プロトコル ①準備 ②交渉 カスタマがパフォーマ に業務を提示する 代案提示 要求 カスタマ ④合意 BPM 満足 カスタマとパフォーマ が実行条件に同意する 同意 完了報告 受入拒否 カスタマが業務の成 果を評価し受入れる パフォーマ ③実行 パフォーマが業務を実 行し完了を通知する : カスタマの行為 : パフォーマの行為 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 29 CN(コミットメントネットワーク)モデル BPM 依頼者(交渉1) 交渉1 依頼者(準備) 準備 実行者(交渉1) 実行者(準備) 依頼者(交渉1-1) 交渉1-1 実行者(交渉1-1) 依頼者(交渉2) 交渉2 依頼者 基本プロトコル 実行者(交渉2) 実行者 依頼者(実行1) 実行1 実行者(実行1) 依頼者(合意) 合意 実行者(合意) 依頼者(実行2) 実行2 依頼者(実行2-1) 実行者(実行2) 実行2-1 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 実行者(実行2-1) 30 サービス実施プロセスのCNモデル クラ イアント サービス会社 営業 部門 要求 仕様提示 営業 リーダ 実施 条件交渉 営業 員 要求 仕様作成 営業 部門 営業 員 設備 見積 サービス員 営業 員 人員 見積 サー ビス案件の実施 クライアント サービス員 サー ビス会社 営業 員 価格 見積 サービス会社 営業 部門 料金 徴収 営業 部門 料金 再計算 サービスリーダ BPM サービス会社 サービス実施 サービス員 サービス部門 サービス部門 料金 再計算 営業 部門 料金 徴収 サービス員 サービスリーダ サービス実施 サービス員 営業 員 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 31 バランススコアカード BPM • ハーバード・ビジネススクールのロバート・キャプランとコンサ ルタントのデビット・ノートンが1992年に開発した業績評価と経 営管理のためのツール。 – 1980年代まではいいものを安く作れば売れた。従って、業績評価は品 質管理と原価管理に関するもので十分だった。 – 情報化時代は、製品(有形資産)だけでなくサービスや経営(無形資 産)の品質が重要となる。 • 様々なステークホルダーを満足させるために、4つの視点で 業績を評価する。 – – – – 財務の視点(株主): ROI、売上高、利益率 顧客の視点(顧客、パートナー):顧客満足度、市場シェア、リピート率 内部プロセスの視点(経営者):納期、生産性、不良率 学習と成長の視点(従業員):教育受講、資格取得、離職率 • 4つの視点で経営戦略を立案し、それらの因果関係を明らか にする。 – 戦略マップ All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 32 バランススコアカードの戦略マップ BPM 企業価値の改善 財 務 の 視 点 顧 客 の 視 点 プ ロ セ ス の 視 点 成学 長習 のと 視 点 収益性向上 新製品・新サービス で革新をおこす 新規顧客 生産性向上 顧客価値の向上 原価構造の改善 資産の有効活用 既存顧客 製品単位あたり原価 資産効率 製品/サービスの向上 価格 品質 納期 顧客関係 機能 関係 ブランド 顧客満足 顧客満足 新製品・新サービス で革新をおこす (イノベーション・プロセス) サービス イメージ 顧客価値の向上 (アフターサービス・プロセス) 卓越した業務を 達成する (オペレーション・プロセス) 動機付けられ予備教育された労働力 戦略的コアコンピタンス 戦略的技術 All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 組織風土 33 パーソナルコンピュータ事業の戦略マップ BPM 世界最大のPC 販売会社となる 財 務 の 視 点 顧 客 の 視 点 プ ロ セ ス の 視 点 収益性向上 生産性向上 利益の増大 キャッシュフローの改善 原価の低減 人件費の低減 常に最新で多様 な品揃え 顧客ニーズにベスト マッチした製品提供 短納期 高度な サービスとサポート 新製品企画 製品設計 販売 生産 部品調達 顧客サポート (イノベーション) (イノベーション) (オペレーション) (オペレーション) (オペレーション) (アフターサービス) :目標 :プロセス All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 34 モデリング技法の特徴 BPM モデリング要素 アクティビティ図 (UML) ユースケース (UML) CNモデル 戦略マップ (BSC) 入出力 ○ ○ ○ ○ 活動系列 ○ △ △ × 役割 △ ○ ○ × 業務 イベント × △ ○ × 目標 × × △ ○ All Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi 35 参考文献 BPM ピーター・キーン, マーク・マクドナルド: バリュー・ネットワーク戦略―顧 客価値創造のeリレーションシップ, ダイヤモンド社 2. Peter G. W. Keen: The Process Edge: Creating Value Where It Counts, Harvard Business School Pr 3. Peter G. W. Keen, Ellen M. Knapp: Every Manager's Guide to Business Processes: A Glossary of Key Terms & Concepts for Today's Business Leader, Harvard Business School Pr 4. トーマス・H. ダベンポート,プロセス・イノベーション,日経BP出版セン ター 5. マイケル・ハマー, ジェイムズ・チャンピー,リエンジニアリング革命,日本 経済新聞社 6. 戸田保一 , 飯島淳一: ビジネスプロセスモデリング, 日科技連出版社 7. 電気学会ワークフロー調査専門委員会: ワークフローの実際, 日科技連出版社 8. 小林隆, 薦田憲久: 企業情報システム統合のための業務イベントモデルに基づ くビジネスプロセス設計技法, 電気学会論文誌, Vol. 124-C, No. 5 (2004.5) 9. Kobayashi, T., Tamaki, M., and Komoda, N.: Business Process Integration as a Solution to the Implementation of Supply Chain Management Systems, Information & Management, Vol. 40, No. 8, pp. 769/780, Elsevier Science (2003) 10. Kobayashi, T., Onoda, S., and Komoda, N.: Workflow Business Template for Application Process in Administration Department, Information Technology & Management, No. 3, pp. 43/66, Kluwer Academic Publishers (2002) 11. 小林隆, 薦田憲久: 高メンテナンス性を指向したワークフローシステム設計技 法, 電気学会論文誌, All Vol. 118-C, No. 7, pp. 1130/1137 Rights Reserved, Copyright © 2004, Kobayashi (1998.7) 36 1.
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