確率と統計2010 平成22年11月4日 第6日目 今日の内容 1. 2. 3. 4. 乗法の定理(確率) ベイズの定理 確率公式のまとめ 今後の予定 • 「事象Aと事象Bが同時に起きるという出 来事(事象)の生起確率」を考える。 これを、 P(A and B) と書くこととする。 • 例:2個のサイコロ(赤いサイコロと白いサ イコロ)を投げる。「赤いサイコロの目が1」 (=A)で「白いサイコロの目が3」(=B)とな る確率。 • P(A and B) = P( 赤いサイコロの目が1 and 白いサイコロの目が3 ) • 例:1個のサイコロを投げて、 A = 2の倍数の目が出る B = 3の倍数の目が出る ということが同時に起きる確率 • P( A and B ) = P(2の倍数の目が出る and 3の倍数の目が出る) 事象Aに対応 する集合 事象Bに 対応する 集合 P(A ∩ B) • サイコロ投げ – – – – 事象A: 2の倍数(偶数)が出る 事象B: 3の倍数が出る A and B: 6の倍数が出る A∩B = {2,4,6}∩{3,6} = {6}: 6の倍数が出る 1 3 5 2 6 4 P(A ∩ B) • P(A and B) = #(A∩B) / #Ω = #(A∩B) / #{1,2,3,4,5,6} = #{6} / #{1,2,3,4,5,6} =1/6 • 次に「事象Aが起きた後に事象Bが起きるという 出来事(事象)の生起確率」 を考えてみる。 これを、 P(B | A) と書くこととする。 • <<注>> 事象Aが起きたという条件の下、事象B の生起する確率を聞いている。単にBが生起す る確率を聞いているのではない。 • 例: – 雨が降った(事象A)次の日が晴れる(事象B) 確率 – 1回目は表(事象A)、2回目は裏(事象B)の 確率 – まず、事象Aが起き、ついで、 「事象Bが起きる確率」 => P(B | A) 今日雨であることを知って、明日晴れる確率 を求めたい、ということ。 • サイコロ投げ – 事象A: 2の倍数(偶数)が出る – 事象B: 3の倍数が出る – Aが起きた後に(という条件の下に)、 Bが起きる。 まず、標本空間を作って考えよう。 • 標本空間Ω Ω = Ω1×Ω2 = {{1,1},{1,2},{1,3},{1,4},{1,5},{1,6}, {2,1},{2,2},{2,3},{2,4},{2,5},{2,6}, {3,1},{3,2},{3,3},{3,4},{3,5},{3,6}, {4,1},{4,2},{4,3},{4,4},{4,5},{4,6}, {5,1},{5,2},{5,3},{5,4},{5,5},{5,6}, {6,1},{6,2},{6,3},{6,4},{6,5},{6,6}} • 標本空間Ω={ {1,1},{1,2},{1,3},{1,4},{1,5},{1,6}, {2,1},{2,2},{2,3},{2,4},{2,5},{2,6}, {3,1},{3,2},{3,3},{3,4},{3,5},{3,6}, {4,1},{4,2},{4,3},{4,4},{4,5},{4,6}, {5,1},{5,2},{5,3},{5,4},{5,5},{5,6}, {6,1},{6,2},{6,3},{,64},{6,5},{6,6}} 事象A • 標本空間Ω={ {1,1}, {1,2},{1,3}, {1,4},{1,5},{1,6}, {2,1},{2,2},{2,3},{2,4},{2,5},{2,6}, {3,1},{3,2},{3,3},{3,4},{3,5},{3,6}, 事象A {4,1},{4,2},{4,3},{4,4},{4,5},{4,6}, {5,1},{5,2},{5,3},{5,4},{5,5},{5,6}, {6,1},{6,2},{6,3},{,64},{6,5},{6,6}} 事象B • 標本空間Ω={ {1,1},{1,2},{1,3},{1,4},{1,5},{1,6}, {2,1},{2,2},{2,3},{2,4},{2,5},{2,6}, {3,1},{3,2},{3,3},{3,4},{3,5},{3,6}, {4,1},{4,2},{4,3},{4,4},{4,5},{4,6}, {5,1},{5,2},{5,3},{5,4},{5,5},{5,6}, {6,1},{6,2},{6,3},{,64},{6,5},{6,6}} 事象A • サイコロ投げ(続き) – 1回目2の倍数が出て、 2回目に3の倍数が出る 確率 – 前の図より、 P( B | A ) = 6 / 36 =1/6 一方、 P(A and B) = #(A∩B) / #Ω = ( #(A∩B) / #A ) × ( #A / #Ω) = ( #(A∩B) / #A ) × P(A) ここで、 #(A∩B) / #A は、 「Aが起きたという条件の下でBが起きる確率」 になっている。 従って、 P(A and B) = P( B | A ) ×P(A) = (18 / 36) × (6 / 18 ) = (1 / 2 ) × ( 1 / 3) = 1 / 6 <=確かに一致! 確率計算の公式 • P( A∩B ) = P(A)×P(B | A) • P(B | A) = P( A∩B ) / P(A) • いま特に、 「Bの生起確率がAの生起に無関係」 であるとする。つまり、 P(B | A) = P(B) • このとき、 P(B) = P(B | A) = P(A∩B) / P(A) • よって、 P(A∩B) = P(A)×P(B) 定義(独立と従属) • 事象Bの生起確率は、事象Aに無関係 • 事象AとBとは互いに独立 • P(A∩B) = P(A)×P(B) (独立事象の乗法定理) • 「独立でない」とき、「従属である」という。 • 1個のサイコロの場合: – 1回だけ投げる場合: • • • • A:2の倍数 生起確率 3 / 6 = 1 / 2 B:3の倍数 生起確率 2 / 6 = 1 / 3 AとBは互いに独立 P(A and B) = P(A∩B) = P(A)×P(B) = (1 / 2) ×(1 / 3) = 1 / 6 <= 前の結果と一致! • 1個のサイコロの場合: – 2回続けて投げる場合: • • • • A:2の倍数 生起確率 3 / 6 = 1 / 2 B:3の倍数 生起確率 2 / 6 = 1 / 3 AとBは互いに独立 P(A and B) = P(A∩B) = P(A)×P(B) = (1 / 2) ×(1 / 3) = 1 / 6 <= 前の結果と一致! • 練習問題 – 1枚のコインを3回続けて投げるとき、表裏表 となる確率はいくか? • ヒント:コイン投げでは、それまでに何が出たか(表 が出たか裏が出たか)関係しない。 => 独立な事象 => 乗法の定理が使える。 確認問題 (確率の計算に慣れよう) 1. 1組52枚のトランプカードから、カードを 1枚づつ2回取り出す。ただし、1枚目の カードは、2枚目を取り出す前に元に戻 すものとする。 (1)2枚ともスペードとなる確率は? (2)2枚ともスペードかまたは2枚とも ハートとなる確率は? 2. 1組52枚のトランプカードから、カードを 1枚づつ2回取り出す。ただし、一枚目の カードは、元に戻さないものとする。 (1)2枚ともスペードとなる確率は? (2)2枚ともスペードかまたは2枚とも ハートとなる確率は? 3. 男の子の生まれる確率が1/2であるとし て、6人の子持ちの家族で次の事象の 起こる確率を求めよ。 (1)子供全員が男の子である確率は? (2)子供全員が男の子であるかまたは 女の子である確率は? (3)男の子が5人、女の子が1人である 確率は? 練習問題(宿題) • 教科書のp.65-p.68の例題(2)(例1~例 5)を勉強しておくこと。 • 余裕のある人は、教科書p.52-p.65にも目 を通しておくこと。 (何も提出の必要はありません) 大学入試問題の例 1. 問題1: 次の確率を求めよ。 (1)2個のさいころを投げるとき、目の和が 素数である確率。 (2)3枚の硬貨を投げて、表1枚、裏2枚が 出る確率 ここからは、少し進んだ話 まずは気楽に聞いてください。 ベイズの定理 • 例:2つの箱AとBがあり、Aには赤球が 1個、白球が2個入っており、一方、Bには 赤球が2個、白球が3個入っている。いま、 2つの箱を無作為に選んで、かつ、選んだ 箱から無作為に球を1つ取り出したら赤球 だった。この球がAから取り出された確率 はいくらか? • ~したら~だった。このとき、~だった確率。 • このような確率を「事後確率」といい、計算 公式が知られている。 • ベイズの定理という。 • 以下では、この公式の使い方を説明する。 • 1つ取り出したら赤球だった。 • このとき、この球がAからとられた確率 は? 赤球 赤:1個 赤:2個 白:2個 白:3個 箱A 箱B 赤球 A 白球 赤球 B 白球 1/2 *1/3 1 / 2*2/3 1 /2 * 2/5 1/2*3/5 • 求める確率P Aが選ばれる確率 × Aの赤球が選ばれる確率 =------------------ (箱Aの確率 × Aの赤球の確率) + (箱Bの確率 × Bの赤球の確率) =( 1 / 2 × 1 / 3 ) / { ( 1 / 2 × 1 / 3 ) + (1 / 2 × 2 / 5 ) } = 5 / 11 レポート問題: いま稀にしか起こらないある 特別な病気(例えばHIV)を発見する検査 法があるとする。この検査法が実際にその 病に冒されている人(A群)に適用されるな らば97%の確率でその病気であることを発 見することができる。一方、健康な人(B群) にこの検査法を適用すると、その5%の人が 病気であると間違った診断結果をもたらす。 さらに、別のある軽い病気にかかっている 人(C群)にこの検査法を適用すると、その 10%の人が病気であると誤診する。 多数の人を調べたところ、A群の人、B群の人、 C群の人の割合はそれぞれ、1:96:3であった。 さて、任意の1人に対してこの検査法を適用 したところ、陽性反応(その病気にかかって いるとの反応)が得られた。 このとき、この人が本当にその病気にかかっ ている確率はいくらか? レポート課題No.1 • 先ほどのレポート問題を解き、次週提出し てください。 • A4のレポート用紙(表紙を付けること) • 詳細は授業で説明します。 – 提出は次回の授業開始時 発展課題 1. 前記のレポート問題を例題として、ベイ ズの定理を証明してみてください。 (Hint:乗法の定理から簡単に導かれま す。) 確率の諸公式 • P(A∪B) = P(A) + P(B) – P(A∩B) • P(A∪B) = P(A) + P(B) • P(A∩B) = P(A)×P(B | A) = P(B)×P(A | B) • P(A∩B) = P(A)×P(B) (加法の定理) (排反事象の加法の定理) (乗法の定理) (独立事象の乗法の定理) • ベイズの定理(事後確率を計算するための公式) お知らせ 今年も定期試験は実施しません。 レポートのみです。レポートは後日 お知らせします。
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