障害者への差別をなくす ために 野沢 和弘 2005.7.30 (1)法律(条例)はどんな内容 になる? ・障害をもつ人は、同世代の生涯をもたない人 と統合された教育を受ける権利を有する。 ・障害を持つ人は、その個々人に応じた個別的 支援を受ける権利を有する。 ・障害をもつ人およびその代理人は、個別支援 策定に関し、その過程に参加して意見を述べ、 また、策定された個別支援の内容に関して説明 を受け、異議を述べる権利を有する。 (2)現実の差別を救えるか? 差別事例① 自閉症の男児を保育園の入園させたが、「集 団生活不能」と医師に判定され退園させられ る。 慢性疾患があることを理由に看護学校への 進学を断られた。 差別事例② 文化祭や修学旅行には「手がかかるので来 ないでほしい」と言われた。 幼稚園の卒園式で、多動のため「証書授与だ けの参加でいいか?」といわれる。 遠足に親の付き添いを求められ、断ったら、 一人だけ学校に残された。 「障害児を受け入れます」と謳う幼稚園に入 れたら、手が掛かるので1時間早く迎えに来 るように言われた。 差別事例③ 就学時健診で普通学級を希望したら、教委から「養 護学校へ行きなさい」と言われる。早朝の電話など で嫌がらせのしうちを受けた。 ・就学指導の時、「困った時には空いている先生に見 てもらえますか?」と言ったら、「空いている先生な んていません」と言われた。 普通学級を希望したら「普通ではないんですよ。納 得していただくまで何度でも話し合いましょう。夜で も休日でもご主人の会社でもどこでも行きますから」 差別事例④ 親の付き添いを条件に入学を認められた。 親が付き添うことを求められ、父親が仕事を辞めて 付き添った。 休み時間に付き添いを求められ、学校の横に停め たワゴン車で2歳の子の面倒を見ながら、休み時間 ごとに教室に通った。 子供がお漏らしをしたとき、たまたまPTAの活動で 学校にいた母親が床を拭かされた。 障害のある二男がクレヨンを床に落としたら、長男 がわざわざ呼ばれて拾わされた。 差別事例⑤ 担任から「この子の障害が重いため、去年までクラスででき ていたことができなくなった」と言われた。ほかの保護者から は「養護学校に移るべきだ」の声が上がった。 一日中、学校で黄色い通学帽をかぶらされる。担任は「あの 黄色い帽子の子を連れてきて」と子供たちに指示する。 「上級生の父母から『なんで障害のある子がこの学校にいる のか』と抗議された」と校長から言われた。 高校で教師に吃音のまねをされ、皆に笑われた。 小学校の校長に「学校は勉強するところだから、いるだけで は卒業証書はあげられない」と言われる。 部活の顧問の先生に「この子には何も期待していない」と言 われた。 差別事例⑥ 音楽祭で障害児のリコーダーの穴をテープで貼る。 「よだれでじゅうたんが汚れるのでマスクをさせた い」と担任に言われる。 「特殊学級に行ったらその子に合った教育をする」と いわれたのに、お遊戯ばかりしている。 半年前から新設の特殊学級に入学することが決 まっていたのに、普通学級と別の建物で教室に何も 無く、教師も自閉症への理解がない。 差別事例⑦ 「オール1ではかわいそうだから成績は付け ません」といわれる。 5分遅刻したら、担任から「もう学校に来ない でいい」と叱られた。 「どうせできないのだから」と授業で手を挙げ ても無視された。 先生に質問されたとき、聴覚障害のある子が 飛ばされた。「しゃべれないので気の毒だか ら」と。 差別事例⑧ 養護学校の教員から「ばか」「のろま」の罵声を浴び せられる。 幼稚園で多動のいたずらのため2畳ほどの物置に 閉じ込められる。 「授業中、○○ちゃんが痛いと言えるかなと思って、 カッターで指を切ってみた」。でも何も言えなかった ので手当てした。 真冬に冷たい水が入ったタライに入りたいというの で、入れた。2時間そのままにしていたら肺炎になっ た。 差別事例⑨ 「○○学級って、バカなんだよね」と同じ学校 の子に言われる。 下校中、下級生に囲まれて石や砂をかけら れる。オウム返しをするので面白がって、「ア ホ」「バカ」と言わせられる。 (3)救済方法は? たとえば… 罰則 「準罰則」……是正命令、警告、勧告、要望 「実質的罰則」……公表、取引停止 司法的解決……告訴、提訴、人権侵害の申 し立て 修復的解決……調停、仲裁、 ※啓発、研修 差別事例を分類してみると ①普通学級からの排除・一部行事からの排除 ②「入れない」とは言わないが、あれこれ圧力をかける ③付き添いなどの条件付きで普通学級への通学を許 可される ④条件はないが、普通学級の中で嫌がらせを受ける ⑤嫌がらせではないが、配慮や知識が不足し、嫌な思 いをする ⑥他の子と同じ、あるいは特別に配慮しているつもり が、障害者が傷つく ⑦虐待 ⑧他の生徒からのいじめ 排除(一部行事から排除) 自閉症の男児を保育園に入園させたが、「集団生活不能」と 医師に判定され退園させられる。 慢性疾患があることを理由に看護学校への進学を断られた。 文化祭や修学旅行には「手がかかるので来ないでほしい」と 言われた。 幼稚園の卒園式で、多動のため「証書授与だけの参加でい いか?」といわれる。 遠足に親の付き添いを求められ、断ったら、一人だけ学校に 残された。 「障害児を受け入れます」と謳う幼稚園に入れたら、手が掛 かるので1時間早く迎えに来るように言われた。 あれこれ圧力 就学時健診で普通学級を希望したら、教委から「養 護学校へ行きなさい」と言われる。早朝の電話など で嫌がらせのしうちを受けた。 就学指導の時、「困った時には空いている先生に見 てもらえますか?」と言ったら、「空いている先生な んていません」と言われた。 普通学級を希望したら「普通ではないんですよ。納 得していただくまで何度でも話し合いましょう。夜で も休日でもご主人の会社でもどこでも行きますから」 条件をつける(家族の負担) 親の付き添いを条件に入学を認められた。 親が付き添うことを求められ、父親が仕事を辞めて 付き添った。 休み時間に付き添いを求められ、学校の横に停め たワゴン車で2歳の子の面倒を見ながら、休み時間 ごとに教室に通った。 子供がお漏らしをしたとき、たまたまPTAの活動で 学校にいた母親が床を拭かされた。 障害のある二男がクレヨンを床に落としたら、長男 がわざわざ呼ばれて拾わされた。 校内での嫌がらせ 担任から「この子の障害が重いため、去年までクラ スでできていたことができなくなった」と言われた。ほ かの保護者からは「養護学校に移るべきだ」の声が 上がった。 一日中、学校で黄色い通学帽をかぶらされる。担任 は「あの黄色い帽子の子を連れてきて」と子供たち に指示する。 「上級生の父母から『なんで障害のある子がこの学 校にいるのか』と抗議された」と校長から言われた。 高校で教師に吃音のまねをされ、皆に笑われた。 小学校の校長に「学校は勉強するところだから、い るだけでは卒業証書はあげられない」と言われる 配慮不足(不適切な配慮) 音楽祭で障害児のリコーダーの穴をテープで貼る。 「よだれでじゅうたんが汚れるのでマスクをさせた い」と担任に言われる。 「特殊学級に行ったらその子に合った教育をする」と いわれたのに、お遊戯ばかりしている。 半年前から新設の特殊学級に入学することが決 まっていたのに、普通学級と別の建物で教室に何も 無く、教師も自閉症への理解がない。 誤解(配慮していると思っている) 「オール1ではかわいそうだから成績は付け ません」といわれる。 5分遅刻したら、担任から「もう学校に来ない でいい」と叱られた。 「どうせできないのだから」と授業で手を挙げ ても無視された。 先生に質問されたとき、聴覚障害のある子が 飛ばされた。「しゃべれないので気の毒だか ら」と。 虐待 養護学校の教員から「ばか」「のろま」の罵声を浴び せられる。 幼稚園で多動のいたずらのため2畳ほどの物置に 閉じ込められる。 「授業中、○○ちゃんが痛いと言えるかなと思って、 カッターで指を切ってみた」。でも何も言えなかった ので手当てした。 真冬に冷たい水が入ったタライに入りたいというの で、入れた。2時間そのままにしていたら肺炎になっ た。 間接的差別・虐待 「○○学級って、バカなんだよね」と同じ学校 の子に言われる。 下校中、下級生に囲まれて石や砂をかけら れる。オウム返しをするので面白がって、「ア ホ」「バカ」と言わせられる。 何が差別か? ①悪意のある差別 ②悪意はないけれど、知らないうちにしている差別 ③できればしたくないけれど、やむを得ず障害者を不 利な状況に置いている ④制度や法律の中に組み込まれている差別 ⑤建物・道路・設備などに組み込まれている差別 ⑥障害者を排除している情報のツール なぜ差別は生まれるのか① 人間はだれだって自分や自分の家族が一番かわ いいものではないか。そんな人たちが同じ社会で暮 らしているわけで、知らないうちに相手の思いや権 利を踏みつけたりして生活している。 相手がすぐに抗議してくれれば、「あ、そうか」と気づ き、謝ることもできる。そんなことを繰り返していくう ちに、踏んだり踏まれたり、助けられたり助けたり ……。私たちが暮らしている社会なんてそんなもの だということが分かり合えるようになる。 なぜ差別は生まれるのか③ いろんな局面で利害が相反する人々が小さなパイ を分け合って生きていく場合、誰もが100%満足す る社会なんて不可能。誰かが少し得をすれば誰か が少し損をする。 仕方がないので、できるだけ多くの人が得をするか、 得をしなくても納得するように利害を調整する仕組 みについて考えるようになる。少数者でもみんなを 説得できるような言葉と機会を持っていれば、利害 調整システムに参加し、それを有効に活用すること ができる。 なぜ差別は生まれるのか④ ところが、ここに踏みつけられても文句を言わない 人、文句を言えない人がいる。彼らは単に少数者だ というだけでなく、障害の特性や育ってきた環境ゆ えに文句を言わ(え)ない。 だから、みんな知らないうちに彼らを踏みつけたり、 仲間はずれにしたりしている。そして、いつの間にか 文句を言えない人のことを考えずに建物や道路を 作ったり、町を作ったり、制度を作ったりしている。 そうすると、少数者(障害者)たちはますます社会に 参加する機会から遠ざけられ、教育や情報からも遠 ざけられ、ますます文句を言えなくなって行く。 なぜ差別は生まれるのか⑤ 一方、多数者の側もこのような「文句を言えない少 数者」と接触する機会が少なくなってくるので、彼ら の気持ちや置かれている状況がますます理解でき なくなる。 そうすると、少しぐらい少数者(障害者)を邪険に 扱っても平気になってくる。文句も言われないし、自 分自身の心も痛まなくなる。みんながそうしているの だから、あまり深刻に考えずにそのようなものだと思 い込んで日常生活を送っている。 罰則は有効か? 悪意をもって障害者を差別している人には罰 は有効かもしれない。一般の人々にとっても 「差別はいけない」という教育的なメッセージ を発することができる。ある種の差別やある 差別的な状況にとっては、強制力を伴った規 範が必要かもしれない。制度を変えたり、建 物や設備などを作り変える場合には有効で しょう。 罰則は有効か?② 自分がしていることが差別を気づかない人へ の罰則は? 罰を恐れて過度に萎縮したり、障害者とかか わらないようにしたり、反感を強めたり…。自 分が差別していることに気づけば、反省して 改める人に対してまで、罰則を適用していくと、 どんなリアクションが起きてくるのでしょうか。 罰則は有効か?③ 人々の外見上の振る舞いは変えることができるかも しれないけれど、人の心の中を変えることがどこま でできるのか? 明瞭な判断能力があり、周囲の人々や社会と交渉 できる障害者の場合には、それでもいいのかもしれ ないが、重度の知的障害者や精神障害者など判断 能力にハンディのある人の場合のことを考えると、 周囲の人々が外見上だけ変わっても心の中の差別 意識や反感がそのままでは何となく不安では? 心の中の差別はなくせるか① 差別する心は誰の中にもある。それを自覚し、見 つめるところから始めなくてはならない。 では、差別を生んでいるものの正体は何か… 無知、 不信、優越的な位置に立ちたいという利己心、コン プレックス、恐怖……。人間の心の中に潜む<負の 心理>の塊が、社会の中で化学反応を起こしてい る状態。それが差別なのかも。 相手のことをよく知るようになると、踏みつけられ ている痛み、声を上げられないことの切なさのような ものが見えてくる場合が多いものだ。慣れていない ことには不信や恐怖や嫌悪感を感じたりする。 心の中の差別はなくせるか② 障害者の奇声、赤ちゃんの泣き声 障害者のよだれ、赤ちゃんのよだれ 心の中の差別はなくせるか③ 知らないうちに障害者を踏みつけながら築いてきた 社会の中で自分たちが生きていることを多くの人は 知らないことだろう。悪意はなくても故意ではなくても 自分たちが少数者(障害者)を踏みつけていること に気づいていない。少数者(障害者)の涙が、自分 の心に潜む無知や不信や利己心によってもたらして いることを気づいてはいない。 そうした状況に無自覚なまま、多数決を延々と繰り 返していることを知ることは、多数者にとっても有益 なのではないか。そういうことを知ってもらい、少数 者の意見に耳を傾ける必要性・必然性を理解するこ とがとても大事。 心の中の差別をなくせるか④ 差別禁止条例は、けしからん差別を見つけ 出して糾弾したり厳罰を科すのではなく、同 時代に生きる者として互いの「違い」を認め合 い、社会のありようを見つめていくための装 置(きっかけ)であるべきだろう。 すべての県民のために① 理不尽な思いをしているのは障害者だけ か? 被差別部落の出身者、いじめの被害者、痴 呆(認知症)のお年寄り、自殺遺児、犯罪被 害者、薬害エイズの被害者、元ハンセン病患 者、希少難病の患者、ホームレス、リストラさ れた人、引きこもりの青年、リストカットしてい る女子高生……。 すべての県民のために② 人生の中で「元気で健康な多数者」である時 期は意外に短いのかもしれない。また、自分 自身は「元気で健康な多数者」であったとして も、家族や知人の中に「少数者」が出てくる確 率は高い。そうすると、「少数者」のことは他 人事には思えなくなってくるのではないか。 すべての県民のために③ 「少数者」は社会に対して貢献したり何らかの影響を及ぼし たりできない存在なのか? 役に立たないお荷物なのか? 人間の可能性は不思議なもので、踏みつけられ声も上げら れない少数者にしても、社会にさまざまな影響を与えており、 有形無形の貢献もしている。そういうことを知らずに生きてい くことは果たして多数者にとって幸せなのか。 そうした社会と人間の多様性にあふれた魅力を知ることは 多数者にとっても有益であるはず。自分の中にある「差別す る心」を見つめ、自分の知らない世界に目を向ける<きっか け>を与えるような、差別禁止条例であるべきではないか。 健康福祉千葉方式のコンセプト ■基本理念の確立と継承 … ・千葉方式の5原則 ■異業種・異文化への進出… ・官民協働 ・各分野横断型 ■グローバリズム~多業種・多分野の真の融合 … ・タウンミーティング、作業部会 ・飾り物じゃない障害当事者 の参加 ■秩序(既成概念)の破壊 … ・夜の県庁での会議 ・古い業界体質 ■完全決着(送り手発想VS受け手発想) … ・中核センターなどの公募と 審査、評価
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