教育心理学 発達観と子どもの認知発達 伊藤 崇 北海道大学大学院教育学研究院 1 発達とは何か ~生後1ヶ月 成長 乳児期 ~2歳 量の増大 幼児期 ~5、6歳 成熟 児童期 ~12歳 青年期 ~20歳半ば 成人期 ~60歳 老年期 ~ 新生児期 遺伝的要因による 予定された姿の発現 発達(生涯発達) 生まれてから死ぬまでに 起こるすべての変化 2 スケジュールと講義の進め方 9/22 9/29 10/6 10/20 10/27 11/3 11/10 11/17 オリエンテーション 発達観と子どもの認知の発達 言語能力の発達 性格の形成 社会性と社会的スキルの発達 学習と動機づけ 休講 学習の認知プロセス 単位取得要件 11/24 12/1 12/8 12/15 12/22 1/19 1/26 2/2 学習の多様性と個人差 教授学習課程と技術 学級の理解と指導 不適応児童・生徒の理解と指導 心理検査と心理療法 教育評価の考え方と実際 発達障害と特別支援教育 最終テスト 1. 前回を含み,13回以上の出席 2. 振り返りクイズに参加 3. 最終テストで,60点以上を獲得 配布資料は→http://finnegans-tavern.com/hokusho_ep/resume/resume.html 3 発達を起こすものは何か 相互作用説 環境要因 遺伝要因 遺伝要因と環境要因が 互いに作用し合って 発達が起こるとする考え 4 発達を起こすものは何か 年齢 (歳) 相互作用の例 13 発達加速現象 身体発達が時代とともに 加速され、第二次性徴が 早まる等、生理的成熟が 早期化している現象 12 11 日本の女性の初潮年齢の変化 (年) 日野林俊彦ら「思春期変化に関する発達加速現象の心理学的研究」科研費報告書 (https://kaken.nii.ac.jp/pdf/2010/seika/jsps/14401/19330149seika.pdf)より作成 5 発達を起こすものは何か 環境優位説 ワトソン 遺伝要因の影響よりも 環境要因の影響力が 発達を強く方向づける という考え John Watson (1878-1958) 6 発達を起こすものは何か 成熟優位説 環境要因ではなく 遺伝要因が発達の時期を 決定するという考え ゲゼル Arnold Gesell (1880-1961) レディネス 訓練が効果をもつような 発達の準備状態 7 振り返りクイズ その1 「振り返りクイズその1」用 回答システム http://james.watson.jp/survey_system/survey/survey.cgi?ukey=dunloe&skey=201409290500 8 見える発達と見えない発達 スキャモン スキャモンの発育曲線 Richard Scammon (1883-1952) 人間の身体は臓器ごとに 発達する速度が異なることを示した図 9 見える発達と見えない発達 どっちが多い? 3歳児の反応 ? 7歳児の反応 どっちも同じ 10 ピアジェの知能発達理論 まわりの世界に関する理解の仕方が発達する 知能 同化 外の世界にあるものを, 自分の中に取り入れる 均衡化 矛盾の解消 ピアジェ Jean Piaget (1896-1980) 外の世界に合うように, 自分自身を変化させる 調節 ピアジェの知能発達理論 形式的操作期 感覚 前操作期 運動期 誕生 2歳 具体的操作期 6-7歳 11-12歳 ピアジェによる知能の発達段階論 ※あくまでも知能の発達を説明するモデルであり, 他の精神機能(例えば,情動や社会性)を説明する ものではないことに注意 ピアジェの知能発達理論 各段階で獲得される主な知的能力 感覚運動期 物の永続性・ 前操作期 自己中心性 自分の見えに 遅滞模倣 しばられた理解 象徴遊び・ 直感的思考 (保存概念は未成立) 脱中心化 具体的操作期 保存課題の達成・ 理由のある分類 形式的操作期 仮説演繹的推論・ 組合わせによる推論 自分の見えから 自由な理解 ヴォークレール,J. (2012). 乳幼児の発達 新曜社 振り返りクイズ その2 「振り返りクイズその2」用 回答システム http://james.watson.jp/survey_system/survey/survey.cgi?ukey=dunloe&skey=201409290501 14 振り返りクイズ その2 問6 スキャモンの発育曲線について正しく書かれた 文の組み合わせを選びなさい。 ① 神経組織は,乳幼児期に急速に発達するとともに,13歳 前後でほぼ成人並みの重量に達する。 ② 骨格や筋肉は,出生から2歳ころまで急速に発達した後は 緩やかに発達し,思春期になって再び急速に発達する。 ③ 脊髄や感覚器官は,11歳前後まで急速に発達し,その重量 は成人のおよそ2倍近くまで達するが,その後減少していく。 ④ 細菌を殺して身体の健康を保持する機能をもつ器官は, 乳幼児期に緩やかに発達した後,13歳前後まではほとんど 発達しないが,その後急速に発達する。 (2008年度 北海道・札幌市教員採用試験問題より)15 講義のまとめ ●発達は人間の変化を指す最も広い概念 ●発達は遺伝要因と環境要因の相互作用で起こる ・環境のみ、遺伝(成熟)のみの説は古すぎる 見える体の発達と見えない心の発達がある ・見えない心の発達を調べる方法が工夫されている 知能の発達についてはピアジェの理論が基本 ・4つの段階から構成された発達段階論 ・同化と調節による均衡化を通して発達する ・自分の見えにしばられた状態(自己中心性)から 自分の見えから自由な状態(脱中心化)へ 16
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