発達心理学への招待

教育心理学
第6回
子どもの発達(5):
認知能力の発達
今日の流れ
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ピアジェの認知発達理論
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感覚運動期
前操作期
具体的操作期
形式的操作期
ピアジェの認知発達理論
知的能力の発達段階(ピアジェ)
感覚運動期
感覚運動期と知能の発達
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第Ⅰ段階(生後1ヶ月ごろまで)
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活動のレパートリーは、吸う、飲み込む、泣くなどの
反射に限定される
第Ⅱ段階(1ヶ月~10ヶ月ごろ)
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自分の偶発的な行動によって興味深い変化が外界
や自己に生じたとき、その行動を繰り返そうとする循
環反応が獲得される
単に生得的な反射を行うだけではなく、自らの欲求や
意図に基づいて行動を行うようになる
感覚運動期と知能の発達
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第Ⅲ段階(10ヶ月~2歳ごろ)
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感覚運動的知能が完成する時期
因果関係の理解が始まり、ある出来事の結果を予測
できるようになる
反応の仕方を変えて対象への影響を観察することで、
能動的に因果関係を探索するようになる
徐々に、試行錯誤ではなく、表象によって、新しい手
段を洞察できるようになる
表象のはじまり
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生後間もないころの乳児は、表象(イメージ)を
持たない
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おもちゃが視界から消えると存在しなくなったように
振る舞い、探そうとしない
試行錯誤だけが問題解決の手段
感覚運動経験を通して表象が形成されていく
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遅延模倣
象徴遊び
洞察による問題解決
前操作期
前操作期と知能の発達
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幼児期にあたる前操作期では、ことばが獲得さ
れる
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ことばをコミュニケーションに用いることで、外界
に関する情報を次々に取り入れるようになる
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あらゆる事物や動作に名前があることを知る
質問期
ことばは子どもの心的表象として機能する
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目の前に存在しないものや実体のない概念でもこと
ばによってイメージできる
自己中心的な思考
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前操作期の子どもは、自己と他
者の視点を区別したり、客観的
に物事を捉えることができない
三つ山問題
具体的操作期
具体的操作期と知能の発達
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児童期にあたる具体的操作期では、目の前の
具体物に関して心的操作が可能になる
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心的操作:頭の中に対象に関するイメージを浮かべ、
動かしたり、回したり、並べたり、整理したりなどの変
化を加えること
「見かけ」だけに左右されず、物事の本質をとら
えることができるようになる
保存の概念の理解
2次元の分類操作
形式的操作期
形式的操作期と知能の発達
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子ども特有の見方から離れ、大人と同様の見方
が可能になってくる
形式的操作が可能になる
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確率の概念の理解
慣習の制限を超えた思考
仮説の推理と仮説に基づく推論
変数の統制と操作に基づく因果関係の検証
全員が全ての領域でできるわけではない
仮説に基づく思考
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Siegler(1976)のバランス課題実験
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天秤の左右におもりを載せたとき、どちらに傾くかを
予想させる
おもりの数や場所を様々に変えて判断を求める
6歳、8歳、12歳の3群で判断や発話を比較
形式的操作のもたらすもの
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「自分は何者か」、「何のために生きるのか」と
いったアイデンティティに関する問い
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他者の視点を取得できるようになることで、社会の中
で自分はどのような存在なのかを考えるようになる
高度な抽象的思考が可能になることで、自分の理想
像や現在の状態について考えるようになる
因果関係の理解によって、過去、現在、未来の自分
を統合的に捉えられるようになる
ミニレポート
テーマ(2つ選択)
1.
2.
3.
三つ山問題に見られる前操作期の子どもの思
考の特徴について説明せよ
具体的操作期における保存の概念の理解につ
いて説明せよ
Siegler(1976)のバランス課題実験の方法、結
果、結論について説明せよ