大地の遺産を用いた地域振興 ―島原半島ジオパークにおける ジオストーリーの例― 筆者:大野希一 掲載:地学雑誌 紹介者:澤井真夢子 はじめに―ジオパークとは― 地球科学的価値のある景観・露頭を 有し、地域の地史・成り立ちが理解 できる自然公園 地域の歴史・文化・伝統も見どころ 島原半島ジオパーク 長崎県島原市・雲仙市・南島原市で 構成 半島中央に雲仙火山を擁する 活火山をテーマとしたジオパーク 本小論では…… ・「持続可能な発展」について解説 ・島原半島ジオパークの「観光振興」の実践例を紹介 ・取り組みを持続可能にするための展望を述べる 持続可能な発展 地域の歴史・文化・伝統・自然環境 を保護しながら、活性化・経済発展 を将来にわたって成し遂げる これまでの「発展」のあり方に関す る経緯が影響 (環境破壊・公害など) 持続可能な観光 持続的な方法で地域を発展させる観 光 代表例がエコツーリズム 地域住民の積極的参画が不可欠 特に、地球科学的価値を有する大地 の遺産(景観・地質など)を活用す るものが「ジオツーリズム」 ジオパークで推進する観光事業の基本概念 大地の遺産を用いた地域振興 教育活動から住民の意識向上を図り、 保全に結びつける方法 ジオツーリズム推進によって観光客 を呼び込み、地域を経済的に活性化 させる方法 ・地形・地質に関する学術的価値 ・歴史・文化などと関連付けて物語(ジオストーリー)にし、 伝えていく工夫 ……が必要 ジオストーリー構築・活用例 大地の遺産を用いて観光地化 ―早崎海岸 ……元は静かな漁港 観光情報のなかにジオの情報を加え、 価値を向上 ―小浜温泉 ……島原半島内有数の観光スポット 早崎海岸 A:玄武岩の露頭 B:アコウの木 C:石垣 D:ジャガイモ畑 普通の海岸がジオ サイトに変わった 小浜温泉 A:小浜歴史資料館 B:炭酸水素塩泉 C:上の川湧水 D:日本一長い足湯 ジオの情報が既存 の観光資源の価値 を高めている 参加者の声(1) 主に半島内の市民を対象 参加者は女性の方が多く、高齢者が 多い―若年層増加傾向あり ツアー実施時間 ―7割以上が「ちょうど良い」と回答 満足度 ―7割以上が「満足」と回答 回を追うごとに上昇傾向 参加者の声(2) 地域の再発見 自然を体感した事に対する満足感 地元の人が地域の素晴らしさを広め ていくべき、という意識 ・ジオツアーが地域理解に大きく貢献 ・「持続可能なジオツーリズム」実現にあたり、 大きな原動力になりうる 参加者の声(3) ジオパークの概念やジオツアーの宣 伝に対する意見 案内者に対するリクエスト ・広報に関しては事務局側の対応で改善可能 ・案内者の質の向上はすぐに改善は難しい ・優れたガイドの育成に加え、それなりの仕組みも必要 ・内容・伝え方に注意が必要 持続可能なジオツーリズム実現 観光客受け入れ態勢の整備 現在の観光客のニーズにあわせたジ オストーリーの構築 ―観光客のニーズが静的なものから 動的なものにシフト 郷土の歴史・文化・料理等を紹介、 地球科学的情報との関わりを示すようなものが 望ましい まとめ ジオツーリズム成功のためにはジオ ストーリーを市民・観光客に分かり やすく伝える工夫が必要 それを実践しているジオツアーは地 域住民にはおおむね好評 優れたジオストーリー開発とガイド 育成がカギ 今後の課題 ジオパーク見学を目的にした観光客 数の実態把握 教育活動
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