PowerPoint プレゼンテーション

九州地区食肉衛生検査所協議会(2013年11月7日)
台湾の狂犬病と中国本土のH7N9発生
岡本嘉六(鹿児島大学名誉教授)
今年は東アジアで国際的注目を浴びる人畜共通感染
症の新たな動きがあった。
1. 3月末に中国で発見された新型H7N9低病原性鳥イ
ンフルエンザウイルスによる世界初のヒト感染。世界流行
につながるか?
2. 7月中旬に判明した台湾における狂犬病の半世紀
振りの再発。野生イタチアナグマは、新たな保有宿主
(reservoir)なのか?
これらは日本にどのような影響を及ぼすのか?
中国や台湾の対応から、何を学んで日本の事前対策に
生かすことができるか?
水禽類(カモなど)
α2-3
H1~H16
(α2-3)
「種の壁」を越え
ることは、頻繁
に起きるもので
はないが・・・・
ブタ
α2-3、α2-6
ニワトリ
α2-3
ウマ
α2-3
H1、H3
(α2-3、α2-6)
H5、H7
(α2-3)
H3、H7
(α2-3)
H5N1
ヒト
α2-6
α2-6、α2-3
肺にはα2-3
が存在する
H1、H2、H3
(α2-6)
通常は同一動物種内での流行
動物細胞
αレセプター
ウイルスのH型
(αレセプター対応)
矢印の形と太さは、感染の頻度を示す
インフルエンザ・ウイルスの流行模式
中国で発生したA(H7N9)
HA
PB2
PA
M
NA
PB1
NP
NS
家禽における
H5とH7の低病
原性鳥インフル
エンザは、陸生
動物衛生規約
の第10.4章鳥イ
ンフルエンザに
おいて通知を要
する疾病とされ
ている。
米国における低病原性鳥インフルエンザH7N9発生事例
発生時期
2011/6
2009/4-5
2009/4-5
2009/4-5
2009/5-9
2007/6
場所
Minnesota
Kentucky
Tennessee
Illinois
Minnesota
Nebraska
概要
5,500羽の七面鳥、抗体陽性、未発症
ブロイラー種鶏、2棟2万羽、産卵率が10-20%低下
ブロイラー種鶏、2群32,600羽、抗体陽性、未発症
肉用七面鳥、10,000羽、抗体陽性、未発症
8施設89群約100万羽の七面鳥、抗体陽性、未発症
145,000羽の七面鳥、抗体陽性、未発症
A(H7N9)発生の初期情報
2013年3月31日 H7N9 鳥インフルエンザに感染した3症例を発表。
上海市:87歳男性2月19日発症 3月4日死亡、27歳男性2月27日発症 3月10日死亡、安徽
省:35歳の女性3月15日発症( 4月9日死亡)
4月2日 さらに江蘇省東部における4症例を発表。
45歳女性3月19日発症 、 48歳女性3月19日発症 、 83歳男性3月20日発症 、 32
歳女性3月21日発症
4月3日 さらに浙江省における2症例を発表。
38歳男性3月7日発症 3月27日死亡、67歳男性3月25日発症
4月3日 さらに江蘇省における1症例を発表。
48歳男性3月28日発症 4月3日死亡
4月3日 上海市生鳥市場の鳩からH7N9ウイルスを検出。
4月5日 上海市の生鳥市場を閉鎖、2万羽以上が廃棄処分。
20,536羽の鶏、アヒル、ガチョウおよびハトが殺処分された。
上海6名、江蘇省4名、浙江省3名および安徽省1名の計14名のH7N9症例を確認
4月5日 FAOは強力な生物学的安全確保措置を呼掛け
動物の生息域と人々の生活領域を離すことが鍵となる。
4月6日 杭州市、南京市は生きている家禽の取引を一時停止
ただし、この時点の公式見解では感染源不明
家禽肉の最大死後硬直までの時間は短く、その後のpH上昇によって鮮度が低
下して腐敗し易い(鶏は2時間;魚に近い、豚は12時間、牛は24時間でpHが最低と
なる) 。そのため、「朝びき鶏」の名称が大阪以西で現在でも残っている。コールド
チェーンが未発達で、家庭に冷蔵庫がない熱帯地方では市場で「生きている家禽」
を買い求める習慣ができている。
「上海は1億7000万から1億8000万羽の鶏を毎年消費しており、70%以上が生
きたまま購入されている」と中国新聞社が5月17日に伝えたのに驚きを隠せなかっ
た(上海が家禽市場を再開予定)。この背景には、生鳥市場で売られる生きた鶏は
スーパーで売られる商品に比べて割安なことがあるという。大都会においてさえこ
ういう状況であり、農村部の実態が危ぶまれる。
上海の生鳥市場
Downtown’s biggest live poultry
market ready to open
Live poultry sales resume in Shanghai
発症日別にみた鳥インフルエンザA(H7N9)確認症例数の推移
上海市生鳥市場閉鎖
WHO: 10/25発表
症
例
数
(
赤
は
死
亡
)
3月31日に報告
87
♂
3/4
27
♂
3/10
け明診史
たで断上
こあし初
とっ、の
はたそ感
迅がれ染
速生かで
だ鳥らあ
っ市 1 っ
た場週た
。の間が
閉後、
鎖 に 40
に感日
漕染で
ぎ源確
着不定
4月2日に報告
35
♀
4/9
2月
3月
4月
ウイルスは中国内に生残していた?
5月
6月
7月
8月
9月
10月
生鳥市場の閉鎖が進むにつれ発生数は減少し、5月には2例、6月は発生がなく、
7月に2例、8-9月は発生がなく、10月2例と散発的発生になった。
蘇 12
州の
市行
で政
働区
いで
て発
い生
て
、し
台た
湾。
に台
戻湾
っの
て 53
3 歳
日男
後性
には
発江
症蘇
。省
北京市
河北省
山東省
WHO: 10/25
患者:137名
死亡:45名
河南省
江蘇省
安徽省
湖南省
浙江省
江西省
広東省
福建省
台湾
上海市
月別患者数
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
計
患者
死亡
2
30
88
3
0
2
0
0
2
2
12
7
0
0
0
1
0
0
137
45
(10月12日現在)
単純計算すると
30%の致命率?
年齢別症例数(5月3日現在、125名)
男性が女性の2倍以上なのは、仕事で家禽と
接触する機会が多いことを反映しているのか?
:38名
:87名
スペイン風邪やH5N1は、青年層の罹患率が高いこ
とが特徴とされている。H7N9は、50歳以上の割合が高く、
青壮年層がそれに続き、年少者の罹患率は低い。これ
は、年少者も多い季節性インフルエンザとも違う。
生長
鳥江
市デ
場ル
タ
あひる
H7N3
カモ
H7N9
鶏 H9N2
アヒルと鶏などが
多数飼育されてい
る農村部にカモが
飛来し、ウイルス
の再集合が起きた。
それが生鳥市場に
運ばれて・・・
HA
PB2
PA
M
NA
PB1
NP
NS
H9N2
H7
H7N7
H7N3
H7N7
H9N2
H7N7
H7
哺乳類に感染性のある
新たなH7N7株が誕生し
ていたことが判明し、H7
株から今後もヒトに感染
し得る新型株誕生の脅
威が現実化した。
N9
H11N9
H7N9
前駆体
H7N9
WHO中国駐在員事務所(WHO China Representative Office)
WHO中国駐在員事務所は、中国における世界保健機関の公式
代表であり、中国市民の良好な健康達成に関して中華人民共和国
と共同作業を行っている。
中国のような急速に変化している中所得人口の国において、
WHOの国際的技術専門知識と証拠に基づく政策助言は、政府がよ
り公平な健康上の成果を達成するのを支え、「新世紀の発展目標
(MDGs)」とともに地球規模の健康の規範と基準の達成に向けた進
展を支援する。
中国とWHOの協力は、中国国民の要請を満たす国の医療体制
を強化し、とくに、最も恵まれない人々と農村部や遠隔地に住んでい
る人々を含め、全国民が基本的な医療を利用できるようにすること
を目的としている。中国におけるWHOは、その中核事業において、
中国政府ならびにWHO全体および地域事務所の戦略的指示によっ
て設定された優先順位を置いている。
中国の疾病情報公開に係る透明性は、きわめて高い。しかし、
社会システムが未整備で情報収集と解析が遅れる傾向がある。
情報公開の一例
ヒトから分離された最初の3株のウイルスの全ての塩基配列は、
2013年3月31日にGISAID(インフルエンザの全てのデータの共有に
関する国際協力) データベースに入力された。
インフルエンザ論文の活気はデータの功績に対して論争となる
Nature | News 01 May 2013
データベースの規則に従って、その塩基配列を利用する科学者
は、そのデータを供託した人達の功績を認め、可能な場合は彼等と
の連携を提案しなければならない。
スイスのバーゼルの製薬会社Novartis社およびメリーランド州
RockvilleのJ. Craig Venter研究所が掲載された塩基配列を使用し
てH7N9ワクチンを開発する計画を4月5日に発表した。
第60回世界保健総会 議題項目12.1 (23 May 2007)
生物資源に係る国家主権および公衆衛生上のリスクを緩和する共
同体活動の重要性を認識し、知的所有権が、・・・鳥インフルエンザ・ウ
イルスの提供とそれがもたらす便益に係る責任ある活動に関するジャ
カルタ宣言・・・を想起し、・・・ インドネシア政府の怒りは?
日本へカモが A(H7N9) を運ぶリスク
飛来数が多いマ
ガモの標識調査で
は、大半がシベリア
に向かったが、中国
青海湖近辺でも確
認されており、飛来
途中の湖で感染す
る可能性もあるので、
H5N1と同様に持込
む恐れは十分にあ
る。
無症状の野鳥
マガモの標識調査(国内放鳥外国回収)
これまでの糞便検査によってカモ類の持込みを知ることはできるが、
養鶏場に入った場合、H5N1とは違ってH7N9は死なないことから発見
が難しい。中国で起きたように、突然、患者が発生する可能性もある。
それを防ぐためには、防鳥ネットなど養鶏場の安全確保対策が重要。
家禽における高病原性イン
フルエンザ発生の推移
2,000 万羽
1,800
1,600
1,400
H5N1の外に、2011年以降 1,200
1,000
はメキシコでのH7N3、2012 800
600
年以降は台湾でのH5N2、
2013年には、オーストラリァ、 400
200
デンマーク、
0
イタリアでのH7N7を含む。
淘汰数
死亡数
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
疫学単位が村だったり、小規模農場の場合、発見が遅く、死亡割合がきわめて
高い。死亡して見つかった割合は平均7.3%であり、鶏群全体が殺処分されるので
この9年間で7.900万羽が犠牲になった。平均すると毎年870万羽となる。
2013年1~10月の発生状況
:終息(野生動物)
:終息(家畜)
:継続中(家畜)
水禽類とは、「水掻き」のある鳥類
カモ等の水禽類のインフルエンザは、一般的に消化器系感染であり、ウイルスは糞
便中に排出される。すなわち、池や湖はH5N1ウイルスで汚染されている。
マガモ
アヒル
家畜化
雁(ガン、カリ)
ガチョウ
家畜化
アジアの伝統的稲作では、水田にアヒルを放して除草作業などを手伝わせている。
アヒルが放たれている水田
地帯でHPAIが発生してい
る。これが野鳥の鴨や雁など
と自然交配を含めた濃厚接
触を重ねて、春には北方の
繁殖地へ渡っていく。シベリ
アの繁殖地で別の集団に感
染が広がり、それらのカモ類
が秋になると日本や韓国に
渡ってきてニワトリへの感染
源となる。こうした生態系の
FAO: 鳥インフルエンザの理解
営みを変えられるか?
豚と家禽のウイルスの再集合と関連する要因
Lina AWADA
2011
豚と野生水禽類のウイルスの再集合と関連する要因
;高い
:低い
:豚飼養頭数が少ない
豚と家禽が多数飼
養されている日本を
含めた先進諸国は、
家禽における流行が
豚に波及する恐れが
あり、H5N1が豚に感
染することでヒト・ヒト
感染を起し得る新型
H5N1となって世界流
行する可能性がある。
インドとベトナムは、
豚の飼養頭数および
野生水禽類の飛来が
多く、接触の機会も多
いことから、水禽類の
ウイルスが豚に感染
することで再集合のリ
スクが高い。
アメリカの厳しいトリインフルエンザ対策
アメリカ家禽鶏卵輸出協会ニュースレター 2004年5月号
2月17日にテキサス州の農場でトリインフルエンザH5N2が発生
し、約20年ぶりの高病原性トリインフルエンザを確認した。・・・。その
後、追跡調査の結果、汚染地域の鶏群がヒューストンにある2つの生
鳥市場に出荷されていることが確認された。・・・
ニューヨークの生鳥市場における鳥インフルエンザが一部の輸出を停止させている
12 January 2013
全国養鶏協会によると、米国農務省国立獣医療研究所は、ニュー
ヨークの生鳥市場でおそらく低病原性のH5N1型ウイルスを確認して
いる。・・・以下の日付は日本向けとしては現在不適格である。
かつてはアジア系移民が利用していたが、現在では「イスラム教の
戒律に従って解体処理することを求める顧客が占めている」との記載
もある。菜食主義団体のサイトでは、「生鳥市場は宗教儀式によると
殺のために販売している」と奴隷貿易時代に遡るブードゥー教の問題
まで取上げている。生鳥市場は、発展途上国だけの問題ではなく、宗
教や食文化も絡み、移民を受入れている欧米諸国にも複雑な問題と
なっているようだ。
台湾における狂犬病の再発生
台湾からOIEへの緊急通知 2013年7月17日
疫学的注釈:南投県で2012年5月と12月、雲林県で2012年11月に
見つかった死亡した野生のイタチアナグマが、2013年6月17日に国立
台湾大学によって狂犬病疑い症例としてRT-PCR法で検出された。そ
れまでに、国立台湾大学は剖検を含めた一連の検査を実施した。6ヶ
月の間に行われた免疫組織化学とRT-PCRによって犬ジステンパーと
仮性狂犬病(オーエスキー病)の可能性は排除された。その後国立台
湾大学は2013年6月に狂犬病のRT-PCRを実施し、最初の陽性結果
が6月24日に報告された。そのサンプルは、最終診断のため6月26日
に国立研究所に送られ、国立研究所はRT-PCR法、直接蛍光抗体法
(検査には生の脳組織を使っていない)、免疫組織化学法を実施し、そ
れらの検査で陽性結果が得られた。蛍光抗体法をするための生の脳
組織(OIEの基準検査法)がなかったので、これらの症例を確認するた
め、国立研究所は7月16日に専門家会議を開催して討議し、これらの
症例を狂犬病と確認した。これらの死亡野生動物が発見された地域
において、徹底した予防接種活動が行われ、監視活動が続いている。
狂犬病発生動向調査で確認されてこなかった
動植物衛生検査・検疫部(BAPHIQ):1999年以来、放浪犬および
野良猫の死体について検査を実施、2008年以来、コウモリの全ての
種を監視(China Post, 7/18)
感染源
動物衛生研究所長:台湾イタチアナグマから採れたウイルスの塩基
配列は中国で見つかっているものと最も近い。密輸され、山野に放た
れた中国からの野生動物にイタチアナグマが咬まれた可能性は排除
できない(Focus Taiwan, 7/24)
発生予測
台湾獣医師会副会長:報告症例は広域に及んでおり、ウイルスの
存在が拡大していることを示唆(China Post, 7/19)
農業委員会 (COA):確認症例数が増加し続け、1年から1年半後に
ピークに達する可能性があると警告(Focus Taiwan, 7/25)
別種の感染確認
台東県でヒトを咬んだ後で捕獲されたアジアジャコウネズミが狂犬
病感染疑い( Focus Taiwan, 7/26 )、確定は7/30発表
再発生から10日間、どこまで広がるのか・・・・
イタチアナグマ(Ferret-badger:Melogale moschata)
頭胴長約33 - 45cm、尾長約15 - 23cm、体重1 - 2kg程度
フォーカス台湾
シナイタチアナグマ
Melogale moschata
シナイタチアナグマには7の亜種が認められ イタチ科
る。足指の数は前後共に5本である。これによっ
アナグマ亜科(6属)
て、足指の数が4本のタヌキなどと足跡を見分け
イタチアナグマ属
ることが出来る。
ボルネオイタチアナグマ
多くは海抜100 - 2100mの山林に生息する。
シナイタチアナグマ
植物食中心の雑食性で、果実、種子、小動物、
ジャワイタチアナグマ
鳥、鳥の卵などを食べる。夜行性。
ビルマイタチアナグマ
妊娠期間は2ヶ月で、1 - 3子を出産する。
ベトナムイタチアナグマ
アジアジャコウネズミ(Asian House Shrew:Suncus murinus)
体長12-16cm。体重は雄が45-80g、雌が30-50g
Focus Taiwan
ジャコウネズミ:Suncus murinus
サバナや森林、農耕地、人家等に生息する。
トガリネズミ科
可動域は狭い。
ジャコウネズミ属
食性は肉食性の強い雑食性で昆虫類、節足
アジアジャコウネズミ
動物、ミミズ等を食べるが植物質を摂取するこ
リュウキュウジャコウネズミ
ともある。
トガリネズミ科は、齧歯類
繁殖形態は胎生で、1回に3-6匹の幼体を出
(ネズミ目)ではなく、系統的
産する。
にはモグラやハリネズミと近
アジアジャコウネズミの狂犬病罹患例は初めて
縁のグループである。日本
であり、たまたまヒトを襲ったことが発見の契機と
には2亜科4属12種が分布
なった。こうした小型獣が狂犬病の感染環に重要
する。
な役割を果たすとは考えられていない。
狂犬病予防接種率
台北市動物保護事務局(APO):50%以上(China Post, 7/18)
放浪犬の捕獲とペットの予防接種
農業委員会 (COA) :政府は放浪犬の捕獲と予防注射の活動を強化、
発生地のペットに無料で予防接種。(Focus Taiwan, 7/27)
動物用ワクチンの備蓄量
CDC:発生地域に動物用ワクチン77,000ドースを既に配布(7/29)
BAPHIQ部長:政府が購入する500,000ドースのワクチンが8月末に
到着予定で、発生地域外の無料接種はそれ以降(7/29)
BAPHIQ部長:150 万頭の犬と猫の80%、120 万頭に予防接種す
るため8 月中旬までに合計 103 万ドースを入手(7/30)
BAPHIQ部長:残り40,000ドースしか持っていない(7/31)
CDC:ワクチン会社が輸入した403,000ドースが8月6日に到着
(8/8)
経口生ワクチン散布
動植物検疫所長:住民を危険にさらす空中投下する計画はない
(7/28)
咬傷事故
台湾CDC:7月21日午後4時から29日午後4時の間に、狂犬病ワク
チンを求める全部で245名の動物に咬まれた症例があった。それらの
申請者の内115名が認められ、台北7名、台湾北部9名、台湾中部33
名、台湾南部25名、高雄市と屏東市14名、台湾東部20名、国外7名
であった。その内16名がヒト狂犬病免疫グロブリンの使用が認められ、
うち5名は予防措置を受けた(7/30 )
台湾CDC:8月5日午後4時から8月6日午後4時の間に、動物咬傷を
受け狂犬病ワクチンを申請した新たな156名を受理した。それらの申
請者の内122名が承認された(8/8)
ペットの遺棄
農業委員会 (COA):22ヶ所の保養林にペットの持込みを禁止(7/25 )
行政院長:ペットを遺棄しないよう要請(7/27)
南投県:5頭の放浪犬が山岳部の道路で死亡、毒殺された可能性
(7/28)
ペットの犬と猫がパニックに陥った飼い主に捨てられる傾向がある。
当局はペットの遺棄の傾向を直ちに止めなければならない。これらの
捨てられたペットの一部は、海外から密輸された外来動物だ(8/2)
放浪動物の保護
公的動物避難所における現在の方針によれば、12日以内に引き取
り手がないと多くの動物は安楽死させられる。避難所に持ち込まれる
動物数の増加は安楽死までの期間の短縮を余儀なくするだろうと、動
物の権利活動家は懸念を表明している(8/8)
動物保護団体は、政府が排除政策に代えて不妊化を採用する希望
を持って、TNR―捕獲(Trap)・去勢(Neuter)・解放(Return)―を推
進してきた。予防接種を受けた多数の不妊化した犬と猫が、ヒトと感染
動物との間の防御線を築くことになるだろう(8/10)
消費者文教基金會:2011年にペット犬の頭数は153 万頭、ペット猫
の頭数は37万頭と推定され、野良犬の頭数は2009年に約85,000と
推定されているが、ごく最近の頭数は入手できない(8/13)
狂犬病により地主はペットを敬遠
地主の意向調査で、ペットを所有していないことを条件に挙げた割
合は、これまでの約 30%から40.5%に上昇。大都市圏の台中市と新
台北市はペットに非友好的な地主が最も多く、それぞれ 55% および
54%を占めた(8/17)
生活の様々な局面に影響・・・
分離ウイルス株の接種試験
農業委員会 :14頭のビーグル犬を用いて狂犬病ウイルスの感染性
を調べる研究計画を公表(8/16)
国立台湾大学獣医学部葉力森教授は、狂犬病ウイルスが全ての温
血動物に感染し得ることは既に証明されており、14頭の罪のない子犬
の命を犠牲にする別の実験は全く必要がないと述べた(8/17)
これが動物愛護団体を勢いづかせ、メディアを狂わせた。
性質が多少異なる様々なウ
イルス株の一群を、genotype
1 (狂犬病ウイルス)としてまと
めている。すなわち、病原性
や感染性を異にする集団であ
り、一様ではない。
また、イタチアナグマが新た
な保有動物種であるかどうか
を調べることは、アジアにおけ
る野生動物の狂犬病を理解す
る上で不可欠である。
ヒト用ワクチンの備蓄量
保健省(DOH):400ドースしか在庫がなく、それは40,000から
50,000人の獣医師、家畜防疫員、動物飼育者およびトリマー業者に
十分ではない(7/19)
CDC:2,500ドースが7月26日に台湾に到着(7/20 )
CDC副所長:8 月末までに27,580ドースが準備される(7/30 )
ヒト用ワクチン接種の優先順位(曝露後予防処置)
保健省(DOH):発生地域で野生動物に咬まれた者に対する無料ワ
クチン接種計画( 7/20 )
台東市で一人の男性がイタチアナグマに襲われ、それが狂犬病陽
性と判明(7/24)
農業委員会(COA):優先順位は、リスクの高い地域の住民よりも
犬捕獲員と山岳警備隊員に与えられる( 7/24 )
保健当局:イタチアナグマまたは狂犬病が確認された地域の犬や猫
によって傷ついた者だけに狂犬病予防接種( 7/30 )
郵便労働組合:1昨年3人中2人の郵便配達員が犬に咬まれた(8/2)
CDC:2012 年 8 月 1 日から今年7 月 31 日の間に台湾イタチアナ
グマに咬まれた者を狂犬病のワクチン接種を無料で行う対象(8/2)
発症日別の発生経過
3例目までは7月17日の確定診断日。この図の他に遡及調査で2010年に2
例、2012年に1例、2013年1月と3月に各1例が見つかっている。
8月1日に中央対策本部)を設置:
各部局は懸命に努力していたが、
政府としての統一性に欠け、とくにメ
ディア対策が不十分で、憶測からパ
ニック状態に陥った。
9月10日
ペット犬が感染
10月30日時点
206例
動物保護団体が野犬の捕獲・去勢・解放
(TNR)をこれまでも要求していたが、その経
費を自分たちが出すのなら兎も角、犬嫌いも
大勢いる中で税金を使うことは困難だった。そ
れを非常事態に持ち出し、マスコミも同調した
ことが混乱を深めた。その延長線として、「動
物実験反対、ビーグル犬の命を護れ」の大合
唱が連日報じられた。
31
10月30日現在
206例
45
10
11
3
17
14
71
4
この図の他に遡及調査で2010年に2例、2012年に1例、
2013年1月と3月に各1例が見つかっている
中国本土における狂犬病の推移
WHO中国駐在員事務所
狂犬病は1980年代末まで中国のほとん
ど全ての省で高度に流行しており、1987
~89年の期間には年間5,200名以上の死
亡が報告された。
それ以降、死亡数は劇的に減少し、
1990年に3,500名となり、1995年にはわず
中国においてヒトが狂犬
か200名になった。
病に曝露される原因と判明
その後増加の10年間が続き、
している動物種は、主に犬、
ピークの2007年には3,300名の
猫、豚、牛、フェレットおよび
死亡が報告された。
スカンクである。
2011年の狂犬病による死亡数
は2000名以下まで減少した。
犬は国内における狂犬病の主要な
保有動物であり、伝播動物である。北
京における疫学調査は、ヒトの狂犬病
による死亡の大半は犬(85-95%)と猫
(5%)による暴露である。
狂犬病による死亡数の年次推移(中国CDC)
中国における月別に見たヒト狂犬病症例数
患者数と死亡数の差は、
曝露後予防処置による。
6月頃から増加し、9~10月をピークに減少
している。野犬の活動の活発化と農作業が
関連していると思われる。
香港の狂犬病の経験
1980年10月4日に、香港は25年振りにヒトの狂犬病による死亡を経
験した。それまでの香港における最後の症例は1955年だった。25年
の清浄がどのように崩れ、そして早期に回復できたか?
犬の罹患数
ヒトの罹患数
香港動物愛護協会:狂犬病のリスク
ある種の行動が香港のリスクを高めている。中国(およびその他の
地域)からの動物の密輸入は香港にとって深刻な脅威となっている。
一部の国民は中国に買い物に行き、かわいい子犬や子猫を衝動的
に購入しており、ペットショップが香港に普通のこととして配達してい
る。多くの人々は子犬と子猫が狂犬病を運ぶことができることに気付
いていない。リスクを認識していないだけでなく、彼らの行為による密
輸入の動物に狂犬病が存在することの結果を過小評価している。
香港は1997年ま
で英国領だった。
英国統治下の自由
主義を享受してき
ており、人権、民主
主義、動物福祉な
どに関して西洋文
明の原則を貫いて
きていると思う。
香港動物愛護協会:出来事の時系列
0日目(1980年10月4日):25年ぶりにヒト狂犬病の最初の犠牲者、
Cheung Yuk-Lam君8歳が死亡。家の外で、彼は野良のシェパードに
肩を咬まれた。彼は医学的治療を求めず、後に未認可施療師の処置
を受けた。彼の母はこの病気について聞いたことがなかった。
1日目(10月5日):香港は狂犬病警報
当該地域を危険地帯と宣言。この地域からの犬の出入りは一切禁
止。識別入れ墨のないワクチン未接種の犬は捕獲し、安楽死させら
れたが、人々はそれらをペットだと主張し、検疫下に置き後で返却す
べきと要求した。
2日目(10月6日):当該地域で202頭の犬を捕獲、8頭は処分のため
所有権放棄。
3日目(10月7日):イギリス兵は、疑わしい犬に麻酔銃を打ち、脅威
を与える犬を射殺する命令を受け、対人用化学スプレーで武装。
漁船の犬は狂犬病常在地の広東から、狂犬病を持ち込む疑い。
狂犬病予防接種チームが3ヶ所の魚市場で作業している。
政府漁業局職員は漁船から犬の上陸を阻止している。
4日目(10月8日):政府は犬の予防接種を奨励するため、15ドルの
犬の登録料を撤廃し、予防注射を無料化した。
5日目(10月9日):中国国境の20km平方を犬の移動制限地域に指
定。「香港では一症例も確認されていないので、放浪しているワクチ
ン未接種の犬を排除する以外に方法はない」と、農業漁業省のJ.
Riddell-Swan長官が法制局に告げた。
6日目(10月10日):農業漁業省は200名を臨時雇用し、1455ドルの
給与に加えて嫌な任務に対して105ドル支払う。
7日目(10月11日):中国当局は、広東省で私的に所有している全て
の犬を射殺すると宣言。美南新聞が広東省東莞で12名が狂犬病で
死亡したと伝える。咬まれて死亡した12名中11名は予防接種がな
かったことによる。
12日目(10月16日):新界で2頭目の犬が狂犬病で死亡。
8歳の男児がHak Chaiと名付けられたペットの犬に咬まれた。その
犬はその後狂犬病で死亡した。その10歳のチャウチャウは、野良犬
集団に最近襲われた。
この時点で、農業漁業省は2385頭の犬を殺処分し、16588頭に予防
接種した。全部で973名の人々が予防接種を受けた。
15日目(10月19日):錦田で3頭目の犬が狂犬病で死亡。大埔の三
門仔においてもこの10週間で10頭の犬が不審死した。
16日目(10月20日):0日目から安楽死させた犬は全部で2832頭で
あり、29562頭に予防接種した。犬の所有者の多くが予防接種のため
発生地域外に犬を移動させようとしている。しかし、未接種で未登録
の犬は当局によって検問所で止められ、殺処分される。
22日目(10月26日):4頭目の犬が狂犬病で死亡。
中国の帆船ジャンクが頻繁に訪れ、不法移住がいる吉澳島で漁場
監視犬が狂犬病で死亡した。驚きパニックになった島民は、100頭の
犬を引き渡し、殺処分することに同意した。
25日目(10月29日):新界北区上水で12歳の少女を咬んだ後で5番
目の狂犬病罹患犬が死亡
27日目(11月2日):中国当局によって大規模な狂犬病制御活動が
始められた。広東省保健当局は、深圳の全ての犬を殺処分するよう
厳命した。その後に導入される全ての犬は予防接種される。香港と
広東で船に積まれた犬は上陸できず、岸に上陸した犬は射殺。
38日目(11月11日):狂犬病で2人目の犠牲者。治療を求めなかっ
た。
発生後1ヶ月 発生後2ヶ月
2名
2名
ヒトの死亡数:
7名
12名
狂犬病が疑われる動物に咬まれた人数:
8頭
動物の死亡数:
57,000頭
71,659頭
予防接種した犬の頭数:
13,890頭
34,570頭
殺処分した犬の頭数:
●
●
●
●
●
貴重な教訓
香港の発生の6ヶ月前に近隣の広東で狂犬病が流行した。
狂犬病は、漁船に乗せられて国境を越えたペット犬によって香港
に持込まれたと考えられた。
狂犬病に対する地元の意識が低かった。感染区域の多くの人々
は狂犬病発生していることを理解しなかった。
発生の深刻さにもかかわらず、人々は自分の犬を閉じ込めるか、
または検疫のために政府に引き渡すことを拒否することによって、
封じ込めの努力を妨げた。
犬は、必要な抗体を産生するまでに狂犬病予防接種後3〜4週間
を必要とする。発生時のみ予防接種は、遅すぎる。
東南アジア地域の各国におけるヒト狂犬病症例の年間分布
WHO東南アジア地域事務所(WHO SEA), 2012
国
バングラデシュ
ブータン
北朝鮮
インド
インドネシア
モルジブ
ミャンマー
ネパール
スリランカ
タイ
東ティモール
計
ヒト狂犬病症例の年
間推定数
2000–2500
<10
入手不可
18,000–20,000
150–300
0
1,000
<100
<60
<25
0
21,345–23,995
ヒト狂犬病症例の100
万人当り推定数
13
3
入手不可
18
1.3
0
22
4
3
0
0
WHOは全世界で推定55,000人が死亡しているとし、その大半がアジアとアフリカ。
インドネシア狂犬病による死亡者数 (WHO)
1988 1990 1991 1992 1993 1994 1995 2002
年
3
3
3
1070
89
0
50
52
人数
犬の狂犬病
バリ島は歴史的に狂犬病が存在し
スラウェシ島:年間700~800件以上。 ていなかったが、2008 年11月に犬
スマトラ島:毎年600~700件。
の狂犬病を発見。感染した犬が漁
カリマンタン島:30件以下。
師の船で持ち込まれたと推定。
ジャワ島:ほとんど発生がない。
流行初期に犬の殺処分に抵抗が
あり拡大した。約6万頭が殺処分
され、約22万頭にワクチンが接
種されたが、発生は止まらず。
2011年3月に風土病宣言。
森山浩光氏
2006年
ニアス島では2010年2月に発生
し、検査した446頭中44%が抗体
陽性だった。総頭数73,878頭の
内28,234頭が殺処分され、
45,000頭にワクチン接種された。
この流行で1129名が咬まれ、26
名が死亡。2011年9月に風土病
WHO東南アジア地域事務所 2012: 東南アジア地域における犬に
起因するヒトの狂犬病撲滅のための戦略的枠組み
2009年9月にハノイで開催されたアジア狂犬病財団会議は、2020年
までにヒトと犬の狂犬病撲滅の目標を達成する決議を採択した。
工程表(2012~2016)
*地域的に調整されたヒト狂犬病撲滅計画
*早期かつ適切な曝露後処置を利用可能にする
*高リスクグループに曝露前処置を奨励
*責任ある犬の所有権および咬傷の洗浄を地域社会で推進
流行地において利害関係者と協力し責任ある犬の所有権を推進
咬傷の洗浄に関する注意喚起
地域社会に根差した狂犬病撲滅活動の推進
*利害関係者と連携してヒト狂犬病撲滅の協力を推進
*狂犬病清浄地域の検証と維持
1. 合同監視委員会:保健省、農畜産省、財務省、内務省、自治省
2. 公衆衛生の要素:保健省
3. 動物衛生の要素:農畜産省、地域市民団体、動物衛生部
4. 部門間の連携および両方の要素が資源を共有するための調整
面積
人口
人口密度
台湾
九州7県
九州8県
42,190 km2 44,467 km2
35,980 km2
23,236,000人 13,111,899人 14,525,622人
327人/km²
311人/km²
668人/km2
数十年に亘って清浄を維持してきても、麻薬と一緒に狂犬病罹患動
物を密輸入すれば、・・・。病気になっても開業医に連れて行けず、山
に捨てに行く。そして、知らない間に山の野生動物の間に広がる。
1950年代には日本の山に少な
かった狂犬病保有動物種(キツネ)
が、現在ではキツネに加えてアライ
グマも増えている。アライグマは飼
いきれなくなった持主が捨てた結果
であり、狂犬病のイタチアナグマを
山に捨てる習慣は整っている。ま
た、緊急事態に大騒ぎして殺処分に
抵抗することも、BSEや口蹄疫の騒
動などで訓練されている。
平時のリスクコミュニケーションの重要性
麻薬の密輸入がある
以上、それに付随して野生
動物を含む様々なものが
密輸入されている恐れがあ
る。海岸線に「密入国、密
貿易に警戒しよう」の立て
看板を立てる。海上保安庁
や警察だけでは発見でき
ず、国民の協力が必要。
●
緊急事態において議論をしていては、制御活動に支障をきたす。
●
想定し得る最悪の事態について事前に十分議論し、制御措置に
ついて理解を求めておく。
●
緊急事態における指揮系統を確立し、整然とした制御活動をす
るとともに、各種団体、地域社会の人々およびメディアの協力が得ら
れるように担当者を決めておく。
●
御清聴ありがとうございました