初級ミクロ経済学 ミクロ経済学Ⅰ -生産者行動理論- 2015年6月12日 古川徹也 2015年6月9日 ミクロ経済学 1 損益分岐価格と生産中止価格 企業の利潤最大化条件 価格=限界費用 が基本的なルール このルールから,限界費用曲線を(個別)供給 曲線と見なすことができるようになる。 しかし,限界費用曲線は完全に(個別)供給曲 線に一致すると言えるのか? 2015年6月9日 ミクロ経済学 2 MC ( y ) AC ( y ) AVC ( y ) 次の2つの価格 を考える MC AC AVC p BE pSD 0 2015年6月9日 y ミクロ経済学 3 利潤の計算式(2通り) 利潤=収入-総費用。これを R( y ) C ( y ) と表す。 この式は,平均費用(AC)を用いた式と,平均可変費 用(AVC)を用いた式の2通りに表せる。 R( y ) C ( y ) py C ( y ) ( p AC ( y )) y ( p AVC ( y )) y F これらが前のグラフの2つの点に対応する。 2015年6月9日 ミクロ経済学 4 価格と平均費用の関係 生産量が y1 のとき,利潤は 1 py1 C ( y1 ) ( p AC ( y1 )) y1 と表せる。 y1 0 であるケース( y1 0 を除いたケース)を考える と,以下のことが言える。 p AC ( y1 ) のとき,利潤はプラス p AC ( y1 ) のとき,利潤はゼロ p AC ( y1 ) のとき,利潤はマイナス 2015年6月9日 ミクロ経済学 5 価格と平均費用の関係からわかること 平均費用曲線はU字型をしており,価格は水平線で示す ことができるから 1. p AC ( y ) となるような y を見つけられる場合,利潤 最大化をしたとき,利潤はプラスとなる。 2. ある y で p AC ( y) となり,他の y では p AC( y) と なるような場合,最大利潤はゼロとなる。 3. どのような y を選んでも p AC ( y ) となる場合,利潤 最大化をしても利潤は必ずマイナスとなる。 2015年6月9日 ミクロ経済学 6 損益分岐点と損益分岐価格 限界費用曲線と平均費用曲線の交点をとおる価格を pBE とする。 価格が pBE のとき,pBE MC ( y ) AC ( y ) が成立する生 産量で利潤はゼロとなり,他の生産量では利潤はマイナ スとなる。つまり最大利潤はゼロとなる。 このような価格を損益分岐価格(Break-Even price)と呼び, 交点のことを損益分岐点(Break-Even point)と呼ぶ。 p pBE のとき最大利潤はプラス,p pBE のとき最大 利潤はマイナスとなる。利潤がプラス(益)かマイナス (損)かの境目(分岐)となる価格である。 2015年6月9日 ミクロ経済学 7 MC MC ( y ) AC ( y ) AC 損益分岐点 損益分岐価格 AVC p BE 0 2015年6月9日 y ミクロ経済学 8 価格と平均可変費用の関係 生産量が y1 のとき,利潤を次のように表す。 1 py1 C ( y1 ) py1 VC ( y1 ) FC ( p AVC ( y1 )) y1 FC y1 0 であるケース( y1 0 を除いたケース)を考える と,以下のことが言える。 p AVC ( y1 ) のとき,利潤は FC よりも大きい。 p AVC ( y1 )のとき,利潤は FC と等しい。 p AVC ( y1 ) のとき,利潤は FC よりも小さい(赤字が 増す)。 2015年6月9日 ミクロ経済学 9 生産をやめるオプション 生産をやめれば,すなわち y 0 とすれば,企業 の赤字は FC となる。 p AVC ( y1 ) のケースは,y 0 とすることで赤字が かえってふくらむことを意味する。つまり,企 業にとっては y 0 とすることが利潤最大化であ る。 2015年6月9日 ミクロ経済学 10 操業停止点と操業停止価格 限界費用曲線と平均可変費用曲線が縦軸と交わる点での 価格を pSD とする。 価格が pSD のとき,pSD MC ( y ) AVC ( y ) が成立する生 産量で利潤は FC となり,他の生産量では利潤はそれ よりも小さくなる。つまり最大利潤は FC となる。 p SDを操業停止(Shut-Down)価格と呼び,交点のことを操 業停止点と呼ぶ。 p pSD のとき,企業は p MC ( y ) を満たすプラスの y を選ぶことが利潤最大化であり,p pSD のときは y 0 とすることが利潤最大化である。 2015年6月9日 ミクロ経済学 11 MC ( y ) MC AVC ( y ) AVC 操業停止価格 pSD 0 2015年6月9日 操業停止点 y ミクロ経済学 12 MC ( y ) AVC ( y ) 個別企業の供給曲線 MC 供給曲線 AVC pSD 0 2015年6月9日 y ミクロ経済学 13 MC ( y ) AVC ( y ) 個別企業の供給曲線 MC AVC pBE pSD pSD p pBE :赤字だけれど生産すべき 0 2015年6月9日 y ミクロ経済学 14 練習問題 短期の生産関数が, y L であるとする。また,K 8 とおく。 問題1: w 2, r 1 のとき,短期の総費用関数と総費用曲 線を描きなさい。 問題2:限界費用曲線,平均費用曲線,平均可変費用曲線 を図に描きなさい。 問題3:生産物の価格が10のとき,利潤を最大にする生産 量と,そのときの利潤を求めなさい。 問題4:損益分岐価格,操業停止価格を求めなさい。 2015年6月9日 ミクロ経済学 15 長期の企業行動 短期であっても長期であっても,企業の行動は 利潤最大化として特徴づけられる。 短期と長期の違い:生産要素がすべて可変生産 要素 すべて可変によって・・・ (1)「生産要素の代替」という問題が発生 (2)「赤字であっても生産を続ける」がなくな る。 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 16 長期の費用曲線の考え方(1) 短期の費用曲線の包絡線をとったものが長期の 費用曲線。 各生産量に対して,もっとも費用が低くなるよ うな資本の投入量を選ぶことができる(短期で は固定要素だった)。その結果,それが選べな いときにくらべて費用を下げることができる。 → 最適な生産要素投入量を選ぶことができる。 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 17 長期の費用曲線の考え方(2) 等量曲線:同じ生産量を生産する生産要素の組 合せを平面にあらわしたもの。無差別曲線と同 じ考え方。 w 等量曲線上のそれぞれの点をとおり,傾きが r となる右下がりの直線を描く。その直線の縦軸 との交点は,必ず総費用を r で割ったものと なっている。 したがって,総費用最小化=縦軸との交点を もっとも原点に近づけること。 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 18 等量曲線と等費用直線 K C1 r ( L1, K1) C* r C wL rK ( L* , K * ) ( L1, K1) x0 f ( L, K ) L 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 19 長期の費用曲線の考え方(2)続き 等量曲線と等費用線の接点を考えることで,各 生産量に対して費用を最小にする生産要素の組 合せを考えることができる。それが生産要素需 要関数と言える。 生産要素需要関数を総費用を求める式に代入し たものが,費用関数である。これを図に描いた ものが総費用曲線となる。 C ( y; w, r ) wL( y; w, r ) rK ( y; w, r ) 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 20 短期と長期の違い 短期の場合,固定生産要素が与えられると,生 産量と可変生産要素需要とは1対1の対応関係 ができて,生産要素需要量は生産要素の価格に 依存しない。 C ( y ) wL( y ) rK しかし長期の場合には価格に依存する。これは, 生産要素価格に応じて企業がもっとも費用を安 くできる生産要素の組合せを選べるということ を意味している。 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 21 等量曲線と等費用直線 K 労働の価格が相対的に高い場合には, 1の組合せ,資本の価格が相対的に 高い場合には,2の組合せを選ぶ。 ( L1 , K1 ) ( L2 , K 2 ) L 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 22 C( y) 長期の費用関数 C( y) わずかでも生産するには一 定の費用がかかるとする F’ y 0 2014年11月07日 初級ミクロ経済学 23 この費用関数はいったい何? 生産量をゼロとする(完全に生産を止め る)ときは,費用をゼロとすることがで きる(長期だから)。 生産量をごくわずかでも生産するにはF’ の大きさの「固定」費用のようなものが 必要となるとする。 短期ではF’は生産量ゼロでも必要となる が,長期では生産量ゼロのときゼロにで きる費用である点に注意。 2015年6月9日 ミクロ経済学 24 LMC ( y ) LAC ( y ) 長期の限界費用曲線と平均費用曲線 LMC ( y ) LAC ( y ) p* 0 2014年11月07日 y 初級ミクロ経済学 25
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