○金融仲介構造の違いの要因 ①歴史的経緯: - 日本:後発資本主義国として銀行中心で始発 - 米国:Unit Banking Systemの伝統 ②株式投資に対する考え方 - 日本は短期的値上り狙い、米国は長期投資 ③投資家のリスク許容度の違い - 日本人:安全性重視、アメリカ人:収益性重視 1 ④ - 金融自由化はアメリカが先、日本はその後 - 預金金利の自由化:米1983、日1993 - 株式の委託売買手数料自由化:米1975、日1999 2 ④の参考:金融自由化の進展 ○金融制度の歴史的展開の中の現在:日本の状況 • 1990年代後半~:金融・証券制度の規制緩和・自由化 • 戦後~80年代:安定化を重視した規制された金融制 度 – 金利規制・業務分野規制・内外資金交流の遮断・固定相場 制度・護送船団方式 • 1930年代の不安定化した経済・金融の状況 • 19世紀後半~第一次大戦:金本位制の下で自由な金 融制度 – 国際的資本移動の自由、株式市場も発展 • こうした歴史的展開は、日本だけのものではなく、世界 各国に共通 3 ⑤ – 機関投資家:年金基金、投資信託、保険 – 年金: • 米:証券市場で積極的に運用、確定拠出型年金が発達 • 日:公的年金の比率が高く、国債中心に安定的に運用 • 確定給付型年金:国・企業が運用責任を負い、年金給付額 が確定 • 確定拠出型年金:個人が運用を行い、年金拠出額は確定し ているが、給付額は運用成績により違う – 投信:米:80年代から幅広い中流階級に浸透 ⑥ – 日本は長期停滞(「失われた10年」)、米国経済は活 性化 –→ :米:18.5%、日:-4% 4 ○ 日本における金融仲介構造の変化 間接金 直接金 融 融 相対 48% 型 市場 型 (15%) (10%) 間接金融中心 ( 金融システム) ⇒ 間接金融、直接金融 の発展 ( 金融システム、金融 チャネルの多様化) 5 ○日本における金融仲介 構造変化の要因・背景 ①金融仲介チャネルの多様化 ②幅広い投資家へのリスク移転・リスク分担 ③多様な資金運用対象の提供 ④コーポレートガバナンス機能 ⑤市場型金融のメリットの活用 6 ①銀行による金融仲介チャネルの機能低下 (土地担保主義、不良債権問題、貸し渋り、 株式の持合い) ⇒ - 投信による株式・社債の購入 - 貸出債権の証券化 7 ○金融仲介チャネルの多様化 ・金融仲介:資金余剰主体から不足主体への資金移転を仲介する機能 ・金融仲介機関だけでなく、証券市場や証券市場で活動している金融 機関も金融仲介機能を果たしている ・金融(仲介)チャネル:資金余剰主体から不足主体へ資金が移転する経路 銀行 資金余剰 主体 証券化 資金不足 主体 投資信託 証券市場 8 ②すべての金融リスクが銀行に集中 – 貸倒れリスク、不動産価格リスク、株価リスク、 破綻企業を抱えこむリスク 預金という元利保証商品による資金調達 ⇒幅広い機関・投資家へのリスク移転・リスク分担 株式持合い解消の受け皿としての投信・個人投資家、 証券化を通じる貸出リスクの投資家への移転、 企業の不動産保有・銀行による不動産担保貸出 →不動産投資信託・不動産ファンドによる不動産保有・ 不動産担保に依存しない銀行貸出 9 ③これまで – しかし、個人資産の蓄積、個人金融ニーズの多 様化、リスク負担能力の向上 ⇒多様な資金運用対象の提供、 – 銀行預金はワンパターンだが、投資信託は様々 な特性を持った金融商品を自由に作り上げること ができる。 – 例えば、リスク限定型投信、ご当地ファンド、不動 産投資信託 10 ・多様な投資対象の提供 • リスク限定型投信 – 償還時元本の80~90%を確保、利益は株価 指数に連動 • ご当地ファンド – 特定地域の企業を投資対象にした地域密着型 – eg.静岡ベンチマークファンド、九州特化型ファンド • 高配当株投信 – 予想配当利回が高い銘柄に投資、財務状況が悪い 企業は除外 • 不動産投資信託J-REIT – 投資対象が証券ではなく、オフィスビル等の不動産で あり、そこからの賃貸料を投資家への配当に回す 11 ・ご当地ファンドの例:東海3県ファンド (東京海上火災アセットマネジメント) 12 ・不動産投資信託の銘柄 13 ⑤市場型取引のメリット: リスク管理と経済構造の転換 • 従来の相対型間接金融 – 長期継続的取引関係:Relationship重視 – 慣れ合い・先送りになり易い – 大胆なリストラや産業構造転換が難しい – 市場の動きから隔離されているため、銀行側 にリスク・リターン感覚が薄い、リスク管理意 識が弱い 14 • 市場型取引 – 1回毎の取引の経済合理性を追求: Transaction重視 – ドライな取引、変化に応じて取引を見直し – 市場からの圧力による大胆なリストラや産業 構造転換 – 市場の動き、市場価格変動の中で金融取引 参加者がリスク・リターンに敏感になる。 – 金融機関にとって、リスク管理が競争上の決 め手 15 • 第1章参考文献 – 「日本の家計の金融資産選択行動」 『日本銀行調 査月報』1999年11月号 – 池尾和人『銀行はなぜ変われないのか』中央公論 社.第3章 2003 – 堀内昭義・池尾和人編『日本の産業システム9:金 融サービス』NTT出版.第2章 2004 – 白石渉『金融のワンストップ・ショッピング』清文社. 第5~7章 2005 – 北原徹「金融システムの市場化:アメリカと日本」『月 刊資本市場』2007.6月号 16
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