数理論理学 第5回 茨城大学工学部情報工学科 佐々木 稔 前回までのあらすじ 命題論理の公理系 形式的証明 演繹定理 完全性定理 配布資料は以下からダウンロードできます http://sas.cis.ibaraki.ac.jp/logic/ 前回の問題1 P ⇒ Q , (P ⇒ Q) ⇒ (Q ⇒ P)├ P ⇔ Q 公理1より、 (P ⇒ Q) ⇒ (Q ⇒ (P ⇒ Q)) よって、 Q ⇒ (P ⇒ Q) 公理2より、 (Q ⇒ (P ⇒ Q)) ⇒ ((Q ⇒ P) ⇒ (Q ⇒ Q)) =Q⇒P よって、逆も成り立つ (証明終わり) 前回の問題2 ~(~P ∧ ~Q) , ~P├ Q ド・モルガンの定理より ~(~P ∧ ~Q) = ~(~P) ∨ Q =(~P) ⇒ Q ~P、(~P) ⇒ Q から推論規則より、 Q (証明終わり) 前回の問題3 ├ ~P ⇒ (P ⇒ Q) ~P├ (P ⇒ Q) 公理1より、 ~P ⇒ (~Q ⇒ ~P) よって、 ~Q ⇒ ~P 対偶を取って、 P ⇒ Q (証明終わり) 今週のお題 命題論理と推論 肯定式 否定式 命題論理と推論 これまでは… 命題を変数として論理の構造を分析 今回は 自然言語での推論と命題論理の推論を比較 肯定式(前件肯定) 妥当な推論形式のひとつ 「もし P ならば、Q である。かつ、 P である。 ゆえに、 Q である」 表現形式 P⇒Q P Q ((P ⇒ Q) ∧ P) ⇒ Q 肯定式の例1 前提 「もし暴風警報が発令されたら、学校は休みであ る。」 「暴風警報が発令された。」 結論 「学校は休みである。」 肯定式の例2(1/2) 前提 「今日は水曜日、または木曜日である。」 「今日は水曜日ではない。」 結論 「今日は木曜日である。」 形式化 p: 「今日は水曜日である。」 q: 「今日は木曜日である。」 肯定式の例2(2/2) 証明したい論理式 p ∨ q, ~p├ q 証明 p ∨ q = ~(~p) ∨ q = (~p) ⇒ q ~p であるから、肯定式より、q が成り立つ 後件肯定 妥当でない推論形式のひとつ 「もし P ならば、Q である。かつ、 Q である。 ゆえに、 P である」 表現形式 P⇒Q Q P ((P ⇒ Q) ∧ Q) ⇒ P 後件肯定の例 前提 「もし彼女が月でダンスしていれば、彼女は生きて いる。」 「彼女は生きている。」 結論 「彼女は月でダンスをしている。」 アインシュタインの予測 「もし重力によって光の道筋が曲げられるとす ると、他の真なる物理的事実と合わせることに より、ある星の像が日食時に太陽近くのある 位置に見える」という予測 実験により、「ある星の像が日食時に太陽近く のある位置に見える」ことが示された 結論 「重力によって光の道筋が曲げられる」 これって正しい? 否定式(後件否定) 妥当な推論形式のひとつ 「もし P ならば、Q である。しかし、 Q ではない。 ゆえに、 P ではない」 表現形式 P⇒Q ~Q ~P ((P ⇒ Q) ∧ ~Q) ⇒ ~P 否定式の例1(1/2) 前提 「コイルに電流が流れていれば磁界ができる。」 「磁界ができない。」 結論 「コイルに電流が流れていない。」 形式化 p: 「コイルに電流が流れている。」 q: 「磁界ができる。」 否定式の例1(2/2) 証明したい論理式 p ⇒ q, ~q├ ~p 証明 p ⇒ q = ~q ⇒ ~p ~q であるから、肯定式より ~p が成り立つ 否定式の例2 前提 「もし暴風警報が発令されたら、学校は休みであ る。」 「学校は休みではない。」 結論 「暴風警報は発令されていない。」 前件否定 妥当でない推論形式のひとつ 「もし P ならば、Q である。かつ、 P ではない。 ゆえに、 Q でもない。」 表現形式 P⇒Q ~P ~Q ((P ⇒ Q) ∧ ~P) ⇒ ~Q 前件否定の例 前提 「もしAさんが日立市民であれば、Aさんは人間で ある。」 「Aさんは日立市民ではない。」 結論 「Aさんは人間ではない。」 これって正しい? 前件否定の例 前提 「もし東京で大地震が起きれば、東京で多数の死 者が出る。」 「東京で大地震は起こっていない。」 結論 「東京で多数の死者はでていない。」 これって正しい? 前件否定の例 前提 「もし私がアメリカ合衆国の大統領であれば、議会 の議決を拒否できる。」 「私はアメリカ合衆国の大統領ではない。」 結論 「私は議会の議決を拒否できない。」 これって正しい?
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