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JST/CRDS 社会生態系モデルWS
-科学者とステークホルダーの協業による生態系サービスの可視化と主流化-
持続的利用と生物多様性保全
の調和をはかる生態リスク学
松田裕之
横浜国立大学大学院
環境情報学府環境リスクマネジメント専攻
G-COE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」リーダー
日本生態学会会長 東アジア生態学会連合会長
日本水産学会政策委員長
Pew Marine Conservation Fellow
DIVERSITAS運営委員 日本学術会議連携会員
日本ユネスコ国内委員会MAB計画分科会調査委員
(一社)水産資源・海域環境保全研究会会長
知床と屋久島の世界遺産科学委員会委員
1
要点
• 生態系=非定常、不確実、複雑
+人間の生存・福利・幸福・社会に不可欠
∴ リスク管理が必須 ⇒ 生態リスク学 の提唱
• 科学技術、法制度、価値観、衣食住エネル
ギー(生活)が時代に合わなくなりつつある
– 新たな時代の姿の芽はある。それを体系化する
ことが重要
2
今日の内容
•
•
•
•
•
水産学が育てた持続可能性と順応的管理
マサバ漁業管理の失敗
竹生島のカワウ被害対策事業
エゾシカの順応的管理
リスク管理の基本手順とレギュラトリ科学
3
持続可能性の原点は水産学
• 最大持続収獲量(MSY)理論
犭
(Russell 1931)
• 生態系の特徴は不確実、非定常、複雑
– 資源評価誤差、自然変動、生態系相互作用
• MSY理論はこれらを無視した絵に描いた餅
(Hilborn 2002, Matsuda & Abrams 2008)
dN/dt = r(1 – N/K)N – C
右辺=0が実数解をもつのは
C≦Kr/4のとき(等号がMSY)
– 完全情報、定常状態、
単一種モデル
4
「為す事によって学ぶ」順応的管理
(Learning by Doing; Adaptive Management)
訳語は鷲谷・松田(1997)による
• 継続監視による状態変化に応じて方策を変
える(フィードバック制御)
• モデルと仮説を見直しながら管理する(為す
ことによって学ぶ)
http://www.consecol.org/vol1/iss2/art1/
• 管理自身を仮説検証実験とみなす
– 必然的に、順応的リスク管理になる
5
捕鯨(IWC)が育てた順応的管理
adaptive management
漁獲圧と生産量
• 既往の管理=車の馬力と重量を計算し、
60km/hで走るためのアクセルの踏圧を計算
• 順応的管理=速度計を見て踏圧を調節
初期管理資
源
→資源変動に
応じて捕獲量
持続的利用
を調整
保護対象
0
54%K
1
相対資源量
6
浮魚類の魚種交替
小型浮魚類は非定常
7
Catch in numbers (billion)
漁獲尾数(10億尾)
マサバの乱獲,未成魚捕獲
70年代
80年代
90年代
93年以降
尾数 65.0%
60.0%
87.0%
90.6%
4
0
1
2
3
4
5
6+
3
2
d
1
0
1970
1975
1980
1985
1990
1995
8
未成魚乱獲の日本のマサバと成魚
中心の大西洋マサバの漁獲物年齢組成
大西洋マサバ漁業
=個別漁獲割当IQ
日本=オリンピック方式
ドーナツの内側から
北大西洋2000-2004
日本1970
日本1995
http://www.ices.dk/marineworld/fishmap/ices/pdf/mackerel.pdf
9
もしも、1990年代に、1970、80年代並み
に未成魚を守っていたら?(Kawaiら2003)
10
マサバの未来を読む
資源回復確率(Kawaiら2003)
百
百
万
万
ト
ト
ン
ン
資
資
源
源
回
回
復
復
確
確
率
率
70-80年代の漁獲圧なら
90年代の未成魚乱獲を続けると
取り戻すには20年以上かかる?
11
従来の資源評価と最近の資源評価
未来は一通りには予測できない
漁業者は頭から信じない
5年後に親魚量がBlimit以上
に回復する確率は0.8Fmedで
99%、Frecで70%、Fmedで
18%、Fcurrentでは6%であっ
た(水研センター2012)。
2003年
水産資源評価会議資料より
不確実性を考慮した区間推定
2012年資源評価(マアジ太平洋系群)
マサバ資源回復計画合意
漁獲可能量制度に反映
12
リスク管理の考え方
• リスクの定義=Endpoint、確率、Hazard
– 避けるべき事象Endpointを絞る(死、絶滅)
– Risk = その重篤度Hazard×発生確率
– 絶対安全なものはない=「杞憂」
• リスク評価の前提は未実証
– どの前提を採用したかを記述し、
– どの前提を採用するかの意思決定が重要
リスク評価 13
順応的管理の3つの不確実性
• 測定誤差measurement error
– 現在の状態が不明
– シカの個体数、自然増加率など
• 過程誤差process error
– 自然増加率の年変動など
– 野生生物は自然変動する(漁業者の常識)
• 実行誤差implementation error
– 管理者の思惑通りに実行部隊が動かない
14
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/guide/drive/201110.html
「だろう運転」と「かもしれない運転」
危険を予測した運転を
○ 「危険がある」と認識 →
~ かもしれない運転(自分に
厳しい予測をたてて運転)
× 「危険はない」と認識 → ~
だろう運転(自分に都合の良
い予測をして運転)
15
今日の内容
•
•
•
•
•
•
水産学が育てた持続可能性と順応的管理
マサバ漁業管理の失敗
リスク管理の考え方
竹生島のカワウ被害対策事業
エゾシカの順応的管理
リスク管理の基本手順とレギュラトリ科学
16
M. Murata et al. / Chemosphere 53 (2003) 337–345
横浜国大21世紀COEの成果
カワウ減少の一因はダイオキシン類
• 農薬規制がカワウの回復をもたらした?
• 農薬がなければもっと早く回復しただろう。
17
論点(ABC)
• カワウは放置すればまだ増えるのか?
○個体群環境収容力は営巣地でなく餌量で決まる
Aアユ食害は実は少ない、これ以上は増えない
B琵琶湖の豊富な魚を食べ、ますます増える
C放流アユは食べやすい
• A竹生島から追い払え(滋賀県環境課)
○個体数は減らないが、竹生島の森は回復する
○他所に営巣コロニーを作る(すぐ隣の葛籠尾崎)
B個体数が減らず、漁業被害は減らない
• B竹生島で迎え撃て(滋賀県水産課)
B空気銃でプロが撃てばあまり逃げない(Sharp Shooting)
B総個体数減少=拠点コロニー捕獲+新規コロニー阻止が上策
• C放流アユの育て方も工夫が必要ではないか
18
不確実な自然は管理できない?
• 激減か増えすぎ(少しの差で…)
• 獲りながら捕獲圧を調整すればよい
500
400
個
体 300
数
( 200
千
頭
) 100
毎年2万頭ずつ捕獲
初め12万頭なら絶滅
16万頭なら激増
(自然増加率年15%)
0
1993
1998
2003
年
2008
200
個
体
数 100
(
千
頭
)
生息数が減った時点
で大量捕獲をやめれ
ば、どちらの場合で
も管理できる(フィー
ドバック)
0
1993 1998 2003 2008 2013 2018
年
順応的管理(Adaptive management)は不確実性に強い
19
http://www.pref.shiga.jp/g/suisan/shiganosuisan/T4.pdf
滋賀県のカワウ=毎年2.6万羽の捕獲が必要
2009年以後は
当時の予想
効果のある目標設定
不確実性の検討
Nt+1 = [1+r(1-Nt /K)]Nt -Ct
K=50000, r=1.68
K=60000, r=1.21
K=80000, r=0.89
K=50000, r=1.68
K=60000, r=1.21
K=80000, r=0.89
ただし4千羽で
大量捕獲停止
初年度は3万羽、次年度からは生息数
の約7割の駆除+約50%の繁殖抑制
初年度は2.5万羽、次年度からは生息数
の約6割の駆除+約50%の繁殖抑制
将来予測の不確実性=「環境収容力Kと内的自然増加率r」の組み合わせによる
滋賀県水産課2008漁業被害対策打合会(数値計算を一部改変)
20
滋賀県水産課資料より作図
滋賀県カワウ個体数の変遷
80
70
個
体
数
(
千
羽
)
駆除数
生息数
60
50
40
30
20
10
0
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
21
滋賀県カワウ漁業被害対策
「とりあえず成功」の秘訣
• 空気銃と専門家集団の導入
– 竹生島から追い出さないSharp Shooting
– 滋賀県カワウ対策はシカ管理でも注目の先例
• 目標捕獲数割当ての設定と徹底
– 目標数は捕獲数の下限(≠漁獲枠の奪い合い)
• 事前訓練と臨機応変の部隊行動
– 趣味の狩猟、個人行動からの脱却(≒シカ戦争)
– 狩猟はFair Chaseだが、それでは減らせない
– 葛篭尾崎の新コロニーへの対応
22
「ほどほど」の思想
• 「モノには程というものがある。獲ってくれ」
---宝厳寺住職
• 乱獲か禁猟かではなく、ほどほどに獲る
• なぜ、放置してはいけないか?
– 人間が困らないように管理する(被害対策)
– 増えた一因は人の影響(世界遺産知床、屋久島のシ
カ問題≒竹生島の森林問題)
• 竹生島でカワウと共存する
• 糞もなんとか利用したい。肉も「食べられる」
23
植生回復(竹生島)
竹生島の東斜面(2007年も2010年も5 月上旬撮影)
2007年
2010年
24
© 須藤明子
今日の内容
•
•
•
•
•
•
水産学が育てた持続可能性と順応的管理
マサバ漁業管理の失敗
リスク管理の考え方
竹生島のカワウ被害対策事業
エゾシカの順応的管理
リスク管理の基本手順とレギュラトリ科学
25
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2011/110306YP.pdf
エゾシカ:乱獲と禁猟の繰り返し
14
7
12
6
捕獲数
狩猟オス
駆除オス
狩猟メス
駆除メス
被害額(千円)
10
捕
獲
頭 8
数
5
4
( 6
万
頭
3
) 4
2
2
1
0
0
1874
1894
1914
1934
1954
1974
農
林
業
被
害
額
(
億
円
)
1994
年度
26
エゾシカ保護管理計画の
リスク管理
 Nc (t  1)  
0
N (t  1)  L (t) / 2
 f
  fc
N m (t  1) L mc (t) / 2
2r(t)L ff (t)
L ff (t)
0
N c (t) 
N f (t)


L mm (t)N m (t)
0
0
14
60%
個 50%
体
40%
数
指 30%
数 20%
12
10
8
6
4
10%
2
0%
0
2007 2022 2037 2052 2067 2082 2097
捕
獲
量
(
千
頭
)
大発生水準以上
(>50%)
緊急減少措置
(2年を限度)
目標水準以上
(>25%)
漸減措置
(雌中心の捕獲)
目標水準以下
(>5%)
漸増措置
(雄中心の捕獲)
許容下限水準(5%)
以下か豪雪の翌年
禁猟措置
年
27
エゾシカ管理における
リスクの周知と説明責任
• 1998年、道東エゾシカ12万頭説
• 1999年の論文で16-20万頭と仮定:道東計画
で環境庁告示(1人1日1頭)を改変
• 「30万頭以上なら失敗する」と松田が公言
• 2000年、道は20万頭説に修正
– 「>30万頭なら鳥獣保護法改正が必要」当時の道
庁担当者の発言
28
北海道エゾシカ個体数指数の変遷
捕って減らさ
ないと、絶対
数は不確実
個
体
数
(
万
頭
)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
(Yamamuraら2007、検討会資料2010より改変)
一般化線形混合モデルから個体群動態を
考慮したベイズ推計へ(順応的管理の発展)
雌捕獲数の実績(黒)と減
少に必要な数(赤)
1993
1996
1999
年
2002
点線は信頼幅:GLMMは95%CI、ベイズ推計は68%CI
2005
毎年の推定
値はばらつく
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
個
体
数
指
数
2008
29
北海道エゾシカ保護管理検討会
(2011.7.16)議事録
• 松田:今、マスコミからも、最悪の事態を想定しない
で何が管理だと言われているのですが、そういう意
味では、(個体数推定の)上限値でも必ず(東部も西
部も) 減らしてみせますとは残念ながら言えない状
況にあります。ただ、東に関しては、この上限値を
もってしても、総力を上げれば減らすことができるの
ではないか。我々は、最悪の場合にもすべてを完璧
に管理できるという方法はないからということで、す
べてをあきらめるというふうにもできないのです。そ
うしますと、東部に集中するということが一つの選択
肢になります。
30
http://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3.html
鳥獣保護管理の課題
(特定鳥獣保護管理マニュアル2000共通編より)
1. 明確な目標がないため、過剰駆除の懸念
科学的調査・知見に基づく(適正生息数、生息環境等)設定
2. 対策が駆除に頼りがち
生息環境保全・整備、被害防除との総合的実施
3. 対策の効果の十分な検証が行われない。
効果の検証(モニタリング)、次期計画への反映(フィードバック)
4. 策定手続に関係者の意見が反映しにくい。
計画の策定手続の透明化<審議会・公聴会手続>
5. 広域的な視点からの取組が行われにくい
国の適切な関与を法定化・隣接県との調整規定
31
日本のシカ問題
100 person
Population of hunters
6000
upper 60 yrs old
50-59 yrs old
40-49 yrs old
30-39 yrs old
20-29 yrs old
5000
4000
3000
環境省委「生物多様性総合評価」2010
Distribution of sika deer
国立公園は
シカの楽園
2000
1000
0
1970
1975
1980 1985 1990
Fisical year
1995
2000
2005
32
今日の内容
•
•
•
•
•
•
水産学が育てた持続可能性と順応的管理
マサバ漁業管理の失敗
リスク管理の考え方
竹生島のカワウ被害対策事業
エゾシカの順応的管理
リスク管理の基本手順とレギュラトリ科学
33
横浜国大COE「生態リスクマネジメントの基本手順」
(Rossberg et al. 2006 Lands Ecol Engin)
社会的
合意形成
社会
0. 問題提起
科学者
科学的
手続き
1. 問題点の吟味
2.管理範囲の絞込みと利害関係者の招待
3.協議会・科学委員会などの設置
合意できないと
きは再設定
4.「避けるべき事象」の定義
5. 定量的評価指標の列挙
6. 影響因子の分析とモデル構築
7. 放置した場合のリスク評価
非
現
実
的
な
ら
目
標
の
修
正
8. 管理の必要性と目的の合意
9.数値目標の仮設定
10.モニタリング項目の決定
11.制御可能項目・手法の選定
13.リスク管理計画と目標の合意
12.目標達成の実現性の評価
14.管理の実施とモニタリング
15. 管理とモニタリングの継続
必要に応じ改訂
16.目的・目標の達成度の評価
管理計画終了
34
§2-5 科学者の役割
IWC(国際捕鯨委員会)
科学小委員会
(生態学会委「自然再生事業指針」)
• 個人的な価値観に基づく主張
ではなく、社会的に合意され
た目的とそれを実現するため
の具体的な数値目標の整合
性、その数値目標を達成する
ための管理方策の検討と目標
の実現可能性を吟味し、それ
を利害関係者に分かりやすく
説明し、合意形成を支援する
ことである。
35
知
床
世
界
遺
産
科学者のとるべき態度
1992年地球サミット前
(基礎科学)
1992年地球サミット後
(レギュラトリーサイエンス)
– 科学的証拠なしに社
会にものを言わない;
– 世論に係らず、自ら
の見解を変えない
– 科学的証拠なしに社
会にものを言うことが
期待される;
– 科学論争を多数決で
決める。世論を味方
につける
科学者の社会的提言につい
ての学界基準が未確立
Galileo’s Inquisition
36
リスク評価の常とう手段
Extrapolation外挿(実証科学の禁じ手)
10万人に1人の死亡リスクは実証困難
リスク評価 37
岸本充生氏より改定
LNT仮説は「レギュラトリ科学」
+1%
=ICRPはLNT仮説を「採用」
固
形
が
ん
死 +0.5%
亡
LNT仮説
疫学データから
リ
ス
統計的有意差
?
ク
がある部分
+0%
0mSv
?
100mSv
累積被曝量
「受け入れられないリスクレベル」は実証科学とは
別に定める必要がある
38
前提を変えれば、何でもあり??
同じ著者が前提を変えて真逆の論文を・・・
Seafood, fish on track to disappear
by 2048 Worm et al. (2006)
Rebuilding Global Fisheries
(Worm et al. 2009)
Boris
Worm
Boris
Worm
39
松田裕之
松田の主張
• 科学万能主義批判
• 自然に対する畏敬の念
×動物愛護法
• 絶対安全を求める
• 自然は物言わぬ弱者
Stewardship
レギュラトリ科学
利用と保全の調和
• 熊と共存する山間部の犬
は放し飼いでよい(都市
部と同じ基準は不要)
• 契約消費者への食品安
全基準の緩和を(鹿肉
はごみになっている)
×自衛隊法
• 自衛隊に「鷹狩り」を
• 野生鳥獣を食べて減ら
そう!
△銃刀法、鳥獣保護法
• マグロよりサンマを!
×食品衛生法
△漁獲可能量制度
40
鍵となる新たな概念
•
•
•
•
•
•
持続的利用Sustainable…
Risk tradeoff
LCA (life cycle assess.)
ベイズ推計Bayes
外挿Extrapolation
順応的管理Adaptive
management
• 実現可能性Feasibility
• 回復力Resilience
• 脱集権主義Decentralization
• 共有地の悲劇
The tragedy of the commons
• 生物文化多様性
Biocultural diversity
• 自然の恵み
Ecosystem services
• 自然への畏敬
– Respect to nature
• レギュラトリー科学
Regulatory Science
41
レギュラトリ科学とは何か
• 1987年,内山充博士(国立医薬品食品衛生研究所名誉所長)が
提唱 =「科学技術を人間との調和の上で,最も望ま
しい形にレギュレート(調整)する科学」
(環境文脈での松田の定義<岸本充生博士)
• 実証科学と異なり、未実証の知見も踏まえて社会の
約束事を決める
• 受容できる正のリスクレベルを決める(約束事)
• 環境問題には不可欠=例:低線量被曝リスクへの対
処(「安全性が実証されていない」という批判は、レ
ギュラトリ科学を認めない立場の意見)
• 利害関係者の調整役ができる専門家
42
調整は政治の役割というのは間違い
では科学が独立に決められるのか?
• 国際漁業管理では科学者が一部重要な役割
– ただし加盟国や漁業団体との直接の調整はない
• ICRP基準はどうか
• 化学物質はどうか(亜鉛、ノニルフェノール)
• CITES(ワシントン条約)はどうか
– 事務局と研究者が仕事を増やすべく動くが、締約
国会議でひっくり返る
• 環境省レッドリスト委員会はどうか?
• 辺野古米軍基地環境影響評価はどうか?
43
環境リスク拠点としての横浜国大
=健康リスク、生態リスクの拠点
• 日本的な「ゼロリスク志向」への対案提示
– 中西準子名誉教授が文化功労者(リスクトレードオフ)
CREST1995-
• 欧州型予防原則と米国型順応的管理の調和
– 化審法 ハザード管理→リスク管理
• アジア視点に立つリスク管理
21cCOE 2002-
– 人間活動と環境保全の調和を目指す
– 自主管理を含めた共同管理
G-COE 2007– 科学知と伝統知・在来知の調和
• 締約国、Stakeholder
が合意できるリスク管理の世界標準化
44
研究対象となりうる具体事例
• 人口減少時代の野生動物リスク管理
– 鳥獣法、漁業権、外来生物法、銃刀法、食品衛生法、過
疎地対策、道交法、自衛隊法などとともに自然観自体の
転換が必要(ツルでは鳥インフル+天然記念物)、
• 化学物質生態リスク管理
– 指標生物3種だけでは限界(アキアカネ、ミツバチ)、
– 室内毒性試験の個体評価だけでは限界、
– 膨大な新規化学物質の判定
• 生態系管理、保全と開発のリスクトレードオフ
– 沿岸域管理(減災、中規模攪乱)
– 非定常生物資源(イワシ・サンマなど)の持続的利用
45
研究対象となりうる具体事例
Sustainability Science私論素案
• Eco-Innovation:生態系管理の具体的工夫
• Eco-Incentive:自然保護を誘導する経済
• Eco-Complexity:不確実・非定常な複雑系をうまく制御する理
論的枠組みの追究
• Risk-Legitimacy:リスクと不確実性を含めた新たな法体系(自
然観)の追究
• Bio-culture:生物資源とそれを利用する文化の関係
• Risk-Regulation:未実証の政策提言の科学
• Sustainable-Governance:合意形成と管理実践の教訓
46
研究対象となりうる具体事例
環境リスクLCA
• LCA的思考による環境技術政策の評価と管理
– バイオ燃料の持続可能性評価
– 化学物質のライフサイクルを通した全リスク評価
• リスクトレードオフ(リスクゼロを目指すのではなく異
なる種類のリスクを比較し、総合的管理を目指す)
– 風力発電の温暖化防止効果と鳥衝突リスク管理
– 遺伝子組換え作物の順応的リスク管理
– 化学物質環境基準の順応的リスク管理
– 農林業生産と環境負荷の生態系リスク管理
47
予期される推進上の問題点
• 科学と政策との間に距離がある?
– それは当然のこと。いかに近づけたかの実践行為自体が
成果であり、その分析も研究課題(知床世界遺産、愛知
万博環境影響評価、国際条約)
• 科学者の中でも定義が異なる?
– 国際的、学際的議論が必要
• 社会との合意に関してその仕組みがない
– ある程度仕組みのある課題に限られる。
• 環境政策の合意と解決に長い時間がかかる
– 途中経過も評価する。その知見・技術を普遍化する
• 必ずしも新技術・新知見が社会に役立つとは限らぬ
– 新奇性を「学者が押し売り」しなくても、合意形成自体は
立派な社会学的研究課題になる。新たなことは必ずある48