ミクロ経済学Ⅰ

企業の費用最小化
• 複数の生産要素を用いて生産活動を行なう
企業を想定。
min C ( w, r; y )  wL  rK
L,K
subject to F ( K , L)  y
C ( w, r; y )
費用関数
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生産関数と等量曲線
• 企業は、2生産要素を用いて生産活動を行な
うとする。生産関数を以下であらわす:
F ( L, K )
• これから、等量曲線を導出:以下を満たす
( L, K ) の組み合わせ
F ( L, K )  y
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等量曲線
K
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等量曲線の性質
• 右下がり
• 2本の等量曲線は交わらない
• 右上方に位置する等量曲線のほうが、生産
量が多い。
• 等量曲線は原点に対して凸
• 効用関数との相違点:生産関数は基数的概
念
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生産要素投入と生産量
• 規模に関する収穫
– 生産要素K,Lをα倍(α>0)したとき、yが
– α倍になる→規模に関する収穫一定
– α倍より多くなる→規模に関する収穫逓増
– α倍より少なくなる→規模に関する収穫逓減
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費用最小化
等費用曲線
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費用最小化の条件 (1)
• 技術的限界代替率と生産要素価格比率が一致する。
• 技術的限界代替率と生産関数の関係
K F / L w
MRS  


L F / K r
• 上記の条件は、支出1円あたりの限界生産物が労働
と資本の間で均等化することを示す(練習問題:なぜ
それが最適なのか?)
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費用最小化の条件 (2)
• また、等費用曲線の傾きは、市場の交換比
率であり、客観的交換比率といえる。
• 限界代替率は個別企業の交換比率であるの
で、費用最小化の条件は、客観的交換比率
と個別的交換比率が等しくなるところに要素
投入量を設定することになる。
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限界費用と平均費用
• 限界費用(Marginal Cost): 生産量(y)1単位の
増加の際に、費用がどれだけ上昇するか?
C ( w, r; y )
MC ( y ) 
y
• 平均費用(Average Cost): 生産量(y)1単位あ
たりの費用
C( y)
AC ( y ) 
y
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長期の費用曲線
(短期の費用曲線の包絡線)
C
K=K3
K=K1
y
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短期の平均費用と長期の平均費用
• Kの水準が異なる総費用曲線の包絡線が、長
期の総費用曲線になる。
• 同様の理由で、長期の平均費用は、短期の
平均費用の包絡線となる。
• 長期の限界費用は、短期の限界費用の包絡
線にはならない。
• 長期の限界費用は、短期の限界費用よりも、
傾きが緩やかである。それは、資本の投入量
を調整することができるためである。
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企業の利潤最大化
• 利潤
 ( y )  py  C ( y )
• yが内生変数。最適解の条件は
p  MC ( y )
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限界費用と生産量の決定
MC, p
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y
平均費用と限界費用:利潤最大化
MC, AC
限界費用、MC
y
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可変費用
• 可変費用とは、生産量が変化するときに変化
する費用である。
• 一方、生産量がゼロであってもかかる費用の
ことを、固定費用と呼ぶ。
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損益分岐点と操業停止点
• 短期には、利潤がマイナスであっても操業し
たほうがよい場合がある。
• それは、収入が可変費用を上回る場合であ
る。
• 操業しない場合の利潤: rK  0
• 操業した場合の利潤: py  wL  rK
• py  wL  rK  0であっても、 py  wL  0 にでき
る範囲で、操業したほうがよい。
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平均費用と限界費用:利潤最大化
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y
短期の労働需要
• 短期の労働需要量の決定
max pq  ( wL  r K )
L
subject to F (K , L)  q
• 書き直して
max pF ( K , L)  ( wL  rK )
L
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利潤最大化の一階条件(短期)
• Lで微分してゼロと置くと、短期の最適な労働
需要量L*は以下で表すことができる:
pFL (L , K )  w  0
*
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操業停止条件
• 以下の比較をし、もし後者のほうが大きけれ
ば操業
rK ( 0)
py  wL  rK
• その条件は、
py  wL  0
• 書き換えて、
p  wL / y
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操業停止条件(続き)
• 平均可変費用(労働への費用)が生産物価
格を下回れば操業する。
p  wL / y
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労働の限界生産性、平均生産性
106
104
102
APL
100
98
96
94
MPL
92
90
1
2
3
4
5
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6
7
8
L
110
労働の限界生産性、平均生産性
90
100
APL
0
MPL
6
4
2
L
APL
MPL
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LD
L
計算問題:弾力性の計算(1)
• 弾力性とは、対数の差分の比率になるので、
それを利用できる場合がある。
– 以下の式で、対数の差分(左辺)は、上昇率(右
辺)であることに注意
w1  w0 w
ln w1  ln w0

w0
w0
• 以下の需要曲線の弾力性は 
ln L  0  1 X   ln w
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計算問題:弾力性の計算(2)
• 差分をとって考える
ln L1  ln L0  1 ( X1  X 0 )   (ln w1  ln w0 )
• ここで、Xはpが変化したときに変化しないとす
ると、 X  X  0 。
• 対数の入っている項をまとめると
1
0
y / y0 ln y1  ln y0


p / p0 ln p1  ln p0
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計算問題:弾力性の計算(3)
ln L1  ln L0 L / L0

ln w1  ln w0 w / w0
• たとえば、対数を取る方法は、以下のような
需要曲線も、応用できる。
L  aw

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【補足】 自然対数の微分
• 自然対数 ln( Xの
) に関する微係数は
X
 ln( X ) 1

X
X
である。ただし、
X .0
このことは、自然対数は指数関数の逆関数であり、
指数関数の微係数はもとの関数そのものになること
 exp( X )
から理解できる(
)。 X  exp( X )
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-4
-2
0
2
4
自然対数(1)
0
1
3
2
4
5
x
ln(x)
line with slope=1
28
自然対数(2)
• ln(x)の差は、近似的に変化率になる
ln( x1 )  ln( x0 )  ln[1  ( x1  x0 ) / x0 ] x / x
こ の部分を 以下で説明
ただし、 x  x1  x0
• 先の公式に沿って、自然対数を微分する
 ln( x) 1

x
x
• このことは、 x  1において、微係数が1であるこ
とを意味する。
29
自然対数(3)
• このことは、先の図でいうと、 ln(x)の x  1
における傾きが、1であることを意味する。
ln(1)=0であるので、このことは、先の接線は
y  x 1
となる。
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自然対数(4)
• つまり、ln(x) の (1,0)における接線は
y  x 1
であるので、接線がln(x)を近似していることから
ln(1  x)
x
である。これから、以下が成り立つ:
ln[1  ( X1  X 0 ) / X 0 ] X / X
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労働需要と供給、均衡
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生産者余剰(企業の余剰)
賃金
雇用量
労働者余剰
賃金
労働供給量
総余剰
賃金
生産者余剰
労働者余剰
雇用量
総余剰 (数量がX0のとき)
賃金
生産者余剰
労働者余剰
L1
数量
総余剰
• 競争市場均衡では総余剰が最大化されてい
る。
• 競争市場均衡以外の生産量であると、余剰
が最大になっていない(競争市場均衡の場合
との差は、厚生損失と呼ばれる)。
• これは、取引の機会がある(取引によって効
率を向上させる余地がある)にもかかわらず、
それが実現していないことによるものである。
課税や規制と総余剰
• 課税のある時の均衡は、それが無い時の競
争市場均衡とは異なるのが一般的。競争市
場均衡で総余剰が最大になっているので、課
税された均衡では、それが最大になっていな
いのが一般的。
• 規制は、もしそれが有効な制約になっている
と、競争市場均衡で達成できている余剰の最
大化を実現できない。
総余剰 (課税のとき)
賃金
生産者余剰
税収
労働者余剰
L1
雇用量
総余剰 (最低賃金のとき)
賃金
生産者余剰
最低賃金
Wm
労働者余剰
L1
数量
税の負担割合:弾力性の逆数の比 (1)
• 間接税の負担は、弾力性の逆数の比に比例
することが知られている。
• 弾力性の大きい経済主体は、税の負担を「避
ける」ことができる反面、それが小さい主体は
避けることができず、結果として税を負担する
ことになる。
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税の負担割合:弾力性の逆数の比 (2)
• 無税のとき
– 無税のときの均衡価格
– 無税のときの均衡数量
W*
L*
• 無税のところから、税を課した結果、均衡は、
以下へ変化するとする:
– 需要側の価格(企業の支払賃金): Wd 1
– 供給側の価格(消費者の手取り賃金):Ws1
– 均衡数量
L1
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税の負担割合:弾力性の逆数の比 (3)
• 需要曲線上の価格の変化をΔWd とする。
• 供給曲線上の価格の変化をΔWs とする。
Wd  Ws  Wd1  Ws1  税額
Wd
Wd  
 (L)
L
Ws 
Ws
 (L)
L
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税の負担割合:弾力性の逆数の比 (4)
• 前ページの式を変形する
Wd L*
W*
1 W*
Wd  {
 * }{ * } (L)  { * }  (L)
L W
L
d L
Ws L*
W*
1 W*
Ws  {
 * }{ * }  (L)  { * }  (L)
L W
L
s L
Ws 1/  s

Wd 1/  d
(弾力性の逆数の比)
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負担割合(均衡付近の拡大図)
L1
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