Cepheus A における短期強度変動と内部固有運動

メタノールメーザ小研究会 2007年11月21日 in 山口大学
Cepheus A における
短期強度変動と内部固有運動
杉山 孝一郎
(山口大学)
1.
2.
3.
4.
はじめに
短期強度変動の検出
内部固有運動での解釈
今後の展望
メタノールメーザの発生領域
メタノールメーザの発生領域は?
– 円盤 or アウトフロー ??
– インフォール説や回転トロイド説も
– 励起源が連星系という案まで
内部固有運動の検出がカギに !!
⇔ 内部固有運動が小さいことが知られている・・・
VLBIモニタリングのターゲットの選別が必要
強度変動
W49N
メーザ発生領域の物理を反映
– 水メーザ : 短期的で激しい変動
アウトフローに付随している
ショックをトレースしている
– 見通す距離の変化に影響
空間分布の変動につながる
Gwinn et al. (1992)
Liljestrom et al. (2000)
Orion-KL
強度フレア現象!!
Shimoikura
et al. (2005)
メタノールメーザの短期変動調査
Goedhart et al. (2004)
– Hartebeesthoek 26 mによる南半球での観測
– 1-2週間間隔, 4年間モニタリング
– 数日から数年時間スケールの強度変動
– 変動を6タイプに分類
Goedhart et al. (2004)
研究目的
内部固有運動検出による発生領域の解明
VLBIモニタリングのターゲット選出
–
強度変動の激しいものを対象に!!
短期強度変動探査の開始
–
–
北半球ではTorunグループに次いで
毎日の観測継続による探査は世界初
本年の山口32mを用いての単一鏡観測
1. 8年に亘る長期的強度変動探査 ⇒ 石川口頭
2. 系外6.7GHzメタノールメーザ源探査 ⇒ 澤田-佐藤口頭
3. 毎日観測による短期的強度変動探査
観測の諸元
アンテナ : 山口 32 m
観測日 : 2007年8月8日~10月24日(通算日220-297)
空間分解能 : 5分角
両円偏波受信
アンテナ感度 : Tsys~180-210 K, 能率~40-50 %
帯域幅 : 4 MHz, 分光点数 : 4096点 ⇒ 速度分解能 : 0.044 km/s
検出感度(5σ) : 6.0 Jy (14分積分)
較正
– 振幅
: 各スキャンの初めにノイズソース注入
– 帯域通過特性 : RA方向2°ズラした位置をOFF点として観測
システム変動の振る舞いをチェック
– G12.91-0.26を毎日観測
Goedhart et al. (2004)にて変動が小さい
G12.91-0.26(システム変動評価)
モジュレーションインデックス : 5-6 %
– ただし 35.6, 36.7 km/s成分は13-15 %
観測が抜けている日
I
II
III
IV
VI
V
– 254-257 : 鏡面清掃
– 263-272 : 22 GHz観測
– 285-294 : アンテナトラブル
Cepheus A (Cep A)
I, IIの成分が減少、共にIII, IV, Vが上昇
– 40-300 %程度の強度変動
通算日250を境に傾向が逆転 ⇒ 周期性??
25日程度の
位相ラグ??
II
IV
III
I
V
25日
空間上での位置関係
2006年9月9日のVLBI観測結果
– 位相補償済み
減少傾向成分(I, II)が上昇傾向成分(III, IV,
V)に囲まれて存在
~1400 AU程度のスケールに分布
ここまでのまとめ
CepAにおいて短期的強度変動を検出
– 25日の間に40-300 %の増加・減少
– 通算日250以降に変動傾向が逆転 ⇒ 周期性??
⇒ 25日程度の位相ラグ??
空間分布との関係
– 減少成分(I, II)が上昇成分(III, IV, V)に囲まれて存在
– 1400 AU(~8光日)程度のスケールに分布
2つの可能性
– 変動傾向の逆転が同期 ⇒ 励起源自身の変動
– メーザ発生領域の変動 or 見通す距離の変化
1つの励起源(同心円)
電波ジェットの中心が励起源の位置と仮定
– IRAS 22543+6145 の強度から光度算出
1.70 × 104 L◎
– 同心円の半径は~700 AU
– ダスト温度 : ~120 K
理論値100-200 K(Cragg et al. 2005)に矛盾しない
しかし・・・
同心円ならば・・・1400 AU(~8光日)の奥行き
での位相ラグは説明不可能
スペクトル上ではI, IIと
III, IV, Vとで速度的に分離
励起源からの距離の相違
– 励起源の変動
⇒ 環境が変化
⇒ メーザ発生に不利な環境 に
変化??
⇒ メーザ強度が減少
分子雲2
1つの励起源(環境の変化)
分子雲1
数値シミュレーションによる検
討必要
2つの励起源
視線速度-5 km/s(赤)と-11 km/s(青)の異
なる分子雲が存在(Brogan et al. 2007)
-5 km/s
明確な傾向は見られず
単純なモデルでは説明不可能
-11 km/s
内部固有運動の探査
2006年9月9日と2007年7月28日の2エポック
間での探査
– 減少傾向にある成分と上昇傾向にある成分はそ
れぞれ空間上でどのように運動しているのか??
– それぞれのスポット群内での運動は??
見通す距離の変化は??
– 強度分布図の比較
内部固有運動
-4.2 km/sの成分を原点
ランダムな運動
減少成分(I, II)群の中でも運動がランダム
ピークチャンネルの強度分布図
見通す距離が変化??
2006
2007
まとめ
Cep Aにおいて6.7GHzメタノールメーザの短期的強度
変動を検出
– 25日の間に40-300 %の増加・減少
– 通算日250以降に変動傾向が逆転
空間分布との関係
– 減少成分(I, II)が上昇成分(III, IV, V)に囲まれて存在
– 1400 AU(~8光日)程度のスケールに分布
変動の要因
– 励起源自身の変動
励起源からの距離の相違で説明可能 ??
– メーザ発生領域の変動
内部固有運動の検出 : 減少成分群内でもランダム
見通す距離の変化 ??