2次元フーリエ変換による 外装材の汚れの定量的評価に関する基礎的研究 Basic Research for the Qualification of the Stain on Claddings by 2dimention Fast Fourier Transform 東京大学大学院工学系研究科 建築学専攻 修士課程 北垣 亮馬 研究背景 Background 外壁の汚染・劣化などは、美観を損なうだけではなく、 都市景観の悪化、生活環境の低下にも結びつく。しか しその一方で、現状では汚染度を定量的に測定判断 する妥当な手法が確立されているとは言えない。 現在の建築業界: 古くなったら壊し新しい建築物を造る。 将来: サスティナブルな環境社会実現のため、 維持・管理技術によって建築物のさらな る長寿命化が求められる 建築物の汚染度の自動評価手法は維持管理にとって 必須である。 本研究は、2次元フーリエ変換を使用した画像解析的手 法によって、美観の観点からの外装材料の汚染度の自 動測定方法を確立することを目的とする。 官能試験の問題 the Problem Around the Sensory Evaluation 不衛生である アンケートによる標本空間の領域分け 大量の人間を投入して行う官能試験の場合 汚い • 標本空間の領域分割はどうしても恣意的になりがち • 定量的な議論に収束せず、定性的な議論に終始してしまう。 • 領域の境界部分は、工学的な理論的考察が行いにくい。 • 標本空間と材料サンプルそのものに互換性がない。 汚れの色の濃度値 官能試験の自動化による領域分け 感覚量→物理量 に変換する理論で定量化して領域分け ロジカルグレイゾーン • 標本空間の領域分割はやはり恣意的になる (でも、より数理的な分類を行える) • グレイゾーンを放置できる •人間の感覚の曖昧な部分を無理に集約させること なく理論的・定量的な議論が可能となる。 • 標本空間と材料サンプルの互換性を向上させるこ とができる。 汚れ部分面積[㎠] 既往の研究・従来の方法 the Existing Method of Qualification of Stain 既往の汚れ度の抽出方法・研究 主に2値化を軸にした解析方法を使用した。 元の外装材画像 欠点 汚れを単なる色差として捉えていたため、 外装材がもつ特徴的なテクスチャを考慮した汚れの 抽出ができていなかった。 2値化によって 汚れを抽出した画像 2次元フーリエ変換の基礎的説明 Basic Theory of 2dimention Fourier Transform 色の濃淡の繰り返しを波と見立てて、画像をこの2次元波の合計波と捉える。 これを2次元フーリエ変換によって、波の和の形に分解し、特徴の抽出を行う。 2次元フーリエ変換後の出力 Output of 2DFFT 2次元フーリエ変換 出力画像 元画像 PSP(Power Spectrum Picture) 中心からの距離: 周波数 中心からの方向: 正弦波の方向 色の濃淡 その周波数・方向を持った 波のパワースペクトル値 : 2次元フーリエ変換の出力画像PSPによって、 様々なテクスチャの特徴抽出が可能になる。 高 波の方向 低 波の方向 解析方法 Analysis Method 2.0m • 曇天時に対面距離2mで打放しコンクリートの外壁を撮影する。 • 画像を2DFFTにかけ、周波数の対数とそのパワースペクトル 値の総和の対数を両軸にプロットする。 Log P Log f 周波数:出力画像の半径 f パワースペクトルの総和値: ( ドーナツ部分の明度の総和 ) 解析結果 Result of the Analysis 中周波数領域の傾きの違いで 汚れが分離できることがわかる。 分散化汚れ 局在化汚れ 波の合成による汚れの理論 Typology of the Stain on Claddings from the Models of Pulse Composition 汚れ度分布図 Coordinate System of the Stain on Claddings 色の濃淡分布の標準偏差 局在化汚れ 分散化汚れ 特徴領域の傾き 結論 Conclusions • 2次元フーリエ変換を使用することで、外装材のテクスチャを考慮しながら、 美観の観点から汚れ度を抽出することができる。 • 今回は打放しコンクリートで行ったが、 さらにより多くの外装材に対しての応用が期待される。 • 今後の課題としてフルカラーに対応した理論への拡張が実用化にむけて 不可欠である。
© Copyright 2024 ExpyDoc