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格子QCDからハドロン間相互作用へ
石井理修(筑波大)
共同研究者:
村野啓子(筑波大)
根村英克(理研)
青木慎也(筑波大)
初田哲男(東大)
1. 連携の位置関係
2. 現在の計算法
3. 今後5年間での到達点・目標
4. 研究者間での連携
5. 計算資源やアルゴリズム開発に関する希望
6. 他の計画班への期待
連携の位置関係
A01班
JLQCD project
PACS-CS project
2+1フレーバ
ゲージ配位
格子QCDによる核力
核力・ハイペロン力
A02班
UMOA法計算
による
有効核力
クラスター
変分法計算に
よる核物質
少数多体計算
による
ハイパー核
モンテカルロ
殻模型や
密度汎関数法
計算による
核構造
計算法(格子QCDから核力へ)
拡張
1.
Static quarkを駆使する方法
2.
波動関数から逆算する方法(こちらを用いる)
S.Aoki et al.(CP-PACS Collab.),
Phys. Rev. D71,094504(2005).
(ππの散乱長の研究)
N.Ishii, S.Aoki, T.Hatsuda, Phys.Rev.Lett.99,022001(’07).
格子QCDでNN波動関数(BS波動関数)を作る。
②
(Effective) Schrodinger 方程式を使って、
波動関数からNNポテンシャルを逆算する。
Schrodinger 方程式
①
特徴

(E  H 0 )  ( x)
V (r ) 

 ( x)
結果(波動関数)を再現するように仕組まれたNNポテンシャルである。
波動関数中に埋め込まれた散乱位相差の情報も同時に再現する。
 ( r )  e i
0 (k )
sin kr   0 (k ) 

kr
(s-wave)
NN散乱実験に忠実なポテンシャルへ道
BS波動関数
 QCDにおいて量子力学のNN波動関数は
本当は近似的な概念である。
 この概念に最も近いものが、
同時刻 Bethe-Salpeter(BS)波動関数である。
  ( x  y)  lim 0 T p ( x, t ) n ( y,0) NN




t 0

u

C d  d ( y )
p( x)   abc ua C 5 d b uc ( x)
n( y )   abc
T
T
a
5 b
c
 この式は、xに3つのクォーク、yに別の3つのクォークを見つけるamplitudeに対応する。
 |x-y|→大で、散乱位相差で特徴付けられる漸近形を持つ。
 ( r )  e i
0 (k )
sin kr   0 (k ) 
  (s-wave)
kr
“Asympototic
momentum” k2
 次のeffective Schrodinger方程式を満たすことが示せる。


2

 

  k 2  E (r )  mN  d 3 r 'U (r , r ' ) E (r ' )
For derivation, see
C.-J.D.Lin et al., NPB619,467 (2001).
S.Aoki et al., CP-PACS Collab., PRD71,094504(2005).
S.Aoki, T.Hatsuda, N.Ishii, arXiv:0805.2462[hep-ph].
(1) U(r,r’) は、interaction kernelの役割を果たす。
(2) U(r,r’)は、最も一般には non-local である。
(3) U(r,r’) は、total energy E によらないように構成できる。
主な結果.1 ((有効)中心力)
波動関数
クォーク質量依存性

(E  H 0 )  ( x)
V (r ) 

 ( x)
1.
近距離の斥力芯と中間距離の引力を同時に保持。
2.
(強い)クォーク質量依存性。
クォーク質量が軽くなるにつれ強力に。
3.
軽いクォーク質量での直接計算が重要である。
当然、full QCD計算が望ましい。
主な結果.2 (テンソル力)
波動関数(“動径”成分)
クォーク質量依存性
1.
Machleidtのレビューに出てくるのと同じような形
2.
強いクォーク質量依存性
(クォーク質量が軽くなると強力になる)
3.
軽いクォーク質量での直接計算が重要。
当然、full QCD計算が望ましい。
主な結果.3 (ハイペロン力)
J-PARC (もうすぐ稼働)
1.
ハイパー核物理のインプットとなり、
中性子星内部でのハイペロン物質出現の
議論に必須の情報
2.
現在、実験的情報が著しく少なく、
不定性が大きい。
3.
J-PARCにおける核物理の主要ターゲット
4.
我々の方法は、
様々なハイペロン力に適用可能。
NΞ potential (I=1)
NΛ potential
よりNN散乱実験に忠実な核力
目標:
様々なエネルギーのBS波動関数を同時に再現する
energy independent なポテンシャル(一般にはnon-local)

このようなポテンシャルは、よりNN散乱実験に忠実なポテンシャル
E3
E2
E1
E0
 BS波動関数は長距離で次の漸近形を持つ。
 ( r )  e i
0 (k )
sin kr   0 (k ) 
  (s-wave)
kr
 使われた波動関数は同時にexactに再現される。
同時に、散乱位相差も再現される。

同時にたくさんの波動関数を使うことによって、
どんどん散乱位相差が正しくなる。
ポテンシャルのエネルギー依存性 (この方向への第一歩)
E3
E2
E1
E0
 これまで紹介したポテンシャルは、
E=E0~0の波動関数一個から計算されていた。

厳密には散乱長しか保証できない。
 他のエネルギーにおける妥当性の議論のため、
E=E1=50 MeV の波動関数一個から
ポテンシャルを計算してみる。
 ポテンシャルの形に変化がなければ、
E~0で作った local potentialが
区間[E0, E1]で正しいことになる。
(この領域で、正しい散乱位相差を提供すること
が保証される。)
 統計誤差がまだ大きいが、
割合よく一致している。
 エネルギー依存性が小さい。
 E~0で作った local potentialが
0~50MeVでほぼ有効。
 この結論を徹底するためには、
統計を徹底的に改善しなければならない。
今後5年間での到達点と到達目標
 L=6fmの格子上で物理クォーク質量を採用した
2+1 フレーバ 格子QCDによる核力・ハイペロン力
(A01班PACS-CS projectに完全に依存しております)
 2体力:
 核力の斥力芯の解明。
 中心力、テンソル力、LS-力。P-wave。
 ハイペロン力(elastic sector)。(全組み合わせ)
 エネルギー依存性やnon-localityの評価。
微分展開の妥当性の評価。
対角化の方法を駆使して励起状態の波動関数も求める。
そして、それも同時に再現できるようなポテンシャル。
 operator 依存性。
3体力: 現在ホットな話題。
 その他:(応相談)
研究者間で必要な連携
格子QCDで生成した核力・ハイペロン力ポテンシャルを
A02班の諸グループ提供して、
 QCDに基づく高密度中性子物質・ハイペロン物質の構造
 QCDに基づく安定・不安定原子核の構造
の研究を進める。
 初めての試みなので、すべてが手探り?
A02の諸グループの方々へのお願い
 どのような形でポテンシャルを提供するのがよいか、
御意見をお寄せください。(x-space v.s. p-space 等)
 様々なリクエストをお寄せください。
(不備な点や改良すべき点、こうすると便利であるとか。。。)
密な議論を通して、次第に基盤を整えていく。
計算資源やアルゴリズム開発に関する期待
 それぞれのスーパーコンピュータ上で効率的に動く並列化3次元FFT。
(NNの場合、1 gauge configあたり、約5000×Nt 回行われる)
 JLDG Data Gridによるゲージ配位の共有。
 JLDG Data Grid (+SuperSINET)による各拠点間の効率的なデータ転送。
 A04班のNVIDIA TESTLA 魅力的です。
 大容量のハードディスク。
(エネルギー依存性の V=323 の計算では、
2000ゲージ配位分の波動関数で約3TB必要であった。)
他の計画班に期待するところ
格子QCDで生成した核力を使って、
現実の原子核やハイパー核を研究していくために最も重要なのは、

巨大な空間体積
(バリオン2個を十分に収容しなければならない。
Lが小さいと外側の引力が浸食される  原子核が束縛しにくくなる)

できるだけ軽いクォーク質量
(核力のクォーク質量依存性は大きい。余計な不定性を排除するため)
です。従って、A01班のprojectに期待することは、
 A01班(PACS-CS project)への期待
より空間体積の大きな物理クォーク質量のゲージ配位を
よりたくさん提供してください。
 A01班(JLQCD project)への期待
厳密なカイラル対称性を持ったゲージ配位は非常に魅力的です。
できるだけ大きな空間体積のゲージ配位を生成してください。
終了