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格子QCDによる核力ポテンシャル
石井理修
(東京大学)
核力
原子核物理の出発点
現実的核力
核構造、核反応、核物質、
状態方程式、
中性子星、超新星爆発、etc.
4000個以上のデータ
18コのパラメータ χ2/dof ~ 1


  p 2 n 2
  
 


 VNN   ( x p , xn )  E ( x p , xn )
 2m p 2mn



NN 散乱データ:
散乱位相差 (ELab < 350 MeV)
重陽子
核力
 長距離部分 (r > 2 fm)
OPEP [H.Yukawa(1935)]
(One Pion Exchange)
斥力芯
gNN e  m r

4
r
2
引力
 中間距離 (1 fm < r < 2fm)
multi-pion,  , , " " ,
引力  原子核束縛に必須
 近距離 (r < 1 fm)
斥力芯 [R.Jastrow(1950)]
斥力芯
いろいろなものに重要
かに星雲
その物理的起源は決着がついていない。
 vector meson exchange
バリオン数に結合する"photon"みたいなもの斥力
 Pauli forbidden state + color magnetic interaction
α-α散乱の例(Pauli forbidden state)
α粒子は閉核s軌道はいっぱい。
同じ軌道を閉められない。
αα散乱には斥力の芯が現れる。
核子系ではcolorの自由度のため同じ軌道をしめられる。
入った軌道にはcolor magnetic interactionによる斥力が働く。
二つの核子が重なり合うほどの近距離
 核子の内部構造が反映される
QCDによる研究が重要な役割を担うことが期待される。
Bethe-Salpeter (BS) 波動関数
 QCDにおいて量子力学のNN波動関数は本当は近似的な概念である。
 この概念に最も近いものが、
同時刻 Bethe-Salpeter(BS)波動関数である。


 


  ( x  y)  0 p ( x ) n ( y) N (k ) N (k ), in

u

C d  d ( y )
p( x)   abc ua C 5 d b uc ( x)
n( y )   abc
T
T
a
5
b
c
 xで3つのクォーク、yで別の3つのクォークを見つけるamplitude
 |x-y|→大で次の漸近形を持つ。
 ( r )  e i
0 (k )
sin kr   0 (k ) 

kr
量子力学のNN散乱波動関数と同じ形
(s-wave)
すべてのエネルギーでBS波動関数を出すようにポテンシャルを定義する。
Effective Schrodinger equation

 

3
( E  H 0 ) E ( x )   d y U ( x , y ) E ( y )
そのポテンシャルは散乱位相差に忠実なポテンシャルとなる。
微分展開
 対称性からくる様々な要請を課した後、微分展開する。
 
 
 
U (r  r ' )  VNN (r , ) (r  r ).
 
2
VNN  VC (r )  VT (r ) S12  VLS (r ) L  S  O( ).
    
 
S12  3(r 1 )(r  2 ) / r 2  1  2
 最低次(微分を含まない項)までとる。
VNN  VC (r )  VT (r ) S12
 JP=1+ の例 [中心力 (1S0)]
1
1
(VC (r)  VT (r ) S12 ) E ( x; S0 )  ( E  H0 ) E ( x; S0 )
1
( E  H 0 ) E ( x; S0 ) (微分展開最低次での中心力を求める公式)
VC (r ) 
1
 E ( x; S 0 )
格子QCD (格子化された時空上のQCD)
基本的自由度
1.  ( x), ( x) クォーク:(attached on sites)
2.
グルーオン:SU(3) link variable(attached on links)
U  (x)

U ( x)  exp ig Aa ( x) T a

Action:
S[U , , ]  SG [U ]  Sq [U , , ]
SG [U ]  
 ReT r1  U  (n) 
n ,  
2
β inverse gauge coupling   g 2
1 4 a
a
d
x
F
(
x
)
F
( x)



2
1
K: hopping parmeter
K

S q [U , , ]
2(m a  4)
 inverse quark mass
  (n) (n)  K  (n) (1    ) U  (n) (n  ˆ )  (1    ) U   (n) (n  ˆ )
n,
n

局所ゲージ変換
 (n)  (n) (n)
 ( n )   ( n )( n )

上のactionはこの変換について不変。
U  (n)  (n) U  (n) (n  ˆ ) 

格子QCD (格子化された時空上のQCD)
1. Plaquette gauge action.

β= 6/g2 = 5.7(⇔ゲージ結合定数)

格子間隔: a ~0.14 fm

体積:
324 lattice (L~4.4 fm
2. Wilson quark action
1.
κ=0.1665(⇔クォーク mass):
2.
mπ ~0.53 GeV, mρ~0.88 GeV, mN~1.34 GeV
(Monte Carlo 計算は quark massが軽いほどどんどん難しくなる)
3. Blue Gene/L @ KEK
格子化された時空上のQCDを強力なスーパーコンピュータを用いて解く。
4. クェンチQCD (真空中のqqbar loopをsuppressする近似)
波動関数
★ 近距離でのshrink
⇒ 斥力の存在
中心力
定性的な性質は
よく再現されている
近距離の斥力芯 ~ 500~600MeV
constituent quark model によると、
軽いquark mass 領域で enhance される。
中間距離の引力 ~ 30 MeV
 重い mπ のせいで引力が弱くなっている。.
⇒ mπ が軽くなると、virtual pion は
長距離をpropagateできるようになる。
⇒ stronger attraction.
正味の相互作用は引力
ポテンシャルのrangeの外のs-wave波動関数は、
低エネルギー(E → 0)で次のように近似される。
sin(kr   0 (k )) r  a0

(k  0)
kr
r
a0  lim  0 (k ) / k (scatteringlength)

k asy (r ) 
k 0
散乱長 a0 は rφasy(r)のlinear fitの r-切片になる。
r-切片は原点よりも左側にある。
a0 = 0.066(22) fm
(attractive)
正味の相互作用は引力.
1S
0
★ ボルン近似の公式を使うと
理由が理解しやすい。

a0  mN  VC (r ) r 2 dr
0
⇒
 体積要素 r2dr のせいで近距離のコアの影響が薄まっている。
 散乱長 a0 はこのように斥力芯と周辺部の引力が相殺した結果
である。それゆえ、慎重に取り扱わなければならない。
テンソル力
テンソル力
背景
 現象論的に重要
 原子核の安定性 や 飽和密度
 原子核構造に多大の影響
 s波とd波の結合  重陽子
 その形はπとρの寄与がキャンセルして生じる(OBEP)
from
R.Machleidt,
Adv.Nucl.Phys.19
 近距離での実験的決定には不定性がある。
L ( L  1)
r2
d波のBS波動関数
JP=1+ (I=0) の(BS)波動関数は二つの寄与がある。
s-wave (L=0) and d-wave (L=2)
  
J  LS
 (0 1)  (2 1)
L=1,3,5,… is not allowed due to parity
 L=0,2,4,…
S=0 is not allowed due to Pauli principle.  S=1
(I=0: anti-sym) x (S=1: sym) x (parity: even) = (totally anti-sym)
格子上では次のように分解する。
(1) s-wave
 
(S )
(2) d-wave
 
( D)


1
1 
(r )  P[ ](r )    ( g r )
24 gO


(r )  Q[ ](r )

(S ) 
  (r )   (r )
90度回転群による平均
d波のBS波動関数
devide it by Ylm and by CG factor
JP=1+, M=0
角度依存性  多価性
d波  “spinor harmonics”



( D)

( D)


( D) 
(r )  
(r )


( D)  
(r )  
(r )
2


ˆ
ˆ
Y
(
r
)

Y
(
r
)
2
,

1
2
,
0


6


2

Y2,0 (rˆ)
Y2, 1 (rˆ) 
 6

ほぼ一価関数

 (D) は"d波"が支配的
NOTE:
(0,1) [blue]  E-representation
(0,0) [purple]  T2-representation
これらの違い 回復しないSO(3)の破れ
テンソル力
 微分展開
 
2
 
V ( x, )  VC (r)  VT (r)  S12  VLS (r)  L  S  {VD (r), }  
 Schrodinger方程式 (JP=1+(I=0))
H0  VC (r)  VT (r)S12  (r)  E (r)







VC (r )  P (r )  VT (r )  PS12 (r )  E  H 0  P (r )





VC (r )  Q (r )  VT (r )  QS12 (r )  E  H 0  Q (r )
 VC(r) と VT(r) を求める公式




 P (r ) PS12 (r )  VC (r )
 P (r ) 
Q (r ) QS  (r )  V (r )   ( E  H 0 ) Q (r )


12

  T 
(s-wave)
(d-wave)
テンソル力
Ishii,Aoki,Hatsuda,PoS(LAT2008)155.
定性的性質は
よく再現されている。
• 近距離に芯なし。(近くは離散化誤差の影響が心配)
• r = 0.5 fm あたりの突起は、球面調和関数のゼロ点によるもの
Y2,0 ( ,  ) 


1 5
3 cos2   1
4 
求まらない点:
 n,  n,  n
2+1 flavor QCD
(フルQCD)
 generated by PACS-CS Collaboration
 Iwasaki gauge action
 O(a) improved (clover) Wilson quark action
 格子間隔:a=0.0905 fm
 一辺: L=32a ~2.9 fm
 大きな体積。
 物理的クォーク質量までカバーする。
 原子核を格子QCDで研究するのに
現在最も適しているゲージ配位。
NNポテンシャル
フルQCD
クェンチと比べて、
(1) 斥力芯もテンソル力も非常に強くなっている。
(Reasons are under investigation)
(2) 中間距離の引力はほぼ同じくらい。
クエンチ
クォーク質量依存性
クォーク質量が軽くなるにつれ、
 斥力芯が強くなる。
 中間距離の引力が強くなる。
 テンソル力が強くなる。
ポテンシャルから求めた位相差
合理的形。
ポテンシャルから求めた位相差
このクォーク質量では、
重陽子がまだできていない
合理的形。しかし、実験値と比べて非常によわい。
 物理的クォーク質量での格子QCD計算が非常に重要
まとめ
 格子QCDにより核力を計算した。
大きな斥力芯があるけれども、正味の相互作用は引力。
 中心力もテンソル力も、定性的な性質はよく再現されていた。
 フルQCDの効果
斥力芯・テンソル力が強化される。
(原因:現在探索中)
 クォーク質量が小さい領域で、
斥力芯拡大
中間距離の引力増大
テンソル力増大
 ポテンシャルから求めた位相差:
形や振る舞いは合理的
実験値に比べて強さが全然足りない。
物理的質量の格子QCD計算が重要である。