第2回

分子構造
Molecular Structure
ボルン-オッペンハイマー近似
Born-Oppenheimer
Born
Oppenheimer approximation
速度(周期)がかなり異なる運動は分離できる (断熱近似)
M1/M2~1
M1/M2 >> 1
>> 1
二重振り子
Double pendulum
M1
すごくゆっくりした振動
複雑な動き
M2
M1
2つの振り子の運動は分離できない
M2
すごく速い振動
2つの振り子の運動は分離できる
ボルン・オッペンハイマー近似
電子 運動(速 )と核 並進 振動 回転運動(遅 )は分離 きる
電子の運動(速い)と核の並進・振動・回転運動(遅い)は分離できる
Me
Mn/Me~1800
Mn
核の振動
Mn
核の並進
核の回転
電子の運動
分子のシュレーディンガー方程式
(多体問題、古典力学でも解析的に解けない)
e
[T+U]Ψ = EΨ
e
r1
r2
R1
核 運動 ネ ギ
核の運動エネルギー
電子の運動エネルギー
0
核-電子の
静電引力エネルギー
電子-電子の
電子
電子の
静電反発エネルギー
核-核の
核
核
静電反発エネルギー
ボルン・オッペンハイマー近似を使えば
ボルン
オ ペン イマ 近似を使えば
核と電子のシュレーディンガー方程式に分離できる。
Z1e
R2
Z2e
ここからは量子化学(原田義也)の内容
原子単位を導入しているアトキンスと異なることに注意
原子単位(a.u.)によって簡略化される例
水素原子
水素原子のハミルトニアン
水素原子のエネルギー
水素の基底状態1sのエネルギー
水素 基底状態
水素の基底状態1sの波動関数
波動関数
ボルン・オッペンハイマー近似
電子と核の運動を分離できる
電子-電子
反発エネルギー
ハミルトニアン
電子運動
エネルギー
核運動
エネルギー
電子-核
引力エネルギー
引力
ギ
核-核
反発エネルギー
反発
ギ
全波動関数
電子波動関数
核波動関数
電子のシュレーディンガー方程式
電子エネルギー
核のシ レ ディンガ 方程式
核のシュレーディンガー方程式
電子エネルギー
(核のポテンシャルエネルギー)
さらに 核の運動は並進と振動と回転に分離できる
さらに、核の運動は並進と振動と回転に分離できる。
二原子分子ABの場合
全波動関数は、電子・核の並進・核の振動・核の回転の波動関数の積
波動関数 、電子 核 並進 核 振動 核 回転 波動関数 積
全エネルギーは、電子・核の並進・核の振動・核の回転のエネルギーの和
で表される。
ボルン・オッペンハイマー近似によって分離した後、
ボ
オ ペ
イ
近似 よ
分離 た後
いろいろな核の配置(核間距離)における電子の
シュレーディンガー方程式を解いて電子エネルギー
を求める。
を求める
→ポテンシャルエネルギー曲面(2原子分子の場合は
曲線)が得られる。
曲線)が得られる
平衡核間距離Reや解離エネルギーDe等が得られ、
これらは分子の分光計測による実験値を比較される。
核の平衡配置がわかれば分子の安定構造(分子構造)
を決定できる。
電子軌道エネルギ
電子軌道エネルギー:
電子波動関数: 電子密度分布 Ψ^2 存在確率
結合や原子上の電子密度 → 反応性
電荷の偏り (双極子モーメント)
(双極子モ メント)
電子遷移確率
核波動関数:
振動構造(結合状態) 解離(散乱状態)
今後は電子のシュレーディンガー方程式を解くこと説明する
今後は電子のシュレ
ディンガ 方程式を解くこと説明する
多体問題である
電子のシュレーディンガー方程式を解くには、、、、、
真の波動関数に近い波動関数をつかって解く
真
波動関数に近 波動関数を か
解く
有限数の電子波動関数(基底関数)の組を用意する
(無限数用意すればかなり正確な波動関数とエネルギーが再現できる)
VB法とMO法がある
これらは用意する電子波動関数が異なる。
現在はMO法がよく用いられている。
原子価結合法 (
(VB(Valence Bond)法)と
(
)法)と
分子軌道法 (MO(Molecular Orbital)法)
原子価結合法 (VB(Valence Bond)法)と分子軌道法
(VB(Valence Bond)法)と分子軌道法 (MO(Molecular Orbital)法)
(MO(Molecular Orbital)法)
電子はある1つの原子の原子軌道に局
在化している。
2つの原子軌道に異なるスピンの電子が
入りスピン対をつくる。
電子は分子全体に非局在化した軌
道に属する
一つの分子軌道に2個の電子が入り
スピン対が入る
原子価結合法
結合
Valence-bond theory
原子価結合法(VB法)
電子は原子オービタルにあり、結合は電子のスピン対をつくることで形成される。
化学結合・分子構造の定性的説明に有利
有機化合物の性質・反応性の説明に広く利用されている
水素分子の場合
水素分
場合
波動関数は2つの原子オービタルの波動関数の積で表す。
電子1は原子Aだけに電子2は原子Bだけに存在する。
(同等性を考慮していない式)
電子1,2は原子A,Bに等しい確率で存在
できる。(同等性が考慮されている)
パウリの原理
2個の同じフェルミ粒子のラベルを交換するとき、
全波動関数は符号を変える(反対称となる)。
2個の同じボーズ粒子のラベルを交換するときは、
全波動関数の符号は同じままである。
パウリの排他原理
2個より多くの電子が任意に与えられた一つのオービタルをしめること
はできず、もし2個が一つのオービタルを占めるなら、そのスピンは対
になっていなくてはならない。
な
なく
な な
スピン対を考慮した波動関数の組み立て方(原子の電子軌道と同じ)
電子波動関数はスピン関数と軌道波動関数の積で表す
電子はフェルミ粒子なのでパウリの原理を考慮して、全波動関数が電子の
入れ替え操作で反対称になる(波動関数の符号が逆転する)ようにする
粒子を入れ替えると
粒子を入れ替え後の全波動関数が前の全波動関数と反対称になるには
スピン関数が反対称でなければいけない。(軌道波動関数は反対称にならない)
この条件を満たすスピン関数は以下のものである(規格化されている)。
原子価結合法によるH2分子の電子波動関数
同等性を考慮し電子の入れ替えで反対称になる電子波動関数
12
1,2
1
2
1
2
軌道関数
2
1 1
2
スピン関数
2
1
VB法による水素分子の取扱い
量子化学(原田義也)
水素分子のハミルトニアン
ハミルトニアンを分離する
←摂動項として扱う
水素分 波動関数を水素原 波動関数 積 表す
水素分子波動関数を水素原子波動関数の積で表す
水素原子波動関数が1sの場合
粒子の同等性を考慮した軌道波動関数
重なり積分
スピン波動関数
一重項
三重項
全波動関数
①
②
第①項
第②項
第①項
クーロン積分
第②項
交換積分
第①項
第②項
+ :一重項
項
ー :三重項
Jク
クーロン積分
ロン積分
K 交換積分
S 重なり積分
1,3
,3Eを0から∞までの核間距離で計算すると水素分子のエネルギ
Eを0から∞までの核間距離で計算すると水素分子のエネルギー(核のポテンシャル
(核のポテンシャル
エネルギーが得られる)