企業システムの進化と多様性 清水耕一

企業システムの進化と多様性
清水耕一
第6講
継続的原価低減戦略と
トヨタ・モデル
6-1 トヨタ自動車の発展
 1923年 豊田自動織機製作所(豊田佐吉)に自動車部発足(豊
田喜一郎)
 1936年 刈谷組立工場操業
 1937年 トヨタ自工設立
 1938年 挙母工場(今の本社工場)
 1949年 経営危機⇒1950年大争議
 1950年 トヨタ自販設立
 1959年 元町工場(初めての乗用車専用組立工場ークラウン)
 1962年 労使共同宣言
 1966年 高岡工場
 1970年 堤工場
 1979年 田原工場
 1982年 トヨタ自動車発足(工販合併)
 1984年 NUMMI⇒生産の海外移転
 TMMK(1988), TMUK(1992), TMMF(2001), etc
 1992年 トヨタ自動車九州
6-2 トヨタ生産システムの形成
大野耐一が推進
 トヨタ生産システムの2本の柱
 ジャスト・イン・タイム(JIT)
 必要なものを、必要なときに、必要なだけ各工程に供給する⇒
在庫の削減
 「かんばん」方式の導入(1953年)によってJITを実現
 自働化(1950年より)
 機械が誤作動したり、異常が発生したときに自動的に停止する
装置を備える
 ライン労働者も、異常が発生したらラインを止める
 多台持ち⇒多工程持ち
 U字ラインによる省人化、連結U字ラインによる少人化
 トヨタ生産システムの大前提
 生産の平準化(1953年より)
 月々の生産量を平均化すること
 それはどうして可能になるのか?
年間販売計画
交渉
年間販売計画
年間生産計画
年間生産計画
月間販売計画
生産会議
海外から のオーダー
月間生産計画
発注車種の仕様
月間生産量確定
工場と サプラ イ ヤーへの指示
旬間生産計画
日々の生産計画
カ ン バン によ る デイ リ ー変更可
6-3 トヨタのコーポレート・ガバナンス
 TPSの目的は原価低減⇒継続的原価低減戦略
 原価企画・原価管理の体系
 価格−利潤=原価
 市場⇒販売価格
 長期・短期の利益計画⇒目標利益
 製品開発(設計)段階における原価の作り込み
(VE: value Engineering)
 製造段階における原価の維持と改善
 改善活動の組織化(GL, CL,技術員の仕事)
 能率管理⇒生産性向上のための工程改善→賃金(生産性給)
 原価管理⇒材料費等の原価低減(AV: value analysis)
 改善活動へのインセンティブ(一般従業員の活動)
 創意工夫提案制度
 QCサークル活動(小集団活動)
6-4 トヨタのCG妥協
 1950年大争議(4月〜6月)
 首切り反対闘争⇒神話化
 労使相互信頼の重要性
 1954年、労使協調派が労働組合執行部を掌握
 1962年の労使共同宣言
 労使協調によって会社の発展に尽す
 経営側は労働条件の改善努める
 プロフィット・シェアリング(1950年〜)
 対ディーラー、対サプライヤー関係においても相互信頼と
プロフィット・シェアリング
 ステーク・ホルダー
 株主、経営者、従業員、サプライヤー、ディーラー、カス
タマー
6-5 トヨタ・モデル(1)
 コーポレート・ガバナンス
 原価企画・原価管理の体系
 継続的原価低減戦略⇔改善活動の組織
 無借金経営:1951年以降、黒字を維持⇒純利益1兆円
 CG妥協
 相互信頼とプロフィット・シェアリング
 労使間妥協⇦1962年の労使共同宣言
 「がんばれば報われる賃金」=生産性給(生産手当て)
 春季賃金交渉
 サプライヤー
 JIT納入(かんばん⇒電子かんばん)
 製品開発に参画(コンカレント・エンジニアリング)
 定期的価格交渉とプロフィット・シェアリング・ルール
 ディーラー
 販売計画の実現⇒生産の平準化に寄与
 顧客情報の製品開発へのフィードバック
 報償金制度あり
6-5 トヨタ・モデル(2)
 生産組織
 トヨタ生産システムによって組織
 組立ラインはフォード・システムに準拠
 標準作業・基準時間と流れ作業
 短いタクトタイム(60秒)
 工程間バッファー(在庫)無し⇒大野耐一の理想としての「一個流し」生
産(手持ち在庫無し=JIT生産)
 ジョブ・ローテーションの実施⇔多能工化
 工場間、部門間の応需援制度
 ボディー・ローテーション(製造車種の工場間移転)
 1992年のトヨタ自動車九州(宮田工場)以降に組立ラインコンセプトが変
化
 エルゴノミーを重視
 マン・コンベアー、幅広台車等を使用
 作業負荷を科学的に測定⇒一定限度を超えた作業を無くす
 タクト・タイムの延長
 セグメント間にバッファーを認める
 トヨタ・モデルは1990年以降、「リーン生産」のモデルとして世界的
に模倣の対象となる
 しかし、原価企画・原価管理の体系を模倣した企業は存在しない
エンジン準備
ドア組立
エンジン・サスペンショ ン
自動化
シート
ドア取付
冷却水
ハンドル
歩きながらの作業
バッテリー
ドア廻り
ウィンドウ
タイヤ
自動化
自動化
スラット・コンベア
ロ 燃料
ボ タンク
地下移動
エアコン
インパネ
メター
足廻り
スラット・コンベア
ワイヤ・
ハーネス
ドア取外し
塗装確認
バンパー