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日語誤用分析
(大学院)
3月28日(月・一)~
担当 神作晋一
第5章 必要なのはインプットか
アウトプットか

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



1.言語習得に大切なものはインプットだという考え方
2.言語習得にはインターアクションが必要という考え方
3.言語習得にはアウトプットも必要だという考え方
4.アウトプットの効果
5.言語習得には気づきが必要
6.アウトプットのもう一つの効果:自動化
第5章 必要なのはインプットか
アウトプットか

「たくさん話す」?



たくさん話せば上手になる
とにかく使うことが大事
言語習得とインプット・アウトプット
言語の4技能
理解できても、話した
り、書いたりすることは
できるとはかぎらない。
4技能の関係
音声中心
アウトプット
output
インプット
input
はなす(話)
きく(聞)
説
聽
かく(書)
文字中心
寫
練習が必
よむ(読)
要です
讀
1.言語習得に大切なものはイン
プットだという考え方
1.言語習得に大切なものはイン
プットだという考え方

クラッシェンの理論


言語習得におけるインプットの重要性を強調
「モニターモデル」
モニター・モデル


①習得・学習仮説
「習得(acquisition)」



自然に無意識に言葉が学ばれること
幼児の言語習得
「学習(learning)」



教室での文法学習などで意識的に学ぶもの
「学習」された知識は「習得」された知識になら
ない⇒別々に蓄積
自然なコミュニケーションには役立たない
モニター・モデル


②自然な習得の仮説
「習得順序」の存在

自然な順序があり、どのように教えても変わら
ない
モニター・モデル


③モニター仮説
「モニター」





学習で身に着いた知識は、自分の発話を
チェックする機能しか持たない。
⇒自然なコミュニケーションには役立たない
例:三単現の-s
例:読みて⇒読んで
例:本を読むのが好きです。
モニター・モデル


③モニター仮説
「モニター」




自然なコミュニケーションの最中にはモニター
をする余裕がない
⇒十分に余裕を持ち意識した時だけできる
無意識に使えるようになる
⇒「習得」された知識である
モニター・モデル



④インプット仮説
「理解可能なインプット」を理解することで
習得
現在の学習レベルよりも少し高いインプッ
ト(i+1のインプット)

文法学習や話すこと(アウトプット)は「習得」に
必要なし
モニター・モデル


⑤情意フィルター仮説
「情意フィルター」の高まりで習得が起こら
ない


⇒学習者の動機づけが低い、不安度のレベル
が高い、自信がないなど
情意フィルターが低い状態で習得が進む

⇒学習者の動機づけが高い、リラックス、不安
がない状態
モニター・モデル

意識的に学習した知識はモニターにしか
役に立たない(①と③)



⇒教師にも(学習者にも?)抵抗がある
教室での知識が使えるようにならない?
インプット仮説「i+1のインプット」



iは現在の言語能力
インプットの重要性は認めている
アウトプットは必要ない?
2.言語習得にはインターアクショ
ンが必要という考え方
2.言語習得にはインターアクショ
ンが必要という考え方

インターアクション仮説:




言語習得には(母語話者との)インターアクション
が必要
⇒対話者と言語を使ってやり取りをすること
話すことそのものが習得を促進するわけではない。
理解可能なインプット:インプットの理解度を高め
るインターアクション
2.言語習得にはインターアクショ
ンが必要という考え方

意味交渉:






コミュニケーション修復のやり取り
例:聞き返し、意味の確認、もう一度言ってもらう、
他のことばで言い換えてもらう
⇒習得につながる
学習者による意味交渉⇒母語話者の反応⇒理解
コミュニケーション・ストラテジー(communication
strategy) 接触場面研究
例:聴解の授業での問いかけ⇒既有知識の活性
化
3.言語習得にはアウトプットも必
要だという考え方
3.言語習得にはアウトプットも必
要だという考え方

イマージョン・プログラムの効果



カナダの例(フランス語学習)




第二言語で言語以外の科目を教える
Cf.南台のサマーキャンプ(形態は)
リスニング力・コミュニケーション能力↗
文法的な正確さ、社会言語能力↘
言語習得にはアウトプットも必要
⇒「アウトプット仮説」
3.言語習得にはアウトプットも必
要だという考え方

理解するプロセス:
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





⇒トピックの一般的な知識や文脈から得られるも
のなどを総動員
例:Yesterday I studied Japanese.
例:昨日日本語を勉強しました。×昨日~します
⇒青を聞かなくても赤の部分で過去だとわかる
意味内容を表す語を中心に意味処理
インプット中の言語情報すべてを処理しているわ
けではない。
(文法処理まで行うため)アウトプットが必要
4.アウトプットの効果
4.アウトプットの効果


(1)「言いたいこと」と「言えること」のギャップ
に気付く
(2)インプット時に言語形式に向かない知識を、
言語形式に向けさせる



フォーカス・オン・フォーム focus on form FoF
Cf.フォーカス・オン・ミーニング(意味重視、読解な
ど) FoM
Cf.フォーカス・オン・フォームズ(文法明示的知識)
FoFs
4.アウトプットの効果


(3)相手の反応(フィードバック)による仮説検
証⇒目標言語と自身の中間言語のギャップに
気付く
その他「自動化」

⇒6.
4.1「言いたいこと」と「言えるこ
と」とのギャップヘの気づき




アウトプット時に、上手く伝えられない
⇒「言えないこと」に気が付く(ギャップ)
インプットの理解だけでは気づかない
⇒ギャップに気付き、インプットに注意が向く


例:タスク先行型のロールプレイ
⇒必要な表現形式を学ぶ⇒習得へ
4.2 言語形式への注意


言語形式:語彙、文法、発音、表記などの形
意味を伝えるために必要な言語形式に注意
を向ける


例:~が少ない⇒何が?⇒日本語が上手になった
インド人
学習者による修正:pushed output


強制アウトプット、強制されたアウトプット
~ed 分詞:participles 形容詞と動詞の性質
4.3 アウトプットによる仮説検証

仮説検証:




中間言語が相手に通じるか、適切であるかを
、相手の反応を見て判断
例:楽しゅうございました
⇒「丁寧な言いかた」と判断
⇒「若い男性が使うとちょっと…」という反応
4.3 アウトプットによる仮説検証

イマージョン・プログラムの効果




カナダの例(フランス語学習)
リスニング力・コミュニケーション能力↗
文法的な正確さ、社会言語能力↘
日本語の場合、言語表現の性差、年齢差が
大きい?



⇒インプットが使えるか注意を向ける
⇒使ってみないとわからない
官能小説
4.3 アウトプットによる仮説検証

仮説検証の効果:フィードバック(反応)の有無





例:A「今日は渋谷に寿司を食べます」、B「へえ、い
いですね。」
 渋谷で寿司を食べる/渋谷に/へ寿司を食べに
行く
⇒ローカル・エラー(母語話者の反応が弱い)
A:「私たちは飲みに行きます。一緒に行きたいです
か」/B:「あ…、はい」(学習者も気づかない)
⇒語用論的な転移:母語話者もいちいち言わない
⇒cf.作文の直し(すべてを直すのは苦痛)
4.4 肯定証拠と否定証拠


インプットによる中間言語の修正
肯定証拠:目標言語で何が言えるかという
情報


例:everybody’s safe バッター、ランナーセー
フ(2人)
気づかない例:「山の上に(で)お弁当を食べ
た
4.4 肯定証拠と否定証拠

否定証拠:目標言語で何が言えないかと
いう情報





気づかれにくい:例:「おいしいじゃない」
インプットからはわからない
例:×~申す。~参った。申します、参ります
⇒例外的なルール
(キャラクター、人物像の違いには気づきにく
い)
4.4 肯定証拠と否定証拠


インプットだけで得られない否定証拠
⇒アウトプットしてみてフィードバックが得ら
れる


母語話者でもある。
幼児の場合(ある程度はフィードバックを得て
いる)
4.4 肯定証拠と否定証拠

「インプットにない」ことが「否定証拠」にな
る場合も。




間接的否定証拠
例:Yesterday I went to school.
例:?Yesterday did you went to school.
 ⇒インプットにふれた記憶がない
例:Did you go to school yesterday?
4.4 肯定証拠と否定証拠

「インプットにない」ことが「否定証拠」にな
る場合も。



「ござる」「申す」が使えない
現代語では聞いたことがない、時代劇や忍者
のアニメ等では聞く、という無意識の知識
大量のインプットや長い間ふれている環境
が必要。
5.言語習得には気づきが必要
5.言語習得には気づきが必要

気づき仮説:気づきが必要



理解できるインプットでなければ習得が進まない
理解しても、すべて習得されるわけではない
インテイク:学習者に取り入れられたもの
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


インプット⇒インテイク:気づきが必要
例:文末に「~た」があることに気付く
例:「~た」が過去のことらしい
気づきからさらに意味が理解されることが必要
6.アウトプットのもう一つの効果
:自動化
6.アウトプットのもう一つの効果
:自動化



定見は出ていない。
(アウトプットの効果はわかるが)
インターアクションやアウトプットがどの程
度言語習得に必要なのかはわかっていな
い。
6.アウトプットのもう一つの効果
:自動化



アウトプットによって、気づきが起きたり、
言語形式に注意が向いたり、フィードバッ
クが得られることで、習得が進む
インターアクションにより理解可能なインプ
ットがより効果的に得られる
⇒ただ話したり書いたりするだけで習得が
進むわけではない。
6.アウトプットのもう一つの効果
:自動化

自動化:言いたいときに言えるようになる





知識があること
知識にアクセスできること(書く、話す、理解)
例:「雨が降ったら」の「~たら」
インプット(聞く、読む)の場合も同様。
経験を繰り返す
6.アウトプットのもう一つの効果
:自動化

自動化:言いたいときに言えるようになる





オーディオ・リンガル・メソッドの文型練習
⇒文脈から切り離されているので×
使われている環境と近いところで「学習」
例:テストではできるが、自然なコミュニケーシ
ョンではできない。
⇒できるだけ自然なインターアクションの中で
繰り返し練習
6.アウトプットのもう一つの効果
:自動化



自動化:
⇒すでに持っている知識へのアクセス
中間言語体系への修正や発達ではない


例:ディスカッション
⇒新しくインプットで得たものを使って話す工
夫
6.アウトプットのもう一つの効果
:自動化

(1)中間言語の発達を促進するためには、
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多量の理解可能なインプットを与える
インターアクションの起こる活動
アウトプットを産出させるような授業
(2)自動化のためには、


文脈から切り離さず
自然なインターアクションの中でのアウトプット練
習
第5章のまとめ



まとめ
1.「学習」は自分の発話をモニターする機能。
「習得」は理解可能なインプットで起こる
2.インターアクション仮説:(母語話者との)イン
ターアクションでの意味交渉で、インプットが理
解可能なものになり習得につながる。
3.アウトプット





(1)言いたいことと言えることのギャップに気付く
(2)言語形式に注意を向けることができる
(3)相手の反応(フィードバック)によって仮説検証
自動化の効果
4.インプットがインテイクになるには「気づき」
が必要