真実説明の実際 真実説明と病院改革 社会保険相模野病院 内野直樹 H.20.10.8 社会保険相模野病院概要 小規模公的病院 (神奈川県相模原市) 許可病床数 170床 診療科目 8科 職員数 235名 (医師 34名 看護師 144名) 外来患者数 500名 入院患者数 118名 病院の特徴:産婦人科医療に特化 年間分娩 1300例 NICU 20床 年間婦人科手術 350例 漠然と考えたこと 内野直樹 患者 家族 嘘をつきたくないな 大きな転機 1997年8月 子宮頚部巨大筋腫 4回目の手術 術中出血約3000ml 術後2日目DIC併発 大学病院へ転送 軽快したが血栓症で死亡 考え方のすれ違い 私の主張 お悔やみは申し上げた 医療過誤ではない しかし、どこかに隠したい気持ちが 遺族の怒り 本当のことを知りたい 何故謝罪できないのか いつも真実を話そう 真実説明の歩み 1995年 産婦人科部長 産婦人科で開始 変人 2002年 副院長 病院に提案 却下 2004年 病院長 病院の方針として実施 抵抗 職員行動規範 常に恥ずかしくない行動を (2004.4.1) 1.結論に至った判断は間違っていないか 2.患者、指示内容、手順を再度確認したか 3.自分の行動は正しいと言えるか 人に見られて恥ずかしくないか 真実説明 職員への宣言 (2007.10.1) 1.事故、失敗は隠蔽せず 患者が気がつく前に話す 2.過誤があれば謝罪 3.病院は個人を徹底して守るが 隠蔽した場合は許さない 4.必ず具体的対策を公表 患者への約束 2007.10.1 1. 全ての事象に正確な情報公開をします。 2. 事故防止のシステムを確立し 常に改善努力を怠りません。 3. 事故が発生した場合、必ず真実を話します。 4. 原因を究明し、判明した事実、対策は 速やかに公表します。 真実説明の意義 医療従事者 患者 家族 信頼関係の構築 結果として訴訟、トラブルが減少するかも 訴訟対策ではない! 全社連指針 ハーバード大学マニュアルをベースに新規作成 “有害事象対応指針” グループ52病院で実行中 2008.7.11 社会保険病院グループ 全国社会保険協会連合会傘下の病院 北海道~宮崎まで 全国52病院 15000床 職員22000人 “有害事象対応指針” グループで実行を宣言 やってみたらどうだったか 1.インシデントレポート数の推移 2002年~2007年の比較 2.職員アンケート 2008年5月実施 67/75 名から回答(基幹職員対象) 医師17 看護師、助産師 19 薬剤部 2 放射線部 6 臨床検査部 7 事務局 16 インシデントレポート 提出数の変化 350 300 250 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 200 150 100 50 0 2002年度 2004年度 2006年度 インシデントレポート 何のために書くのか “犯人探しとつるし上げ”から 予防と具体的対策 反省は必要だが糾弾は不毛 話すのは辛かったか 患者は怒ったか 30 35 25 30 20 15 10 とても 少し たいしてつらくない 楽だった 25 20 15 10 5 0 5 0 怒った 怒らなかった 実行できているか 継続したほうが良いか 40 70 35 60 30 25 20 15 完璧 ほぼ出来た あまり出来ない 全く出来ない 50 40 30 10 20 5 10 0 0 したほうが良い しないほうが良 い 実例 (1) 内科 入院患者飛び降り自殺 院内緊急連絡網 蘇生努力 主治医確保 事実関係の確認 警察通報 家族連絡 職員の行動の検証 お悔やみとお詫び 既定の方針を実行 1.職員は対処していた→評価 2.施設に不備があった→改善、補修 3.葬儀に参列→管理者、主治医、科長 4. 2日後職員集会で事実を公開 5. 7日後事故検証委員会→対策の確認 6.職員の精神的状態→経過観察 実例 (2) 産科 分娩時の会陰Ⅲ度裂傷 分娩後2ヶ月で直腸膣ろう形成 説明と共感表明 1.起こったことは合併症である 説明 2.入院して治療する(人工肛門) 治療方針 3.辛い治療になるが申し訳ない 共感表明 4.治療費はいただくが、個室を無償提供する 実例 (3) 麻酔科 誤薬投与 麻酔終了時に誤って局麻剤静注 説明と謝罪と約束 1.誤薬投与があった 申しわけない 謝罪 2.患者への不利益はない 説明 3.経過を見て何かあれば補償する 約束 患者は麻酔下にあり意識はなかった 実例 (4) 産婦人科 人工妊娠中絶時の子宮穿孔 昨年まで15年間相模野に勤務した医師 相模野の説明→隠蔽せず 1.子宮穿孔である 原因は手術のため 説明 2.次回の妊娠は可能である 治療結果 前医から説明と謝罪 1.医療ミスであることを認める 謝罪 2. 治療費を負担、見舞金支払い 補償 実例 (5) 医事課 外来化学療法中の患者に在宅で請求 偶然発見(10 倍の額を請求) 説明 と謝罪 と返金 1. 担当者の勘違い 2. 自宅を訪問謝罪と返金を行う (事務局長 医事課長 担当職員) 既に6ヶ月~1年前の事例だった 真実説明実施前の 職員の不安 病院は本当に職員を守るのか 管理職は? 上司は? トラブルが増えるだろう 訴訟にならないか クレーマーが押し寄せるのでは 4年経過 まだ不安があるか 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 不安無し 不安あり “真実説明”実施の原則 その時あなたは 有害事象発生時の対応 基幹職86 名にアンケート 医師33 名 医療技術17 名 看護師21 名 事務職15 名 51 名より回答(回収率59 %) 対応わかりますか? どの部屋で どのメンバーで 補償しろ 土下座しろ 40 35 35 30 30 25 25 20 回答できる わからない 15 知っている わからない 15 10 10 5 5 0 0 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 20 45 40 35 30 知っている わからない 25 20 15 10 5 0 回答できる わからない 基準が必要 部署のルールはあるか マニュアル必要か 25 45 40 20 15 10 5 35 ある 大体 ない 30 25 20 15 10 5 0 0 必要 不要 シュミレーション テーマ:看護師誤薬投与 登場人物= 患者 看護師 看護科長 主治医 観客 試行は必須 職員保護のポスター 暴言、暴力は許しません! 患者、医療従事者にかかわらず、 全ての暴言、暴力は許しません。 厳正に対処して、警察に通報します。 真実説明は 病院改革に有効か? 平成15年の相模野病院 2年連続大赤字 患者激減 管理職逃亡 職員離散 全社連のお荷物 粗大ゴミ 相模野再生宣言 第一次5カ年計画発表 リストラなき経営再建 集中と展開 特化された病院 H.16 上半期 真水で1円黒字 H.17 黒字継続 1億以上 この流れの中心に真実説明 全ての基本 嘘をつかない 恥ずかしくない行動 出来ないと言わない 隠し事のない病院 情報開示の徹底 風通しの良い職場環境 怖いものがない 基本となる運営方針 検討 作成 修正 検証 実行 結果論、批判を排除 達成できたこと H.16 H.17 H.18 H.19 経営改善 オーダーリング 電子カルテ DPC 機能評価 ver.5 ISO9001国際認定 意識改革達成! 診療業績の推移 入院患者数の推移 外来患者数 160 700 140 600 120 500 100 400 80 300 60 200 40 100 20 0 14 15 16 17 18 0 19 14 年度別決算 20000 15000 10000 5000 0 -5000 -10000 -15000 -20000 -25000 14 15 16 17 18 19 15 16 17 18 19 当たり前のことを 人間として当然のこと 病院グループで初めて実行 社会保険病院に注目してください
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