セラミックス 第11回目 7月4日(水) 機械的特性 ◎基礎概念[:図18.4,図18.5参照] σ=P/A(σ:応力,P:引張り荷重,A:試料の断面積) εz=Δl/l0(εz:ひずみ,Δl:荷重Pを加えた時の伸び,l0:最初の長さ) σ=Eεz(E:弾性係数=弾性率=ヤング率) 図18.4 材料の変形:引張り(a),せん断(b) ,体積圧縮(c) 図18.5 応力-ひずみ曲線(:室温) (a)金属材料の場合,(b)セラミックスの場合 [重要]:金属材料とセラミックス材料の破壊機構 (:「応力-ひずみ曲線」)の違い セラミックス・・・[常温域]:弾性限界を超えると亀裂発生・成長→破壊 [高温域]:結晶粒界の軟化→粒界すべりに伴う延性の発現 ※セラミックス材料の製造時に生じた微小亀裂,気孔,介在物または表面の粒界溝 に応力集中が加わって、亀裂が発生,成長 ↓ 亀裂の進行に対する抵抗性=「破壊靭性」 ・・・一方向引張り応力の場合:臨界応力拡大係数(K1C)[:表18.3参照] :金属比べ、著しく小さい (K1Cが大きければ、亀裂が進行しにくく、破壊に至る時間が長い) ↓ Al2O3,SiC,Si3N4,ZrO2 ・・・セラミックスのなかではK1Cが比較的大きいため、セラミックス エンジン,高温用機械材料への開発が進展 表18.3 各種セラミックス材料と合金鋼のK1C(MNm-3/2) A l2O 3 A l2O 3-16%ZrO TiO 2 安定化ZrO 2 ZrO 2-2%Y 2O 2 ZrO 2-4%Y 2O 3 ZrO 2-10%C aO ZrO 2-8%M gO 磁器 シリカガラス TiB 2 3~7 7~17 3 3 6~12 10~20 8~10 6~12 1.3 3 5~6 B 4C SiC A lN Si3N 4 サイアロン W C -C o 軟鋼 炭素鋼 高張力鋼 マルエージング鋼 1~4 2~5 3 4~7 7 6~7 100~150 235 35 93 気孔率と強度の関係[:図18.6参照] ・・・試験温度に依存せず極端な強度の低下 [対策]:①気孔の発生がない完全焼結 ②結晶粒の微細化(結晶粒界に存 在する微小亀裂や微小残留応力 の起源・・・結晶粒の熱膨張・ 収縮の異方性に起因) ③結晶粒の規則配列(整合化) を促進 ↓ 「セラミックスの機械的性質」 ・・・結晶粒径と気孔率に大きく依存する 図18.6 アルミナセラミックス 曲げ強さと気孔率の関係 電気的特性 (1)サ-ミスタ(thermistor)*)[:図18.7参照]特性 [定義]:温度により材料の電気抵抗値が変化する性質 (温度調整、測定用の温度センサー用素子) ①CTRサ-ミスタ(critical temperature controler):臨界温度サ-ミスタ ②NTCサ-ミスタ(negative temperature controler) ③PTCサ-ミスタ(positive temperature control thermistor) *)thermistor (:thermally sensitive resistor) 抵抗の特異な温度依存性を利用して、材 料の電気抵抗を測定するこによって温度を 検出するセンサー素子 図18.7 3種類の代表的サ-ミスタ の電気抵抗の温度依存性 ①CTRサ-ミスタ:結晶の構造変化が生じる相転移点で抵抗が急激に低下する材料 V2O5:80℃以下(単斜晶系)では抵抗が負の温度係数を持った半導体 80℃以上(ルチル構造:正方晶系)では電気伝導度が2ケタ以上増加 (抵抗が急激に減少)し、金属的挙動[温度の増加につれ抵抗は増加す る・・・抵抗:正の温度係数]を示す 応用:温度スイッチなどの各種センサ材料 ②NTCサ-ミスタ:抵抗が温度上昇に伴って単調(指数関数的)に減少する材料 (CTRサ-ミスタとは異なり、相転移には無関係) 不純物注入型遷移金属酸化物(Fe2O3-Ti系,NiO-Li系), ZrO2-Y2O3系,SiCなど 応用:ダイオ-ド,ヒュ-ズ,各種温度スイッチ類など ③PTCサ-ミスタ:相転移点で抵抗が急激に上昇する材料(NTCサ-ミスタとは 異なって、抵抗は温度上昇に伴って増加し、かつCTRサ-ミ スタ同様結晶の相変化に起因する) ・・・正方晶-立方晶変態に伴う抵抗変化 ドナ-イオンの注入:n型[BaTiO3+La3+,Ce3+(Ba2+と置換)] p型[BaTiO3+Nb5+(Ti4+と置換)] 応用:電圧異常と回路の短絡保護材料・・・大電流が流れると、サ-ミスタの温 度が上昇し,抵抗値が増加し電流量を低下させる サーミスタ(Thermistor, Thermally sensitive resistor)の種類 (1)NTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient) :温度が上昇すると抵抗値が連続的に減少する (2)PTCサーミスタ(Positive Temperature Coefficient) :温度が上昇すると特定の温度以上で抵抗値が 急激に増加するサーミスタ (3)CTRサーミスタ(Critical Temperature Thermistor) :温度が上昇すると抵抗値が急激に減少する ※NTCサーミスタ(温度制御用センター素子として多用)の 温度と抵抗値の関係式 1 1 B( ) T T0 R R0 exp R:温度Tにおける抵抗値 T:温度(K) R0:基準温度T0における抵抗値 T0:基準温度(K) (一般に25℃(=298K)を使用) B:定数 [身近な用途] 電子体温計、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンの制御用温度センサー (その他:OA機器、カーエアコン、自動車エンジン用温度計(センサー) (2)バリスタ(variable resister)特性 :電流-電圧特性が非直線的なセラミックス半導体材料 ※V=IRに従わない (電圧が増加すると抵抗が急減し、非オ-ム則を示す材料) [:図18.8,18.9参照] ・・・低電圧ではバリスタは温度依存性が小 さいが、ある臨界降伏電圧VBで突然 抵抗値が消失し電流が急激に増加する 図18.8 ZnOバリスタの典 型的なI-V特性 (電流はVBで急速に増加) 図18.9 ZnOとSiCのバリスタ特性 用途:①整流器で発生する異常電圧から、回路素子を保護 ②落雷,高電圧の流入による電気回路の破壊防止用
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