§10. 基本的人権の効力② 私人間効力 2007年10月16日 社会科学部 憲法 §10.基本的人権の効力②--私人間効力 1.実定法秩序の原則規範としての基本的人権 2.私人間効力の理論 3.最高裁の立場 4.国家の基本権保護義務をめぐる困惑 §10.基本的人権の効力②--私人間効力 1.実定法秩序の原則規範としての基本的人権 ・基本的人権=実定法秩序の原則的規範として →私人間における権利義務関係を規律する法律を 支配する原則 →この意味においては、立法の指導理念 ・理念的状況⇒立法による基本的人権の適切な具体化 but: すべてを法律でまえもって規律し尽くすことは困難 そこから→基本的人権の私人間効力という問題領域 § 10 .基本的人権の効力②--私人間効力 2.私人間効力の理論 -無効力説⇒ 基本的人権は国家対国民の関係でのみ -直接効力説⇒基本的人権が私人間でもそのまま妥当 -間接効力説⇒法律上の一般条項を媒介にして、 基本的人権を間接的に私人間にも適用 -state action の法理 ・国家同視説⇒ 国家の財政援助、特権付与、司法的実現 などを手がかりに国家の関与する私人に 対して憲法を直接適用 § 10 .基本的人権の効力②--私人間効力 2.私人間効力の理論 私人間効力 →ある程度の範囲で何らかの形で妥当することに関し、 一般的承認 背景→社会生活の中で基本的人権が私的権力により 脅かされている 対国家の関係でのみ基本的人権の保障を 貫徹するのでは不十分 問題⇒どんな場合にどんな人権が私人間で効力をもつ? § 10 .基本的人権の効力②--私人間効力 3.最高裁の立場 判例(三菱樹脂事件最高裁判決) =限りなく無効力説に近い間接効力説 ⇒・私的自治 ・侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の 限界を越える場合に のみ、法がこれに介入し、 その間の調整をはかる 問題→企業による思想・良心の自由の否定が基本的 人権を侵害しないのか? § 10 .基本的人権の効力②--私人間効力 4.国家の基本権保護義務をめぐる困惑 国家の基本権保護義務 ・私人による基本権侵害を防止するために ・最低限の侵害防止措置を講ずる ・国家の憲法上の義務 …その懈怠による侵害発生→国家の違憲行為 ☆利点 ・法律による基本権的利益の保護を説明できる ・私人間保障が実現されるべき範囲の合理化 ★問題点 ・保護の論理の無限拡大による国家の極大化 自由の限りない相対化 § 10 .基本的人権の効力②--私人間効力 4.国家の基本権保護義務をめぐる困惑 基本的人権を私人間で完璧に保障すること →私的自治の否定、 国家(憲法)による全面的コントロール ∴基本的人権の「実質的意味内容」を具体化する法律の 制定による解決がまずは必要 司法審査の対象→その法律が、基本的人権に対する 過度の制約を引き起こしていないか
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