チンパンジー幼児の活動空間の発達 福永恭啓1 延吉奉紀2 桐山泰史2 小林?? (1:滋賀県立大学、2:到津の森公園) 要旨 天王寺動物園で飼育されている母子を対象に分離頻度の観察を行なった結果、27〜34ヶ月齢のアカンボウは母親の上方空間 を下方空間に比べて選好し、35ヶ月齢以降は下方空間と上方空間で差が見られなくなった(07年霊長類学会で発表)。なぜ上記の ような選好性が見られるのか、目視の可否が関係していると推測し記録の整理を行なった。その結果、母親がアカンボウに対して目 視が難しい空間を利用した場合の母子間距離は全体の平均よりも全ての月において下回ることが分かった。また、27ヶ月齢以前の 母子間の分離頻度を調べるために到津の森公園において天王寺と同様の観察を行なった。その結果、母子間の分離は水平には5 ヶ月齢から、母親の上方空間へは9ヵ月齢から、下方空間へは12ヵ月齢から始まり、空間によって発現する時期に差異があった。 はじめに 従来の母子間距離・分離の研究 →水平方向に着目した水平型 チンパンジーの活動空間:樹上を含む立体的な空間 →水平に加え垂直方向を調べる必要性 本研究 →水平方向に加え垂直方向を考慮した母子間分離の 立体的な広がりを考慮 方法 調査方法(共通) 天王寺 対象母子:アップル(母親)・レモン(03年10月生まれ、第一子) オス2頭・メス3頭と同居(オスは一日交代で放飼) 調査期間:06年1月〜11月(調査は現在も進行中) 到津 対象個体:イチゴ(母親)・ミルク(06年11月生まれ、第五子) オス一頭・メス4頭と同居(2歳のアカンボウ一頭含む) 調査期間:06年3月〜現在進行中 結果と考察 放飼場の平面図と縦断面図を用い て母子の位置を記録し、垂直と水平 の母子間距離を5分間隔の瞬間サン プリングで算定した。
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