2)対策技術の開発 ① 植食性魚類の除去技術開発 ② 植食性魚類の分散・防御技術開発 ③ ウニ類の吸引除去装置の改良 ④ ロープ養殖による植食性魚類の食圧低減技術開発 植食性魚類の除去技術開発 目的 定置網や大型カゴ網を用いて、効果的な設置時期や場所、施設形態などを明らかにする。 方法 定置網調査を、佐賀県唐津市と長崎県平戸市、籠調査を大分県佐伯市と長崎県西海市で、 以下の調査を実施した。なお、水深は全てD.L.を基準とした値である。 A.定置網調査 調査方法A1/アイゴ 調査海域 佐賀県唐津市 調査期間 2010 年5~12 月(8ヶ月) 調査方法 【漁獲量】佐賀県玄海水産振興センターと唐津市漁業協同組合に協力して頂き、 唐津市の定置網(3ヶ統、下図)を対象として、アイゴの標本調査等を実施し た。大きさを大(体長 17 ㎝以上)、中(体長 9~17 ㎝)、小(体長 9 ㎝未満)に 区分し、10 尾以上は 10 尾単位、100 尾以上は 100 尾単位で、およその尾数を記 録した。なお、大きさは片山ほか(2009)を参照し、大が3歳以上、中が2歳、 小が1歳未満に相当するように区分した。漁獲物の一部について、大きさ、重 量、生殖腺重量を測定 した。 また、玄海水産振興セ ンターより唐津港のア イゴ水揚げ量のデータ を提供して頂き、経年 変化と月別変化をグラ フ化した。 なお、佐賀県の玄海灘 側には約 50 カ所に定置 網が設置されている。 【周辺藻場】定置網周辺で、ライン調査とスポット調査を実施し、藻場の状況 を観察した。 【水温】加唐島の定置網と京都府宮津市養老漁港内の2カ所において、水温計 (HOBO 社製、ティドビットV2)取付け、30 分間隔で水温を測定した。養老漁 港は、アイゴの稚魚が来遊することが知られており、課題(1)-1)「植食動物の 生活史の把握」の検体を採集した場所近傍である。 -46- A.定置網調査 調査方法A2/イスズミ 調査海域 長崎県平戸市 調査期間 2008 年~2010 年(3ヶ年) 調査方法 【漁獲量】平戸市水産課の協力により、平戸市漁業協同組合・舘浦漁業 協同組合のイスズミの水揚げ量を入手し、整理した。 舘浦漁業協同組合の協力により、定置網で漁獲されたイスズミの大きさ を調査した。 【周辺藻場】獅子、舘浦および前津吉(下図)の定置網周辺で、ライン 調査とスポット調査を実施し、藻場の状況を観察した。 【刺網】前津吉の沖防波堤において、イスズミの刺網調査と潜水観察を 行った。 【水温】獅子と舘浦の定置網に水温計(HOBO 社製、ティドビットV2) 取付けた。舘浦についは、網交換時に紛失した。また、獅子については、 2011 年1月に出向いたが、荒天のため回収できなかった。 -47- B.籠調査 調査方法B1/大型籠 調査海域 大分県佐伯市 調査期間 2010 年4~12 月(9ヶ月) 調査方法 大分県佐伯市名護屋地先(下図、点線内)に、2010 年4月から 2010 年 12 月まで、大型籠(φ1.8m×H1.3m)2 個による植食性魚類の漁獲試 験を行った。なお、籠は 2009 年6月に設置されたものである。 大型籠設置位置 大型籠 -48- B.籠調査 調査方法B2/小型籠 調査海域 長崎市西海市 調査期間 2010 年9~2011 年3月 調査方法 長崎県西海市西海大崎地先(下図、赤丸)に、2010 年6月から 2011 年3 月までの間(一時中断あり) 、小型籠(φ0.8m×H0.653m)2 個による 植食性魚類の漁獲試験を行った。 小型籠設置位置 小型籠 -49- 結果 A1.定置網調査/アイゴ 調査を行った定置網の位置と藻場調査位置を図A-1に示した。 【串浦】 対象とした定置網は、№36(地元名「ウート」 、最大水深 25m)と№38(「クビレの鼻」、 同 15m)であり、原則、1日おきに交互に揚げられている。漁業者からの聴取りによると、 魚の入り方が異なっている。№38 は水温が早く高くなり、春に魚が先に入ってくるが、夏 になると早めにいなくなる。箱網の目合は2㎝であるが、最後は5㎜程度であり、3㎝程 度のアイゴのがいれば獲れるが、今まで数㎝のアイゴは獲れたことはない。冬に、中(2 歳)が漁獲されたことがある。昨年、大(3歳以上)が数千尾漁獲された。ガンガゼ(地 方名「ユリ」 )は昔、七ツ釜の隣の眼鏡岩付近にしかいなかったが、現在は広く分布し、深 いところに多かったが、最近は浅いところや漁港内にもいる。 【屋形石】 対象として定置網は、№17 であった。漁業者からの聴取りによると、現在の主な漁獲物 は、春から秋はミズイカ(アオリイカ大 2~3 ㎏)でそれ以降はモイカ(アオリイカ小)で ある。アイゴは、 15 年位前に 10 ㎝位のアイゴ(バリ)毎日数百箱が獲れたことがあった が、その時期にカジメがなくなったことはない。ここ 10 年位は秋に自家消費程度を獲れる 以外は、ほとんど獲れなくなった。市場に出しても 200~300 円/箱であり、箱代(150 円) を引いたらもうけはない。昔、9~10 月頃、メジナの大群と一緒に、5㎝位のアイゴがた くさん入ったことがあった。イスズミは秋頃獲れる。ブダイは獲れない。 【加唐島】 対象とした定置網は、№23(最大水深 30m)であった。漁業者からの聴取りによると、 台風を避け、8~9月は定置網を揚げている。箱網の目合は1㎝程度である。もともとブ リを狙っていたが、最近は獲れなくなり、今はアジとイカ(スルメイカが主)が獲れてい る。アイゴは、大きさ 30 ㎝のものを 20~30 尾で1箱/15 ㎏で出荷している。イスズミは、 20 ㎝位の小さいものが一年中獲れる。ブダイはあまり獲れない。 -50- 図A-1 定置網の位置と調査位置 -51- 【定置網におけるアイゴの漁獲量】 定置網におけるアイゴの漁獲量と表A-1と図A-2に示した。 アイゴの総漁獲量は、加唐島(約 2 千尾)で最も多く、次いで串浦(約 1 千尾)、屋形石 (約 500 尾)で少なかった。加唐島と串浦では大サイズの割合が高く、串浦では小サイズ の割合が高かった。2 つの定置網を対象とした串浦では、漁獲量と各サイズの割合に、位置 による大きな違いは認められなかった。 定置網により漁獲状況は異なるが、大サイズは5月頃から漁獲され6・7月頃にピーク となり、その後減少し 12 月まで漁獲される。中サイズは、5月から 12 月の間に漁獲され、 屋形石では夏頃に多く、串浦と加唐島では顕著なピークは認められなかった。小サイズは、 加唐島で6月頃に漁獲されていることを除き、主に 10 月から漁獲され、11 月頃にピークと なり、12 月に減少した。 表A-1 定置網におけるアイゴの漁獲量 中サイズと小サイズは大部分は廃棄されている。中サイズと体長 17 ㎝、小サイズの体長 を 9 ㎝とすると、片山ほか(2009)から体重はそれぞれ 150g、20gと算出される。大サ イズについては、30 ㎝サイズの1箱入り(15 ㎏)が 20~30 尾であることから体重を 500 gとして、3つの定置網の総漁獲量(尾)からサイズ別の漁獲量(㎏)を試算した結果を 表A-2に示した。サイズが小さいために廃棄されるアイゴの割合は7%と推定された。 表A-2 サイズ別の漁獲量(㎏)の推定 -52- 図A-2 定置網におけるアイゴの漁獲量 -53- 【唐津港におけるアイゴの水揚げ量】 唐津港におけるアイゴの水揚げ量を表A-3と図A-3(年別) 、図A-4(月別)に示 した。 アイゴの年間水揚げ量は、2002 年から 2007 年までの間は減少傾向にあり、それ以降は8 トン前後を推移している。近年、2002 年の1/2程度に安定している点について、魚価が 安いため、投棄されている可能性を指摘する意見もある。 年により相違はあるが、平均的にみて漁獲は5月から始まり、7月頃にピークとなり、そ の減少して、1~4月の間はほどんど漁獲されない。 表A-3 唐津港におけるアイゴの水揚げ量 図A-3 唐津港におけるアイゴの水揚げ量(年別) 図A-4 唐津港におけるアイゴの水揚げ量(月別) -54- 【アイゴの計測結果】 アイゴの計測結果を表A-4に示した。サンプルの漁獲日は下表のとおりであった。な お、生殖腺指数GSIは次式で計算した。 GSI=生殖腺重量GW/(体重-GW)×100 表A-4 アイゴの計測結果(1) 【串浦/6月】 【串浦/8月】 【屋形石/6月】 -55- 表A-4 アイゴの計測結果(2) 【屋形石/7月】 【加唐島/6月】 【加唐島/7月】 -56- 表A-4 アイゴの計測結果(3) 【加唐島/11 月】 【相賀/10 月】 -57-
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