大地の躍動を見る ~新しい地震・火山像~ 山下輝夫編著 岩波ジュニア新書 総合科学課程一年 広岡 昌史 目次 この本は、九人の著者による九つの章で構成されています 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 第九章 地震はどのように起きているか(武尾実) 歴史から見た地震(島崎邦彦) 地震の動きを考える(山下輝夫) 地震と火山の活動を測る(森田裕一) 宇宙から地殻の動きを知る(大久保修平) 火山噴火のからくり(中田節也) 火山のもと(藤井敏嗣) 地球の内部はこうして知る(川勝均) 地球の鼓動が聞こえてきた(深尾良夫) 内容説明① 第一章の「地震はどのように起きているか」では、地震=断層運動とい う理論を元に地震断層のCTの方法について書かれています。 CTとは「コンピューター断層撮影」の略でCTスキャンと言えば医療の 分野ではよく知られている診断方法ですが、地球の内部を調べるのに も早くからこの手法が用いられています。 医療の場合は超音波やX線が使われますが、地球の場合は地震の波 を使います。地球内部で反射あるいは透過してくる波を、地震計でとら え、コンピュータで処理した断層画像を作り、地球内部を調べています 第二章の「歴史から見た地震」では、大地震は決まった場所で繰り返 し起こることがあるという前提を初めに示し、大昔の手紙、日記、記録 等の書物から過去に地震が起こった場所・年代・被害状況を知り、そ れらを使っての大地震の長期予測の方法や東海地震と南海地震の二 つの地震の歴史的経緯について説明しています。 第二章 南海地震の図 まず右から左へとフィリピン海プレートが日本へ近づいてきて紀伊半島や 四国の沖合100~200kmにある「南海トラフ」と呼ばれる海底の広いくぼ みから日本の地下へと沈み込んでいきます(図①)。その際に接している 日本のプレートを一緒に引きずり込みます。そのため海へ突き出た半島 は海側に傾斜します。半島の先端部は今でも毎年数ミリの割合で沈んで います。一方半島の付け根あたりに位置する場所では、逆にわずかに土 地が上昇しています(図②)。 そして図③が地震が起こった状態です。 半島は地震前に比べて陸側に大きく傾斜し、先端部は上昇して、付け根 部分はわずかに沈んでいます。 実際に1946年の昭和南海地震では室戸半島の付け根部分である高知 県高知市付近では土地が沈んで田畑が海水に浸り、室戸半島の先端の 室戸岬付近では土地が1m以上上昇したそうです。 内容説明② 第四章の「地震と火山の活動を測る」では、主に地面の振動 を計測するための地震計(史上初の地震計や機械式地震計、 電磁式地震計、フィードバック地震計)の説明と地殻変動の 観測装置であるひずみ計と傾斜計についての説明が書かれ ています。 第五章の「宇宙から地殻の動きを知る」では、地殻変動を計 測する測地学的な道具のうち、宇宙からの測定手法につい て述べられています。過去の地殻変動調査の測量法である 三角測量を初めに簡単に説明し、現在の主流であるGPSを 用いた測量法を詳しく説明しています。 第六章の「火山噴火のからくり」では、雲仙普賢岳を例にし、 たくさんの画像や表を使って火山噴火の複雑なメカニズムを 紹介しています。 内容説明③ 第七章の「火山のもと」では、マグマを作る原因となるマント ル(地表約30kmから約2900kmの範囲を指す。地球のマ ントルはカンラン岩を主成分とする固体)について詳しく説明 しています。結論として「マグマが地球の内部構造を決定し た」と書かれていますが、まだまだわかっていないことがたく さんある分野だそうです。 第八章の「地球の内部はこうして知る」では、地震波のことを 「地球内部のトラベラー」と表現して、地震波を使っての地球 内部の活動・運動の理解方法を詳しく説明しています。 第九章の「地球の鼓動が聞こえてきた」では、地球は常に微 弱な振動をしているという事実と、その振動と地震の振動と の違い(地震は発生と同時にだんだん弱まり、やがて消え る)を説明し、最後に、常に地球を振動させている大気を楽 器、太陽をその演奏者と表現して地球との関係を説明してい ます。 感想 章によって内容や著者が違うので分かりやすい・難 しい章や興味が湧く・湧かない章などの差があった。 専門用語が何の説明も無く文中で使われている箇 所がたくさんあり、何度も調べなおさなければならず、 大変だった。 現代と過去の地震についての知識・測量法などの 違いに驚いた。地震・火山の研究は進歩が激しいが、 未だに分からないところがたくさんあるみたいで興 味深い分野だと思った。
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