全天X線監視装置(MAXI)搭載用CCDカメラ の開発の現状 片山晴善、冨田洋、松岡勝(JAXA)、常深博、宮田恵美 (大阪大学) E-mail: [email protected] URL: http://www-maxi.tksc.jaxa.jp Solid-state Slit Camera (SSC)は全天X線監視装置(MAXI)搭載のX線CCDカメラである。 SSCはMAXIの低エネルギーバンド(0.5-10keV)をカバーする 検出器であり、銀河系内に分布する元素の分布を輝線を用いてマッピングすることなどを目的としている。SSCはコリメーターを用いたCCDカメラで、 浜松ホトニクス社製の1k×1kのCCDチップを16素子搭載し、2台のSSCカメラで90×1.5°の視野をカバーする。SSCはループヒートパイプ(LHP)とペ ルチェクーラを用いて-60℃程度まで 冷却され、観測を行う。現在はコリメーター、カメラ、エレキのエンジニアリングモデル(EM)が製作され、性能評価 等を行っている。 カメラ、エレキを組み合わせた性能評価試験では、ペルチェの冷却性能や定温度制御など、さまざまな項目を測定した。また55Fe線源や蛍光X線を用 いてエネルギースケールや、エネルギー分解能を測定した。その結果-60℃での読みだしノイ ズが5electron程度、エネルギー分解能でも、5.9keVで 150eV前後であり、フライトに向けて十分な性能であることを確認した。 これらの結果を踏まえ、Flight Model (FM) の設計を固め、2005年度よりFMの製作に入る予定である。 1. SSCの概要 3. SSC-EMカメラ Slit and collimator SSCは現在、Engineering Model (EM)の製作をほぼ終了し、Flight Model (FM) の設計段階に入ってい る。EMに取り付けられているCCD のうち半分は、大阪大学でスクリー ニングを行った、FM相当のCCDで ある[3] 。 SSC-EMはJAXA/筑波宇宙セン ターにおいて性能評価を行っており、 SSCの性能 CCDs SSCの概観 カメラユニットの概観 LHPRSの概観 Solid-state Slit Camera (SSC)は、全天X 線監視装置(Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI)[1]搭載のX線CCDカメラ として、開発が進められている。SSCは MAXIの低エネルギーバンド(0.510keV)をカバーする検出器であり、銀 河系内に分布する元素の分布を輝線を 用いてマッピングすることなどを目的と している。 SSCは水平、垂直方向に2つのカメラを 持ち、それぞれには、16素子のCCD チップが搭載されている。SSCの視野は SlitとSlat Collimatorにより制限されてお り、それぞれの視野の大きさは 1.5×90°である。 SSCのCCDは、Loop Heat Pipe Radiation System (LHPRS)[2]とペル チェ素子を用いて-60℃で駆動される。 LHPRSはSSCのカメラ全体を-20℃まで 冷却する。ペルチェ素子は1CCDにつき 1W程度の電力で、温度差40℃をつける ことができる。刻々と変化するISSの熱 環境により、カメラの温度は変動するが、 CCDの温度は常に一定に保たれるよう に制御することが可能となっている。 2. SSC/CCD SSCのCCDは浜松ホトニクス社製のFull Frame Transferタイプを使用しており、 空乏層厚は、ASTRO-E2/XISに並ぶ70mmを達成している。 1pixelあたりの読み出し速度は8msで、時間分解能を稼ぐため、縦方向の電 荷は加算して読み出される。最速の64line加算の場合、1カメラあたり約2秒 で全CCDのデータを読み出すことが可能である。これにより、ISSの早い動き に対しても、位置分解能を確保することができる。 これらの性能評価の結果を元にFMの設計が最終決定される。FMの製作は 2005年度より開始される予定である。 4. SSC-EMの性能評価 SSC chamber SSCの性能評価は筑波宇宙センター の性能評価システムを用いて行われ ている。SSCの性能評価試験では、主 に蛍光X線を用いX線に対する応答を X-ray generator 調べるとともに、温度制御などの試験 Second も行っている。 target チャンバ内のSSCはヘリウム冷凍機を chamber 用いて、-20℃まで冷却される。CCDは 内蔵したペルチェにより、-60℃まで冷 SSCの性能評価システム 却されるが、ペルチェに流れる電流を 制御することにより、Hot側の温度が カメラ温度 変化してもCCDの温度は一定に保た れるようになっている。 ペルチェ 試験では、Hot側の温度を10℃変化さ 電流値最大 CCD Hot側温度 せても、CCDの温度は±1℃で制御で きることを確認した。 X線に対する応答は、Al, Cl, Ti, V, Fe, CCD 温度 Ni, Znなどの蛍光X線をCCDに照射し て、読み出しノイズやエネルギース ケール、エネルギー分解能が調べら SSCの定温度試験の温度profile れた。 これらの試験の結果、-60℃での読み出しノイズは5electron程度、エネル ギー分解能は5.9keV付近で150eV前後であり、FMに向けて十分な性能 であることを確認した。 (右)蛍光X線照射時のSSCスペクトル、(中央)エネルギースケール (左)エネルギー分解能 参考文献 [1]森井幹雄 他、宇宙科学シンポジウム p4-21 [2]上野史郎 他、宇宙科学シンポジウム p3-14 [3]上山大介、 修士論文、大阪大学 2004
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