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性の身体コミュニケーション
情報コミュニケーション学D
2010年5月25日 平山満紀担当
Ⅰ性を原理的に考える
Ⅱ日本の性の身体コミュニケーションの変遷
Ⅲ実践的結論
簡単な自己紹介
平山満紀(ひらやままき)
情コミ&文兼任講師 「身体コミュニケーション」
(駿河台)
江戸川大学社会学部人間心理学科身体論コー
ス 専任教員
専門:社会学、身体論
テーマ:コンピュータ時代の身体と身体文化
個人サイト 「平山身体文化研究室」
http://www.hirayama-body.com/
大学生の広い意味での性教育の重要性
大学生世代の性教育の重要性
その理由
①セックスの体験率 1999NHK調査(無作為抽出 全国
調査)
男16~19歳36% 20代79% 30代97%
女16~19歳36% 20代87% 30代96%
『日本人の性行動・性意識』NHK出版 2002年
正しい知識とサポートを得ることが重要
②大人世代 「若者の性の乱れ」を嘆くだけ→若者「セック
スはなんとなく悪いこと (感染症、妊娠、心理不安)」
③思春期の終わりの時期 心身の性的機能は大きく成長
可能
Ⅰ性を原理的に考える
種の保存 単性生殖/有性生殖
有性生殖とは、異なる個体の生殖細胞を完
全に合一させる、新たな生命を生み出すこと
。個体の死も始まる。個体同士、また生殖細
胞同士強く求め合う。
水生動物の性行動は産卵。陸生動物の性行
動はセックス。セックスは海を作り出す行為。
人間は動物と異なり発情期がない。コミュニ
ケーションで海を作り出す。性的コミュニケー
ションの充実度高い、時間は長く、快楽に満
ちる。(信頼、愛情、遊び、神聖なものとも。)
恋愛、結婚、性
恋愛と性 発生がまったく違う。
両者が一致することもあるが、別の原理に従う。
恋愛と結婚、結婚と性の関係も社会・時代でさまざま
「恋愛、結婚、性」の三位一体(恋愛した人とのみセック
スし、結婚するべきという規範)≒近代的ロマンティック
ラブ≒近代家族の規範 西洋19世紀に確立。
日本 明治以降教育され、1960年代~大衆化。
日本 1980年代頃~、三位一体は弱化。現在は、個
人による考え方の差が大。
(川村邦光『性家族の誕生』ちくま学芸文庫2004年)
人間の性の原理性
精子と卵子→受精卵
生命エネルギー=(広い意味での)性エネルギー
性エネルギーが他のエネルギーに昇華
人間は性エネルギーの、ごく一部のみセックスに
使う。しかし人間の全行動は性エネルギーに源を
もっている。その痕跡が、どんな行動にもある。
性の身体コミュニケーションの秘訣
性行為以前に
身体の交流だが、物理的身体の交流より先に
気の交流(気になる、気が合う、気がひかれる・・)
このような感覚を育てていくこと
相手の求めるところに手をあてること
相手の求めることを感じられるようになること
男性:緊張の快 女性:弛緩の快 方向性が異なる
●女性が心身ともリラックスするよう男性はつとめる
●女性の快を主とすること
セックスと身体状態の関係
よいセックスの後 身体がゆるみ、骨盤開閉の可
動性が大きく。(特に女性。心身の健康状態への
影響大)
セックス未経験の身体、しばらくしていない身体は
全身がゆるみにくい、骨盤開閉小さい。
性欲・・・他の欲求に変形。睡眠欲、物欲、食欲、
おしゃべり欲。 しかしそれらの活動では身体の
ゆるみの程度は小。
男性 勃起力を失うと自信、活力全般を失う。
Ⅱ日本の性の身体コミュニケーション
の変遷
1伝統的な性の民俗
「恋愛、結婚、性」の三位一体とは遠い。
第二次性徴が始まったら成人式「ふんどし祝」「お歯黒祝」
信頼できる大人手ほどきを始める。
子どもが性から遠ざけられず、子どもの性体験も。
夜這い
祭り 厄落とし 御詠歌講 出稼ぎなど多くの行事はセックス
の機会
性は聖(⇔西洋
性は汚らわしい。生殖のための必要悪
性のアジワイ 技能+人格的熟成 単に好色、
上手をこえた、男として女としてのアジを育てた。
生まれた子は誰かが育てる。
闇も深かったが、旺盛な生命力、幸福感の元。
色道、浮世絵春画、艶句、民謡・・・ 性の文化
明治以降 夜這いの取締まり。純潔教育。婚外
セックスの罪悪視。性の文化衰退。
赤松啓介『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論』ち
くま学芸文庫 1994年→2004年
渡辺京二『逝きし世の面影』平凡社 2005年
2現代日本人の
性の身体コミュニケーション
●90年代以降、性行動は全体に鈍化
目や頭の使いすぎで性的機能衰える人が多い。
「セックスレス」「妻だけED」問題化。
ここ数十年間、初体験年齢低下(国際的には平均)
若者世代 性意識、性行動で二極分化しつつ、全体に
は低下。
性情報の氾濫 生身の相手なしの性欲解消。ゲーム・ア
ニメのキャラクターに恋愛と性の相手を。
渡部伸『中年童貞』扶桑社新書 2007年
玄田有史・斎藤珠里『仕事とセックスのあいだ』朝日新書
2006年
若い世代 身体的未成熟ふえる
成人年齢でも幼児体型の人増加。腰椎1番しか機能し
ていない。性的なことを考えるが、性行動困難。
不潔恐怖、潔癖症も。
女性は骨盤の開閉の幅が狭まる。生理不順など増加
女性の性感鈍化。
「モア・リポート」
『MORE 2007年5月号』
オーガズムを得たことがある
1980年54。0%→2007年39.6%
オーガズムを得たことがない
1980年5.0%→2007年35.8% 激増
腰椎1 性的なことを考える機能
腰椎2 性的な行動を考える機能
腰椎3 性的な行動の機能
腰椎4 生殖器を働かせる機能
腰椎5 快感を得る機能
子どもの脊椎(参考)
腰椎3番=性的行動の機能をになう
身体のすべての運動の中心
腰椎を育てるには・・・腰椎の後ろに枕を入
れて寝る、腰椎や後頭部に手当て
・ とくに女性 性機能を育てるには・・・目や頭
をつかわずポカンとする時を。快感ベースの
生活を。首筋をなでる。足の内、外の両くるぶ
しへの手当て。
3国際比較にみる日本人の性
DUREX社 世界26カ国調査(2007-8年)
http://www.durex.com/jp/
日本は国際的にみると稀なほど
セックス回数が少ない
セックスが重要だと考える人が少ない
セックスが刺激的ではない
セックスに満足している人が少ない
セックスがウェルビーング(健康と幸せと満足)
に比例すると考える人が少ない
Ⅲ幸せな性のための
実践的な結論
セックスレスの多い、幸福感の乏しい、上の年代の性意
識の影響から脱する。
近代化以前の日本の性の文化から学ぶ。
幸福感の高い外国の性の文化から学ぶ。
情報の洪水から身を守り、生身のコミュニケーションを志
向する。
身体的未成熟の人は20代のうちに身体を育てる。
身体コミュニケーションの機会を増やす。
男女とも性的アプローチをすることを恐れない。
感染症を防ぐためコンドームは初めからつける!
性は存在の原点。生涯追究しつづけてください。
そのほか参考文献
蛭川立『性・死・快楽の起源』福村出版1999
池田弥三郎『性の民俗誌』講談社学術文庫 1958、7
4年→2003年
白倉敬彦『春画で読む江戸の性愛』洋泉社2005年
加藤秀一『<恋愛結婚>は何をもたらしたか』ちくま新
書 2004年
岡島瑞徳『12のからだ 12のセックス』木楽舎2001
年
平山満紀 個人サイト『平山身体文化研究室』
http://www.hirayama-body.com
レスポンス課題
1授業の理解にもとづき、国際比較、日本の歴
史的変遷にふれながら、日本人の性の身体
コミュニケーションの現状をまとめてください。
2授業内容に関連して、自由な考察を書いてく
ださい。
質問がある方は書いてください。
平山個人サイトで、みなさんのレスポンスの
紹介、質問への回答をおこないます。(6月1
0日頃の予定。)是非見てください。