第5章 活性化する国際分散投資 と 日本経済の影響 ネットとグロスの違い 資本移動の場合 100億円 日本 外国 50億円 ネットの資本移動 グロスの資本移動 100-50=50億円の黒字 100+50=150億円 ネットの国際資本移動と グロスの国際資本移動 ネットの国際資本移動 ネットの資本収支は経常収支の大きさに規定 される。 グロスの国際資本移動 外国資本と国内資本の流れを別々にとらえ、 両者の絶対値を合計して資本移動の規模を みたもの。 グロスの国際資本移動急増の背 景 1. 米国が直接投資、証券投資等の巨額の資本 を引き付け続けている。 2. デリバティブ(金融派生商品)等の金融技術 の高度化。 3. 発展途上国でも、規制緩和・会計制度・監査 制度の国際基準化が発展し、先進国から途 上国にも資本が異動しやすい環境が整備さ れた。 オプションとは 買ったり売ったりする権利 100万円で買った株を3ヵ月後に株を120万 円でうる権利を30万円で買う。 株を100万円で買い、 3ヵ月後に120万円で売るオプションを30万円で 買った場合 3ヵ月後 株を100万円で 買う 株価が200万円 200万円で売る 70万円の得 株価が120万円 120万円で売る 10万円の損 株価が100万円 120万円で売る 10万円の損 株価が50万円 120万円で売る 10万円の損 どんなに株価が下がっても損が拡大しないのがポイント 直接投資と証券投資が グロス資本移動拡大の2本柱 直接投資:海外在住の法人に出資した り、資金の貸し付けを行うこと。(直接経営 に関与する) 証券投資:株式や債券を投資目的のため に買う。 連動性が高まる主要国の株 1990年代・・・日本の株価はバブル崩壊で 下落。米国は一貫して上昇。 日米間の株価に連動性が認められる。 欧州やアジアの株価指数と米国の株価指 数との間にも認められる。 主要国の株価連動性の背景 世界景気の連動性が高まっていること。 投資家のグローバルな分散投資行動を通じて、主要国 の株価が米国の株価動向につれて変動しやすくなって いる。 米国の株価が下落→日本株の売却で利益を出してカ バーしようとする。→日米とも株価が下がる 外国人投資家の存在感増す 東京株式市場 1999年春先~2000年春先 外国人投資家の大幅買い越しが株価の 回復を主導 2000年春先以降 外国人投資家の売り越しが株価下落要因 2003年 米国から4兆8636億円、欧州から4兆1850億円、 アジアから5341億円の株式投資資金が流入し た。 上昇する外国人持ち株比率 産業別・・・電気機器メーカー、医薬品メー カー、金融機関 個別企業・・・オリックス、HOYA、キヤノン 欧州企業・・・ノキア、ING、フィリップス 韓国企業・・・サムスン 株式の国内投資偏向傾向は、国際経済学の分 野で「ホームバイアス・パズル」と呼ばれてい る。日本・欧州・アジア企業の最近の動向によ ると、ホームバイアスは弱まる方向にある。 外国人持ち株比率の要因 外国企業が同業種の日本企業株式の過半を取得 し、外資系企業となることによって上昇する。 国際分散投資の観点から、ミューチュアル・ファンド (投資信託)、年金基金等欧米の機関投資家が通 常の証券投資を通じて、日本企業の持株比率を高 めている。 どのような日本企業の株が買われて いるか 海外売上比率が高い企業(情報の非対称性 が少ない企業) 純資産規模が大きい企業(規模) ROEが高い企業(効率性) 自己資本比率が高い企業(安定性) 外国人持ち株比率上昇の企業経営 への影響 1990年代半ばまで 銀行との株式持合いで、企業経営の状況が 株価に反映されなかった 1990年末以降 資本収益率とコーポレートガバナンス(企業統 治)を重視した経営への転換 株主を重視した経営へ
© Copyright 2025 ExpyDoc