マーケットウィークリー・814号 産業ニュース 2015.2.6 2015年、半導体業界の展望 作成者:兵藤三郎 世界の半導体市場 は3期連続の過去 最高更新へ 1月25日、東芝(6502)の決算が発表された。世界的なスマートフォンの需要 増に伴い、同社の主力製品NANDフラッシュが数量・利益率ともに好調を持続、 業績をけん引した。WSTS(世界半導体統計)が昨年12月に公表した、2014年 の世界半導体市場は前年比9%成長の3,332億ドルに達する見込み。2年連続の過去 最高を更新、15年には伸び率は鈍化するものの、同3.4%増と成長が継続する模様。 日・米の景気回復期待や新興国の生活水準向上に伴い半導体生産は拡大している。 今回の産業ニュースでは同業界にスポットを当て注目銘柄を検証してみた。 IOT社会の到来 で半導体メーカー に注目集まる 半導体の生産拡大により、製造メーカーや部材関連メーカーには期を通じ恩恵 があった。製造メーカーでは東芝以外にも、主力のコンシューマー部門の苦戦で 業績が低迷しているソニー(6758)でも、画像処理に用いられるCMOSセンサ ーの需要は拡大している模様。構造改革途上のルネサス(6723)では、円安効果 もあり、決算発表前に上方修正が発表された。今後はあらゆるものがコンピュー ターにつながり情報を共有する世界、IOT社会の到来も見込まれている。その ため、半導体だけでなくセンサーや通信モジュール等の需要が飛躍的に拡大、関 連銘柄にも注目が集まっている。 製造、装置共にメ ーカーの集約が進 む 一方、半導体業界内には効率のために進められていた微細化が物理的な限界に 近づいているとの認識があり、その打開策が模索されている。現在の最先端技術 による量産品の配線幅は14~16nmレベルへ移行しようとしているが、1965年に提 唱された「ムーアの法則」に沿った進化スピードからは遅れ始めている。これは 技術難度がかなり高まっていることの証左であろう。製造メーカーでは製造品目 毎に、装置メーカーでは工程毎に、数社程度へ集約が進んでいる。露光装置では、 現在では最先端テクノロジーのArf液浸露光装置を製造しているのは現実的に は蘭ASMLとニコン(7731)の2社となっている。 生産増と歩留まり 悪化でウェーハ需 給はひっ迫 配線の微細化以外で集積度を上げる手法として開発が進められてきたのが回路 を積層する3D方式。直線的な回路が多いNANDでの実用化が最も進捗している ものの、歩留まりが向上しないのが現状。ただし、信越化(4063)やSUMCO (3436)等のウェーハメーカーには需要増の恩恵をもたらしている。現状300mm ウェーハの需給は逼迫しており、両社はともに製品の値上げを図る方針、来期の 業績拡大が期待されている。その他の半導体増産でメリットを受ける部材メーカ ーとしてはフォトレジストのJSR(4185)、応化工(4186)、フォトマスクの HOYA(7741)、エッチング・工業ガスの関電化(4047)、大陽日酸(4091)、 エア・ウォーター(4088)などがあげられよう。 足元装置メーカー の受注環境は好転 技術難度の高まりが、部材メーカー等にメリットがある一方で、装置業界には 2013年10-12月期の大型受注以来、新規量産投資が一巡していた。14年夏にはファ ンドリー等での投資再開が期待されていたものの、前述の歩留まり低迷を背景に 投資は延伸されていた。しかし、足元では半導体メーカーの投資増強への動きが 見え始めており、装置メーカーへの受注環境は一変した。日本半導体製造装置協 会が1月22日に発表した、日本製半導体製造装置BBレシオ(3カ月移動平均の受注 額を同・販売額で割った値)は1.3。好調を示す1を上回るのは3カ月連続となった。 マーケットウィークリー・814号 15年の装置市場は 前工程中心に15% 増の予想 2015.2.6 新たな半導体製造設備の投資金額は数千億円と巨大化しており、現状新規ファ ブへの投資が可能なメーカーは数社に限られる。足元ではその多くが、投資へ舵 を切った模様。最大手インテルが1月15日発表した決算では、15年通期の設備投資 は14年実績を上回る95~105億ドルの計画。ファンダリ最大手の台湾TSMC同設 備投資額は過去最大の115~120億米ドルを見込んでいる。米大手スマートフォン メーカーからの受注獲得を目指す方針。その競合相手と目されるのが韓国サムス ン電子、TSMCに対抗するMPU生産能力の増強を図る一方、3DNANDでも 現行の32層から48層へさらなる多層化を図ろうとしている。韓国2番手メーカーも 新ファブ用地を取得済みで現在整地を進めている模様。加えて中国はじめ新興国 の政府主導による半導体産業育成の動きもみられる。世界半導体製造装置協会が 発表した15年の市場は前年比15%増の予想。内訳ではウェアプロセス処理装置(前 工程装置)が18.8%増。前工程の比重が高いメーカーに注目したい。 ◇工程別の主な半導体製造装置メーカー 工程 内容 関連銘柄 コメント ウェーハ製造 シリコンから半導体ウェーハを製造 信越化、SUMCO等 需給ひっ迫で単価上昇期待 前工程 基板上への回路パターン形成 日立国際、SCREEN等 大手メーカーの投資拡大期待 露光 回路パターンの転写 ニコン 450mmの開発に注力 検査 通電検査、外観検査等 アドバンテスト、日立ハイテク等 機種ごとの浮沈有り 後工程 ダイシング、ボンディング等 ディスコ、東京精密等 消耗品ビジネスは堅調 (注)各種資料によりCAM作成 現実味を帯び始め た、EUVLと450 mm 微細化が難しくなる中、新たな生産効率化を求めるニーズが、次世代の製造技 術としてのEUVLと450mmウェーハへの現実味を高めた。EUVLは露光用光 源として極端紫外線を用いるが、光源の出力を始め、露光用マスク等様々な課題 がある。ようやく光源出力が上がってきたため、最も繊細な回路が要求される一 部工程のみの利用が可能となろう。マスク検査装置メーカーのレーザーテク (6920)を関連銘柄と考える。450mmでは様々な装置メーカーにニーズがあろう が、現在露光装置の開発はニコンが最も注力している模様。ニコンは一方でEU VLの開発では遅れを取っているが現状のシェアは低いためマイナス影響は限定 的。450mmが主流となれば一気にシェア挽回が可能となろう。 衝撃的コンセプト 「Minimal Fab」に注目 両技術も課題が残り決定打が討てない中、CAMでは新たなコンセプトに注目 している。昨年のセミコンで衝撃的な新たな提案がなされた。「Minimal Fab」という考え方である。従来の大量生産には合わない小ロット需要の半導 体デバイスの製造に適したもので、1ラインの設備投資は数億円程度、クリーンル ームも必要としない。詳細の言及は紙面の関係で次の機会としたいが、既にジェ イテクト(6473)が導入済み、運用・保守は横河電(6841)が対応している。 ◇主な半導体関連の注目企業の株価とコメント (単位:円、倍) 銘柄 コード 株価 PER コメント 関電化 4047 553 12.7 スパッタリング等で用いる特殊ガスの販売好調 東芝 6502 468.2 16.5 需要好調で、NANDフラッシュの高い利益率を維持 ルネサス 6723 831 92.3 主力の車載制御用マイコンが自動車生産増と円安で拡大 日立国際 6756 1,577 12.3 受注好調、韓国メーカー向けに強み、足元シェアも拡大 日立ハイテク 8036 3,710 19.3 測長SEM等で高いシェア、エッチング装置も拡大中 (注)株価は2月2日終値、PERは今期予想
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