文化人類学講義Ⅶ 狩猟採集漁労民の環世界

文化人類学講義Ⅶ
狩猟採集漁労民の環世界
第2回世界社会紹介
20130425
飯嶋秀治
[email protected]
Ⅰ.世界社会紹介
1.種と民族
• 種としてのHomo sapiens sapiensと「人種」の違い
• 動物学的「種」の定義
• 「人種」という「先天的」区分
• 「民族」という「後天的」区分
• 区分の恣意性
2.言語と民族(自生的言語分布)
3.国民国家
5.想像の共同体
[アンダーソン2007(1983)]
• 国民国家(Nation States)の内容
• 国民国家の起源
条件:宗教・王権・宇宙論の後退+新聞を中心と
した「出版資本主義」の登場
①1776アメリカ独立宣言: 国民国家モデル
の誕生
②1789-1799フランス革命:辞書編纂・言語
学・民俗学・政治評論・作曲家など
③ヘルダー(1744-1783)及びフィヒテ(17621814)→グリム兄弟の「民俗」の共通の「
伝統」としての「民話」収集
④イギリス・ロシア・日本などにおける国民国
家・共和制・公民権・人民主権・国歌・国
旗・国語・国博・国葬などの誕生→教育機
関としての「学校」
結果:明確な境界をもち、共通した「国語」「
民話」「伝統」や「歴史」を有する「想像の
共同体」としての国民国家の産出
①国民は(イメージとして心の中に)想像された
ものである
②国民は限られたものとして想像される
③国民は主権的なものとして想像される
④国民は一つの共同体として想像される
6.想像の共同体を産出するメディア
• メディア圏の定義
• 福岡のメディア圏
「メディア圏というこの用語は、メッセージや人
間を伝達・輸送する環境と、それに対応する
知的精錬および普及の技術をいう」[ドブレ2001
①言語メディア圏:日本語
②文字メディア圏:新聞(西日本新聞)
③映像メディア圏:テレビ局(FBS福岡放送、RKB
毎日放送、TNCテレビ西日本、KBC九州朝日
放送、TVQ九州放送)
(1991) :293]
• 具体的には・・・
①言語圏:母語
②文字圏:新聞、書籍、雑誌etc.
③映像圏:電話、映画、ラジオ、テレビ、イン
ターネットetc.
7.マスメディアの構造
• 全国放送と全国紙の関係
[本郷2001]
①日本テレビ
←読売新聞
②Tokyo Broadcasting System
←毎日新聞
③フジテレビ
←産経新聞
④テレビ朝日
←朝日新聞
⑤テレビ東京
←日本経済新聞
• 福岡のメディア圏構造
言語メディア圏
日本語
↑
映像メディア圏
テレビ局(FBS福岡放送、RKB毎日放送、TNCテレ
ビ西日本、KBC九州朝日放送、TVQ九州放送)
↑
文字メディア圏
新聞(西日本新聞)
↑
大株主
8.世界と「世界」
• 世界の中の日本
[NHK取材班1990 ;
細川1999;2001;2003;伊藤2000;二宮編2006]
• 日本の中の「世界」
ブルデュー2000(1996)]
[立花2004;cf.
9.近代資本主義の精神的起源
(ウェーバー1905)
• 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
キリスト教プロテスタント派
①Catholic「免罪符」
②Protest(異論)
ルター、カルヴァンetc
堅信の証:教会→信仰
救済の決定者:神
確信の不在:不安
→(A)天職、(B)世俗内禁欲
→プロテスタンティズムの倫理
→「脱魔術化」「合理化」による資本主義の精神から生
まれた「精神なき専門人、魂なき享楽人」
10.近代資本主義の物質的起源
[ウォーラーステイン1997(1983) ]
• 『歴史的資本主義』
①15c末ヨーロッパ:近代資本主義システム誕生
②16c~18c資本を最大化する方法
(A)生産コストの切り下げ
→家族全員への賃金>家族1人への賃金
→女性>男性
(B)資本家間の競合勝利(予測、労働管理、独占
市場等)
→多民族労働>一民族労働
e.g.17cのオランダ・19cのイギリス・20cのアメリカ
(C)中核(国)の(軍事)強化と周辺(国)の弱体化
→世界帝国>世界経済
(D)反システム運動(社会からの反撃)
→半周辺(国)のインターナショナリズム(左翼)とナ
ショナリズム(右翼)
11.世界資本主義システム
[ウォーラーステイン1997(1995)]
• 低賃金労働者の生産がもたらしたもの
①家族全員への賃金>家族1人への賃金
→中核=第二次産業(工業)化と周辺=第一次(農林漁)
産業間での「人種」差別
②女性>男性
→再生産・受動的女性像と生産・能動的男性像による
「性」差別
③ 多民族労働>一民族労働
→民族紛争と「民族」差別
④世界帝国>世界経済
⑤インターナショナリズム(左翼)とナショナリズム(右翼)
→学問の「普遍的」「真理」による「合理主義」「能力主
義」という言説生産
e.g.アダム・スミス(1723-1790)等の経済学:「需要と供給による
価格決定」「自由市場」
cf.医学・生物学・心理学:「母性本能」「ヒステリー」等「女性特有
の本質」の創造
cf.エドワード・タイラ-(1832-1917)等の人類学:「人種」「社会
進化」論
13.戦争・国債・貯蓄
[田中2007;田中&A SEED JAPANエコ貯金プロジェクト編2008]
14.大学の収入
15.まとめ
• 世界の格差
中核国の都市労働者
(第三次産業従事者)
食糧・製品・エネルギーの消費
食糧・素材・資源の生産
周辺国の周辺労働者
(第一次産業従事者)
↓
人種差別
民族紛争(民族差別)
性差別
地球環境危機
• 連累 [モーリス=スズキ2002:57]
「わたしは直接に土地を収奪しなかったかもしれな
いが、その盗まれた土地の上に住む。わたしは虐
殺を実際に行わなかったかもしれないが、虐殺の
記憶を抹殺するプロセスに関与する。わたしは『他
者』を具体的に迫害しなかったかもしれないが、正
当な対応がなされていない過去の迫害によって受
益した社会に生きている。/わたしたちが今、それ
を撤去する努力を怠れば、過去の侵略的暴力的行
為によって生起した差別と排除(prejudices)は、現
世代の心の中に生き続ける。現在生きているわた
したちは、過去の憎悪や暴力を作らなかったかもし
れないが、過去の憎悪や暴力は、何らかの程度、
わたしたちが生きているこの物質世界と想像力を
作ったものであり、それがもたらしたものを『解体
(unmake)』するためにわたしたちが積極的な一歩
を踏み出さない限り、過去の憎悪や暴力はなおこ
の世界を作り続けていくだろう。/すなわち『責任』
はわたしたちが作った。しかし、『連累』は、わたした
ちを作った 」
参考文献
アンダーソン、ベネディクト2007(1983)『定本想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』白石隆、白石さ
や訳 書籍工房早山
池田香代子再話2001『世界がもし100人の村だったら』C.ダグラス・ラミス対訳 マガジンハウス
石川栄吉ほか編1987『文化人類学事典』弘文堂
伊藤孝司2000『日本が破壊する世界遺産』風媒社
ウォーラーステイン、イマニュエル1997(1995) 『新版 史的システムとしての資本主義』川北稔訳 岩波書店
NHK取材班1990『NHKスペシャル[シリーズ21世紀]地球は救えるか1 熱帯雨林消滅 国境を越える公害』日
本放送出版協会
立花隆2004「オイルウォー」『月刊 現代』4月号 講談社:38-53
田中 優&A SEED JAPANエコ貯金プロジェクト編2008『おカネで世界を変える30の方法』合同出版
田中優2007『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』扶桑社新書
ドブレ、レジス2001(1991)「メディア圏という概念」、『一般メディオロジー講義』西垣通監修・嶋崎正樹訳 NTT
出版:293-328
ブルデュー、ピエール2000(1996)『メディア批判』櫻本陽一訳 藤原書店
参考文献
細川弘明1999「先住民運動と環境保護の切り結ぶところ―オーストラリアの事例を中心に」、福井義・秋道智
彌・田中耕司編『環境の豊かさをもとめて―理念と運動』講座 人間と環境 第12巻 昭和堂:170-188
細川弘明2001「環境差別の諸相―環境問題の記述分析になぜ差別論が必要か」飯島伸子編『アジアと世界
―地域社会からの視点』講座 環境社会学 第5巻 有斐閣:207-231
細川弘明2003「異文化と環境人種主義ーアボリジニーの自然観と文化意識から考える」、桜井厚・好井裕明
編『差別と環境問題の社会学』シリーズ環境釈社会学6 新曜社:184-200
本郷美則 2000『新聞があぶない』文春新書
メドウズ、ドネラ H.、デニス L.メドウズ&ヨルゲン・ランダース1972(1972)『成長の限界ーローマ・クラブ「人類の
危機」レポート』大来佐武郎監訳 ダイヤモンド社
モーリス=スズキ、テッサ2002『批判的想像力のために―グローバル化時代の日本』平凡社
参考URL
EDINET(証券取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する
電子開示システム)(20130417参照)
Iraq Body Count(20130417参照)
旺文社教育情報センター「19年度国立大学運営交付金」(20130417
参照)