堆積学

堆 積 学
Sedimentology (& Stratigraphy)
地球惑星科学科2年目講義(選択2単位)
レジュメ
Sedimentology & Stratigraphy
Ⅳ.地層の相互関係
-地層累重の法則と整合・不整合
A.地層の基本的な構造
単層(bed, stratum): 地層(strata)を取り扱う際の最少単位.しか
し明確かつ普遍的に受け入れられている定義は存在しない.
*単層と単層の境界面 = 層理面(bedding plane)
定義の一例: A single bed is a sedimentation unit which has been
deposited under essentially constant physical conditions.(一つの単
層は,本質的に一定の物理的条件下で沈積した堆積ユニットである)
⇒ 良く分からない...
定義の一例: Essentially a plane of nondeposition or abrupt change in
depositional conditions or an erosional surface.(本質的に,無堆積ま
たは堆積条件の突然の変化による面.または侵食面)
⇒ やはり良く分からない...
Sedimentology & Stratigraphy
問題点:
① 何をもって一定と判定するか?
単層の境界
-層理面
葉理・ ラ ミ ナ
② 何をもって突然であると判定するか?
③ 何をもって無堆積や侵食の面である
と判定するか?
岩相の不連続
岩相の不連続
現実的(practical)な定義: 地層中に存在する岩
相または構造における不連続面の中で,中視的
(mesoscopic)なスケール(= cm - m スケー
ル)でもっとも小さなオーダーの間隔を持つものを
層理面とする.層理面と層理面の間が単層である.
葉理・ ラ ミ ナ
岩相の不連続
侵食面
*この場合,1 cm より小さな間隔を持つ不連続
面(あるいはそれで境される部分)は葉理・ラミナ
(lamina)と呼ばれる.
平行葉理部
構造の不連続
⇒ 1 cm という数字がどのような根拠によるも
のかは,やっぱり良く分からない...したがって,
人為的(便宜的)な区分ということにならざるを得
ない.
斜交葉理部
1 cm
Sedimentology & Stratigraphy
B.地層間の基本的な関係
地層累重の法則(The Law of Superposition):
In a sequence of layered rocks, any layers is older
than the layer next above.
=ある連続した地層の中では,どんな単層もその上のもの
より先に形成されている.
* これを言い換えると,『地層連続の法則(=地層の前後
関係が交差・分岐することはない)』となるかもしれない.
*
きわめてマイナーな例外
→洞窟の堆積物.砕屑岩シル.
Sedimentology & Stratigraphy
地層累重の法則
(Law of Superposition) の概念
地層学的上下
空間的な広がり
a
b
c
d
e
f
g
a
b
c
D
e
f
g
ケース1 : 置換*dと Dの前後関係は不明
a
b
c
d
e
f
g
連続世界
a
b
c
e
f
g
ケース2 : 消滅
a
b
c
d
e
f
g
ケース3 : 挿入
a
b
c
c-d
d
c
f
g
交差・分岐世界
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C.地層の“無限性”と有限性
2次元的に無限に連続する(=平面的な広がりが無限な)地層と
いうものはもちろん存在しない.しかし,人間(検討者・観察者)
の視点から見た時に,『事実上無限に連続する地層』というものは
ある.
地層の連続性と 不連続性の概念
* 例えば,数百kmにわたって連続する地層.
* 検討世界の規模 ≦ 地層の連続性 の場
合.
このような観点から,地球科学における『地
層』という概念の大きな有用性が生じて来るこ
とになる.
$$ 広がりを持った“板”が積み重なっている
ことの地球科学的意味
オーダー
N +1 の
検討世界
オーダー
N +1 の
連続性
オーダー
N +2 の
検討世界
オーダー
N +2 の
連続性
オーダーN の連続性
上
・それが形成された表層の環境をしめす記録表示板.
・時系列に沿った形成環境の変化を読み取ることができ
る.
・地球上で経過した時間軸上の,しおり(ブックマー
↑
オーダーN の検討世界
下
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D.地層の間の連続-不連続
整合(conformity): not(不整合)という論理演算で定義される.
したがって,それ独自の(独立した)定義は存在しない.
地層Ⅱの堆積
Ⅱ
Ⅰ
4
陸上侵食
Ⅰ
不整合(unconformity):
The surface cut on the
old materials during removal of some older materials
prior to deposition of younger covering strata is a
surface of unconformity.
ある面が,新しい地層の堆積する以前に,より古いものが
除去される過程でそれを切っている場合,それを不整合面と
いう...
3
上昇運動
Ⅰ
2
地層Ⅰの堆積
Ⅰ
1
!!非常に判定の難しい定義(説明)となってい
る.
平凡社地学事典での定義: 『ある地層が堆積後隆起
し,陸上で風化・削剥作用を受け,その侵食面上に新
規 の 地層 が 堆 積 し た時 , 両層 の 関係 を 不整 合 と い
う.』
* 妥当な定義だと言えるが,現実には...“隆起
し”“陸上で”の部分に判定の難しさ・曖昧さが残ってしまう
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不整合の分類
・傾斜不整合(Clino-unconformity): 不整合面の上下で地層の構造に著
しい斜交関係がある場合.もっとも代表的(歴史的)な不整合である.
グラ ン ド キャ ニオン の地層に見ら れる 大規模な傾斜不整合
大規模な 傾斜不整合
a
系: 570 M
カンブリア
先カンブリ
ア系(原生
界): 1050
- 1200 M
a
・非整合(Nonconformity): 不整合面の下位にある地質体が通常の地層ではなく(火成岩・変成
岩など),整合-不整合という概念がそもそも意味を持たない場合.
・起伏不整合(Disconformity): 不整合面の上下で地層の構造に差が無いが,不整合面が起伏
を持っている場合.
・平行不整合(Paraconformity): 上下の地層の構造と不整合面がすべて平行な場合.上下の地
層の岩相が似ている場合には,不整合であるかどうかの判定がきわめて難しくなる.
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『傾斜不整合』の地球学的な意味
傾斜不整合は,いくつかある不整合のタイプの中で,もっとも典型的なもの
である.その意味するところは;
① ある地層が堆積する以前に,隆起-褶曲-変成作用などの大規模・
広域的な地殻変動があったことを明瞭に示す.
② 不整合面を境にして接触している二つの地層(・地質体)の間に,
①のプロセスが進行するに十分な,長い時間間隙がある.
顕著な傾斜不整合の例
デボン 系基底礫岩( 400 Ma)
下部石炭系石灰岩 ( 340 Ma)
不整合面
シ ルル系泥岩 ( 420 Ma)
細かく 褶曲し た地層( 590 Ma)
約 80 Ma の時間間隙
約 190 Ma の時間間隙