高エネルギー 重イオン衝突 における生成粒子の

高エネルギー重イオン衝突における
生成粒子の方位角相関測定用検出器
‐核子当たり20GeVにおける
コンピューターシミュレーション‐
筑波大学 第一学群 自然学類 物理学専攻
970442 益井 宙
指導教官 三明 康郎、江角 晋一
目次
1.反応面の決定と生成粒子の集団的運動
2.本研究の動機と位置づけ
3.シミュレーションの計算結果
4.まとめ
2001/2/5
高エネルギー原子核実験グループ
益井
20GeVの重イオン衝突の特徴
・20GeVの重イオン衝突ではバリオン密度が最大になる。
・JHFで20GeVの加速器が実現
バリオン密度が高いのでFlow
の効果が観測されやすい
Flowを解析する手段の
1つとして反応面を決定
する方法がある。
2001/2/5
高エネルギー原子核実験グループ
益井
反応面とは
Impact parameter b:鉛原子核同士の衝突では最大約14fm
反応面(reaction plane) :Impact parameterと
beam軸から1つに決まる平面
衝突の様子
Beam軸方向から見た図
y
z
Ψ0
x
反応面の角度
2001/2/5
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反応面決定に用いる生成粒子の方位角分布
projectile
非中心衝突の場合、反応面
に対して生成粒子の方位角
分布に偏りがある。
target
Directed flow
Elliptic flow
N(φ) = N0{ 1 + 2v1cos(φ-Ψ0) + 2v2cos(2(φ-Ψ0))}
N(φ):φ方向に放出された粒子の数 φ:粒子の方位角
Ψ0:反応面の角度
2001/2/5
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益井
Directed flow
例
QGP(クォーク・グルーオンプラズマ)生成の実験的証
拠の一つであるハドロン放出時の集団的運動(flow)
200
QGPなし
150
<px/N>dir[MeV]
100
50
QGPあり
0
1
10
E kinlab AGeV
2001/2/5
100
QGP生成時には集団的
運動強度が減少すると
予測されている。
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反応面決定の検出器
・ 0.5o<θ<2.5oと
0.5o<θ<1.5o
・Φ方向に24分割
・鉄とscintillatorの
サンドイッチ型
・Hadron
Calorimeter
・ 30o<θ<160o
・全方位角を覆
う
・655module
・1つのmoduleは厚さの違う
scintillatorと光電子増倍管
で構成
Target(Pb)
2001/2/5
・GEANTにより計算機上に再現
30m
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益井
Beam(Pb)
本研究の動機と位置づけ
生成粒子の集団的運動の理解のために
反応面決定の精度を向上させたい
2種類の検出器から反応面を決定するのは
初めての試み
両検出器を用いて核子当たり20GeVで
どのくらいの反応面決定の分解能が得られるかを
コンピューターシミュレーションにより評価した
2001/2/5
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計算のset up
粒子発生
理論モデルJAM(Jet AA Microscopic Model)を使用
Ψ0=0oに固定して粒子を発生
反応面の計算
measured
 N Gi sin(i ) 

 tan1  Ni 1


G
cos(

)
i 
 i 1 i
1event毎に計算
Ψmeasured:各検出器で測定した
反応面の角度
G: 各検出器で測定した物理量
Φ: 粒子の方位角
Directed flow強度の計算
v'1
v1 
 cos() 
  measured  0
2001/2/5
v’1 :計算で得られたdirected flow強度
<cos(ΔΨ)>: 反応面の分解能
Ψ0:真の反応面の角度
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理論モデルJAM
各検出器で観測されるdirected flow強度の予測値
0.5o<θ<2.5o,Pt>0.3
v1 (Calorimeter )  0.14  0.01
84o<θ<160o,50<Et(MeV)<250
v1 ( PlasticBall )  0.24  0.01
2001/2/5
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GEANT
y
x
z
Hadron
Calorimeter
Beam軸
JAMで発生させた粒子
2001/2/5
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反応面分解能の計算結果
2つの検出器から得られた結果より核子当たり20GeV
では以下のような分解能で反応面が決定した。
Semi-central(5fm<b<10fm)
0.5o<θ<2.5o
Calorimeter
Plastic Ball
47o(0.68±0.01)
0.5o<θ<1.5o
40o(0.77±0.01)
50<Ekin ( MeV)<250
Cutなし
67o(0.40±0.01)
59o(0.52±0.01)
最終的な反応面分解能の値はσ=38o(0.79±0.01)
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反応面分解能と検出器のacceptance
dN
d
Plastic Ball
67o (cutあり)
59o(cutなし)
Calorimeter
p
π
47o
40o
η
v1
Pt
Plastic Ball
Calorimeter
η
2001/2/5
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rapidity
Directed flow強度の計算結果
Semi-central(5fm<b<10fm)
予測値
計算値
検出器
JAM
Ψ0
Calorimeter
0.14
±0.01
Plastic Ball
0.24
±0.01
0.12
±0.01
0.25
±0.01
Ψmeasured
0.12
±0.01
0.25
±0.01
予測値と誤差の範囲で一致した。
2001/2/5
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益井
まとめ
・シミュレーションツールGEANTを用いHadron Calorimeter
を計算機上に再現した。また、理論モデルJAMを用いて
20GeVでのdirected flow強度を予測した。
・2つの検出器から反応面を決定した。また2つの検出器を用
いることで反応面分解能を向上させることができた。反応面
決定の分解能は、最も良くなる場合でσ= 38o(0.79)となった。
・両検出器で測定されるdirected flow強度を計算した。両検
出器とも予測した値と誤差の範囲で一致した。
2001/2/5
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益井
3種類のflow
y
: 反応面
Radial flow
x
ある瞬間における
粒子の放出の様子
Radial flow
反応面の向きに関係なく
beam
全ての角度に同じように飛んで行く
Directed flow
y
V1<0
Elliptic flow
x
y
V2>0
V2<0
x
2001/2/5
Directed flow
V1>0 反応面内に放出
v1が大きいほどある1つの方向に
粒子が偏る
Elliptic flow
v2 >0の時反応面内に
v2 <0の時反応面に垂直な
面に放出
v2が大きいほど2つの正反対な方
向に粒子が偏る
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反応面分解能とv1の関係
v1  cos(  0 ) 
'
v1  cos(  measured ) 
 cos[(  0 )  (measured  0 )] 
 cos(  0 )  cos(measured  0 ) 
  sin(  0 )  sin(measured  0 ) 
 v1  cos(measured  0 ) 
φ:粒子の方位角
Ψ0:真の反応面の角度
Ψmeasured:測定した反応面の角度
2001/2/5
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反応面分解能の計算式
両検出器から求めた反応面と以下の式より、
最終的な分解能の値を求めた。
measured
 w sin(c )  v sin(b ) 

 tan 
 w cos(c )  v cos(b ) 
1
  cos(measured  0 ) 
w,v:重み
Ψc:Calorimeterから求めたreaction plane
Ψb:Plastic Ballから求めたreaction plane
Ψ0:真のreaction plane
2001/2/5
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Hadron calorimeter
Hadron calorimeter を置
くθの範囲を決定
Cut:y>3.2,Pt>0.3
0.5    2.5
o
o
0.5    1.5
o
o
Protonがπ中間子に比べ
て十分多く入っていることが
分かる。
2001/2/5
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Plastic Ball検出器
前方では放出粒子の密度が高い
ので、1つのmoduleに複数の
粒子が入ってしまい粒子識別が
困難
1つのmoduleに対して粒子が1つ
入射するような領域で測定
84    160
o
2001/2/5
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o
Hadron calorimeterのエネルギー分解能
20GeVでの
Hadron Calorimeterの
エネルギー分解能
dE

E
2001/2/5
74%
E (GeV )
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基礎的な物理量y, Pt
rapidity : y
1  E  Pz 
y  ln

2  E  Pz 
相対論でbeam方向の
ある種の速さを表す量
Flowのb依存性
横運動量:Pt
Pt 
Px 2  Py 2
Beam軸方向に垂直な方向の
運動量
s  8.6GeV, Pb  Pb
Flowのy依存性
FlowのPt依存性
Flow の強さはb,y,Ptに依存する
2001/2/5
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