9・文化財保護のシステム

9・文化財保護のシステム
2011.11.30. 成蹊・文化人類学Ⅱ
9・文化財保護のシステム
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文化財はどうやって決められるのか
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市町村のレベルでは、各自治体の教育委員会が管轄する
行政の部門としては「社会教育」が相当する
具体的にどれを文化財に選ぶか・選ばないかの判断は、
教育委員会のもとに設置される文化財保護委員会が担当
する
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文化財保護委員会の委員は、通常教育委員会から委嘱された「学
識経験者」あるいは「文化財有識者」
より具体的には、たとえば高校の歴史の先生とか、小学校の校長
先生とか、地元の郷土史家とかが候補となる
都道府県あるいは国レベルでも基本的には同様
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国の場合は、文化庁に専門の調査官がおり、外郭団体として有識
者による文化審議会および文化財専門調査会が設置されている
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文化財の所有者は?
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通常、文化財指定と同時に即座に国有財産あるいは公有
財産になるわけではなく、それまでの所有者が継続して
所有権を有する
ただし、所有者はその文化財を管理する「義務」を負う
ことになり、私有財産として勝手に処分することはでき
なくなる
さらに、管理のためにかかる経費は原則として「自己負
担」である
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経費が過大な場合は、公費による補助金支出も認められるが、通
例全額補助されることはない
また、多くの文化財は一定の「公開」が求められる
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文化財保護制度前史
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「古器旧物保存方」1871年太政官布達で、とりあえず古
いものは何でもピックアップ
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祭器、古玉宝石、石弩雷斧、古鏡古鈴、銅器、古瓦、武器、古書
画、古書籍並びに古経文、扁額、楽器、鐘鈷碑銘墨、印章、文房
諸具、農具、工匠器械、車輿、屋内諸具、布帛、衣服装飾、皮革、
貨幣、諸金属造器、陶磁器、漆器、度量権衡、茶器香具花器、遊
戯具、雛幟等偶人並びに児玩、古仏像並びに仏具、化石の31部類
1888年設置の宮内省臨時全国宝物取調局でふるい分け
古社寺の建造物・宝物を「古社寺保存法」で国宝/特別保
護建造物に指定(1897年)→のち国宝保存法(1929年)へ
風景や動植物を「史蹟名勝天然紀念物保存法」(1919年)
国宝になりそうなものについて「重要美術品等ノ保存ニ
関スル法律」で指定(1933年)
上3点に加え、民俗資料、無形文化財及び埋蔵文化財に
ついて「文化財保護法」で指定(1950年)
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文化財の拡大
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民俗文化財、伝統的建造物群、文化財の保存技術につい
て、1975年の文化財保護法大改正で追加(②)
近代以降の土木建造物、科学技術分野の歴史資料も指定
できるよう文化財指定基準を見直し(1995/1996年)……
近代遺産①(③)
文化財になりそうな建造物について、1996年の文化財登
録制度導入によって追加……近代遺産②(③)
農業に関連した景勝地として、千枚田を「名勝」に指定
(1999年・2001年)……産業遺産?
2004年の文化財保護法大改正で、文化的景観・登録有形
民俗文化財・登録記念物のカテゴリ新設……生業に関わ
る風景自体を保存+網掛けの拡大(④)
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文化財拡大のゆくえ
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身のまわりのさまざまなものが「文化財」化してゆくと
いう現象……それは誰が選び、誰が守るのか?
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どれを文化財に選ぶか・選ばないかの判断は、教育委員会のもと
に設置される文化財保護委員会
所有者はその文化財を管理する「義務」を負う
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文化財のジレンマ
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文化に優劣はつけるべきではない←→文化を文化財と
して保護しようとすれば順位付けせざるを得ない
文化財はできるだけ保護するのが望ましい←→保護す
るのには費用や人的資源が必要である
有識者が密室で文化財を決定するのは民主的ではない
←→文化財の価値をランキングするには一定の知識が
必要である
文化を保護することと観光に利用することは別である
←→観光で稼ぎでもしなければ保護するための金銭支
援も人的支援も得られない