確率的在庫モデル

確率論の基礎
「ロジスティクス工学」
第3章 鞭効果
第4章 確率的在庫モデル
補助資料
東京商船大学
久保幹雄
標本空間,事象,確率
• 標本空間(sample space):何か試行(ランダムさを
加味した実験)をしたときの結果の集まり.たとえ
ば,コインを投げたときの{表,裏},サイコロを1
回振ったときの出る目の数{1,2,…,6} .
• 事象(event):標本空間の部分集合.たとえば,
サイコロを投げたときに偶数の目がでる事象は
{2,4,6} となる.
• 確率(probability):事象の起きやすさを表す0以
上1以下の値をとる関数.P{A}が事象Aが起きる
確率.P{標本空間}=1,共通部分をもたない事象
A,Bの和の起きる確率=P{A}+P{B}を満たす.
確率変数,期待値,分散,標準偏差
• 確率変数(random variable):標本空間の各点に対
して定まる実数値関数.たとえば,コインを投げた
ときに表が出れば100円,裏が出れば50円もらえ
るときの金額.サイコロを振ったときの目の値.
• PX(x)=P{X=x}:確率変数Xが実数値xをとる確率
• 期待値(expected value): E[ X ]   xpX ( x)
x
• 分散(variance):
Var[ X ]  E[(X  E[ X ])2 ]   ( x  E[ X ])2 p X ( x)
• 標準偏差(standard deviation): x
 X  Var[X ]
期待値,分散の計算
• W,V=aW+b が確率変数,a,b が定数のとき
E[V]=E[aW+b]=aE[W]+b
E[V ]  E[(aW  b) ]  a E[W ]  2ab E[W ]  b
2
2
2
2
Var[ X ]  E[(X  E[ X ])2 ]   ( x  E[ X ])2 p X ( x)
x
  ( x 2  2 E[ X ]x  E[ X ]2 ) p X ( x)
x
 E[ X 2 ]  E[ X ]2
Var[V ]  a 2 E[W 2 ]  2ab E[W ]  b 2  a 2 E[W ]2  2ab E[W ]  b 2
よって
 a 
2
V
2
2
w
2
共分散
• PX,Y(x,y)=P{X=x,Y=y}:同じ標本空間で定義され
た確率変数X,Yがそれぞれ実数値x,yをとる確率
• 共分散(covariance):
Cov[X , Y ]  E[(X  E[ X ])(Y  E[Y ])]   ( x  E[ X ])(y  E[Y ]) p X ,Y ( x, y)
x
 E[ XY ]  E[ X ] E[Y ]
X,Y,S=X+Yが確率変数のとき
Var[ S ]  Var[ X ]  Var[Y ]  2 Cov[X , Y ]
平均と分散の推定
• 独立な観測値 X1,X2,・・・,Xn
• 平均の推定値= (X1+X2+・・・+Xn )/n
 X
n
分散の推定値 
i 1
 平均の推定値
2
i
なぜ n でなく n-1 で割るのか?
n 1
その理由(期待値をとる)
2
n 
X1  X 2    X n  
E   X i 
 
n
 
 i 1 
E[分散の推定値] 
n 1
n
2
E   X i  
1
i 1



  E X j X k 
n 1
n j k
 

nE X 2
1
2
2


nE[ X ]  n( n  1) E X 
n 1
n( n  1)
 E [ X ]  E X 
2
2

確率過程
• 確率過程:時刻の集合 T に対して定めら
れた確率変数 Xt の集合
• 株価の推移,為替相場の推移,需要の変
化などを表すための数学モデル
• 例:前期との相関(共分散を標準偏差で
割ったもの)ρをもつ需要過程
Dt  d  Dt 1   t
平均 0, 標準偏差σの独立な分布
期待値 E,分散 Var
鞭効果の解析的モデルにおける需要過程
Dt  d  Dt 1  t t   のとき  tは平均0,標準偏差  E[ D]  d   E[D] d
E[D ] 
1 
2

t   のとき Var[ D]   Var[ D]   Var[ D] 
1 2
2
2
共分散 Cov
DtとDt-1 の共分散
Dt  Dt 1  d  t より
Var[ Dt ]  2 Cov[Dt , Dt 1 ]   2 Var[ Dt 1 ]   2 分散を代入して変形
DtとDt-2 の共分散
 2
Cov(Dt , Dt 1 ) 
1 2
Var[Dt ]  2 2 Cov[Dt , Dt 2 ]   4 Var[Dt 2 ]  (1   )2 2  2 2
分散を代入して変形 Cov(Dt , Dt 2 ) 
1 2
以下同様の計算によって,一般式
 p 2
Cov(Dt , Dt  p ) 
1 2
正規分布
• 平均μ,標準偏差σの正規分布 N(μ,σ2) の確率
密度関数(連続な確率変数Xが[x,x+dx]の間の
値をとる確率)は,
2

1
(x  ) 
f X ( x) 
exp

2
2 
2 

• Gauss(ガウス)分布ともよぶ.どんな(有限分散
の独立な)分布でも,たくさん足すと(中心極限
定理より),近似的に正規分布として扱える.
累積分布関数
• 平均μ,標準偏差σの正規分布 N(μ,σ2) の累積分布関数(連
続な確率変数Xが[-∞,x]の間の値をとる確率)は,
x
FX ( x)   f X ( y)dy

Excelによる表現
• FX(x) =NORMDIST(x,μ,σ,TRUE) TRUEは1
• fX(x) =NORMDIST(x,μ,σ,FALSE) FALSEは0
• F-1(p)=NORMINV(p, μ,σ) 累積分布関数の逆関数
-> 平均μ,σの正規分布が確率pでx以下になるxの値