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現代ファイナンス理論 2012後期
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3.4 共分散と相関係数
3.4.1. 独立な確率変数
(1)独立な確率変数
2つのサイコロを同時に投げるものとする。確率変数X1 とX2 は結果を表す。奇数なら値1、偶数な
ら0である。X2 の確率分布はX1 の値に影響されないと考えられている。X1 と X2 は独立である。
確率変数Xの期待値をE[X] と表す。分散はV[X]。
独立
∑
X2
∫
ª
∑
0
1
1
1
4
4
1
1
4
4
表1
X1
0
ª
1
1
1
かつ E[X2 ] = である。X1 X2 という掛け合わせた結果を見るとEX1 X2 ]=
2
2
1
= となっている。以下の等式が成り立つときX1 とX2 は独立であるという。
4
E[X1 ] =
+ 14 × 1
( 14 + 14 + 14 )×0
EX1 X2 ]=EX1  EX2 ]
(2) 確率変数が独立でない場合
次に別な2つのサイコロがある。これらの確率は表2のように同じ結果が出やすいものである。この
EX1 X2 ]=EX1 EX2 ] は成り立っていない。独立ではない。
表2
正の相関
∑
X2
∫
ª
∑
0
1
3
1
8
8
1
3
8
8
X1
0
ª
1
1
8
1
3 1
×( 8 + 8 ) + 1×( +
8
3 1 1
( 8 + 8 + 8 )×0 + 38 ×
3
8
3
)
8
1
,
2
1
=
2
3
= 8
E[X1 ] = 0 ×( 38 + 18 ) + 1×( + ) =
E[X2 ] = 0
EX1 X2 ]=
1
EX1 X2 ]>E[X1 ] E[X2 ]である。このようにEX1 X2 ]=E[X1 ] E[X2 ]が成り立たない場合、独立でない。
3.4.2. 共分散
分散や標準偏差は確率変数が期待値のまわりにばらつく程度を表す。では2つの確率変数がどのよう
に関連しながらばらつくか表現できないであろうか。これには「共分散」と「相関係数」を用い
る。共分散はCov X1 X2  と表記する。相関係数は記号 r で表す。
2つの確率変数X1 と X2 があるとする。取り得る値はX1 = x1,1 , ... , x1,n X2 = x2,1 , ... , x2,m である。そ
れぞれがi 番目の値X1 = x1,i およびj番目の値, X2 = x2, j をとる場合の確率をpi, j で表す。共分散の定
義は以下の通り。
Cov X1 X2     X1 i  1 X2 j  2 pij
m
n
j1 i1
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ただし、EX1   1 および EX2   2 。
表2の共分散の計算は以下の通り。
1
0
1
0
2
3
1
 0

2
1
1
2
8
1
2
1
 1

2
8
1
0
1
2
1
 1

8
1
1
2
3
2
1
=

8
>0 8
表2の共分散は正の値であった。2つの確率変数が同時に大きくあるいは小さくなる傾向があるとき
共分散は正の値をとる。反対方向へ動く傾向があるとき相関係数は負となる。確率変数が独立なら
共分散は0となる。何故か?
3.4.3. 相関係数
共分散は2つの確率変数のばらつきは関連していることを表す。しかし値を測る単位によって共分
散の値は変わってくる。そのため、異なる変数間の比較ができない。例は何?
測る単位の影響を消したい。そこで2つの標準偏差で割る。これが相関係数と呼ばれる。記号は
rロー。
 
CovX1 , X2 
VX1 
VX2 
相関係数は - 1 から1までの間の値となる。ぴったりいっしょに変化している場合には共分散の値
は1である。2つの確率変数が無関係つまり独立の場合には相関係数は0である。反対方向の値が出
やすい場合は相関係数は負である。同じものを違う単位で測っていると、相関係数は1。共分散が
0なら相関係数も0。
3.5.確率変数の和と差
目標 ポートフォリオの管理したい。2つの会社の株価を確率変数X1 とX2 で表す。自分の資産はこ
の2つの株から成り立っているとする。それぞれ数量aと bだけ持っているとする。
Y = a X1 + b X2
自分の資産Yの期待値と標準偏差はどのような値になるであろうか。
確率変数の和の公式の導出
X1 と X2 のそれぞれの期待値と標準偏差は m1 、s1 および m2 、s2 である。
E[ Y ] = a m1 + b m2 ... (1)
Var[Y]= nj1   a x1,i  b x2,j   a 1  b 2 2 P X1  x1,i , X2  x2,j 
n
i1
= a x1,i - m1 + b x2, j - m2  * PX1 = x1,i , X2 = x2, j 
n
n
2
j=1 i=1
上の式の ∫ 2 の部分を展開すると、2つのグループに分けられる。
a2 x1,i  1   b2 x2,j  2 2 ... 2
2
 2 a b x1,i  1  x2,j  2  ... 3
(2) の部分の x1,i と x2,j に対応する確率 PX1 = x1,i , X2 = x2, j  を掛けてゆけば a2 Var[X1 ] +
b2 Var[X2 ] となる。
(3)の部分に対応する確率を掛けると、2 a b Cov[ X1 , X2 ] となる。相関係数の定義は
  Cov X1 , X2   1 2  である。これを使って変形すれば、Cov X1 , X2    1 2 、こ
れを用いると、Yの分散は次式で与えられる。 TextCh03bv2.nb
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Var[Y] = a2 Var[X1 ] + b2 Var[X2 ] + 2 a b r s1 s2 ∫ (4)
(4) 式は4章で重要な役割を果たす。(1) と(4)が公式。
保有割合の影響
式(3)について、a = 1、 b=1の場合を考える。2つの和であるYの分散は X1 と X2 それぞれの分散の
合計よりも相関係数しだいで大小関係が逆転する。独立ならば、2つの合計に等しい。
X1 とX2 の差を考える場合にはbの値が負であるとする。この場合であっても分散は減少するとは
限らない。独立の場合を例にとって考えると、b が正でも負でも結果は同じである。
保有割合の変化とポートフォリオの期待値と分散の変化
2つの株の収益率は確率変数 Y1とY2 で表されるとしよう。Ł 記号をXからYに変えた。確率変数
は収益率、(P1- P0 + D1) / P0 。
E[Y1]= m1, Var[Y1]=s21 , ここで、 s21 は  s12 の意味。Y2も同様にm2,  s22 。
2社の株価および収益率は独立ではない。相関係数は r で表す。
いまポートフォリオのうち割合a は第1の株であり、割合(1- a)は第2の株である。ポートフォリオの
収益率Zは Z= a Y1+ (1- a) Y2 である。ポートフォリオの収益率の期待値と分散あるいは標準偏差
をを見つけたい。公式を適用すれば次の通り。
E[Z]
= a E[Y1]+ (1- a) E[Y2]
= am1 + (1- a) m2
Var[Z] = a2 Var[Y1] + 1 - a2 Var[Y2] +2 a 1 - a Cov[Y1,Y2]
= a2 s21 + 1 - a2 s22 +2 a 1 - a r s1 s2 ポートフォリオの期待値と標準偏差がaの値によってどのように変化するか見てみよう。
相関する確率変数の和の数値例
株式1のほうが収益率が低いが、標準偏差も小さい。より安全である。
m1=0.05 、s1=0.01、m2=0.1 、s2=0.2 とする。相関係数は-0.5とする。 In[705]:=
Clear 1 , 2, 1, 2, , f, g
1  0.05 ; 1  0.01;
2  0.1 ; 2  0.2;    0.5;
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In[708]:=
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f_ :  1  1   2
g_ :  2 12  1  2 22  2  1    1 2 
k
ms  Table 
100
; g, f, k, 0, 100;
ListPlotms,
AxesLabel  "標準偏差", "期待値",
PlotLabel  "期待値と標準偏差の組み合わせ"
期待値と標準偏差の組み合わせ
期待値
0.10
0.09
Out[711]= 0.08
0.07
0.06
0.05
0.10
0.15
0.20
標準偏差
確率変数の和と差の例 株のポートフォリオを管理したい。X をA社の株、Yを海外のB社の株の円建て価値としよう。1日の
価格変化は次のような確率である。
X
x1  3
x2 3
Y
y1 2
y2 1
;
y3  1
y4  2
"確率" y1
y2
y3
y4
x1
0.2 0.15 0.1 0.05 x2
0.08 0.1 0.14 0.18
In[712]:=
Clearx, y, q, mx, vx
x
In[714]:=
3
;y
3
2
1
0.2 0.15 0.1 0.05
; q ; 1
0.08 0.1 0.14 0.18
2
Clearprobx1, probx2
probx1   q1, j; Print"x1の確率=", probx1
4
j1
probx2   q2, j;
4
Print"x2の確率=", probx2
j1
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x1の確率=0.5
x2の確率=0.5
(1) X の期待値と分散
In[717]:=
 q1, j
4
mx  x1, 1
 q2, j
4
 x2, 1
j1
;
j1
Print"Xの期待値 ", mx
Xの期待値 2.22045  1016
In[719]:=
vx  x1, 1  mx2
 q1, j
4

j1
x2, 1  mx2
 q2, j
4
;
j1
Print"Xの分散  " , vx
Xの分散  9.
(2) Y の期待値と分散
In[721]:=
my    yj, 1 qi, j ;
4
2
j1
i1
Print"Yの期待値  ", my
Yの期待値  0.11
In[723]:=
vy    yj, 1  my2 qi, j ;
4
2
j1
i1
Print"Yの分散  ", vy
Yの分散  2.5179
(3) X +Yの期待値と分散
1単位のXと1単位のYからなるポートフォリオを保有している。ポートフォリオの価値を確率変数
Zで表す。Z =X + Y とする。期待値と分散を求めたい。
方法1.Zの確率分布から直接求める
In[725]:=
Clearmz, vz
mz    xi, 1  yj, 1 qi, j ;
4
2
j1
i1
Print "Zの期待値  ", mz
Zの期待値  0.11
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In[728]:=
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vz    xi, 1  yj, 1  mz2 qi, j ; Print"Zの分散  ", vz
4
2
j1
i1
Zの分散  7.9779
方法2.XとYの確率分布から求める
Var[Z] = a2 Var[X ] + b2 Var[Y ] + 2 a b r s1 s2 ∫ (3)
上の公式に代入して、Zの分散を求める。XとYの共分散と相関係数を求める必要あり。
In[729]:=
Clearcovxy,  共分散 
covxy    yj, 1  my xi, 1  mx qi, j
Out[730]=
In[731]:=
In[732]:=
4
i1
j1
 1.77
 
covxy
vx
Out[731]=
2
vy
 0.37182
Clearvz; vz  vx  vy  2 
vx
vy ;
Print"Zの分散  ", vz
Print"vzvxvy ", vz  vx  vy 
Zの分散  7.9779
vzvxvy  3.54
XとYの2つを保有した場合の分散は、それぞれの株の分散の合計よりも小さくなる。
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