日本列島本州における コイワザクラ節(sect.Reinii)内2種4変種の 系統

日本列島本州における
コイワザクラ節(sect.Reinii)内2種4変種の
系統的位置づけ
倉田研究室4年
1151095 杉原早紀
階層的分類
科
サクラソウ科
属
サクラソウ属
節
コイワザクラ節
チチブイワザクラ (P. reinii var. rhodotricha)
種
イワザクラ
コイワザクラ
変種
クモイコザクラ
ミョウギコザクラ
チチブイワザクラ
本研究では節以下を扱う
コイワザクラ節(sect. Reinii)
・日本固有節
・4種5変種が各山地に隔離分布している(岩槻,1993 )
Narrow exserted capsule
=
=
Ground resting bud
コイワザクラ (P. reinii)
地上にできる越冬芽
細くとがった蒴果
1つの独立した節
(Richards, 2003)
葉緑体DNAを用いたコイワザクラ節の系統関係
Mast et al. (2001)
Cortusoides節
コイワザクラ節
枝上の数値はBootstrap値を示す.
葉緑体DNAを用いたコイワザクラ節の系統関係
コイワザクラ節は
・単系統を形成した.
・Cortusoides節と
姉妹群を形成した.
Cortusoides節
しかし
P. septemloba
95
引用元:http://www.farreachesfarm.com/Primulaseptemloba-p/p3172.htm
コイワザクラ節
いずれの研究でも扱わ
れたコイワザクラ節は
数種のみ.
Mast et al (2001), Richards (2003)
Mast et al (2006), Yan et al (2010).
枝上の数値はBootstrap値を示す.
コイワザクラ (P. reinii)
コイワザクラ節(sect. Reinii)の蒴果形態の変異
コイワザクラ
チチブイワザクラ
クモイコザクラ
シナノコザクラ
スケールバーは5mm.
しかし
蒴果形態は必ずしも細くとがっていない.
コイワザクラ節植物を多数用いた分子系統解析を行う必要がある.
本州におけるコイワザクラ節2種4変種の葉形態
毛無し
毛有り
コイワザクラ
チチブイワザクラ
イワザクラ
P. reinii
P. reinii var. rhodtricha
P. tosaensis
ミョウギコザクラ
P. reinii var. kitadakensis
P. reinii var. myogiensis
イワザクラ系統
コイワザクラ系統
クモイコザクラ
E
シナノコザクラ
P. tosaensis var. brachycarpa
スケールバーは1cm.
本州におけるコイワザクラ節2種4変種の花粉形態(尾嶋,2014)
コイワザクラ
チチブイワザクラ
イワザクラ
P. reinii
P. reinii var. rhodtricha
P. tosaensis
C
クモイコザクラ
ミョウギコザクラ
P. reinii var. kitadakensis
P. reinii var. myogiensis
D
イワザクラ系統
コイワザクラ系統
B
A
E
シナノコザクラ
P. t osaensis var. brachycarpa
F
スケールバーは10μm.
本州におけるコイワザクラ節2種4変種の花粉形態(尾嶋,2014)
チチブイワザクラ
イワザクラ
P. reinii
P. reinii var. rhodtricha
P. tosaensis
E
B
より客観性のあるDNAによってコイワザクラ節内の
シナノコザクラ
クモイコザクラ
ミョウギコザクラ
分類を再検討する必要がある.
P. t osaensis var. brachycarpa
P. reinii var. kitadakensis
C
イワザクラ系統
コイワザクラ系統
A
コイワザクラ
P. reinii var. myogiensis
D
F
スケールバーは10μm.
目的
本州におけるコイワザクラ節2種4変種の
1.系統的位置づけを明らかにする.
2.節内の系統関係を明らかにする.
サンプルの採取地
E
■
●
▲
C
●
F ●
■
B
●
▲
0
採取地
神奈川県駒ケ岳
A コイワザクラ
●
B チチブイワザクラ 埼玉県武甲山
●
C クモイコザクラ 山梨県天女山
●
D ミョウギコザクラ 群馬県妙義山
●
イワザクラ系統
▲
A
●
コイワザクラ系統
▲
D
●
種名
E イワザクラ
■
F シナノコザクラ
■
岐阜県山県市
長野県三ツ石山
方法
1.DNAを抽出
改良ガラス濾紙法(高倉, 2011)
2.DNA増幅
PCR法
(trnLF領域, ITS領域)
3.塩基配列解析
ダイレクトシーケンス法
(3100 Genetic Analyzer, Bioedit)
4.厳密合意樹作成
最節約法
(PAUP4.0 beta10)
マッシャー画像
1.本州におけるコイワザクラ節2種4変種の系統的位置づけ
節
亜属
本州におけるコイワザクラ節
2種4変種は
・単系統群にまとまった
72
P. cortusoides
64
77
Cortusoides
P. septemloba
P. malvacea
Malvacea
・先行研究で姉妹群を形成した
Cortusoides節とは姉妹群を
形成しなかった
チチブイワザクラ
92
82
91
コイワザクラ
クモイコザクラ
ミョウギコザクラ
100
コイワザクラ
・Malvacea節植物のP. malvacea
と姉妹群を形成した
イワザクラ
シナノコザクラ
100
100
各枝上の数値はBootstrap値を示す
(50%以上).
1.本州におけるコイワザクラ節2種4変種の系統的位置づけ
本州におけるコイワザクラ節2種4変種は
・単系統群を形成した
共通の祖先を持つことが明らかになった
・Cortusoides節植物ではなくMalvacea節植物のP. malvaceaと 姉妹群を形成した
これまで先行研究で言われていたCortusoides節ではなくMalvacea節とより近縁で
あることが示唆された
P. Septemloba (Cortusoides節)
P. malvacea (Malbacea節)
引用元:http://www.farreachesfarm.
com/Primula-septemloba-p/p3172.htm
引用元:http://encyclopaedia.alpinegar
densociety.net/plants/Primula/malvacea
コイワザクラ (コイワザクラ節)
2.本州におけるコイワザクラ節2種4変種の節内の系統関係
節
亜属
本州におけるコイワザクラ節2種4変種
・チチブイワザクラ
コイワザクラ
クモイコザクラ
ミョウギコザクラ
が単系統群を形成した
72
64
77
チチブイワザクラ
92
82
91
100
・イワザクラ
コイワザクラ系統 シナノコザクラ
クモイコザクラ
コイワザクラ
ミョウギコザクラ
が単系統群を形成した
コイワザクラ
イワザクラ
シナノコザクラ
イワザクラ系統
100
100
各枝上の数値はBootstrap値を示す
(50%以上).
2.本州におけるコイワザクラ節2種4変種の節内の系統関係
本州におけるコイワザクラ節内2種4変種
・コイワザクラ,チチブイワザクラ,クモイコザクラ,ミョウギコザクラ,と
イワザクラ,シナノコザクラがそれぞれ単系統群を形成した
既存の葉形態による分類と同じ結果を示した。
2.本州におけるコイワザクラ節2種4変種の節内の系統関係
祖先集団の移入
氷期
高地に退避
最終氷期後
イワザクラ
シナノコザクラ
クモイコザクラ
コイワザクラ チチブイワザクラ ミョウギコザクラ
現在
地理的隔離によって種分化したことが示唆された。
謝辞
・京都大学大学院 瀬戸口浩彰教授
・京都大学大学院教務補佐 梅津幸恵様
・応用地質株式会社 稲川崇史様
・松井雅之様
・岐阜県山県市いわ桜小学校の皆様
・岐阜県自然保護委員 江崎淳様
・群馬県自然環境課
・長野県環境部自然保護課
・長野県中部森林環境局南信森林管理署
・山梨県中北林務環境事務所件有林課
・山梨県森林環境部みどり自然課
本州におけるコイワザクラ節の分布
コイワザクラ
チチブイワザクラ
クモイコザクラ
ミョウギコザクラ
イワザクラ
シナノコザクラ
図:本州におけるコイワザクラ節の分布(佐竹ら,2011; 石井ら,2007).
標本庫における同種の葉
コイワザクラ(Primula reinii)
イワザクラ(Primula tosaensis)
図:標本庫における同種の葉(牧野標本庫).
葉形態の変異
イワザクラ
コイワザクラ
(本州)
(神奈川県箱根)
シナノコザクラ
サクラソウモドキ
(山梨県釜無)
(採取地不明)
図:葉形態の変異(吉野,2002より改図).