Maersk SeaLandによる P&O Nedlloydの 買収要因に関する検討 流通情報工学課程 2001749 吉田 有希 指導教官 : 鶴田 三郎 黒川 久幸 隻数;327隻、 フルコンテナ船 オペレーター別運航船腹量 (上位14社) 2004年 船腹量;91万TEU シェア;14.5% 隻数 船腹量 Ope r at o r Ran k i n g シ ェア 2005年の大型買収 ( 隻) ( T EU) M ae r sSeaLandによるP&O k 1 3Nedlloydの買収 27 910,335 14.5% Maersk MSC 2 216 608,989 9.7% Eve r g r e e n 3 148 433,958 6.9% 【買収条件】 P& O Ne dl l o yd 4 145 425,129 6.8% CMA CGM 5 137 368,254 5.9% 1株あたり57ユーロ 隻数;145隻、 AP L ( NOL ) 6 88 299,289 4.8% 総額23億ユーロ(約28億ドル)で買収 C OS C O 7 1 3 0 船腹量;42万TEU 287,423 4.6% シェア;6.8% Han j i n 8 75 282,878 4.5% NY K 9 86 256,552 4.1% C h i n a S h i ppi n g 10 66 221,656 3.5% OOC L 11 59 215,062 3.4% K- Lin e 12 69 210,103 3.4% M OL 13 61 194,591 3.1% 2 C S AV 14 72 188,081 3.0% 対象事例 検討項目 1. 経営資源拡大の必要性 2. 経営資源確保の手段 ① ② ③ ④ 新造船の発注・竣工 傭船契約 アライアンスを組む 買収(M&A) 3. P&O Nedlloydを買収(M&A)対象とした 理由 3 コンテナ荷動き量と船腹量の推移 2000年 年間コンテナ 荷動き量 (千TEU) 運航船腹量 (千TEU) 2002年より、アジア出し貨 物の増加により、コンテナ 荷動きは急増した 伸び率 2001年 52,786 55,676 4,747 5,341 2002年 2003年 5,915 2004年 2005年 74,721 82,689 83,533 6,445 7,085 8,025 2001年 荷動き量;1.05%、船腹量;1.12% 1.8 2004年 荷動き量;1.56%、船腹量;1.49% 年間コンテナ 0.51ポイント > 1.7 0.37ポイント 2002年頃を境に、運航船腹量 (供給量)がコンテナ荷動き量 (需要)に追いついていない 対2000年比 1.6 荷動き量 運航船腹量 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1.0 2000 2001 2003 定航船社は、 船腹量(経営資源)確保の必要があった 2004 2005(年) 4 検討項目 1. 経営資源拡大の必要性 2. 経営資源確保の手段 ① ② ③ ④ 新造船の発注・竣工 傭船契約 アライアンスを組む 買収(M&A) 3. P&O Nedlloydを買収(M&A)対象とした 理由 5 2.経営資源確保の手段 ① ② ③ ④ 新造船の発注・竣工 傭船契約 アライアンスを組む 買収(M&A) 通常、発注から竣工まで 2~3年かかる 6 Jan - 9 9 A pr- 9 9 Ju l- 9 9 O c t- 9 9 Jan - 0 0 A pr- 0 0 Ju l- 0 0 O c t- 0 0 Jan - 0 1 A pr- 0 1 Ju l- 0 1 O c t- 0 1 Jan - 0 2 A pr- 0 2 Ju l- 0 2 O c t- 0 2 Jan - 0 3 A pr- 0 3 Ju l- 0 3 O c t- 0 3 Jan - 0 4 A pr- 0 4 Ju l- 0 4 O c t- 0 4 Jan - 0 5 A pr- 0 5 Ju l- 0 5 O c t- 0 5 Jan - 0 6 A pr- 0 6 Ju l- 0 6 手段の選択② –傭船契約 4,400TEU 3,500 TEU 2,000TEU $/day 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 傭船マーケットは逼迫し、 傭船を手当てできない状況にあった コンテナ船 傭船料の船型別推移 1999-2006 7 参照 ; 商船三井営業調査室、定航海運の現状 2006.12.05開催セミナー資料 手段の選択 -まとめ① 造船所の状況から、新造船の建造は難しかった 傭船マーケットの状況から傭船による船腹量の 拡大は難しかった 船腹量確保の手段として、 ①新造船の発注・竣工、 ②傭船契約 は選択できなかった 8 2.経営資源確保の手段 ① ② ③ ④ 新造船の発注・竣工 傭船契約 アライアンスを組む 買収(M&A) 一般論 メリット・デメリット 9 アライアンスと買収(M&A)の ターミナルオペレーションは共同で行っ ているものの、コンテナオペレーション メリット・デメリット やスタッフの面での協力が薄く、一方で メリット デメリット 争っているため ・提携後のスケールメリットを使い、 ・責任の所在が不明確となり、もた 単独では不可能であったサービス れ合いが生じる 提供が可能 ・M&Aと比較すると、シナジー効果や アライアンスは、寄港地変更など何か ・相乗効果による投資の最小化とメ コスト面での効果は落ちる 変更をする際に・・・ アライアンス リットの最大化 ・短期間で契約が打ち切られる懸 原則 ; 参加全船社の同意が必要 ・経営技術やグローバルな情報網 念がある の相互利用 ・同一アライアンスの船社間で、競 ・加盟船社の特徴 (アイデンティ 争・差別化と疑心暗鬼が生じる ・船社の寄せ集めであり、意志決定に ティ) の維持が可能 時間がかかる 買収は、短期間で既存の経営資源を獲 ・旧会社のアイデンティティ(ブラン ・ノウハウ、経験、実績を保有する 得できるので、自社の既存事業の強化 ド)が損なわれる懸念がある や拡大が可能となるため 人材を獲得できる ・旧会社のアイデンティティ(ブラン ・経営戦略遂行のスピードを飛躍的に ド)が対立する恐れがある 早められる 買収(M&A) ・既存顧客を失う恐れがある ・低コストで業務効率化や収益体質 (買い手企業) ・不必要な資産・負債を引受けてし の改善を行うことができる まう可能性がある ・自社の事業とシナジー効果を発揮 ・相手企業の優秀なセールスマン、 させることが出来る 10 技術者及び顧客の流出 ・経営の多角化 買収(M&A)の効果 業界内での競争が激しい場合、同業種の企業と合併する ことにより、規模の拡大が図れ、マーケットシェアを確保す ることができる 市場のプレーヤーが減ることにより 競争相手が減り、 市場のシェアを より高めることができる 自由で迅速な経営の意思決定が 可能である 11 Maersk SeaLandの経営方針 コンテナ船 大型化の経緯 1984年 1988年 1996年 1997年 船腹量 4,000TEU型登場 4,300TEU型 (初のオーバーパナマック ス)登場 5,000TEU型登場 6,000TEU型登場 6,600TEU型 (実質8,000TEU)登場 2001年 7,000TEU型登場 2003年 8,000TEU型登場 2005年 9,000TEU型登場 公称11,000TEU型登場 2006年 (実は13,500TEU?) 発注船社 SeaLand 船名 APL 船型大型化の方向性 にある Maersk アライアンスを組まず Maersk Sovereign Maersk 単独でいることで、 迅速かつ自由な HapagHamburg Express Lloyd 経営の意思決定をする OOCL OOCL Shenzhen OOCL Long Beach MSC Maersk Emma Maersk 12 Maersk SeaLandの資金力 会社の資金力が分かる CF期末残高額( 百万ド ル/ 年) CF期末残高 今期の現金推移 手元に残る遊べる 現金の量 2005年の買収額 は、 約28億ドル 8,000 72億ドル Mae rsk S e alan d NYK 7,000 HapagLlo yd OOIL 6,000 P& ONL 5,000 MOL 4,000 HMM 3,000 APL K - Lin e 2,000 Yan gMin g 1,000 他船社を買収するだけの 0 資金力は十分にあった Han jin Eve rgre e n 2001 2002 2003 2004年 CP- S h ips 13 CGM CMA- 手段の選択 -まとめ② Maersk SeaLandが船腹量確保の手段として アライアンスではなく買収(M&A)を選択した要 因として・・・ 経営の意思決定に時間のかかるアライアンス よりも買収(M&A)の方が、Maersk SeaLandの 経営方針に合っていた 買収(M&A)の効果を追求した 他船社を買収するだけの資金力があった 14 検討項目 1. 経営資源拡大の必要性 2. 経営資源確保の手段 ① ② ③ ④ 新造船の発注・竣工 傭船契約 アライアンスを組む 買収(M&A) 3. P&O Nedlloydを買収(M&A)対象とした 理由 15 3.P&O Nedlloydを買収の対象とした理由 検討項目 P&O Nedlloydの経営状態 (財務分析) 営業利益率 経常利益率 税引後当期利益率 Maersk SeaLandとP&O Nedlloydの 経営方針 16 P&O Nedlloydの経営状態 –税引後当期利益率 税引後当期利益 ⇒税引前当期利益から 税額を差し引いたもの ⇒企業の最終的な収益 力をあらわす P&OND;-6.5% 平均;1.0% P&OND;4.6% 平均;9.1% 20% 売上高(税引後)当期利益率 税引後当期利益率 企業の 最終的な収益力 をあらわす Maersk SeaLand NYK 15% HapagLloyd OOIL 10% P&O Nedlloy MOL 5% Hyundai 0% NOL (APL) K-Line -5% 収益性が悪く、経営状態はよくなかった -10% 2001 2002 2003 2004年 YangMing HanJin 17 Evergreen Maersk SeaLandとP&O Nedlloydの 経営方針 Maersk;6,600 P&OND;7,506 平均;6,059 Maersk;6,600 P&OND;6,802 平均;5,785 8,000 M ae r sk 6,000 P& OND 5,000 平均 ( T EU) 4,000 3,000 2,000 1,000 W.& S. Asia South Asia South America North America Intra Asia Europe 0 Africa/ Oceania 最大船型 (TEU) 7,000 Maersk SeaLand、P&OND両船社とも 経営方針に船型の大型化指向という類似があった 就航航路別 最大船型の比較 2004年 18 航路別市場占有率 オペレータ COSCO Africa/ Oceania Europe -2004年 North America South America South Asia 21.2% 7.5% 10.9% 18.7% Hanjin 5.9% 22.2% 21.9% 7.9% KL 9.6% 9.8% 15.5% Maersk 23.4% 34.6% 26.9% P&OND 39.8% 11.4% 9.9% Hyundai 5.4% YangMing 9.1% 100.0% 100.0% 13.9% W.& S. Asia 23.9% 23.2% 17.1% 10.0% 0.9% 1.7% 16.1% 7.1% 12.3% 18.9% 7.7% 26.2% 23.1% 100.0% 100.0% 86.1% 1 経済発展が著しい 00.0% 100.0% BRICs地域が含まれる 主要航路(北米航路・欧州航路)への配船が多い P&ONDは南米航路に圧倒的シェア(86.1%)を持っていた Maersk SeaLandは、自社の強い地域のサービス強化と 自社の弱い地域のサービスを補完するために P&ONDを買収(M&A)の対象にしたと考えられる 19 まとめ 機会損失回避 2000年以降の活発な荷動きに対応し、市場 占有率を高めるため、定航船社は経営資源 拡大の必要があった 他船社を買収するだけ の資金力も十分にあっ 買収(M&A)は、自由で迅速な経営の意思決定 た が可能であり、Maersk SeaLandの経営方針に 合っていた 業界4位の船隊規模の P&O Nedlloydは、他船社に比べ経営状態が わりに、低収益であった 芳しくなかった 20 まとめ 船型の大型化志 向 Maersk SeaLandとP&O Nedlloydには経営 方針に類似があった 経済発展が著しいBRICs地域 におけるP&ONDのシェアは、 将来的にも魅力的 配船状況から、フリートの増強・サービス内容 の拡充というシナジー効果を図り、P&ONDを 買収(M&A)の対象にしたと考えられる 21 ご清聴ありがとうございました 22 研究の背景 船社 ; 大きく分けて2つの部門からなる (不定期船部門、定期船(コンテナ)部門) 不定期船部門 → 長期契約によりマーケットは 安定している 定期船部門 → 荷動き量の増加に伴い、より規模 の大きな船隊の運航が必要 船腹量の規模拡大のために、 アライアンスを組んだり買収(M&A)を行い、 船は高額であり、ターミナル等の整備には 変遷が激しい 莫大な資金を必要とし、1社単独や少数船社の 連合では資本費の負担が過大 世界的な再編は今後もさらに進むと推測されている 23 研究の目的 変遷の激しい定航海運において、船社が競 争優位に立つためには・・・ 何らかの競争戦略を立て、経済性を確立する 必要がある これまでに定航船社は、 どのような経営手段をとってきたのか、 過去の再編事例に基づいて、 その要因を検討する必要がある 24 25 26 27 市場の需給バランス 市場は需要と供給のバランスが安定していることが大切 新造船を発注・竣工することで船腹量を拡大したとき、スクラップ等を考 慮した船腹量の必要量を超えてしまうと、供給(船腹量)が増加しすぎて しまい、需要(荷物量)と供給(船腹量)にアンバランスが生じてしまう 定航海運市場の運賃は、実際の需給ではなく現時点での需要と予測さ れた将来の供給量でもたらされている 船腹過剰の状況になると、運賃が急落する恐れがある 市場の需給バランスを考慮した点からも 新造船を発注・竣工することには限界がある 28 ネットワークの輸送の特徴 海運のようなネットワークの輸送では、積載量一定のとき、積み替え費用 を除けば、次のことがいえる 船 型 の 大 型 化 単 の位 単コ 価ン がテ 下ナ があ るた り 荷 物 が 集 ま る サ ー ビ 増ス ( 加頻 度 ) の 集 荷 力 が 上 が る 船型の大型化により規模が拡大し、規模の経済効果を発揮し優位に立てる ネットワークの輸送においては、 市場占有率(シェア)をいかにとるかが大切 29 手段の選択① –新造船の発注・竣工 発注量と竣工量(千TEU) 1200 1000 800 600 400 200 0 1995 1996 1997 1998 1999 新造船発注量 2000 2001 2002 2003 2004* 新造船竣工量 商船三井営業調査室、定航海運の現状 2004/2005 より作成 新造船を発注しても、竣工するのは数年先 30 手段の選択② –傭船契約 傭船マーケット 各船社とも、パナマックス以下の船型に関しては傭船比率が高い 8000TEU型をはじめとするオーバーパナマックス型の発注がブーム となり、定航海運市場は中型・小型船が不足 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006(~Sep) 5,000以上 4,000-4,999 3,000-3,999 2,000-2,999 1,500-1,999 1,000-1,499 0 200 400 600 800 傭船成約件数(サイズ別) 推移 1000 1200 31 参照 ; 商船三井営業調査室、定航海運の現状 2006.12.05開催セミナー資料 アライアンス アライアンスとは・・・ 世界規模の戦略的国際提携 複数の船社が複数の主要航路にまたがって 構成船社が効率のよい配船を行い、 スペースを融通し合い、 加えてターミナルも相互に提供し合い、 船社同士がサービスの向上とコストの削減を 追求するもの ※ Alliance ;同盟・連合 32 M&Aの概念図 広義のM&A 狭義のM&A 吸収合併 合 併 買 収 提 携 新設合併 株式取得 営業譲渡 分 割 資本の移動を伴う 提携 技術提携 共同生産 OEM等 吸収分割 新設分割 33 買収(M&A) 買収(M&A)とは・・・ 狭義のM&Aで、 株式取得や営業譲渡を ともなうものをいう 国内・国外における国際競争力の強化や 国外進出を容易にするためなど、国際的な マーケット拡大に伴う、生存競争と事業拡大 を主な目的として用いられる ※M&A;Mergers and Acquisitions(合併と買収) 34 P&O Nedlloydの経営状態 –まとめ 営業利益率・経常利益率・税引後当期利益率 とも他の船社に比べて低率であった 収益性が悪く、経営状態はよくなかった 35 P&O Nedlloydの経営状態 30% Maersk Sealand NYK 25% 営業利益率(%) 営業利益率 売り上げに対して どれだけ利益が あるかを表す 企業の 本業による収益力 を表す –営業利益率 HapagLloyd OOIL 20% 15% P&ONL 10% MOL 5% HMM 0% APL -5% K-Line -10% YangMing 2001 2002 -7.5% 2003 2004年 8.6% Hanjin Evergree 36 n CP-Ships P&O Nedlloydの経営状態 20% Maersk Sealand NYK 15% 経常利益率(%) 経常利益率 企業の 経常的な収益力 を表す 会社がどれだけ健全 であるかを示す –経常利益率 HapagLloyd OOIL 10% P&ONL 5% MOL 0% HMM APL -5% K-Line -10% YangMing 2001 2002 -6.3% 2003 2004年 4.9% HanJin Evergreen 37 CP-Ships Maersk SeaLandの経営方針 コンテナ1個あたりの輸送コストを低減するた め、船型を大型化させる方向性にあり、大型 船を用いることで規模の経済性を目指してい る つまり、コストを削減しサービスの質の向上の 実現のためスケールメリットの追求が強い 38 今後の課題 寡占化状態が強まる 定航船社は、生き残りをかけて、経営の意思 決定が重要 39 40 41 42 手段の選択③ –アライアンスを組む アライアンスとは 複数の船社が複数の主要航路にまたがって 構成船社が効率のよい配船を行い、スペー スを融通し合い、加えてターミナルも相互に 提供し合い、船社同士がサービスの向上とコ ストの削減を追求するもの スペースを融通し合う = 所有できるスペースには限定がある 経営の意志決定が遅くなる 43 手段の選択④ –買収(M&A) 買収(M&A)とは 主な目的は、国内・国外における国際競争力の強 化や国外進出を容易にするためなど、国際的な マーケット拡大に伴う、生存競争と事業拡大のため に用いられる 買収(M&A)の効果 市場全体の供給(量)を増加することなく、自社の経 営資源を増やすことができる 市場のプレーヤーが減ることにより競争相手が減 り、市場のシェアをより高めることができる 44 大型M&Aの事例 1997年~99年と2005年に定航船社のM&Aが相次 ぐ 【 1997年~99年】 ・P&O(英)とNED LLOYD(蘭)の合併 (1997年7月) ・NOL(シンガポール)によるAPL(米)の買収 (1997年) ・Maersk(デンマーク)によるSea-Land(米)の買収 (1999年 7月) 【 2005年】 ・A.P.Moller-MaerskによるP&O Nedlloydの買収 (2005年9 月) ・TUI(Hapag-Lloydの親会社)(独)によるCP Ships(カナダ) の買収 (2005年8月) 45 ・CMA CGM(仏)によるDelmas(仏)の買収(2005年9月) 4.2.3 大型M&Aが起こるときの共通点 【背景】 好況時に大量発注した新造船の竣工ラッシュがス タート 運賃下落、コスト上昇などで、船社間の競争が激化 【ネライ】 苛烈な競争を勝ち抜くために、 定航各社は船腹受給を悪化させることなく(需要と供 給のバランス)、 自らの経営資源(船腹量)を増やすべく、経営効率 の低い会社を飲み込む形で船隊の増強を図る 46 M&Aの効果 市場は、需要と供給のバランスが大切 新造船ばかり造ってしまうと、供給(船腹量)が増加し すぎてしまい、需要(荷物量)と供給(船腹量)にアンバ ランスが生じる → 運賃の急落が起こる可能性 大! そこで、M&Aをすると・・・ 需要が増加(荷動きが活発)しているときに、 市場全体の船腹量(供給量)を増やすことなく、 自社の経営資源(船腹量)を増やすために、既存の 資源(=他社の持っている資源)の有効活用が可能 47 4.1.5 Maerskの資金力 MaerskはM&Aをするだけの資金力がある ※CF期末残高 3つのキャッシュフローと期首残高・期末残高に より、 今期の現金推移、手元に残る遊べる現金の量 が わかる ※総資本 (会社の規模を判断) ・会社が集めたすべての資本のこと ・他人資本と自己資本から成る 48 4.1のまとめ (M&Aを選択した理由) M&Aの選択手段の理由は、2つ (1). 定航海運市場の状況、造船市場の状況、 Maerskの財務状況から、経営資源(船腹 量)確保の手段(3通り)のうち、残った手段が M&Aであった (2). 需要と供給のバランスを考慮し、M&Aの 効果を追求したことによる 49 (1). 営業利益率 営業利益 ・会社の本業である主な営業取引によって得た 儲 けのこと ・売上総利益から販売費および一般管理費に 区分される営業費用を引いたもの 営業利益率 ・営業利益を売上高で割ったもの ・売り上げに対してどれだけ利益があるかを表す ・企業の本業による収益力をあらわす 参照 ; 「私でも面白いほどわかる決算書」 宝島社 50 (2). 経常利益率 経常利益 ・利息や有価証券の売買など、本業以外の利益 も含めた日常的な経営活動による儲けのこと ・営業利益から営業外損益を引いたもの 経常利益率 ・経常利益を売上高で割ったもの ・企業の経常的な収益力を表す (会社がどれだけ健全であるかを示したもの) 参照 ; 「私でも面白いほどわかる決算書」 宝島社 51 (3). 税引後当期利益率 税引後当期利益 ・税引き前当期利益から、税額を差し引いたもの ※税引き前当期利益※ ・経常利益に特別利益を加え、特別損失を引いたもの ・営業と直接関係ない臨時的に発生した損益も 計算し、最終的な利益を出したもの ・その期における、会社の最終的利益 税引き後当期利益率 ・税引き後当期利益を売上高で割ったもの ・企業の最終的な収益力を表す 参照 ; 「私でも面白いほどわかる決算書」 宝島社 52 4.3.2 大型M&Aが定航海運業にもたらした影響 市場占有率の追求により、 2006年にはT.N.W.AとG.Aによる業務提携の ように、アライアンスを超えた提携が起こった ますます『寡占化』が 進む 53 54
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