音声からの心的状態の推定における生理心理学的アプロ

音声からの心的状態の推定における
生理心理学的アプローチの導入
2007 年1 月27 日 修士論文・卒業論文発表会
菊池英明研究室B4
袋 菜津子
1. 研究の概要
●自然な音声対話システムの実現のため、話者の音声
から感情推定を行おうとする研究が行われてきた。
●しかし、従来の研究において感情推定は主観的方法に
よるところがあり、学習における教師信号の安定性に欠け
る。
音声からの心的状態の推定へ、生体情報を教師信号として利
用する“生理心理学的アプローチの導入” を試みる。
2. なぜ生体情報を用いるのか?
生体情報には意図的な操作が入らず、継時的な変化を
捉えられる。
客観的な評価、幅広い心的状態の
変化の評価が可能
自律神経系の指標(心拍・血圧など)は、これまで
多くの先行研究で用いられてきた。
心的状態の推定へ利用できる可能性が高い
3. 典型的な生体信号
□:ストレス負荷時
生体信号はそれぞれストレス負荷時
右図のような典型的な波形を示す。
生体信号の変化において、課題
時に典型的な変化が見られた被験
者は、ストレス状態にあったと判断
することができる。
図. 典型的な波形の例
HR:心拍
SC:皮膚コンダクタンス
TEMP:皮膚温
4. 実験
●難度の異なる音読課題間における生体信号の反応の違いが音
声の特徴量の違いにも現れるのかを検討する。
●
主観的評価によってのみストレス状態と判断された音声(A)
生体信号の変化からもストレス状態にあると判断できた音声(B)
の比較を行う。
ストレス音声と非ストレス音声を判別するため、決定木学習
を行う。
実験で非ストレス・ストレス状態の典型的な波形を示した被
験者のデータを判別データとし、AとBそれぞれの条件で学習
モデルを作成する。
5. 実験結果
表. 決定木学習による被験者毎の
ストレス、非ストレス音声の判別結果
A : 生体信号を教師信号としないデータ
で学習モデルを生成した場合
平均判別率 63.9%
B : 生体信号を教師信号とするデータ
で学習モデルを生成した場合
平均判別率 77.8%
被験者ID
14 - O
18 - O
19 - O
22 - O
25 - O
26 - O
27 - O
28 - O
29 - O
平均
判別率(%)
A
75.0
62.5
87.5
75.0
50.0
50.0
75.0
50.0
50.0
63.9
B
87.5
100.0
87.5
100.0
50.0
50.0
75.0
62.5
87.5
77.8
 生体信号は、心的状態の変化を推定するうえで、有効な情報
であるといえる。