産業組織論 (9) 様々な市場構造と独占 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2012年1月26日 今日学ぶこと 1. 2. 3. 4. 5. 様々な市場構造 独占 死荷重 競争政策 自然独占 2012/1/19 産業組織論 9 2 不完全競争と市場構造 1. 完全競争市場は希だ 市場構造とは市場の構成 完全競争市場 2. 独占~供給者が一人.水道,電力,マイク ロソフト,ファスナー(YKK) 3. 寡占~数社の企業が競争していてある程度 競争がある.自動車産業,ゲーム産業 4. 独占的競争~寡占よりも企業数が多いが, 完全競争よりも少ない.パソコン市場. 2012/1/19 産業組織論 9 3 さまざまな市場構造 ブランド物のバックが典型 うまい棒に様々な味がある 比較的多くの企業が競争している.プライ ステイカーではない.各社の製品は少しず つ異なっている 企業によって財が少し異なっていることを 製品差別化されているという 2012/1/19 産業組織論 9 4 市場構造を決めるもの 製品差別化されているか(されている→) 生産者 がどれ だけい るか (多い↓) 2012/1/19 独占 該当なし 寡占 完全競争 産業組織論 9 独占的競争 5 不完全情報 完全競争市場では財の品質は完全に分かっ ている(完全情報) 不完全情報(imperfect information)-売買され る財についてすべての情報を持っている訳 ではない 全て情報がある→機会集合が分る 自分の選好も知っている 不完全情報によってどれだけ経済的な帰結 が異なるか? 2012/1/19 産業組織論 9 6 情報の経済学 大卒者が高卒者よりも高い収入 大学で生産性を高める教育を受ける 企業に学士号を持つことは有用な情報をも たらしている 企業は生産性の高い人は分らない 大卒であることは平均的に生産性が高いこ とを企業に伝えている なぜ結婚適齢期になると女性はお茶とお花 を習い始めるのか? 2012/1/19 産業組織論 9 7 情報の市場 情報には価値があるが,他の財と異なる 一旦情報を得るとお金を払いたくなくなる 情報の信頼性:株屋が株価が上がることを教 えてくれたとする.これは信頼できるか?な ぜ自分で儲けないのか? 消費者保護法: 誇大広告の禁止,すぐ痩 せる! 広告が曖昧なわけ 2012/1/19 産業組織論 9 8 独占 マイクロソフト社は独占(monopoly)企業と呼 ばれる YKK(吉田工業株式会社)はファスナー業界の 国内市場の95%,世界でも45%のシェア MS社はパソコン市場を独占している 独占企業は市場価格をコントロールできる この市場支配力により利潤が増える 大きなシェア(市場占有率)を持つ企業を独占 的と呼ぶ.純粋な独占は希である. 2012/1/19 産業組織論 9 9 独占と市場価格 独占企業は価格 をつり上げる 価 格 M 独占だと供給曲 線 は存在しない PM C P* 需要曲線 数量 QM 2012/1/19 Q* 産業組織論 9 10 独占の理由 他の企業が市場に入ってこない.参入障壁 があるから 希少な生産要素の独占 規模の経済性~巨額の固定費用が必要. 例:水道,ガス,電気.電話も以前そうだった 自然独占 技術的優位性~技術的優れていて参入阻止 法的な保護~特許や著作権.医師や弁護士 の所得が高い理由 2012/1/19 産業組織論 9 11 不完全競争の場合の価格と数量 企業はプライス・メーカー(価格設定者)である 利潤を最大にする企業はどんな市場構造でも 限界収入=限界費用 となる水準で産出量を決定する 2012/1/19 産業組織論 9 12 限界収入と限界費よ 限界収入(Marginal Revenue)~産出量を一単 位増やすときに得られる追加的収入 限界費用(Marginal Cost)~産出量をもう一単 位増加させたときの追加的費用 2012/1/19 産業組織論 9 13 利潤最大化 MR>MC → 産出量を増加させた方が 利潤が高まる (収入の上昇が費用のそれを上回る) MR<MC → 産出量を削減した方が良い (費用の削減が収入の減少を上 回る) MR=MC → 利潤が最大になる条件 2012/1/19 産業組織論 9 14 利潤 利潤最大 MR>MC MR<MC 産出量増 産出量減 Q* 2012/1/19 産業組織論 9 産出量 15 色々な市場 完全競争市場: 限界収入=価格,MR=p 産出量を増やしても市場全体への影響は軽微 独占: 産出量が2倍ならば産業全体の産出量も2倍,価格 は下落 R=pQ 産出量が増加したときにどのくらい価格が 下落するかは市場構造による 2012/1/19 p(↓),Q(↑) 産業組織論 9 16 ファスナー価格(円) 100 95 90 85 80 75 70 65 60 55 50 45 40 2012/1/19 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 0 0 定義されない 1 95 95 2 180 85 3 255 75 4 320 65 5 375 55 6 420 45 7 455 35 8 480 25 9 495 15 10 500 5 11 495 -5 12 480 -15 産業組織論 9 17 独占企業の需要曲線と限界収入曲線 円 120 100 80 60 ファスナー価格(円) 限界収入(円) 40 20 0 -20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -40 2012/1/19 産業組織論 9 18 独占価格 限界費用は一定の45円とする 固定費用は0円 MC=45 MR=45の産出量は Q=6 公式による利潤の最大化は Q=6 で達成 2012/1/19 産業組織論 9 19 独占企業限界収入曲線と限界費用曲線 円 120 100 80 60 限界収入(円) 限界費用(円) 40 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ファスナーの数量 -20 -40 2012/1/19 産業組織論 9 20 独占と市場価格 価 格 M PM C 限界費用曲線 P* 需要曲線 限界便益曲線 数量 QM 2012/1/19 Q* 産業組織論 9 21 ファスナー(個) 収入(円) 限界収入(円) 限界費用(円) 費用(円) 利潤 0 0 定義されない 定義されない 0 0 1 95 95 45 45 50 2 180 85 45 90 90 3 255 75 45 135 120 4 320 65 45 180 140 5 375 55 45 225 150 6 420 45 45 270 150 7 455 35 45 315 140 8 480 25 45 360 120 9 495 15 45 405 90 10 500 5 45 450 50 11 495 -5 45 495 0 12 480 -15 45 540 -60 2012/1/19 産業組織論 9 22 独占の弊害,死荷重 独占価格によって価格は引き上げられる 限界費用と価格が等しい時の産出量は11個 独占は6個しか生産しない 経済厚生は価格=限界費用の水準と比べ低 下する 低下した厚生の損失を死荷重という 2012/1/19 産業組織論 9 23 独占と市場価格 価 格 消費者余剰 M PM P* 生産者 余剰 C 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2012/1/19 Q* 産業組織論 9 24 独占だが限界費用で価格付けした場合 価 格 M PM P* 生産者余剰はゼロ C 消費者 余剰 限界費用曲線 需要曲線 数量 QM 2012/1/19 Q* 産業組織論 9 25 死荷重 価 格 独占の経済厚生 M PM 死荷重=厚生損失 C 限界費用曲線 P* 需要曲線 数量 QM 2012/1/19 Q* 産業組織論 9 26 競争政策 1. 2. 3. 価格が高すぎると非効率性が高まる 市場支配力の濫用 政府は積極的に競争の促進を実施している 独占禁止法(日本),反トラスト法(米国) 価格カルテル・談合の防止 大きな合併の制限 独占的地位の濫用(マイクロソフト) 2012/1/19 産業組織論 9 27 自然独占 上水道や下水道は設備に膨大な費用がかかる. 独占に任せておいた方が良い 自然独占 政府の規制の必要性,自治体が運営 以前は電力,電話,CATVも自然独占だった. 今は違う! 2012/1/19 産業組織論 9 28
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