産業組織論 (4) 規制 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2015年11月5日 子供料金が安いワケ 子供は普通大人よりもお金がない 映画料金を高くすると直ぐに見なくなる 映画を見ようとした大人は高くても見る じゃあ大人に高い映画料金を設定しよう! HW:①価格差別の例を考えて下さい ②深夜バスの料金は昼間の料金よりも 高い理由を述べて下さい 2015/11/5 産業組織論 4 2 自然独占 上水道や下水道は設備に膨大な費用がかかる 水道管の敷設費用が大きい.取水費用は小さい 生産量が増えると生産量1単位あたりの費用は減 少する費用逓減(ていげん) 費用逓減産業で独占が自然に発生するので自然 独占という 政府の規制が必要となる.或いは自治体が運営 以前は電力,電話,CATVも自然独占だった 技術進歩により複数の企業が操業可能に 2015/11/5 産業組織論 4 3 固定費用と可変費用 上下水道管のように初期の工事に大きな費用がか かる 利用者がどれだけ水道を利用しようと水道管の工 事費用はかかる 固定費用とは生産量にかかわらず掛かる費用 アイス屋の冷凍庫の購入費,自動車工場の建設費 一方,可変費用を生産量に応じてかかる費用 取水電力,アイスの原材料,自動車部品 費用は固定費用か可変費用のどちらか 2015/11/5 産業組織論 4 4 総費用と平均費用 総費用または費用は固定費用と可変費用の和 費用 =固定費用+可変費用 自動車生産の費用とは?一台の自動車の生産 に少しでも関わった費用をすべて加える? すべての費用を生産台数に応じて振り向ける 生産物1単位あたりの費用を平均費用という 費用 平均費用 = 生産量 2015/11/5 産業組織論 4 割り算は分母の 数の一単位あ たりの分子の量 5 固定費用と限界費用 固定費用が10000円掛かるとしよう 限界費用は2000円で一定 生産量 限界費用 可変費用 0 2015/11/5 生産量を0から1に増や すときに2000円かかる 0 1 2000 2000 2 2000 4000 3 2000 6000 4 2000 8000 産業組織論 4 可変費用0から生産量 1の限界費用2000を加 えて2000になる 可変費用2000から生 産量2の限界費用2000 を加えて4000になる 6 限界費用曲線 – 可変費用は生産量ゼロか ら限界費用を加えていった 金額に等しい – 縦軸に金額,横軸に数量 の平面に限界費用を描く – これを限界費用曲線という 金額(円) 限界費用は 200円で一定 200 数量 0 1 2015/10/22 2 3 4 5 産業組織論 1 7 総費用と平均費用 固定費用10000 に可変費用0を 加えて総費用 1000になる 生産量 固定費用 可変費用 2015/11/5 総費用12000 を生産量1で 割って平均費 用12000になる 総費用 平均費用 0 10000 0 10000 1 10000 2000 12000 12000 2 10000 4000 14000 7000 3 10000 6000 16000 5333 4 10000 8000 18000 4500 産業組織論 4 8 平均費用曲線 金額(円) 平均費用は 1200円 1200 1100 1000 900 800 700 600 500 400 0 平均費用 7000 平均費用 5333 1 2015/10/22 2 3 – 縦軸に金額,横軸に 数量の平面に平均費 用を描く – これを平均費用曲線 という 平均費用 4500 4 5 産業組織論 1 HW:①生産量5の時 の可変費用と平均 費用を求めて下さい 数量 9 平均費用曲線と限界費用曲線 金額(円) 1200 1100 1000 900 800 700 600 500 400 – 平均費用曲線は右下がり – 限界費用曲線は一定 – 平均費用曲線は限界費 用曲線よりも上方にある – 生産量が増加するほど平 均費用が減少する産業を 費用逓減産業という 平均費用曲線 限界費用曲線 200 0 1 2015/10/22 2 3 4 5 産業組織論 1 数量 10 理想的な平均費用曲線と限界費用曲線 金額(円) – 費用逓減産業は固定費用 が可変費用に比べて大き い産業 平均費用曲線 – 例:水道,電気,鉄道 – 1社で生産した方が効率的 – 自由な競争に任せれば自 然に独占になる – この産業を自然独占という 限界費用曲線 0 1 2015/10/22 2 3 4 5 産業組織論 1 数量 11 自然独占 自然独占は生産を独占することによって複 数企業が競合するよりも低い生産費を実現 規模が大きいほど平均費用を低く抑えるこ とができることを規模の経済性ともいう 自然独占には規模の経済性がある 独占は死荷重の発生により非効率的になる そのため独禁法で独占は禁じられている しかし,この場合は仕方ない 2015/11/5 産業組織論 4 12 規模の経済性と競争価格 – 自然独占のケースで市場 価格と限界費用が等しい価 格付けをしたとしよう – この時競争価格P*が付く – 効率的な状態 – しかし,企業は赤字になる 金額(円) 需要曲線 価格=限界費用 平均費用曲線 P* 限界費用曲線 0 Q* 2015/10/22 産業組織論 1 数量 13 競争価格と平均費用 – 競争的な数量Q*を生産し たときの平均費用はAC*に なる 金額(円) 需要曲線 AC* 平均費用曲線 P* 限界費用曲線 0 Q* 2015/10/22 産業組織論 1 数量 14 費用>収入 金額(円) 需要曲線 – – – – – 費用=生産量×平均費用 収入=生産量×価格 図より費用>収入 利潤=収入ー費用 これは赤字を意味する 費用 収入 平均費用曲線 AC* 限界費用曲線 P* 0 Q* 2015/10/22 産業組織論 1 数量 15 独占の容認 HW:②鉄道会社の固定費用 と可変費用を考えてみよう 規模の経済性がある産業で競争的な価格付 け(価格=限界費用)をすると赤字が発生する そのため企業に独占を認める しかし,監督官庁は企業を規制する 公益事業(水道,電気・ガス,電力,鉄道)は 政府の大きな規制下にある JRは鉄道運賃を自由に設定できない! 国土交通大臣の認可や届け出が必要 2015/11/5 産業組織論 4 16 規制手法の例:鉄道事業法 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、鉄道事業等の運営を適 正かつ合理的なものとすることにより、輸送 の安全を確保し、鉄道等の利用者の利益を保 護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を 図り、もつて公共の福祉を増進することを目 的とする。 監督官庁と法律がセットになって産業を規制 2015/11/5 産業組織論 4 17
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