ただいま、ページを読み込み中です。5秒以上、このメッセージが表示されている場 合、Adobe® Reader®（もしくはAcrobat®）のAcrobat® JavaScriptを有効にしてください。 日皮会誌：111（10） ，1501―1504，2001（平13） Adobe® Reader®のメニュー：「編集」→「環境設定」→「JavaScript」で設定できます。 「Acrobat JavaScriptを使用」にチェックを入れてください。 なお、Adobe® Reader®以外でのPDFビューアで閲覧されている場合もこのメッセージが表示さ れます。Adobe® Reader®で閲覧するようにしてください。 有用であった乳房外 Paget 病（陰部）の 2 例 Photodynamic diagnosis（PDD）が腫瘍細胞の浸潤範囲確認に 要 清水 純子 玉田 康彦 矢野 克明 松本 義也 中瀬古裕乃 既往歴：30 年前子宮筋腫，10 年前より高血圧． 旨 腫瘍細胞の浸潤範囲確認のため，乳房外 Paget 病 家族歴：特記事項なし． （陰部）2 症例に Photodynamic diagnosis（PDD）を施 現病歴：3 年前より陰部にかゆみがあり，他院婦人 行した．症例 1 は紅斑部にほぼ一致して PDD 陽性で 科通院するも改善せず．平成 12 年 10 月近医皮膚科受 あり，生検にて同陽性部に腫瘍細胞が認められた．症 診．生検にて Paget 病と診断され，11 月 15 日手術目的 例 2 は再発性乳房外 Paget 病で，PDD にて，紅斑部の にて当院受診した． みならず一見正常にみえる植皮部にも赤色蛍光を認 現症：左側大陰唇から外側にかけて比較的境界明瞭 め，生検にて腫瘍細胞を確認した．これらの所見から な紅斑局面を認める．外尿道口，膣口部には肉眼的に Paget 細胞の浸潤範囲は PDD 陽性部にほぼ一致して 異常を認めない（図 1a） ． おり，PDD が腫瘍細胞の浸潤範囲の診断に有用である PDD 所見：20％ ALA 親水軟膏を病変部より周囲 にかけて広く外用しサランラップにて ODT 施行．そ と考えられた． の上をアルミ箔で覆い遮光し，約 6 時間後に患部から はじめに 約 60 cm 離した部位より FL 20 SBLB 20 W を 5 本装 光感受性物質の 5-aminolevulinic acid（以下 ALA）の 着したブラックライトにて赤色蛍光発光部位を観察し 投与後，腫瘍内に選択的にプロトポルフィリン IX が た．紅斑部と粘膜部位にほぼ一致し，左側大陰唇から 生じ，惹起光により腫瘍が傷害される Photodynamic 外側に赤色蛍光を認めた．PDD 陽性部の生検では腫瘍 therapy は皮膚腫瘍の治療法として欧米を始め本邦で 細胞を認めたが，PDD 陽性部から約 1 cm 外側の部位 1） ∼3） ．また ALA 外用部 では，いずれも腫瘍細胞は認めなかった．また，外尿 位に Wood 灯を照射すると赤色蛍光を発することか 道口および膣口部にも赤色蛍光を認めたが生検にて同 ら，悪性腫瘍の局所診断に利用されている．この光線 部位に腫瘍細胞は認めなかった（図 1b）．なお，triple 力学診断（photodynamic diagnosis 以下 PDD）は皮膚 paget 病の検索のため両側腋窩を調べたが，臨床的に 科領域では無色素性あるいは再発性基底細胞癌の浸潤 皮疹はなく PDD 陰性であり生検で腫瘍細胞は認めら も膨大な症例数の報告がある 4） 範囲の診断 や日光角化症，Bowen 病，乳房外 Paget れなかった． 病などの境界不鮮明な病変の輪郭を知るために行われ 症例 2 ている5）6）．今回腫瘍の浸潤範囲の診断に PDD が有用 患者：84 歳，女性． であった乳房外 Paget 病の 2 例を経験したので若干 初診：平成 12 年 10 月 10 日． の文献的考察を加えて報告する． 既往歴：40 年前，乳癌． 症 例 症例 1 家族歴：特記事項なし． 現病歴：平成 10 年 3 月頃，陰部に疼痛出現し他院受 患者：71 歳，女性． 診．乳房外 Paget 病と診断され，平成 11 年 6 月，腫瘍 初診：平成 12 年 11 月 15 日． 切除術施行された．平成 12 年 9 月，尿道口周囲にびら ん出現し，生検にて Paget 細胞を認めたため，10 月 10 愛知医科大学医学部皮膚科 平成13年 1 月25日受付，平成13年 4 月26日掲載決定 愛知県愛知郡長久手町大字 別刷請求先：（〒480―1195） 岩作字雁又 21 愛知医科大学医学部皮膚科 清水 純子 日，手術目的にて当科紹介受診した． 現症：尿道口および膣口を中心として比較的境界明 瞭な紅斑を認め，その周囲には前回手術時の植皮部が みられる（図 2a） ． 1502 清水 純子ほか 図 1 a．左側大陰唇から外側にかけて比較的境界明瞭な紅斑局面を認める．外尿道口， 膣口部には肉眼的に異常を認めない． b．紅斑部と粘膜部位にほぼ一致し，左側大陰唇から外側に赤色蛍光を認める． 図 2 a．尿道口および膣口を中心として比較的境界明瞭な紅斑を認め，その周囲には 前回手術時の植皮部および生検した数カ所のびらん部を認める． b．紅斑部と粘膜部位およびその周囲 3 時から 9 時方向に蛍光を発しており，特に 7 時から 8 時方向に強く蛍光を認める．周囲の点状に蛍光を認める部位は生検部位で ある． Photodynamic diagnosis（PDD）と乳房外 Paget 病 PDD 所見：症例 1 と同様の方法で PDD 施行し た 1503 要がある． ところ紅斑部と粘膜部位およびその周囲 3 時から 9 時 1991 年 Misas ら7）は外陰部 Paget 病患者に蛍光物質 方向に蛍光を発しており，特に 7 時から 8 時方向に強 を経静脈的に投与後，紫外線ランプで発行している部 く蛍光を認める．周囲の点状に蛍光を認める部位は生 分を切除し，切除標本を組織学的に検討したところ， 検部位である．紅斑部から約 1 cm 外側の 12 時，2 時， Paget 細胞の存在している部位と発行部位がほぼ一致 4 時，10 時方向の PDD 陰性の部位では生検で腫瘍細 していることを確認し，この方法の有用性を報告して 胞は認めず，PDD で強く蛍光を発した 7 時，8 時方向 い る．そ の 後 Becker-Wegerich ら8）は ALA 外 用 後 では紅斑がなく，一見正常に見えたが生検にて腫瘍細 PDD を施行し，CO2 レーザーにて外陰 Paget 病の治療 胞を認めた．しかし，その 1 cm 外側の部位では，腫瘍 を行っている．また，Paget 病の病変部と正常皮膚に 細胞は認めなかった （図 2b） ．なお，両側腋窩とも臨床 ALA を外用し両者に含まれる porphyrin レベルを測 的に皮疹はなく PDD は陰性で生検するも腫瘍細胞は 定したところ，病変部は正常皮膚に比べて 6 倍も por- 認められなかった． phyrin レベルも高く，その porphyrin は 85％ が pro考 察 toporphyrin が占めていたと報告している． 外陰部乳房外 Paget 病では病変の浸潤範囲を決め 我々も乳房外 Paget 病に 20％ ALA 親水軟膏を外 る時，肉眼的に紅斑や色素沈着の見られる部位の辺縁 用し，4 時間後 PDD 施行．蛍光を発した部位より生検 から mapping biopsy が行われている．しかし，数カ所 し，凍結標本を蛍光顕微鏡にて観察したところ腫瘍細 の biopsy を行うため患者の苦痛が大きく，また生理的 胞に一致して赤色の蛍光を認めた． （未発表） 色素沈着部位との混同や不完全色素脱失部での病変の ALA はそれ自体には光感受性はないが，外から細胞 見落としなどの問題がある．今回，外陰部 Paget 病の に与えられると内因性のプロトポルトフィリン IX が 2 例に PDD を施行し，確認のため mapping biopsy を 細胞内に蓄積され，紫外線領域で赤色蛍光を発する． 行ったところ腫瘍浸潤部位とほぼ一致しており，特に 病変部に ALA を外用すると 4∼6 時間でその発色が 2 例目は再発性で初回手術時の瘢痕部と病変の境界が ピークとなりその後減衰する9）．この特性を利用して 不 鮮 明 で subclinical な Paget 病 変 を 診 断 す る 上 で 皮膚悪性腫瘍の浸潤範囲の診断がなされているが，伊 PDD は有用と考えられた．また，2 例ともに，腋窩の 藤ら9）は，非常に正確に浸潤範囲を現した物もあるが， triple Paget 病の除外診断にも PDD は有用であった． 不正確のものも経験しており，その正確度は腫瘍細胞 しかし，びらんを伴う粘膜部位や生検部位などの皮膚 の浸潤する深さに依存していると考えている．今後 の損傷部位，また，不明瞭ではあるが毛 部（バクテ Paget cell の浸潤の深さと蛍光の強さの関係について リアが porphyrin を産生するため）でも赤色蛍光が見 の確認および，PDD の適応，プロトコール決定につき られることから PDD による偽陽性所見を除外する必 症例数を重ね，さらなる検討が必要であろう． 文 1）Peng Q, Warloe T, Berg K, et al：5-Aminolevulinic acid-dased photodynamic therapy . Clinical research and future challenges , Cancer , 15 ： 79 （12） 2282―308, 1997. 2）Itoh Y, Ninomiya Y, Henta T, Tajima S, Ishibashi A：Topical delta-aminolevulinic acid-based photodynamic therapy for Japanese actinic keratoses, J Dermatol , 27 （8） ：513―518, 2000. 3）伊 藤 嘉 恭，辺 田 哲 郎，渡 邊 泰 弘，石 橋 明：5Aminolevulinic acid による光線力学寮：手指皮膚 悪性腫瘍の 2 例報告と本法の文献的考察，日皮会 誌，109 （1） ：27―37, 1999. 4）Wennberg AM, Gudmundson F, Stenquist B, et al：In vivo detection of basal cell carcinoma using imaging spectroscopy , Acta Derm Venereol , 79 （1） ：54―61, 1999. 献 5）松本義也：光線力学的療法・診断の皮膚疾患への 応用，皮膚病診察，22 （3）：235―239, 2000. 6）Fritsch C, Lang K, Neuse W, Ruzicka T, Lehmann P：Photodynamic diagnosis and therapy in dermatology , Skin Pharmacol Appl Skin Physiol , 11 （6）：358―373, 1998. 7）Misas JE, Cold CJ, Hall FW：Vulvar Paget disease：fluorescein-aided visualization of margins, Obstet Gynecol , 77 （1）：156―159, 1991. 8）Becer-Wegerich PM, Fritsch C, Schulte KW, et al：Carbon dioxide laser treatment of extramammary Paget’s disease guided by photodynamic diagnosis, Br J Dermatol , 138 （1）：169―172, 1998. 9）伊藤嘉恭，石橋 明：Photodynamic therapy 皮膚 疾患への応用，皮膚病診療，22 （12）：1185―1190, 2000. 1504 清水 純子ほか Two Cases of Extramammary Paget’ s Disease in whom Photodynamic Diagnosis（PDD） Was Effective for Diagnosing the Area of Tumor Cell Invasion Junko Shimizu, Yasuhiko Tamada, Hirono Nakaseko, Katsuaki Yano and Yoshinari Matsumoto Department of Dermatology, Aichi Medical University School of Medicine （Received January 25, 2001；accepted for publication April 26, 2001） To verify the area of tumor cell invasion, photodynamic diagnosis（PDD）was conducted in two cases of extramammary Paget’ s disease. In Case 1, the PDD-positive area virtually coincided with the erythematous portion, and tumor cells were found in the biopsy. Case 2 had a recurrence of extramammary Paget’ s disease. With PDD, the fluorescent staining was recognized not only in the erythematous area but in also the obviously normal skin graft region, and the biopsy confirmed the presence of tumor cells. In these findings, the area of Paget cell invasion virtually coincided with the PDD-positive part. PDD is therefore considered an effective way to diagnose the area of the tumor cell invasion. （Jpn J Dermatol 111：1501∼1504, 2001） Key words：photodynamic diagnosis（PDD）,extramammary Paget’ s disease
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